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INTERVIEW

2017.05.03

1st Album『eYe’s』発売記念~MYTH & ROID ”虹色の目の化石”をめぐる物語~最終回

遂に発売された1stアルバム『eYe’s』。その全曲にスポットを当てながら、Tom-H@ckの、MYTH & ROIDの向かう道筋を見定めてきたインタビュー連載だったが、残りは2曲。ついに最終回を迎える。Tom-H@ck、hotaru、KIHOWの言葉からは、自身が1stアルバムでどのような役割を果たしたのか、互いをどう見ていたのかが感じ取れる。

――「sunny garden sunday」は今回のアルバムでも異色の存在を放つ曲ですね。

Tom-H@ck 実はMYTH & ROIDがまだなかった頃に作った曲が元なんです。当時は、前衛的過ぎて使うことはなかったのですが、やはりメロディが海外っぽくていい曲だし、ボーカルを生の声で入れたらさらに良くなると思っていたんですよ。それでMYTH & ROIDが始動した後、アルバムならできると考えました。

――ということは、ある種、MYTH & ROIDのプロトタイプとかプロローグにあたる曲ですね。

Tom-H@ck ですね。MYTH & ROIDでこんな明るい曲調をやるのは初めてでしたし、他の曲とは少し違う流れの中にいる曲ですね。

――今回、アルバムという機会を得て、どういう曲に仕上げようと考えましたか?

Tom-H@ck ライブで皆がのれる曲にしたいとずっと考えていました。僕やhotaruが企画書を提出したときにも盛り込んであったんですけど、MYTH & ROIDって「究極異世界異次元体験型アーティスト」なんですね。曲を聴いたときに、現実世界を忘れさせるという「救い」を与えられるアーティストになってほしいなと思っているんです。ディズニーとかピクサーとかと同じで、例えば仕事や人間関係がつらくて削いで削いで削がれていった心が、東京ディズニーリゾートに足を一歩踏み入れたら非現実的な行為で癒される。それは逃げではなくて、人生という物語の中での「癒し」なんですよ。それの究極をMYTH & ROIDで実現したいんですよね。だから、MYTH & ROIDのテーマパークができてもいいと思っています。本質はそういうことです。それがダークでファンタジックな世界でもいいじゃないですか。非現実的だけど救いがある。『チャーリーとチョコレート工場』もそうですけど、MYTH & ROIDは今までディープでちょっと暗くて、でもファンタジックな世界で人の心を癒してきたところがあるけど、TDLに行ったら花火が上がって「うわ、マジでこの世の中ハッピーかもしれない」って思えるあの感じをこの曲で出そうと思いました。だから、hotaruも超ハッピーな歌詞を書いてくれたんですよね。

hotaru テーマはどストライクに「幸福」なんです。それはMYTH & ROIDで書いたことがない世界観だったので、曲をもらったときも「大丈夫かな」とは思いました。でもやっぱり、曲に言葉が付くとすごく具体的になってしまうので難しいんですよね。だから、歌詞を書き終えた後まで心配でした。ただ、明るいニュアンスで歌ったKIHOWちゃんの歌を聴いて、成立できると思えました。

――「ハッピー」はともするとバカっぽくなりがちですしね。

hotaru そうなんです。MYTH & ROIDがすごく大事にしてきたシリアスな世界観がやはりあるので。ハイクオリティで振れ幅は大きいけどその真の部分を捉えるにはどうすればいいか、というところを探りながら作った曲です。

――先ほど、KIHOWさんの歌で、と仰られましたがhotaruさんから歌詞についてのディレクションはされたんですか?

hotaru そこは基本的に「ない」です。TomさんのディレクションでKIHOWちゃんが一番ハマる歌い方をしてくれれば成立するだろうとは思っていました。だから、心配ではありましたけど楽しみな気持ちもありました。

――KIHOWさんはどんなイメージで歌いましたか?

KIHOW 曲もタイトルも歌詞も全部含めて明るい印象しかない曲なので、これを別の雰囲気で歌う方が難しいというか、歌いやすいように歌ったというのがストレートな感想ですね。

――今回のアルバムでハッピーな曲はこれくらいですよね。明るいを歌った経験というのは?

KIHOW どちらかというとあまり歌ったことはないですね。ただ、頭の中には楽しかったことや好きな人や家族、そういう幸せなことがもちろんあるので、明るい、温かいイメージで歌いました。色で言ったら黄色みたいな。

――では、今回のアルバムレコーディングの中でもかなり楽しい気持ちで歌えたんじゃないですか?

KIHOW 結構ルンルンでした。録り終わった時もルンルンで。

――Tom-H@ckさんが出したディレクションについても教えてください。

Tom-H@ck この曲はあまりなかったです。最初に聴いた時から「めちゃいいな」って思ったので。「ここでキメるぜ」っていうところでははっきり歌う、というくらいですかね。個人的には新曲の中でこの歌が一番いいと思っています。もっと(たくさん)明るい歌を歌ったら?

――それはむしろMYTH & ROIDで明るい曲をもっと作っていくかどうかにかかっているのでは(笑)。

hotaru そうそう(笑)。

Tom-H@ck まあね。だから、ビジネスの視点で考えると、「(MYTH & ROIDは)明るい日常系アニメの仕事もできるぜ」って証明になったとも思うんです。歌詞もすごく好きで、MYTH & ROIDなのに日常を歌ってるんですよ。天気のいい日に出かけてブレークファーストって風景が歌詞を見た時に入ってきてる。

hotaru 二人でいちゃいちゃしてるルンルンソングです。

KIHOW いちゃいちゃ(笑)。ルンルンで楽しいですよね。

Tom-H@ck 現実の僕は寂しいですけど。でも、これを見た時に「最高だな」と思いました。ボーカルも録ったら一発OKだし、何も言うことない。大好きな曲です。

――「―to the future days」は本編の最後にあたる曲ですね。

Tom-H@ck これも「STYX-」を作ったときの候補曲ですね。似てると思った人もいると思うんですけど、最初の段階ではアレンジも「STYX-」に近いもので、hotaruにはその段階で渡しました。この曲は絶対最後にしようというのは二人で決めていた曲です。

hotaru 自分としても、聴いた瞬間にこの曲だけレイヤーが違うと感じました。だから、テーマを考えながらも最後にしたいと思っていました。でも、(テーマが)なかなか決まらなかったんですよね。正直、書き始めてからも悩んでいました。僕は「音」から言葉を選んでいって、意味から歌詞を書いていかないんです。なので、曲のイメージがどうこうというよりは、テーマに対してうまくまとまらないということがたまにあるんですね。最終的には、「感情の最果て」をこのアルバムでずっと歌ってきたわけですが、この曲では主観的な視点で感情の激しさではなく、アルバムで語ってきたことを少し俯瞰で書いた、というところに落ち着きました。歌詞に“悲しみさえ喜びさえ やがて等しく眠る そうやって生きてゆく”というのはそういうことです。いろいろな感情とともに僕らは生きているんですけどやがては収束し、だからこそ生きていけるということ書きました。

――この曲のテーマは?

hotaru 「願い」です。アルバム全体の話と紐づいているんですが、ある女性の眼が石になってからの主観で書いています。いろいろなことがあったけどこの後どうなるのか、未来のことは誰にもわからないじゃないですか。激動の人生であっても、後世になにを残しても、人の一生は人の一生、あとの世界は神のみぞ知る、という俯瞰で書きました。

――レイヤーの違う曲だから視点を変えていったのですね。

hotaru そうですね。その、どう視点を変えていくのか、というところが難しかったですね。

――歌う時は最後を飾る曲だと知らされていたんですか?

KIHOW でも、トラックの番号が。

hotaru 仮の番号を振っていたんですけど、最初から「13」だったので。

KIHOW だから、なんとなくはわかっていました。

――では、どういう気持ちで歌いましたか?

KIHOW うーん……。歌詞が、一人の人間の考えていることを書いているとしたら、曲と合わせて歌うなら私の感覚では、なんていうか、強く歌わないということではなく……。言葉で説明できない感覚が多すぎて、伝わるかどうか。

――頭の中ではどんなイメージが浮かんでいたんですか?

KIHOW 自分の声の出し方やニュアンスが頭の中で図みたいになっています。「この語尾の文字はどんな声で歌いましたか」と聞かれたらその文字を絵にできる、みたいな。意味がわからないと思いますが(笑)。例えば、語尾の文字が「あ」で、声を張るんだったら明朝体とかを黒で塗りつぶしたストレートな文字なんですけど、この曲の場合「あ」がメッシュみたいになってて空気が通る余地がある、みたいな感じです。

――本当にイメージとして浮かぶんですね。

KIHOW そうですね。Tomさんからディレクションを受けた時にメモしたり。「弱く歌って」と言われて歌った時の声を覚えておけないじゃないですか。なので、その状態の喉をイメージで記憶する感じですね。

hotaru MYTH & ROIDの曲って日本語の歌詞をあまり日本語っぽく歌ってほしくないんですよ。最初に聴いた時に少しニュアンスが違っていたので、そのことを伝えたら歌詞を全部ローマ字で書いて覚えてきたんですね。「なんで?」って聞いたら、「日本語で歌詞を見るとどうしても日本語っぽくなるから」って。

――ビジュアルでの意識が強いんですね。

hotaru やっぱり言葉に日本語としてのニュアンスもついてくるので。

KIHOW 発音もですね。

――肌の感覚で歌っているように見えます。

KIHOW そうですね。歌ってる最中は、「こうしよう」とか具体的なワードでは考えてなくて、感覚なんですね。レコーディング中は感じてはいるけど考えてはいなくて、「あの感覚は何だったんだろう」って必死に考えて、やっとこういうことだって後から気付くんです。「Tough-」も弱く歌ったけど(連載第7回参照)、こういう風に歌えたというのは自分ではすぐにわからなくて、考えてからやっと言葉にできました。「Tough-」が子どもっぽいと言われたときに思ったのは、確かに自分が孤独の状態を想像して歌っているというよりは、もっと自分より大人な方の感情を私が代弁しているような形だったということです。

――歌が入った後のアレンジはどのようなイメージでしたか?

Tom-H@ck 年代で言うと80年代から90年代初期の楽器をいっぱい使って、古い感じを出しています。この曲がアルバムでは一番なじむメロディだしね。イントロとか。一番こだわったのは、最後に音が途切れるところを20秒近く伸ばしていて、そのまま「-ending」の語りに入ります。そこはhotaruが言ったみたいに、物語を俯瞰的に見て余韻に浸るみたいなところを表してのアレンジでしたね。

――最後に、1stアルバムを世に送り出した今、どんな重みでいるのか教えてもらえますか。

hotaru MYTH & ROIDの構想が始まった段階から、「話」をやりたいというのがあって。個人的には、話の具体的なところまで作り込んでいったというのが自分の仕事歴としてもチャレンジだったと思います。いろいろと初めてでしたがやりきったと言い切れます。本当にいいものが完成しました。1stアルバムでの最大の目的は「MYTH & ROIDにはいろいろな可能性がある」というところ、「異次元体験型」の一歩を示せたと思っています。

KIHOW 私は今回のアルバムから参加したので、MYTH & ROIDをすべて理解しているわけではないですが、今回歌わせていただいた曲に関して言えば、自分の感情を削って入れた部分がありました。本気だったので、人には見せたくない部分も削って入れたということだけは伝えたいと思います。

Tom-H@ck 鰹節じゃん

一同 (笑)。

KIHOW そんな感じです(笑)。

Tom-H@ck でもそれは素晴らしいことだよね。自分は「七つの大罪の何を背負って生まれてきたのか」って最近考えるんですよ。

――そんな中二病的なことを。

Tom-H@ck そしたら間違いなく「強欲」なんですよ。お金も欲しいし、自分のやりたいことをデカくしたいし、誰と話していても欲がとんでもない。ただ、自分のいいところは、自分を削って他人の幸せを考えることが自分の幸せっていうところがあるんですよ。鰹節みたいに。

hotaru 「鰹節」って言葉を使わなきゃいけなくなるじゃん(笑)、二人の発言にそんな入れ込んだら。

Tom-H@ck それは置いておいても、たくさんの人の力を借りて、このアルバムで自分がこれから歩む大きな夢への第一歩が歩めたと思います。KIHOWちゃんの歌が入ったことで自分の想像を超えられた部分も間違いなくあるんですよ。特に「雪を聴く夜」はKIHOWちゃんのボーカルがなければこういう曲にはならなかったし、hotaruの物語や歌詞に対しても毎回毎回驚きがある。人の集合体が元気玉みたいになって一丸となっていっていると思いますね。わかんないけど。

一同 (笑)。

――なんで最後に引いたんですか?(笑)

Tom-H@ck いや、今回から自分の会社仕切りになったわけだし、いろいろありましたけど、本当にやりたいこと、これから何十万、何百万という人に届けられるような最高のエンタテインメントを作るには更に頑張っていかないといけませんよね。そういう意味でも重要な第一歩ですよね。


●リリース情報
1st Album
『eYe’s』
発売中

【初回限定盤(CD+BD)】

品番:ZMCZ-11076
価格:¥4,000+税

【通常盤(CD)】

品番:ZMCZ-11077
価格:¥3,000+税

<CD>
01. – A beginning –
02.TRAGEDY:ETERNITY
03.Paradisus-Paradoxum(TVアニメ『Re:ゼロから始める異世界生活』後期OPテーマ)
04.STYX HELIX(TVアニメ『Re:ゼロから始める異世界生活』前期EDテーマ)
05.雪を聴く夜
06.Tough & Alone
07.ANGER/ANGER(TVアニメ『ブブキ・ブランキ』EDテーマ)
08.theater D(TVアニメ「Re:ゼロから始める異世界生活」第14話挿入歌)
09.JINGO JUNGLE ‒HBB Remix-
10.Crazy Scary Holy Fantasy(「劇場版総集編 オーバーロード 不死者の王」テーマソング)
11.L.L.L.(TVアニメ『オーバーロード』EDテーマ)
12.sunny garden sunday
13.─to the future days
14. – An ending –

01、14…Vocal:Imani Jessica Dawson
02、05、06、12、13…Vocal:KIHOW
03、04、07、08、10、11…Vocal:Mayu
09…Vocal:Mayu、HUMAN BEATBOX:KAIRI

<BD>
①「TRAGEDY:ETERNITY」(新曲)Music Video
②「L.L.L.」Music Video
③「ANGER/ANGER」Music Video
④「STYX HELIX」Music Video
⑤「Paradisus-Paradoxum」Music Video
⑥「JINGO JUNGLE」Music Video

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