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INTERVIEW

2017.02.15

ポーター・ロビンソン『シェルター:コンプリート・エディション』リリース記念インタビュー

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エレクトロニック・ポップス界の次世代を担うと注目されているポーター・ロビンソンが、マデオンとともに作り上げた「Shelter」。この「Shelter」はMusic VideoをA-1 Picturesが製作。昨年10月に渋谷のMODIで世界最速で公開されたことでも話題になった。そして2月15日に日本限定企画 完全生産限定盤として『シェルター:コンプリート・エディション』がリリースされた。アニメ好きでも知られる彼に、この曲やMVの制作について、そして外国人である彼から見た日本のアニメについて色々と話を聞いた。

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――あなたはEDMをはじめとするエレクトロニック・ダンス・ミュージックのシーンでは非常に有名なアーティストですよね。今回はアニメ音楽の雑誌『リスアニ!』のWEBインタビューということで、まずは読者に簡単にあなたの自己紹介をお願いできますか?

ポーター・ロビンソン はい。「リスアニ!WEB」をご覧の皆さん、はじめまして。ポーター・ロビンソンです。僕は24歳のアメリカ人で、エレクトロニック音楽を作っているんだけど、それだけではなくて、自分の感情や表現したいことをライブ・映像・アートなどを通して皆さんと共有することをめざしています。また音楽だけではなく、マルチメディアな作品をつねに作りたいと思っています。そして日本がとても好きで、プライベートでもよく遊びに来ています。もちろんアニメとゲームも愛している。だから自分もできるだけ海外にアニメとゲームの良さを伝えていきたいと思っているんだ。

――以前にCrunchyrollで日本のアニメをリアルタイムでチェックしている話も聞いたことがあるのですが、一体いつ頃から日本やアニメなどに興味を持ち始めたんでしょう?

ポーター 最初に衝撃を受けたのは12歳で、「DDR(DanceDanceRevolution)」をやり始めた頃だった。

――ゲームがスタートだったんですね。

ポーター そうなんだ。小さい頃から任天堂のゲームとか、ポケモンとかはやっていたけど、DDRに特にハマったね。リズムゲームオタクになったよ。ネットでDDRのリサーチをして、ビートマニアDJやミュージシャンを聴いていたから、自然に日本文化とアニメに興味を持つようになったんだ。アニメについては、この前ツイッターで、「最初何のアニメを観ていたか?」と質問をされて、『Serial experiments lain』と『あずまんが大王』という2作品を挙げたんだけど、これって天と地ほど違う2作品だよね(笑)。

――そうですね(笑)

ポーター アニメは、2Dでしか表現できないイメージの美しさや、かわいくて表情豊かなキャラクターの顔やデザイン、そして日本特有のストーリーや音楽のメロディが融合していて、とてもエモーショナルだ。だからアニメは僕にとって本当に特別な存在なんだよ。

――今、『serial experiments lain』と『あずまんが大王』のタイトルが上がりましたが、他に好きなアニメ作品はありますか?

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ポーター あー……山ほどあるよ!今パソコンがないけど、実は忘れないようにリストアップしている。『おおかみこどもの雨と雪』、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』、『僕だけがいない街』、『花咲くいろは』、『あの夏で待ってる』、『月刊少女野崎くん』、『とらドラ!』。

――おお……。

ポーター ……うーんと、あともちろん『SHIROBAKO』、『サマーウォーズ』、『凪のあすから』とかかな?できるだけリアルタイムでアニメを追っかけているんだけど、昨年はすごく忙しくて、唯一ちゃんと観れたのは『Re:ゼロから始める異世界生活』で、とてもハマった。あと、まだ『君の名は。』を観れていなくて本当に悲しい!すごく見たいんだ。

――では、アニメも含めて日本のクリエイターで好きな方はいますか?

ポーター ネットとかで好きな作品やアートがたくさんあるけど、誰が作ったか分からないままだね。pixivのアカウントを持っていて――。

――日本語表記ですからね。ていうか普通にpixivアカウント持ってるんですね(笑)。

ポーター うん。そこでいろんなユーザーをフォローしているんだけど、実名はわからないんだ。作曲家だと、高木正勝さんの曲が大好き!そして梶浦由記さんのスタイルも好きで、本当に皆さんをリスペクトしている。最近は本当にインストBGMにハマっていて、アニメのインスト曲専用フォルダーもあるんだけど、作曲家はわからないものが多いんだよね。

――劇伴もしっかりチェックされているんですね。では主題歌や劇伴にトライしたい気持ちはあるんですか?

ポーター 自分のオリジナル曲の中にアニメの劇伴っぽい要素も入れたいけど、劇伴を作りたいまではないかも。だって、日本のクリエイターたちが作る劇伴は最高だし、僕がそこに入る必要もないと思っている。でもそういうスタイルがとても好きで、影響されているし、その要素は自分の音楽にも入れていきたいね。

――では主題歌は?

ポーター ぜひ挑戦したいね!自分の曲がアニメのオープニングかエンディング・テーマになるのは夢のひとつなんだ。正直そこまでいいアニメ作品じゃなくてもうれしいよ(笑)。

――こらこら(笑)。でも、確かにあなたのアニメの好みは必ずしも売れ線のものだけではないですからね。

ポーター アニメのOP曲でよくある構造で、例えば柔らかいサビから入って、ドラマチックなインストがあって、一節があってまた強いサビに戻るという流れがとても好きなんだ。自分だったら使いたいってコード進行とサウンドも考えたことがある。さっき言った構造やメロディを基にして、エレクトロニック・サウンドの要素を増して、もっと自分らしくしたいと思うな。よくあるアニメ曲の進行、歌詞、構造に自分のアメリカン・サウンドを加えたものとかね。

――ちなみに日本人の歌手でコラボしたい方っているんですか?

ポーター うーん……絶対女性ボーカルがいいね。ちょっと悲しい雰囲気で、ソフトだけど感情的な声がいちばん好きなんだ。その中にちょっと萌え要素があってもいいけど、かわいすぎないように、「Shelter」のトーンと似たような感じがいい。でも実際の名前は言いたくない。それで実現しにくくなったら困るからね!

――実現を祈ってます。さて、アニメの話を聞いたので今度はあなたの音楽性に関してです。先程「DDR」や「BEATMANIA」の話が出ましたが、海外での「音ゲー」の人気は非常に高くて、そこからダンス・ミュージックにハマった若いアーティストも多いんですよね?

ポーター そうだね。

――実際、あなたのキャリアも「音ゲー」からダンス・ミュージックに入ったことで非常にユニークなものになっている気がします。

ポーター うん、おかげでダンス・ミュージックと一般的なメロディの融合ができたと思うんだ。実際、自分はダンスと一般的な音楽の中間、いわゆるEDMのような、メロディを大切にしながらビートがしっかりした踊れる音楽を作るようになっていったんだ。

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――あなたの初期のクラブ・ヒット曲である「Language」やMat Zoとの「Easy」はドラマチックなメロディを遺憾なく発揮した楽曲でしたね。しかも、「Language」にはキャラクターが登場し、「Easy」のMVはアニメーションでした。

ポーター そうだね。実際、クラブDJやミュージシャンからもすごくいい影響を受けたと思う。

――そして、もうひとつ。ポーターは原宿カルチャーも好きなんですよね?

ポーター うん。原宿ブランドの「galaxxxy」とコラボしたし、「PARK」というブランドも大好きだ。ファッションとアキバのオタク文化の融合が好きなんだよね。自分にとって、ファッションはいかに思い描くクールで魅力的でスタイリッシュな自分になれることが大事。アメリカでの「オタク」のイメージは少しネガティブなんだけど、ファッションにすればイメージを良くすることができると思う。「オタク」は全然悪いと感じていなくて、逆に好きな物に興奮できるところがとてもいい。僕は自分を音楽オタクだと思っていて、そのおかげでアートが作れるし、今があるからね。

――実際、ポーターはオタクの人が抱いてしまいそうなコンプレックスみたいなものとは無縁な感じがありますよね。

ポーター さっきも言ったように、みんなが自分の好きな物を良く思えばいいと思うんだよね。社会に貢献して、健康で社交的にいれれば、自分の趣味に没頭するのは全然問題がないんじゃない?でも僕だってコンプレックスはあるよ!

――本当ですか?

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ポーター もちろん!みんなあるでしょ?でも、声に出して言うことじゃないし、あまり言いたくないよね。恐怖や不安はたくさんある。今回「Shelter」のアニメを作っている途中も怖かったけど、なるべくポジティブにいるようにした。日本に来るたび、ここで感じるポジティブさに感心する。日本のみんなは「和」を大事にするから、誰かとの考え方が違っていても、お互いの落とし所を探すよね?もちろん、本音を言わないと誤解を招く可能性はあるけど、全体的にすごいと思っている。アメリカ人はもうちょっと日本人の協調性を見習うべきかもね。

――そう言われると嬉しいですね。さて、あなたのキャリアもおさらいしたところで、いよいよ本題です。そんなポーターが、フランスのダンス・ミュージックの若手プロデューサーのマデオン(22歳)と作り上げ、2月5日(水)に日本限定企画 完全生産限定盤として『シェルター:コンプリート・エディション』が発売されましたが、その「Shelter」のMusic Video「Shelter The Animation」が昨年10月に渋谷のMODIで世界最速公開されましたね。あなたもその場に立ち会っていましたが、感想はいかがでしたか?

ポーター 最初はすごく緊張したんだけど、周りにDJ WILDPARTYやD-YAMAなど、たくさんの友達がその場に一緒にいてくれて本当にうれしかった。でも映像が流れ始めたときにまた緊張して。この作品が本当に完成して世に出たことが信じられなかった。まだみんなに見せる心の準備ができていなかったけど、終わってみんなの拍手と歓声を聞いたらすごくほっとして、とてもとてもうれしかった。

――改めてポーターの曲には非常に強い物語性があって、それがアニメーションというメディアと合わさることで相乗効果を生み出したプロジェクトだと感じたのですが、ご本人的には今回のコラボレーションをどのように感じていますか?

ポーター そうだね、今回はアニメのテーマと歌詞の内容を合わせたかったんだ。「Shelter」の歌詞が、「次の世代に命を引き継ぐことで自分の存在意義を見つける」というテーマで、僕とマデオンも親から感じた愛を歌詞に入れたかったんだ。だから、アニメの中でもお父さんの茂が娘の凛に永遠の命の贈り物を渡すことで、凛と同じく茂も永遠に生き続けることができる。そういう風に歌詞と映像の相乗効果を出したかった。

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