リスアニ!WEB – アニメ・アニメ音楽のポータルサイト

REPORT

2017.03.15

『アイドルマスター ミリオンライブ!』4thライブ日本武道館公演3DAYS全アイドル個別レポート「Sunshine Rhythm」編

1703151705-010

木戸衣吹(矢吹可奈役)
初日でソロの切り込み隊長を務めたのが木戸の「おまじない」だった。笑顔を弾けさせながらの「みんな、いっくよー!」のひと言で会場のスイッチを入れてしまう木戸と可奈のポテンシャルの高さを感じる。歌いこんできた「おまじない」は盤石の仕上がりで、ラップパートのエアDJプレイも絶好調。客席のここを見てこういう表情で、をちゃんと作りこむタイプの木戸だけに、全周&どこを見上げても観客が見える武道館はやりやすい会場なのではないだろうか。安定したパフォーマンスから、間奏で客席を煽るときに一気にトップテンションまで上げる瞬発力も彼女の魅力だろう。

だが今回のライブで印象に残ったのは、そんな今までのイメージの延長線上で磨き上げてきたふたつの顔とはちょっと別の一面だ。カプリコーンの「NO CURRY NO LIFE」は曼荼羅やタージマハールのようなインド感あふれる映像を背景に、カレーとセクシーが混沌としたカオスなステージを展開する。だが楽曲自体はどこかムーディーな歌謡曲っぽさもあるため、「成熟途上のアイドルが真剣にムーディーな楽曲を歌う」という枠にはまったときの木戸と夏川の、ちょっと懐かしい時代の意味での王道アイドル感の濃厚さに驚いてしまった。特に木戸は初日の後ろ髪のちょっとウェーブ気味な仕上げにも「あの頃のアイドル感」があったので、大人でオリエンタルなパフォーマンスもあいまって、こんな木戸衣吹もいるのか、と瞠目してしまった。

1703151705-011

そんな木戸のまた違う表現が見られたのが2日目で、木戸は「THEATER ACTIVITY 03 魅裏怨」収録の劇中劇主題歌「赤い世界が消える頃」センターとして登場。2日目を象徴する蒼い月は紅く染まり、大きく不吉な紅月を背にした木戸はホラー劇中劇のヒロインだけあって、「感情を殺した真顔」の表現がとっても怖い!そしてただ感情がないだけでなく、振付でおばけポーズをとるときの、ともすればコミカルになりかねないパートでだけすーっと視線を正面からそらしうつむき、今世の人間たちと視線を合わせない繊細な芝居がすごい。サプライズ担当の木戸は2日目本編ではここだけ歌うワンポイントなこともあって、初日の彼女とのあまりの印象に違いに変に不安になったほどだ。しかしMCで登場した木戸は、同じくこの曲独特の芝居をしていた大関とくっつくようにじゃれあいながらにこにこしていたので、ひと安心したのだった(勝手に)。

1703151705-012

夏川椎菜(望月杏奈役)
今回の夏川はなんだかすごく良かった。リーダーとして頑張っていた仙台よりもさらに良かったような気がする。やみくもに良かったとは抽象的すぎる……とは自分でも思うのだが、元々夏川はスキルが高く、1st~2ndあたりからはパフォーマンスも安定していてブレが少ない。その彼女のステージを見て何か違うと感じる、自然に視線を向ける回数が増えた、というのはやはり細かい何かが変わったのではないかと思うので、記録しておきたい。逆にここがさらに良くなったと明示できる杏奈P諸氏にはご教示いただきたい次第だ。

さて、夏川は初日ソロの二番手。「一部ソロ曲の頭とラストに前後の演者が登場して参加する演出」については前述したが、それを最初にやったのが、木戸の「おまじない」の後半にダンサーたちと共に登場した夏川だった。木戸が「ナンスとハピダリを歌えて嬉しかった!」と感想を言えば、夏川も「初めて(ハピダリの)追っかけのパートをオンマイクで歌った人ですよ」と返してさりげなく貴重なデュエットだったことを明かした。

1703151705-013

そんな「Happy Darling」だが、今回はテンションのメリハリが良かったように思う。もちろんステージモードの杏奈はいつもテンション高くキラキラしているのだが、たとえば「二人になって冒険したい“ぞっ”」「二人じゃなきゃ恋は掴めな“いっ”」の一音跳ね上げてコールを呼びこむときの力強さ。そして大好き、ありがとう、応援ください、といった夏川本人のの気持ちともリンクでするであろう叫びへの感情の入り方がとてもいい。そして、かつてこの曲のいちばんの見せ場は「応援ください(応援するよ!)」の最強コールアンドレスポンスだったと思うのだが、この日はラストに夏川が「一緒にいれたらさいこーー!!」と自身の叫びでキメる一節がいちばんキラキラが強いポイントだったのではないかと思う。

「カプリコーン」の「NO CURRY NO LIFE」の夏川は王道アイドルの佇まいのうえに、3人の中ではキュート成分担当で、ちょっと“普段の”杏奈に近いかと思うほど。そして基本表現を曲調に合わせながらも、「ダメ?」でちょっとふくれてみたり、にこっと笑ったりする瞬間の殺傷力が高い。三者三様に魅力的なこのユニットで、彼女がセンターなのだとたしかに感じる素晴らしいパフォーマンスだった。

1703151705-017

渡部優衣(横山奈緒役)
オープニングMCで「めっちゃ盛り上がっていっくでー!」と叫んだ渡部優衣は、トレードマークの奈緒ジャンプ!全員曲でもここぞというところで一人だけ跳んだりする渡部だが、長身や身体能力に任せずきっちり後ろに膝下を畳むアイドルジャンプなのが素晴らしい。

そんな渡部のフィジカルのすごさと常に全力なパフォーマンスを感じたのがキャンサーの「ランニング・ハイッ」だった。個人的に渡部の調子やテンションのひとつの指標にしているのが彼女が後ろにくくったしっぽ髪の跳ね具合で、一周して顔を叩き始めたらマックスに近いと思っていた。ところが今回新たなリミットプレイクの指標が現れた。ステージ中に渡部本人がびっくりしたような気はしたのだが、後に本人から「かかとが肘にあたりました」と自己申告があった。つまり、ダンス中にバックキックした足で自分の肘を蹴飛ばしたということだ。おっとりした田村にはいまいちイメージができないようで「つまりどういうことが起きたの?」と説明を求めていたほどだった。郁原、田村がハイペースハイテンション曲に挑むというイレギュラーな存在感が両脇にいる状態で、素の渡部と奈緒に近い(いつも通りの)全力パフォーマンスでセンターたりえるのはやはりスペシャルだ。

1703151705-016

「HOME, SWEET FRIENDSHIP」では、浜崎、田村、Machicoと共に歌唱。原曲ユニットリコッタからは渡部(優衣)と浜崎が参加だ。そこに田村とMachicoという強い声の個性が加わることで、新鮮な響きの「HOME, SWEET FRIENDSHIP」になった。しかし歴代ユニットの存在感が強い今回の4thライブ的な視点で見るならば、渡部が間奏で「みんな写真撮るで~!」とチャキチャキと仕切って撮影を担当する芝居をしていたのは、今日いないメンバーの役割を渡部が担って「ホーム」を守っているようにも見えた。

そして、初日の渡部でもうひとつ注目したいのはラストの締めのMC。思い入れのこもったしっかりしたコメントや涙の時間はとても尊いし感動的だが、ライブビューイングありのイベントをきっちり成立させるためには誰かが涙の流れをぐっと踏みとどまったり、スパッとコメントをまとめたり必要がある。ちょっとコメントがウェットで重めになってきたかなという時間帯に、裏で支えるスタッフに気を配ったコメントをしたうえで、「私今、武道館にいまーす! おおきに、感謝感謝感謝、ベリベリー感謝でーす!」と明るく笑い飛ばしてカラッとした空気に変えられるのが、3rdライブ大阪公演リーダー、渡部優衣なのだった。

1703151705-018

浜崎奈々(福田のり子役)
初日の公演で新しく魅力やカラーを発見したのは誰かと聞かれたら、いちばんは浜崎かもしれない。まずそれを思ったのは、最初の全体曲2曲。『ミリオンライブ!』では、渡部優衣と藤井ゆきよが両サイドに立つことが結構ある。というのも、2人があまりに長身でスタイルが良いため、両サイドに配置するのがいちばん並びとして引き締まるのだ。今回も渡部はステージの辺に長方形に広がるフォーメーションではステージのかどっこのあたりにいたのだが、その隣で浜崎が踊ってしっくりくる感じに驚いた。浜崎自身も比較的長身ということもあるが、渡部の場合はスラリとした彼女が誰よりも激しく大きく動く。身長や存在感、パフォーマンス、いろんな要素が揃っているからこそ隣に並び立てるわけだ。

さて、別の話として、初日メンバーを見回して、ボーカルバランスを考える時にある程度その人ありきで考えるべきなのが、Machicoだと思う。なにせいちばん高いボーカル域の持ち主のひとりで、めちゃくちゃ声がかわいくて、歌がとてつもなく巧い。同じぐらい強い個性を合わせるか、あるいはアクセントとして最大限に活かすか。そんなスペシャルな個性と組ませるのに、魅力的なキャラクターボイスのまま歌えて、歌声に芯のある大関はぴったりな存在だ。

そしてMachico、大関、浜崎による「Bonnes! Bonnes!! Vacances!!!」、『ミリオンライブ!』でも屈指の明るく楽しくハッピーなトリオナンバーが始まると、浜崎の歌い方がCD収録時とはかなり違う気がする。CDではすんなり発声していた所をかなり強めの抑揚をつけて歌っていて、その癖のつけ方がきっちり大関の歌の弾ませ方を追いかけている。これぐらい強い歌い方をしていれば、ライブモードで全開のMachicoともぴったりと合う。バカンス感のある揃いの髪飾りをつけた3人の歌声がぴったりと噛み合い、日本武道館いっぱいの観衆が一緒に盛り上がったなら最高は約束されたものだ。

1703151705-019

渡部優衣と並んで踊る姿がしっくり来て、Machicoと歌いあってピッタリハマる。『ミリオンライブ!』にはそういう努力する才能がまだいたことを改めて実感したのだった。

浜崎……というかのり子が武道の聖地・日本武道館のステージに立つと聞いたとき、最初に思ったのは「求ム VS マイ・フューチャー」見たいな!ということだった。それぐらい、昨年3rdライブツアーの幕張センターリング(ステージ)で勝ち名乗りを受ける彼女の姿は印象的だった。三沢が鶴田がハンセンが激闘を繰り広げてきた武道館でその姿が見たいプロレスアイドルファンは多いのではないだろうか。

だがしかし、浜崎の「マイペース☆マイウェイ」はライブ未披露曲。集大成のライブのソロでこの曲を歌うのは必然だった。「よっしゃーいくぞー!」の力強い叫びと共に今まででいちばん広いソロステージに躍り出た浜崎は、強くまっすぐ懸命に自分の道を行きながらも「プロデューサー、最高のツーリングだねぃ♪」「これからも一緒に駆け抜けよーね!」と一緒に進むプロデューサーに声をかける。落ちサビはていねいに想いを込めて、叫ぶようなフレーズにはあふれる情熱を込めて。

初披露本番を駆け抜けた浜崎はラストのMCで涙をこぼしながら、初めてのこの曲に、一緒に歌ってくれるプロデューサーへの感謝をたくさん込めたことを語ると、「皆さんとここにいられたことが何よりの宝物になりましたと締めくくった。日本武道館という場にふさわしいベストバウトだった。

SHARE

RANKING
ランキング

もっと見る

PAGE TOP