REPORT
2017.03.15
『アイドルマスター ミリオンライブ!』の4thライブイベント「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 4thLIVE TH@NK YOU for SMILE!!」が3月10日~12日、東京・日本武道館で開催された。今回は、武道館初日に向けて結成されたチーム「Sunshine Rhythm」組の12人を中心にレポートする。
前段として説明しておくと、今回の日本武道館3DAYSは、初日にチーム「Sunshine Rhythm」12名、2日目にチーム「BlueMoon Harmony」12名、3日目にチーム「Starlight Melody」12名、かぶりなしで計36名のキャストが出演するコンセプト。各チームは事前に、日本武道館に向けたCD「THE IDOLM@STER LIVE THE@TER FORWARD 01~03」をリリースしている。
今回レポートするのは、同CD(LTF01)で結成された星座ユニット「リブラ」よりMachico(伊吹翼役)、大関英里(佐竹美奈子役)、浜崎奈々(福田のり子役)、星座ユニット「キャンサー」より郁原ゆう(エミリー スチュアート役)、田村奈央(木下ひなた役)、渡部優衣(横山奈緒役)、星座ユニット「レオ」より角元明日香(島原エレナ役)、原嶋あかり(中谷育役)、中村温姫(ロコ役)、星座ユニット「カプリコーン」より木戸衣吹(矢吹可奈役)、夏川椎菜(望月杏奈役)、山口立花子(百瀬莉緒役)の計12名。4つの星座ユニットを束ねてチーム「Sunshine Rhythm」となる。チームカラーは明るく元気!なお、4thライブではサプライズで別日のキャストが登場する演出が多かったため、上記12名のキャストが初日以外の別日に出演した際の印象についても本稿で書いていく。
中村温姫(ロコ役)
今の時代、日本武道館よりも大きな会場はいくつもある。それでも『ミリオンライブ!』にとってこの会場が特別なのは、最初のテーマソング「Thank You!」の一節に「てづくりの“ぶどーかん”」のフレーズがあったからだ。今回のライブでも、日本武道館の入口にはキャストが手書き文字でメッセージを書き入れたアイドルカラーの花飾りが飾られ、手作り感を感じさせた。
それだけにキャストたちのMCでも随所から「日本武道館」そして「ぶどーかん」に対する想いが感じられた。『アイドルマスター ミリオンライブ!』は2013年に始動して以来、小さなライブハウスからだんだんと大きな会場をめざして地道な積み重ねをしてきた。そんななか、中村が初めて『ミリオンライブ!』のイベントに出演した会場は、たまたま日本武道館と同じ敷地内にある別会場だった。その日、カートをカラカラ引きながら会場に向けて歩く途中で日本武道館を見上げたという中村は、「近いけど、とってもとっても遠いなと思っていた武道館に、今立っています!また、会いたいな、また武道館来たいな!」と想いをあふれさせていた。
「IMPRESSION→LOCOMOTION」はロコという個性を象徴するような初期楽曲でありながら、ライブでは初披露だ。4thライブには「『ミリオンライブ!』史上の未歌唱曲を全て歌う」という裏テーマがあったこともあり、最初のCDシリーズ「THE IDOLM@STER LIVE THE@TER PERFORMANCE」からの楽曲披露が多かった。それはイコール、最初のソロ楽曲として各アイドルの個性をこめた名刺代わりの楽曲が多かったということ。それだけに4th終了後には「こんなに面白くて濃い、魅力的なアイドルがたくさんいたんだ」という“発見”の反応をたくさん見かけた。「IMPRESSION→LOCOMOTION」でロコナイズされた横文字が続く歌詞はロコそのものだが、ライブで聴くとさらに楽しい、ロコの世界を伝えたい!という中村の気持ちが痛いほど伝わってくる。ライブ中のことは黄色い光に支えられたことぐらいしか覚えてないという中村だが、そのパフォーマンスは観客の心のなかにはしっかり刻まれたと思う。
原嶋あかり(中谷育役)
そんな中村と「fruity love」を歌ったのが原嶋だ。今回のセットリストでは2人デュオ曲は各日最大2曲程度。それもサプライズとサプライズに挟まれたクライマックスブロックに組みこまれていることからも、この2人の爆発力に対する信頼のほどが伺える。前曲は「創造は始まりの風を連れて」「Emergence Vibe」という今日のセットリストの中ではちょっと異質なクールな2曲の並び。メインステージ中央の昇降式エリアがいつの間にか真ん中の一段だけ下がってぺこっと凹んだところに待機していた2人が、奇襲的に「fruity love」の頭サビを歌い始めると、圧倒的なパワーとキュートさで前曲の余韻を瞬く間に吹き飛ばしてしまった。
その瞬間最大風速の大きな源になっていたのが原嶋で、「アニマル☆ステイション!」で小さな身体で弾むようにステージを飛び回る姿は弾丸のようだ。会場のコールの気合が入りぐあいからも、この曲を待っていた感じがありありと伝わる。声が響き合い、一緒に遊びまわる様子はまさにアニマル☆ステイション!一万人のコールに対して「パオーン、メェメェ、ニャアニャア、ワンッ」とたったひとりで互角以上のパワーを返していくエネルギーは圧巻だった。
ユニット・レオ(角元、原嶋、中村)として歌った「ゲキテキ!ムテキ!恋したい!」は底抜けに明るい曲調と失恋を引きずる女子の心情を歌った歌詞のギャップが魅力の曲だが、そんなウェットな恋愛とは無縁な3人がコミカルキュートに歌うからこそ失恋を笑い飛ばすパワーにつながるのだと思う。「どうやったらセクシーになるんだろう?」と真面目に考えていた原嶋だったが、後のMCでMachicoから「あかり氏は色気の欠片も……」と言われると「私なりにセクシーを考えていた」と熱く抗議。その様子に夏川が口元を覆って震えるほど笑っていたのが非常に印象的だった。
角元明日香(島原エレナ役)
初期楽曲「ファンタジスタ・カーニバル」を初披露した角元。息もできないぐらいの期待感の中、武道館いっぱいに曲頭の「せーのっいぇーい!」の声がこだまする。吹き抜けていくような声の圧力。CD音源では感じられない、叫ぶように歌う高音のかすれにまでエレナらしいニュアンスが覗くことに、この曲が初めてライブで歌われていることを実感する。
ギターソロが印象的な間奏の中、「イッツァ、ファンタジスタ!」の叫びとともに右足を振り抜くフリーキックを模した振付は、なかなかうまくできずにサッカー好きなスタッフたちにコツを教えてもらったそうだ。そしてもうひとつの見せ場、落ちサビの想いを込めた歌い上げでの「大丈夫だよ」のフレーズで見せた包みこむような優しい笑顔は、明るくて陽気なだけではないエレナの一面を見せてくれた。
「ゲキテキ!ムテキ!恋したい!」に関するトークでは「練習でセクシーに愛されたいってずっと言ってた」と軽口を飛ばしていた角元だったが、初披露曲「Emergence Vibe」を歌い終えたあとには、トークの中で片膝をついたセクシーポーズを披露。流石ラテンの血を引くエレナ役と思うと共に、角元自身が様々な面でエレナらしさを表現するために試行錯誤してきたことが伝わってきた。
それがよくわかったのが締めのMC。日本武道館という会場の大きさ、客席の近さに感動した様子の角元は「私の中のエレナが楽しいよ楽しいよって言ってるのがわかりました!」。エレナらしい笑顔を見せるにはどうすればいいのか、ダンスや歌が自分がエレナを演じて良いのかと迷いがあったことを語る角元に、エレナPが飛ばしたよく通る「いいよ!」の一言の響きが忘れられない。角元自身もライブを楽しみながらも、特別な「ファンタジスタ・カーニバル」は100%のエレナでやりきりたい、という彼女の決意がよく伝わってくる挨拶だった。
山口立花子(百瀬莉緒役)
今回のライブでは、一部のソロ曲の頭とラストに前後の演者が少しだけ一緒に歌って踊る演出があった。夏川の「Happy Darling」に参加した山口は「元気になるね!」。お返しに続く山口の曲頭に夏川が参加したため、冒頭は山口と夏川の「WHY?」という二度と見られ無さそうな組み合わせが実現した。タイトルには「WHY?」と疑問形がついているが、山口の語りかける、問いかけるように歌う表現力もあいまって、まるで客席の大コールと会話をしているようなパフォーマンスだ。いちばん気持ちが入っていたのが「プロデューサーくんだけに伝えたいこと、あるんだから!」のフレーズで、そのあとの「君」に語りかける歌詞を受け取る側は自然にドキドキしてしまうというもの。ところが山口の側は客席の「ラブユー」のコールの大合唱に「莉緒姉にモテ期が来た!」とうれしそうだったので、つくづく気持ちのキャッチボールが出来上がったステージだった。
カプリコーンの「NO CURRY NO LIFE」はカレーをテーマにしたシュールさや演出と、歌声のつややかさのアンバランスさが楽しい楽曲。木戸と夏川はちょっと意外な一面を見せる感じだが、見た目と声の色っぽさに関しては莉緒姉の得意分野。山口があふれでるお姉さん感でステージを牽引した。驚いて笑ってしまったのが曲に関するトークで、一緒にトークした原嶋たちがカレーの曲なのになぜセクシー?とはてな顔をしていると、山口が「ノー彼ノーライフ(ざっくり訳すと彼がいないと生きていけない)だからでしょ?」とさらりとひと言。恥ずかしながら筆者も気づいていなかったが、木戸と夏川もびっくりしていたので、意外と気づいていない人が多かったのではないか。カレーの歌と思っていた(キャラクター的には)子供組と、裏のニュアンスも意識して歌っていた莉緒姉という構図がいかにもな感じで笑ってしまった。
山口の個性がよく出たのが「Emergence Vibe」の初披露だ。この曲は「THE IDOLM@STER LIVE THE@TER DREAMERS 06」に収録された島原エレナと星井美希のデュエット曲で、山口は美希のパートを担当。原曲では抑えたトーンで歌うと姉妹のように似ている美希とエレナの歌声が追いかけあう感じが魅力なのだが、抑えた中にも莉緒感がにじみでる山口とのデュオだと、角元の表現にも違った良さを感じる。美希とは違う形の大人の表現ができるのはやはり莉緒ならではだろう。山口は角元とユニットARRIVEからの仲間だからこそ息があったと語っていたが、ARRIVEの「STANDING ALIVE」がセットリストに入っていない今回のツアーでARRIVEを想う言葉を聞くことができたのは大切なMCだったように思う。
SHARE