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INTERVIEW

2017.06.02

一夜にして創り上げた新境地!劇場版アニメ『BLAME!』主題歌「Calling you」担当 angelaインタビュー!

一夜にして創り上げた新境地!劇場版アニメ『BLAME!』主題歌「Calling you」担当 angelaインタビュー!

好評につき劇場公開の拡大が進行しているSFアニメ映画『BLAME!』。『シドニアの騎士』の原作者である弐瓶 勉とポリゴン・ピクチュアズの制作となれば主題歌もangelaというのはファンにとって安心と納得だろうと思われる。「シドニア」「騎士行進曲」と、angelaにとって新機軸を打ち出したこれらの曲はあらたなレパートリーとして受け止められているからだ。そうしたなか届けられた『BLAME!』の主題歌「Calling you」は、映画音楽的な主題歌で、これまでのangelaの路線からはさらに尖った曲調だ。今作をどのように受け止めたら良いのか、angelaのatsukoとKATSUに話を聞くと、そこにはふたりのアニメ主題歌歌手としての誇りと力強さがみなぎっていた。一夜にして創り上げたとされる“伝説”とともに確認してほしい。

得意技であるメロディを封じられたなか、一晩でどうやって創ったか?

――angelaにとって大きな目標であった日本武道館公演から、はや3ヶ月が過ぎようとしていますが、振り返ってどんな経験として捉えていますか?

KATSU 昔、武道館を目標に掲げたときは、そこに行けば何か変わるのかなと思っていたんですけれども、正直なところ、何か変わったということはなくて。むしろ、僕らに期待してくれていた人たちがこんなにいたんだという実感がすごく湧きました。他人の顔色をうかがうのではなく、自分がやりたい音楽をやったらみんなが集まってくれるという自信になりましたね。かっこつけたり背伸びしたりしなくても、自分がやりたいものをこれから先もやっていくというとありきたりなんですけど、そういう手応えを感じられた経験でした。

atsuko ホントに日常的には変わらないんですよ。ただ、より楽しいことをしたいなという思いが強くなりました。まだ何も決まっていない時は、angelaの集大成みたいな真面目なライブにしようとしていたんですけど、これは真面目にやってはダメだなと。せっかくだったら誰もやらないような、「angela、何やってるんだ!?」みたいなことをやろうと思ったんです。それで、観てくださった方は分かると思いますが、ああいうライブになったわけです。お客さんはもちろん、関係者の皆さんからも「すごく愛に溢れたライブで、曲を知らなくても全体を通して楽しめた」という意見をたくさんいただいて、もうかっこつけずにangelaらしくやろうって思いました。優等生でいることを辞めました。

KATSU 優等生だったんだ?!(笑)。

atsuko 優等生よ、優等生。きちんと作品に合わせて曲を書いて、しかも真面目な作品が多く、そこに合わせると必然的に真面目な曲になるので、それがangelaの印象になっていたと思うんですけど、そうじゃないangelaをたくさん見せることができました。せっかくなら楽しいことをやって一回一回のライブを「なんじゃこれ~」って印象づけたいなという思いがより強くなりました。

――ありがとうございます。さて、そんな武道館を終えての初リリースが『BLAME!』の主題歌「Calling you」です。angelaは同じ原作者の弐瓶 勉さんの『シドニアの騎士』でも主題歌を歌われてきましたが、弐瓶作品について、アーティストからはどんな印象として映りますか?

atsuko 個性的ですよね。それゆえコアなお客さんも多く、皆さん「弐瓶作品とはこれである」という確固たるものを持っているような印象があります。そういう話を聞くと曲を作るのが怖いですよ(笑)。

KATSU そんななか音楽を作るということにプレッシャーがないといったらウソになります。でも、angelaもこれまでいろんな作品に携わってきたなか、『シドニアの騎士』という作品はangelaの隠れていた部分を引き出してくれた作品なんです。その意味で自信半分、不安半分みたいな。今回の『BLAME!』も元々はシドニアの2期(『シドニアの騎士 第九惑星戦役』)の劇中劇として1シーンから生まれたもので、また違う弐瓶さんの世界を見られたという感じで、自分の中で漠然と曲のイメージはそのときすでにあったんです。

――そんな頃からだったんですか。そこからどのように作られて行ったのでしょうか?

atsuko 制作が決まり、どういう曲にしようかという会議が設けられまして、そこにはプロデューサーの他、瀬下監督や弐瓶さんもいらしていました。そこでの方向性は激しくてアップテンポな曲だったんです。

KATSU もっと「シドニア」に近くて、メロディアスだったんですよね。

atsuko でも、いざ提出してみると、ちょっと違ったようで。私達って歌謡曲育ちなので、いわゆる日本人が安心するメロディラインを大事にしている部分があるんですけど、それって食べ物で例えると“出汁”だと思うんですよ。海外に行ってしばらく日本食から離れると「あー、お味噌汁が飲みたい」って気分になるじゃないですか。つまりその“出汁”が歌謡曲のメロで、もう一回会議があったときに瀬下監督や弐瓶さんから「その“出汁”が要らない感じ」と言われて。

KATSU 日本人ってメロディが動くことで感情も動くという聴き方をすることが多いと思うんですけど、いわゆる洋楽ってリズムで感じるところが大きいと思うんですよ。つまり“出汁抜き”って、メロディが要らないってことなのではないかと。

atsuko それは今までの作り方と違って、私達にとって難しいことでした。その時点で主題歌制作のスケジュール的にけっこうギリギリのタイミングだったんです。その会議が終わって夜の8時くらいからそのままスタジオに入り、曲を作ってラララで歌って仮歌を作り、KATSUさんが軽くアレンジをしてその日の夜中のうちに送ったんです。

――すごいスピード!

atsuko 時間がないという焦りもありましたけれども、それよりも「こうしてほしい」という空気感は時間が経つと薄れていくので、どうしてもその日中に作ってしまいたかったんですよね。そうしたら朝にはもうプロデューサーから「最高です!」と返事がありまして(笑)。

KATSU 提出したときは「Calling you」の前半にあたる部分だけだったんです。ここでは世界観を表していて、後半のトランス調のところでは霧亥(キリィ)の感情を表しています。

――その前半の楽曲はどのように思いつかれたのでしょう?

atsuko 映像を見せてもらって、「映画のこの部分の空気感を出してください」と言われたんです。それは統治局の中に入っていった際にパスワードがないから入れないでいるという、宇宙とも深海ともいえるような空気感のある場面でした。

KATSU 僕としては『BLAME!』の世界観を表すのは村の方だと思っていたら、そっちだったのかという感じで。

atsuko ちょうど求められていたものと合致してすぐにOKが出たので、このまま固めていけるとなってそこからは早かったですね。

KATSU そして後半部分というのが、実は最初に『シドニアの騎士』の劇中劇で流れた『BLAME!』を観たときのイメージだったんです。前半部分はOKが出ているのに、後半を足すことでNGが出るかもしれないとは思ったのですが、それでも提出したい、そう思わせてくれるのが弐瓶さんの作品とポリゴン・ピクチュアズの最大の魅力かなと思いますね。でも、『BLAME!』が出来上がったのを観たら悔しかったですね。

――どういうことですか?

KATSU やっぱり技術が進んで、明らかに動きがスムーズになっているし、ポリゴン・ピクチュアズも成長しているんだなと。

atsuko 上から目線だな!

(一同爆笑)

KATSU いやいや、そのくらい『BLAME!』がスゴかったということですよ(笑)。やっぱりこの作品に対する愛がスゴいんです。『BLAME!』をやるために『シドニアの騎士』を作っていたんじゃないかと思ってしまうくらいですよ。

自ら、angelaらしさは要らないと
言い切ることができる理由

――歌詞はどのように書かれていったのでしょうか?

atsuko 最初にラララで歌って提出したときに、これでもう良いような気もしたんです。あの言葉少なな『BLAME!』の世界観に歌詞を付ける印象がなくて。霧亥が「オレはずっと旅をしている」とか「遠くからやってきてみんなに食料を配る」みたいなこと言わないでしょう(笑)。

KATSU ブログか!(笑)。

atsuko (笑)。かといって、電基漁師さん視点で「あなたが来てくれたから救われた」って英雄降臨みたいなのを書いてもしょうがない。そんなふうに悩んではいたのですが、2回目の打ち合わせのときに弐瓶さんが「ざっくりと『BLAME!』を説明する方法に気づいた」とおっしゃったんです。つまり、統治局に入れないというのは、現代の私達に置き換えるとネットのさまざまなサービスを利用するときにIDとパスワードを忘れた状態であると。その探している感情を描けば良いのかもしれないと思いました。ただ、内容がたとえ分からずとも、音楽的に耳当たりが良いものにしたいという話はKATSUさんともしました。洋楽を聴いたときに「英語は分からないけど良い響きだな」と思ったことってあるじゃないですか。それと通じるものがあればなと。

――歌うときはどんなことを意識されましたか?

atsuko 一生懸命歌わない。もちろん手を抜いているわけじゃないですよ(笑)。熱く歌い上げないということです。

――それはatsukoさんにとってどんな経験でしたか?

atsuko 難しかったです。後半に盛り上がっていくと、こっちもそういう気分になるというのを押さえるのが特に。人間的だからという理由で今回はビブラートも使っていません。

KATSU レコーディングのときは今よりももっとシンプルなアレンジでした。淡々と歌ってもらったあとからアレンジを豪華にしていって、声も3回くらい加工して人間味を薄くしていった感じですね。

atsuko 後半はハモリを重ねていくので、熱くないものの声としてはゴージャスになっていますね。

KATSU そういうところも今までのangelaっぽさではないですね。atsukoの得意とする張り上げもファルセットもないし、ギターすら入っていない。その意味でangelaを再構築した曲ですね。

atsuko でもangelaにとって、こういう“出汁を抜いた”ような曲って、こんな機会でもなければ生み出されなかったと思うんです。それは『シドニア』のときもそうでした。作品に関われたからこそ、原作者や監督、スタッフのみなさんの思いが詰まったものを感じ取って、私達もそのひとつになりたいという気持ちを込めて曲を作るわけです。その意味では、自分たちは自分たちなんですけど、「angelaっぽさ」というものは要らないと思っているんです。アニメに合えばそれでいい。だから今回の曲も最後までスタッフロールを見て、「angelaだったんだ!」と気づかれたり言われたりすることも多いのですが、悪いことだと捉えていません。作品に合いさえすれば全く構わないというのが、どんな作品に対しても思っていることです。

KATSU angelaにとっていちばんイヤなのは、監督とかプロデューサーに妥協されることなんですよね。

atsuko そう。「何か違うんだよなー」って思われつつ使われるのがいちばんイヤ。

――今回のように、「時間がないなか、申し訳ないんだけど別の曲を」と言ってくる人じゃないと。

KATSU うん。逆に、そう言ってくれる人じゃないと信用しない。そういうふうに作品に愛情がある人なら、こっちも限界だろうがなんだろうがギリギリまで粘りたい。

――『BLAME!』は本編が音響にこだわられている作品ですが、「Calling you」ではレコーディングのあとのポストプロダクションで何かこだわられたことはありましたか?

KATSU 最初のゆっくりな部分では5.1chはなるべく使わず、モノラルに近い感じで聴けるように調整しました。というのも、映画館の席って座る場所によって聴こえ方がけっこう違うので、最初から5.1chをフル活用していくと楽曲の印象がそれぞれで変わってしまうんですね。そこで、最初はモノラルにしておいて途中のシーっというSEで一回真ん中にまとめ、そこから後ろを広げるようにすることで、どこの席で聴いていても広がっていく感覚は分かる。そういうミックスにしています。

――配信でリリースされる「Calling you」はどんな仕上がりになっていますか?

KATSU そこは2ch(ステレオ)に戻しています。5.1chでバラしたものをまた2chに戻したときもそれなりのバランスで聴こえなくてはいけないというのがサラウンドの難しさではありますね。

――今回は発想からプロダクション至るまでangelaにとってさまざまな新しい経験がありましたね。

atsuko もちろん、angelaとしての得意分野というものはあるのですが、「やってみたらこうなった」という、自分の中での新しい発見はいろいろな作品を書く中で味わってきました。その意味で特に『シドニア』は、新しい試みをして多くの人に聴いていただき、自分たちとしても第二章の始まりというか新たな扉を開くきっかけをポリゴン・ピクチュアズさんにいただいた感じがします。そして今回また『BLAME!』で「私達、こういう曲を書けるんだね」と、自分たちで書いておきながら驚くという、新鮮な経験をさせてもらえてありがたいなと思います。

KATSU 『シドニアの騎士』がヒットして『BLAME!』が生まれたように、『BLAME!』がヒットしたら『シドニアの騎士』の第3期ができそうな気がするんですよ。angelaとしては『シドニアの騎士』の原作コミックは全15巻で完結しているので、アニメの第3期で『シドニアの騎士』を完結させてほしいという思いが『BLAME!』を作りながら常にありました。今、映画の好調が伝えられているので、その実現に一歩近づいたんじゃないかな(笑)。

――『BLAME!』のときのように、実はすでに構想を練られていたりしますか?

KATSU いえいえ、まだです。そもそも主題歌を依頼されるかどうかも分かりませんし(笑)。それよりも僕はとにかく『シドニアの騎士』第3期が見たいんです!(笑)。

Interview&Text By 日詰明嘉


●作品情報
劇場アニメ『BLAME!』

全国公開中

【キャスト】
霧亥::櫻井孝宏
シボ:花澤香菜
づる:雨宮天
おやっさん:山路和弘
捨造:宮野真守
タエ:洲崎綾
フサタ:島﨑信長
アツジ:梶裕貴
統治局:豊崎愛生
サナカン:早見沙織

【スタッフ】
原作:弐瓶勉『BLAME!』(講談社「アフタヌーン」所載)
総監修:弐瓶勉
監督:瀬下寛之
副監督/CGスーパーバイザー:吉平”Tady”直弘
脚本:村井さだゆき
プロダクションデザイナー:田中直哉
キャラクターデザイナー:森山佑樹
ディレクター・オブ・フォトグラフィー:片塰満則
美術監督:滝口比呂志
色彩設計:野地弘納
音響監督:岩浪美和
音楽:菅野祐悟
主題歌:angela「Calling you」
音楽制作:キングレコード
アニメーション制作:ポリゴン・ピクチュアズ
配給:クロックワークス 製作:東亜重工動画制作局

●配信情報
『BLAME!』主題歌
「Calling you」angela
レコチョク、アニメロミックス、mora、iTunes ほか配信サイトにて配信開始!

劇場版『BLAME!』オリジナルサウンドトラック
配信中

©弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

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