Pileが約1年ぶりに発表する3rdアルバムに冠したのは、自らのファンを表す言葉“追い風さん”を直訳した『Tailwind(s)』。そのファンへの想いは、タイトルのみならずもちろん楽曲からも感じられるもので、特に1曲目に置かれたリード曲「DASH」と、「Vivid Vision」から始まるラスト3曲に強く表れている。そのニュー・アルバムへの、そして年末に控えた日本武道館でのワンマンライブに向けての“今”の彼女の想いを、本稿でじっくり感じていただければ幸いだ。
追い風さんへの想いが飾る、アルバムの幕開けとラスト
――約1年ぶりのアルバム、今回は『Tailwind(s)』というタイトルですが、そのとおりに全体として追い風さんをすごく意識したアルバムになっていますね。
Pile そうですね。やっぱり昨年1年間は、グループの活動がひと区切りついたのもあって。そのグループのときにすごく大きなステージを観に来てくださった皆さんや、そのあとソロでの活動で私ひとりを観に来てくれる方たちの存在をすごく感じた1年だったんですよ。なので追い風を意味する「Tailwind」に、“追い風さん”は人なので“(s)”をつけました。
――この(s)がカッコつきなのがすごくいいですよね。Pileさんから出すものは単体だけど、受け手は複数ですから。
Pile ホントですか?『Jewel Vox』以来の自分でつけたタイトルなんですけど、目立ちますよね。なかなか決まらなかったんですけど、締切間際にこのsをつけて、最後に「カッコをつけよう!」と思い立ってこの形になりました。
――そうしてタイトルにされるぐらい、追い風さんの存在を感じる部分が多い1年だったんですね。
Pile そうなんですよ。しかもファンの方同士も本当に仲が良くて、すごくいい空気感というか。「ここまで応援してるから追い風さん」とかじゃなくて、「応援してくれている人だったら、どんな応援の仕方でも追い風さん」って言えるのも、いいなと思ってます。それに“追い風”っていう呼び方らしく、皆さんまわりの方に薦めてくれたりしていて。だから「今日、友達と来ました!」っていうのを聞いたりすると、すごくうれしいですね。
――ということは、新しいファンの方も多い?
Pile はい。私、結構皆さんの顔を覚えてるので、お渡し会で初めて会う人も多いなって思うんですよ。だから、この1年のソロ活動でさらにいろんな人が私のことを気になって、来てくれたんだな……っていうのは、今すごく感じますね。
――そんな追い風さんの存在を感じて作られた今回のアルバム、全体を見るとどんなものになったと思いますか?
Pile ちゃんとトラック順に聴いてもらいたいアルバムになりました。特に最後から2曲目の「Melody」がグループの活動に区切りがついたあとの最初のシングルなので、そこから駆け抜けてきたこの1年が歴史がアルバムラストの「ROAD」で締めくくられる……みたいなイメージがあります。その「ROAD」も「これからも一緒に、行けるとこまで行ってみましょう!」っていう感じの、「いつかキミに届ける世界」からもう一歩進んだ曲なので、“昨年度の活動を詰め込んだアルバム”っていう感じがすごくしています。でも実は、レコーディングしているときはそこまでピンときてなかったんですよ。
――え、そうなんですか!?
Pile はい。録っていたときは曲順も決まっていなくて、曲が上がってきた順に録っていたんですけど、トラックダウンまで全部終わって、曲順で聴いたときに「あ、いいな!」って思ったんですよね。だから、私自身今までの自分のアルバムの中でいちばん曲順どおりで聴いている1枚だと思いますし、皆さんにもぜひ1回は曲順通りに聴いてほしいですね。それこそイベントとかでこのまま歌っても違和感がないぐらい、しっかりとした流れになっていると思うので。
――その最初を飾る「DASH」も、“この大空へ”っていうフレーズもある追い風さんの存在を感じる1曲です。
Pile ただサウンド的には、たぶん私の今までのイメージよりも明るくて軽快な曲だと思うんですよ。イベントで披露したときに、皆さんに「今回、盛り上がる曲は入ってますか?」って聞かれたくらいで(笑)。それぐらい、意表をついた1曲目かなとは思います。
――でも正統派なロックな感じもするので、すごくリリース時期の青空に似合う曲だとも思います。
Pile そうですね、春のリリースだからすごくいいタイミングだと思いますし、ドライブしながら聴いたりするのもいいかもしれないですね。
――そして、追い風さんの存在を感じるという部分は、ラスト3曲も共通しているような気がします。なので先にその3曲の中の新曲からお話をお聞きしたいんですが、「Vivid Vision」では同時に「すごい曲来たな」と思わせられました。
Pile この曲はしほりさんの曲なんですけど、いつも言っているように今回もしほりさんの曲は本当に難しくて(笑)。でもやっぱり歌うと楽しいので、完成版を聴いているうちに「ライブだったらどう歌おう?」っていちばん改めて考える曲になりました。
――今回は聴いている側としても、一発で「ヤバいな」と思うほどでした。
Pile いや、ホントですよね!(笑)。しかもしほりさんのメロディって流れるようなものなんですけど、高低もすごく行き来するんですよ。だからメロディを拾うためには、結構気を張って歌い続けていないといけないんですよね。でも、すごく疾走感があっていいなと思うし、1曲の中で変化もすごくある曲なので、聴いていて楽しいんじゃないかな、と思います。
――そしてアルバムラスト曲の「ROAD」は、皆さんへのメッセージの曲ですけど今回もバラードではなくロックチューンで。でも歌声は、すごく柔らかい感じがしましたね。
Pile そうですね。あんまり「かっこよく歌おう」とか考えずに、力まずナチュラルな感じで歌いました。本当に、歌詞とか曲に込められたものを感じて、難しい技術とかも特に使わずに、シンプルに歌っていきました。
――しかもその楽曲の色合いが、1曲目の「DASH」ともうまく繋がる印象がありました。
Pile 本当に、「DASH」と「ROAD」は並びで聴いてもすごくいい曲だと思いますし、アルバムのなかでプロローグとエピローグという役割をしてくれている曲なので、並びで聴いていても聴きやすい2曲になっていると思います。
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