トラックメイカーの小島英也とボーカリストのぽんによる2人組ユニットのORESAMAが、TVアニメ『アリスと蔵六』のOPテーマ「ワンダードライブ」で再メジャー・デビューを果たす。
70~80’sディスコとクラブ・ミュージックの要素を掛け合わせたレトロでモダンなフューチャー・ポップを紡ぐ彼らがこの新曲に込めたのは、同アニメの主人公・紗名と自分たちの境遇を重ねて導き出した、ある決意と思いだ。カップリング曲を含め、新しい挑戦への意志を感じさせるニュー・シングルについて、ふたりに話を聞いた。
なお、『リスレゾ』では「ORESAMAらしさ」の本質に迫るべく、制作面でのこだわりや音楽的ルーツ、外部ワークスなどについて訊いた特集記事を掲載。本インタビューとの連動記事となっているので、ぜひ併せてご一読いただきたい。
【リスレゾ】ORESAMAインタビューはこちら
作品とシンクロできる部分も多かったので、私の今の気持ちや決意を音に乗せることができたと思います(ぽん)
――今作でランティスからの再メジャー・デビューになりますが、これはどういった経緯で決まったのでしょうか?
小島英也 去年の一年間、インディーズに戻って活動していくなかでいろいろな方に出会ったんです。そのなかで幸いにも先方からお声がけをいただきまして。僕らとしても、ここは良い意味でひとつの大きな分岐点になると思い、ふたりで相談してぜひにということでお返事して、今回のお話に繋がりました。
――ニュー・シングルの表題曲「ワンダードライブ」は、TVアニメ『アリスと蔵六』のOPテーマに起用されています。ORESAMAらしいディスコ・テイストの華やかなアップ・チューンですが、どのようなイメージで制作されましたか?
小島 最初は「好きに作ってほしい」と言っていただいたので、まず原作を1巻から5巻まで一気読みしたんです。そこで疾走感やキラキラしたシンセといった細かい音楽のイメージが浮かんできたので、それを形にしていきました。その最初のイメージは軸として残しつつ、先方の意見を聞きながら何曲か違う表現のものも作っていって、今の形に決まりましたね。
――その疾走感とキラキラというイメージは、原作のどの部分から感じ取ったのでしょうか。
小島 それが自分でも具体的にわかってなくて……。原作を読んでいるときに、なぜか4つ打ちのキックとかベースのスラップする感じが頭の中にバーッと出てきたんですよね。
――普段からそのように音のイメージが浮かぶタイプなんですか?
小島 はい。基本的に曲作りはそういう感じです。ドラマや映画を観ていても自然と音のイメージが出てきちゃうので、すぐに曲を作りたくなってしまうんですよ。なので、DVDを観ていても、半分ぐらいでいつの間にか曲を作ってる状況がよくあります(笑)。言葉で表現するのが苦手なぶん、音楽で出てきちゃうというか。
――そうなんですね。一方でOREAMAの楽曲はすべてぽんさんが作詞されていますが、「ワンダードライブ」の歌詞はどのようなことを表現しようと思ったのでしょうか。
ぽん 私は『アリスと蔵六』という作品のなかに、今の私たちの境遇に重なる部分を感じたので、そこをベースに書き始めました。
――それは具体的にどんな部分ですか?
ぽん 物語の冒頭に(主人公の)紗名ちゃんと蔵六さんがドライブするシーンがあるんですけど、これからストーリーが動き出していく感じと、今まさに再メジャー・デビューして駆け出そうとしている私たちが重なって見えて。それに紗名ちゃんが何かを変えたくて施設を飛び出すところも、自分たちの世界を変えたくて飛び出していく私たちとシンクロするように感じたんです。だから、この『アリスと蔵六』という作品で再メジャー・デビュー曲を書かせていただいたことには、運命的なものを感じます。
――たしかにインディーズでいろいろと活動してきたうえで、またメジャーに戻ってきたORESAMAの軌跡を知っていると、よりグッとくる歌詞になってますね。個人的にも“曖昧な感情は 丸めて捨てていくよ”の部分で泣きそうになりました(笑)。では、この歌詞はご自身の今の心情が如実に反映されているんですね。
ぽん そうですね。でも、私の気持ちだけでもダメだと思うんですよ。せっかくオープニングに起用していただいて、作品とシンクロできる部分も多かったので。物語の中で紗名ちゃんの決意があったからこそ、結果的に私の今の気持ちや決意を音に乗せることができたんだと思います。
――実際にアニメの第2話からオープニングが放送されていますが、自分たちの曲がTVから流れてきたときのお気持ちはいかがでしたか?
小島 本当に感動しましたね。音楽は目に見えないものですけど、そこに視覚的な映像がつく瞬間は、何回味わってもものすごい感動があります。しかも、これが毎週みんなの元に届くと思うとワクワクするというか。
ぽん TOKYO MXとBS11の両方で観てるよね。
小島 毎週2回、リアルタイムで観てます(笑)。
――うれしさが伝わってきます(笑)。ぽんさんの感想は?
ぽん (OPアニメの)最後のところで紗名ちゃんが歌ってくれてるんですよ。それがとてつもなくうれしくて、「あー、歌ってくれてる!」と思って泣きました(笑)。他にも、サビ前のクラップの部分でも視覚的にいろいろ盛り上げてくださっていたり。
――やはり、自分たちの曲にアニメの世界と合わさった映像がつくのは感動的ですよね。それに加えて「ワンダードライブ」はMVも制作されています。こちらはおふたりが出演されていますが。
ぽん 私たちのこれまでのMVも撮っていただいてる佐伯(雄一郎)監督と、私が主演しているショート・フィルム(「恋する心臓」)でご一緒した荒船(泰廣)監督の両監督に制作していただきました。実写とアニメーションの融合になってます。
――ORESAMAのアートワークではお馴染みのイラストレーター、うとまるさんのイラストが随所に散りばめられていて、見ていて楽しい気分になる作りですね。ぽんさんがサビの部分で踊られる振り付けもかわいらしくて。
ぽん この振りはELEVENPLAY(演出振付家のMIKIKOが率いる日本のダンス・カンパニー)のNONさんにつけていただいたんです。
――それは豪華ですね!MVはどのようなコンセプトで作られたのですか?
ぽん 青いウィッグの「青ぽん」は実際の私に近い、自信がないけど何かを表現したいという女の子。金髪の「黄ぽん」は物語のなかで活躍している私というイメージです。「青ぽん」が「黄ぽん」になりたいという葛藤のなかで、成長していく姿を描いてます。
――撮影で苦労したことはありますか?
ぽん セットの建物の上で踊ったんですけど、私、高所恐怖症で(笑)。落ちるんじゃないかと思って怖かったです。
――あれは僕でも怖いですよ(笑)。では、続いてカップリング曲についてお伺いします。「ねぇ、神様?」は音楽アプリ「nana」(スマートフォンで歌声や楽器演奏を録音/投稿できるSNSアプリ)と関わりのある曲とのことですが?
ぽん 歌のことで悩んでいた時期があって。そのときに名前を伏せて、何者でもない私の歌を聴いてもらえるのかという挑戦も兼ねて「nana」での投稿を始めて。一日に3~4曲のペースで半年間に400曲くらいアップしたんですけど、そこで私のことを知らない人が純粋に「声カワイイね」とか「うまいね」と言ってくれることがすごくうれしくて。それでもっと歌いたい、ORESAMAのぽんとして私の歌を聴いてほしいという気持ちがどんどん大きくなって、最終的に自分のことを公表したんです。
――そうだったんですね。
ぽん いろいろな声があるとは思っていたんですけど、今までのファンの方も含めて「これからも応援するよ」とおっしゃっていただける方が多くて。それがすごくうれしくて、その中で生まれた気持ちを形にしたいと思って、小島くんと相談して作ったのがこの曲なんです。
――では、制作した順番的にはまず「ねぇ、神様?」があって「ワンダードライブ」なんですね。
ぽん はい。ここまで自分の心情を歌詞に書いたのは、この曲が初めてでした。世の中には歌や音楽を好きな人、表現したい人、誰かに想いを届けたい人がたくさんいると思うんです。そういう人に寄り添える曲になればと思って書きました。
――小島さんはぽんさんからそういう曲を作りたいという話を聞いて、どう思われました?
小島 ぽんちゃんが「nana」で活動してたのは僕も知っていて。悩んでる部分も見ていたので、この歌詞を渡されたときは「これが今の本音なんだな」というのをまず感じましたね。ぽんちゃんは自分の思ってることをストレートに歌詞にするので。ただ、これを暗い曲調にしたら重くなると思ったので、明るいディスコで踊りながら聴けるトラックにしたんです。
ぽん 結果、この曲を聴いた方が笑顔で歌ってくれたりするので、すごく良い曲になったと思います。心の叫びを歌った曲ではあるんですけど、それをORESAMAらしくポップスに昇華して、この曲でみんなが楽しくなってくれるのがうれしいですね。
――たしかにいわゆるディスコやファンキーなAORっぽさがありつつ、フレンチ・ハウスなどに通じるモダンな要素も入っていて、ダンサブルなポップスに仕上がってますね。
小島 ディスコのリズムを基盤に、ストリングスをビンテージな感じで切り刻んで使ってみたりとかしていて。自分の好きな音楽を今やったらこうなるだろうという、自分なりの答えがこの曲かもしれないですね。
――もうひとつのカップリング曲「SWEET ROOM」は、一転してメロウなバラードです。これはどんな曲ですか?
ぽん まず、ORESAMAにはバラード曲がなかったので、ふたりで相談してバラードを作ることに決めて。「SWEET ROOM」というのはライブのことで、私とライブにきてくれるお客さんとの一対一の対話のような曲になってるんです。私にとってライブは「また明日から頑張ろう」という気持ちにさせてくれるものであればいいなと思っていて。そういう思いを込めて歌詞を書きました。
――その歌詞を見て小島さんはどのような曲にしようと思いましたか?
小島 僕はバラードを作ることに決めた時点で、ソウルっぽい曲にしたいというのが念頭にあって。それで歌詞を見たときに「命」や「生きる」といった言葉が多くあったので、いつもよりも人間味のある曲にしたいと思ったんです。なので、普段はパソコンで曲作りをしていている僕が、どう人間味を表現するかという部分にもチャレンジしました。
ぽん ORESAMAはポップな曲調が多いんですけど、この曲は小島くんが生っぽい部分にこだわってくれて。初めて生のピアノを入れてもいるので、みんなの気持ちに寄り添いやすい曲になったと思います。
――歌声もいつにも増して柔らかで感情豊かな表現をされていて、サウンド面でも歌唱面でも新しいことに挑戦した曲になりましたね。
ぽん 「nana」の投稿ではピアノやアコギのみの演奏に歌を乗せることをとくに好んでいたんです。そこで普段のORESAMAとは違って息を多めにしたり、ブレスを長めにして歌う研究をしていたので、その成果をこんなに早くORESAMAで試せるとは思ってなくて。個人的にも楽しくて、レコーディングが終わった後も家で歌ってます(笑)。
Interview&Text By 北野 創
●リリース情報
ORESAMA
「ワンダードライブ」
5月24日発売
品番:LACM-14609
価格:¥1,200+税
<CD>
01. ワンダードライブ
02. 「ねぇ、神様?」
03. SWEET ROOM
04. ワンダードライブ-Instrumental-
05. 「ねぇ、神様?」-Instrumental-
06. SWEET ROOM-Instrumental-
●作品情報
TVアニメ『アリスと蔵六』
現在放送中
<ORESAMA プロフィール>
渋谷から発信する2人組ユニット。
ラブコメやディスコといった”バブル”カルチャーを「憧れ」として取り込み、80s’Discoをエレクトロやファンクミュージックでリメイクしたミュージックを体現!
その新感覚はイラストレーター「うとまる」氏のアートワークやミュージックビデオと相乗効果を生んで新世代ユーザーの心を捉えている。
(C)今井哲也/徳間書店・「アリスと蔵六」製作委員会
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