REPORT
2017.04.25
「Tokyo 7th シスターズ」(以下、ナナシス)のライブイベント“Tokyo 7th シスターズ 3rd Anniversary Live 17’→XX -CHAIN THE BLOSSOM- in Makuhari Messe”が4月22日~23日、幕張イベントホールにて開催された。
出演者はWITCH NUMBER 4より春日部ハル役の篠田みなみ、角森ロナ役の加隈亜衣、野ノ原ヒメ役の中島 唯、芹沢モモカ役の井澤詩織、ユニット・NI+CORAより天堂寺ムスビ役の高田憂希、アレサンドラ・スース役の大西沙織、ユニット・SiSHより臼田スミレ役の清水彩香、神城スイ役の道井 悠、久遠寺シズカ役の今井麻夏、ユニット・サンボンリボンより晴海サワラ役の中村 桜、 晴海カジカ役の高井舞香、晴海シンジュ役の桑原由気(ここまでの12人を合わせて777☆SISTERS)、ユニット・Le☆S☆Caより上杉・ウエバス・キョーコ役の吉井彩実、荒木レナ役の藤田 茜、西園ホノカ役の植田ひかる、ユニット・The QUEEN of PURPLEより瀬戸ファーブ役の広瀬ゆうき、越前ムラサキ役の野村麻衣子、三森マツリ役の巽 悠衣子、堺屋ユメノ役の山本彩乃、レジェンドユニットセブンスシスターズより七咲ニコル役の水瀬いのり、羽生田ミト役の渕上 舞、御園尾マナ役の前田玲奈、寿 クルト役の黒瀬ゆうこ、若王子ルイ役の川崎芽衣子、遊佐メモル役の辻 あゆみ、ライバルユニット・4Uより九条ウメ役の山下まみ、鰐淵エモコ役の吉岡茉祐、佐伯ヒナ役の長縄まりあの総勢28名だ。今回は最終公演・23日夜の部を中心にレポートする。
今回のライブタイトルは“Tokyo 7th シスターズ 3rd Anniversary Live 17’→XX -CHAIN THE BLOSSOM-”。ライブの副題を振り返ると、ゲームの舞台になる2034年の「今」を中心に描く1st「15’→34′ ~H-A-J-I-M-A-L-I-V-E-!!~」 、2030年~2032年にセブンスシスターズがアイドルの歴史を塗り替えた「過去」を取り込んだ2nd「16’→30’→34′ -INTO THE 2ND GEAR-」が行われてきた。では今回は、4月19日にリリースしたアニメーションMV付シングル「t7s Longing for summer Again And Again ~ハルカゼ~」で描かれた「2040年」の未来の世界につながるのか?だが、今までの茂木(伸太郎)総監督の言葉を振り返れば、2040年という年号そのものにはおそらく意味はない。2034年に生きた777☆SISTERSの想いと歌声が残り、何かを伝え、背中を押せる時代であればいつでもかまわないし、誰でもかまわなかった。だからこそ「17’→XX」なのではないか。
セブンスシスターズなき時代に、彼女たちを追いかける777☆SISTERSが生まれ、新たなスタイルで伝説に立ち向かう4Uが生まれ。777☆SISTERSの「ハルカゼ~You were here~」が残した無数の種子のひとつが2040年・鳴海アカネと涼原カホルの物語として芽吹いた。そうやって、歌声と想いが紡がれ、受け継がれて、季節が巡っていく。そんな全ての時代を包括する「世界」そのものを描く覚悟が今回のライブタイトルだと思う。
だからライブは、「ナナシス」の物語にアイドルの最初の種子を蒔いたセブンスシスターズから始まった。真紅と黒を基調にした新衣装と、生のバンドサウンドを従えて歌うのは彼女たちがいちばんギラギラしていた時間を象徴する楽曲「SEVENTH HAVEN」だ。印象に残ったのは水瀬の髪の差し色で、普段のニコルの水色と濃いピンクではなく、衣裳のイメージに色調を揃えたエクステを一房ずつ身につけていた。表面的に色をなぞるのではなく、レジェンドのステージの鮮烈さ、イメージを再現している感じだ。水瀬は全盛期のニコルのカリスマ性を表現するような、伏し目がちなのに強い意志をたたえた新しい表情で。前田は髪色とおだやかな佇まいで。川崎は金の髪とスラリとした長身の王子そのもののビジュアルで。辻は誰よりも強いキャラクター性を宿した言葉で。それぞれのやり方でキャラクターを表現していく。黒瀬がこのスタイリッシュな楽曲のなかで野生児らしさをどう表現するのかと思ったが、花道を歩きながら上着を「窮屈だ!」とばかりに脱ぎ捨てるような仕草を見せたり、MCの中で足をハの字に開く高いジャンプを見せたりと、動きで見せるポイントを逃さないようにしていた。
生バンド演奏の利点として、「SEVENTH HAVEN」の長いイントロから本編、そして「FALLING DOWN」に至るまでの音はほぼシームレスにつながれてセブンスの世界を表現していた。水瀬が発散するカリスマ性はこのユニットの核となるものだが、「FALLING DOWN」で水瀬と鏡合わせのように背を向けあって、お互いの立ち位置を入れ替えながら歌う渕上の凛とした姿の説得力もまたそれと対になるものだった。やはりミトらしさは一心に歌う姿からこそ立ち上る。
会場奥、階段のある広いメインステージと、会場センターのスクエアステージを花道でつなぐ会場構成は、ごく一般的なものだ。そのなかで「ナナシス」オリジナルを感じたのは「花道」を移動経路ではなく、重要な表現手段として捉えていたことだ。合唱曲である「ハルカゼ~You were here~」などでの777☆SISTERSはぴったりと全員の歩調を揃えた歩みが印象的なのだが、セブンスは曲調に合わせた大きなストライドで歩く川崎を先頭に、それぞれのバラバラの歩調のなかにも個性が覗くのがそれぞれの世代の色を反映している。怖いぐらいにスタイリッシュだったセブンスが、「Sparkle☆Time!!」では同じ衣裳で多幸感に溢れた「別の時代のセブンス」を体現していたのにはプロの表現を感じた。2日目の夜の部では花道を電車ごっこのようなつなぎで進みながら、EXILE的なぐるぐるムーブを見せたり、MCで6人が「渕上舞だよ〜☆」ごっこを始めたりと、ちょっとくだけたお祭り感があふれていた。
セットリストの中で異質な存在感を放っていたのはライバルユニット・女子高生ガールズバンド4Uと、ナナスタがアイドルによるロックバンドとして提示したThe QUEEN of PURPLE(以下QoP)、ふたつのバンドユニットだ。アイドルなき時代の旗手である4Uが学生らしいポップさと全力感を、さらにそのカウンターとして登場したQoPが超本格的なロックを見せているのが面白い。QoPが本格的なプロ仕様のドラムを使っているのに対し、4Uは電子ドラムを使っているのもいかにもな対比だ。
4Uで印象に残ったのは、花道を、ステージをギターを持ったまま駆け抜ける山下の疾走の全力感と、会場のセンターにどっしりと構えて仲間と会場を鼓舞する長縄の頼もしさだ。昼の部は髪を振り乱して暴れまわり、ベースも弾くというより叩くようにしていた吉岡が、夜の部では表情と意志の強い瞳を髪で隠さず、しっかり見せながら躍動感だけを出すようにしていたり、ベースをリアルな手つきで指弾きしてみせたりと、色が違う多様な表現を見せていたのも面白い。
もっとも4Uオリジナルを感じたのは「Hello…my friend」で、“メンバー同士の”関係性を特化した楽曲だ。至近距離で見つめ合いながらセッションする山下と吉岡の姿はドキドキするほど刺激的。いちばん印象的だった表現は、1番の“目をそらさないで”で、向かい合ってお互いの姿を指しあった3人。それが2番の“目をそらさないで”では、同じ方向を向いた3人が一斉に客席を指した。これは観客が4人目のメンバーであり、3人がわかりあうことで初めてファンとも向き合えた「EPISODE.4U」を彷彿とさせるメッセージだった。関係性を濃厚に表現した4Uの3人が、リアルでもどんどん仲良くなっている様子がMCからは伝わってきた。前夜は深夜まで3人でどう4Uを見せるかの作戦会議をして、同じダブルベッドで川の字になって寝たとのことだった。昼の部での4U・1stライブ発表を受けた夜の部MCでは、山下が「四人目のメンバーである皆さん、関わってくれた全ての皆さんのおかげです!」と歓喜と共に感謝を捧げていた。
乱入という形でライブに登場した4Uに対し、さらなる乱入返しを見せたのがQoPだった。左右に割れたステージ階段の間からフルセットのドラムが飛び出してくるド派手な演出と、野村の「弾くよ、TRIGGER」の鮮烈な一言で、撃鉄を落とすように演奏がスタート。実際の音を出しているのはセットの奥にいるプロのミュージシャンだと思われるが、4Uが虚実の虚、本人たちの関係性やイメージを見せることに特化したステージだったとすれば、QoPは「本当にそこで弾いているように」見せるロックなステージ。ふたつのバンドが共にステージに立つからこそ見せられるふたつの方向性だ。
QoPはステージの中央で堂々と、歌声に全てを注ぐ野村が核なのは言うまでもないが、にっこにこの巽から漂うお姉さんとしてメンバーを引っ張るマツリらしさ、山本が時折覗かせるカワイイ女の子が大好きなユメノらしさが絶妙なアクセントとなる。身を寄せてのセッションプレイのあと束の間交錯する瞬間、広瀬と山本が笑みを交わす感じが、スタイリッシュさのなかにも体温を感じさせる。思わず視線を引きつけられたのが、瞳を挑戦的に輝かせる広瀬の圧倒的な存在。「ナナシス」のライブは細部まで演出の意図を込めてかなり精密に作りこんでいく、笑いで言えばダウンタウンよりドリフのスタイルだと思うのだが、広瀬の突出した「個」の光が、あるいは演出側の想像を超えてきたのではないかと感じたのが個人的には抜群に面白かった。昼の部のパフォーマンス中は楽曲に寄せてか狂気すらはらんだギラつきを感じた広瀬だが、夜の部はさわやかでさっぱりしたファーブらしさに寄せてきたように思う。
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