配信時代にカップリング曲の位置づけを探して「音頭」
――カップリングの「あんぢぇら音頭」も思い切った楽曲かと思います。懐かしアニメの定番である「音頭」にangelaが取り組んだのにはどんな理由があったのでしょうか?
KATSU 最近、配信で買っていただく方がすごく増えてきた中、「CD盤におけるカップリングとはなんぞや」とatsukoが最初に言い出したんです。
atsuko 作る方としては表題曲と同じくらい一生懸命作っているのにカップリングってちょっと可哀想な存在なんですよね。そのときのリリースイベント時には歌いますけれども、トータルのコンセプトを持って作るアルバムには収録されないことも多いですし、大きなツアーでも選曲されないことが多い。だったら何かに特化した曲にすれば歌う機会も確保されるだろうということで、私が「音頭にしたい」と言い出したんです。これなら夏のイベント関係で日の目を見る機会も確保されるだろうと。今まで、普通に良い曲を作りたいと考えていたんですけれど。人生で初めてカップリングの意味について真剣に考えたんです。
KATSU 26枚目になって初めて(笑)。
atsuko (笑)。でも「あんぢぇら音頭」って3枚目では出せないと思うんですよ。ちょっと早い。まさに今だなと思いました。そこは「『アホガール』だから」(笑)。
――音頭の作曲というのはいかがでしたか?
KATSU まず今まで何百曲と作曲をしてきましたが、angelaという名前を冠した曲作りについてのプレッシャーがありましたね。そのうえで音頭ですから。angelaは海外のイベント出演をするようになってから改めて、日本文化というか、民謡や演歌も含めた日本人ならではの音楽をやれていないなと気付かされたんです。「日本から来ました」なんて言っているのに、それは恥ずかしいことだと思って、実は密かに勉強していたんです。昔は演歌なんて全然聴かなかったのに、仕事として曲を分析しようとする耳で聴くようになったらすごくいろいろな発見がありました。たとえば「ドラえもん音頭」なんてすごくファンクなフレーズが入っているんですよ。
――日本人のアイデンティティの中にもそういうファンクの要素があったんですね。
KATSU ええ。それは誇りに思っているし、日本の文化が世界に出ている中でアニメやアニソンだけではなく、もっと出ていっていいはずだと思います。今回、黒田節とか東京音頭とかを1から聴き直して、中途半端な「音頭っぽい」曲ではなく、angelaの名前が付いてるゴリゴリの音頭をめざしました。あと、今回気づいて驚かされたのは、東京音頭にしろドラえもん音頭にしろ、当時の録音状況からしてハイファイではないわけで、我々が耳馴染んでいるのもそういう音な訳です。逆に今の環境でハイファイな音で、音頭を作ってもどこかうまくノレないんです。だから作った後、一回テープに録ってからマスターに戻すという作業をやってもらうことによって、やっと音頭っぽい音になるという不思議な感覚を味わいました。
――武道館でも弾かれていた三線は、この曲でも弾かれているんですか?
KATSU はい。4、5年前から始めて、最初は趣味で弾いていたんですけれども、武道館に向けてかなり弾くようになりました。メチャ上手くなりましたよ(笑)。ギターみたいな表現はできないのですが、弦も少ないし隔離も広いから弾きやすいんですよ。
――歌の方はどうでしたか?
atsuko こういう曲って、溜めて歌うイメージを皆さんお持ちだと思うんですけれど、全部それで通すとコテコテすぎるし、KATSUさんがそういう歌い方をするのが好きではないので、最初はテンポ通りに歌って、ここぞという箇所で後ノリにするという歌い方にしました。レコーディングをしてくださるエンジニアさんが、キングレコードらしくよく演歌の方を録られているそうなんです。その方曰く、「1拍2拍溜めるのは当たり前。譜面通りに歌う人なんていません」ですって。そういう気づきも今回ありつつ、気分的には夏祭りのやぐらの上を妄想しながら歌いました。
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