ボーダー柄の服のコンビが、サイコロ片手に“ノー・ボーダー”の精神でナイスな音楽を聴き歩く――。
「ボーダーズの“音の場”season2」第10回は山の手の学生街、目白からお届します。北川さん・藤村さん両者とも口を揃えてなじみがないと評する土地ですが、歩を進めるうちにふたりの以外な趣味が明らかになり……?選曲も気になるところですが、今回はボーダーズのディープなトークも必見です。
――ボーダーズ連載、第10回目は目白に来ております。まずは撮影を終えて、今ここがどこなのかというところから始めた方がいいでしょうか。
北川勝利 歩いて歩いて、最後にたどり着きましたけども。
――「ホテル椿山荘東京」、都内有数のセレモニー会場で……。
藤村鼓乃美 優雅なティータイムを過ごしております(笑)。
北川 ほんとに全然なじみがなくて、今日たぶん初めて目白駅で降りたんじゃないかな?
藤村 私も来たことないなと思ってたんですけど、実は前回の撮影の直後、ちょうど2016年の終わりぐらいにボルダリングを始めて、目白の有名なお店でシューズを買ったんです。
――まずはそんな藤村さん推薦のクライミング用品店「カラファテ」さんを見に行きました。
北川 あそこって専門店なの?
藤村 そうです。先に始めてた友達に、品揃えも多いしいいよって教えてもらって。
北川 ボルダリング用の靴って、指のところが分かれてたりするの?
藤村 分かれてないんですよ。つま先が下側に曲がってて、壁に引っ掛かりやすくなってるんです。
――不思議な形でしたね。バレエシューズみたいというか。
藤村 そっちの方が壁の石につま先が立ちやすいんです。
―― しかも硬かったですね。指で押しても凹まないぐらい。
藤村 だから最初履いたときは痛くて痛くて(笑)。
北川 そんなにきつく履くんだ。
藤村 でも、最初に試し履きしたときはものすごく痛かったんですけど、使ってるうちにもっときつくても良かったかもって思ってくるんです。
――それは足が馴染むんですか?
藤村 そうですそうです。
北川 靴が伸びるの?足が縮むの?
藤村 たぶん慣れなんだと思います。タイトな方が登りやすく感じるというか。
――ボルダリングっていう言葉が一般的じゃなかった頃は、地下足袋で登る人もいたらしいですからね。
北川 靴と何が必要なの?手袋とか?
藤村 手袋は着けないですね。手に汗をかいてきたらチョークの粉を付けてすべり止めにします。
北川 じゃあ基本的には靴だけあればいいんだ。服装は?
藤村 動きやすければ何でも大丈夫です。インストラクターとかの上手な人は靴もクロックスのサンダルでスイスイ登ったりしてますよ。
北川 上手くなると道具とか関係ないんだ。
――極まってくると壁を見た瞬間に登るルートが見えてるって聞きますよね。
藤村 ルートを決めてかからないと登ってる途中に迷って、握力が尽きちゃうんですよ。
北川 じゃあじっくりじゃなくて結構スルスル登るのか。
藤村 その方がいいと思います。北川さんもやってみます?
北川 手が震えてギターが弾けなくなる気がするんだよね(笑)。
藤村 音楽やってる友達と行ったら「今日もうギター弾けない」って言ってました(笑)。
北川 やっぱり握力がいちばん大事なの?
藤村 握力と肩(背筋)ですね。私も登った翌日はリュックが背負えないぐらい肩が痛くなります。
北川 あの壁についてるイボは適当に登っちゃいけないの?
藤村 級によって登れる順番が決まってるんですよ。高い級になるほど使える足場が難しくなっていく感じです。
北川 何メートル登ったらクリアとかも設定されてるの?
藤村 お店とかジムによって変わりますけど、高さより角度が重視されますね。
北川 あ、垂直じゃないんだ。
藤村 どんどん自分の方に倒れてくるんですよ。
――『ミッション・インポッシブル2』の冒頭でトム・クルーズがすごい角度の崖を上ってましたね。
北川 そうなんだ……全く惹かれない……(笑)。
――藤村さん、プレゼン失敗ですよ(笑)。
藤村 ……序盤から辛い(笑)。こんなにプレゼンしたのに!
北川 初心者は30°ぐらいのゆるやかな壁からにしてくれない?
藤村 それ這いつくばってるだけじゃないですか(笑)。
北川 だって絶対大変そうなんだもん(笑)。
藤村 絶対無理だろってぐらい小さいとっかかりを掴むコースもあるんですよ。
北川 それポロって取れちゃわない?
藤村 そんな危険なトラップはないです!勝手にルールを追加しないでください(笑)。でも最初に入会するときの契約書に「怪我とかをしても自己責任です」っていう項目はありますね。
北川 ますますやりたくなくなってきた……(笑)。
――北川さんは「カラファテ」さんの上階のアウトドアショップに気を取られてましたからね。
北川 だって割引セールやってるって書いてあったから……。藤村は何か買ったの?
藤村 握力を鍛えるボールが欲しかったんですけど見当たらなくて。ボールから出てる5個の輪っかに指をはめて握ったり開いたりするやつなんですけど、『のぼる小寺さん』っていうボルダリングの漫画に出てくるんですよ。
――似たようなやつなら楽器店で見たことありますね。
北川 そういう道具って中学生男子が一回は欲しくなるやつだよね(笑)。
藤村 私も握力鍛えたいんですよ。
北川 指立て伏せすればいいんだよ。最終的に逆立ちして片手の一本指でやるやつ。
藤村 それ最終的に指を失うことになりません?(笑)。
北川 でもやり切ればめっちゃ強くなれるよ……何の話してたんだっけ?(笑)。
――カラファテさんに行ったって話です。
藤村 次は「切手の博物館」に行きましたね。北川さんが展示されてた外国のカブトムシの切手を欲しがってました(笑)。
北川 全部外国の切手だったんだよね。買っても使えないよね。
藤村 日本では使えないんですかね?
北川 金額がちゃんと合ってないと使えないんじゃない?ちょうど僕が小学生の頃が切手ブームで集めてたんですよ。
――おお、そうなんですか。
北川 当時はまだ電子メールなんてなかったから、みんな手紙でやりとりしてて。そこに貼られてたやつを水に漬けてきれいに剥がして、ガラスに張り付けて乾かして……。ちゃんと糊が落ちてないとビリって破れたりして(笑)。結構自分でも買ってたなぁ。
藤村 切手の思い出めっちゃ持ってるじゃないですか(笑)。
北川 年代的に切手ブームのど真ん中だったんだよね。何かにつけて記念切手とかも発売されてたし。あと毎年出る切手の本があって、いつ発売のこの切手は未使用の場合はこの値段ですっていう情報が載ってて、「自分の持ってるこの切手は今500円なのか」とか調べたりしてた。切手とコインのショップがデパートとかにあって、お金が貯まったらあの切手を買いたいとか目標を定めたりもしてた(笑)。東京オリンピックの記念切手だったかな……1シートに3枚ついてるやつが6種類ぐらいあって、それはお金を貯めて買ったから実家のどっかにあると思う。
藤村 こんなに何かを熱く語る北川さん初めて見た……。
――間違いなく過去最大の熱量ですね。
北川 いろいろ思い出してきた……。「見返り美人」の切手とか今いくらで買えるんだろう。切手帳とか知ってる?
藤村 まったくわからないです。
北川 ページが黒い台紙とセロファンのセットになってて切手をファイルするんだよ。あと切手用のピンセットとかも買ったなぁ。
藤村 ガチ勢じゃないですか(笑)。
北川 同年代はだいたいみんなそうだったんだよ。いちばん大事な切手なんかは、さらに一枚ずつ入れて保存できるシートとかもあって。
――全然知らない文化ですね。
北川 昔の漫画雑誌の後ろにある通販の広告ってあるじゃない。あれの中に海外の切手のまとめ売りとか、記念切手のセット売りとかが載ってたんだよ。ダイアナ妃の婚約記念切手とか申し込んで買ってた。
藤村 もうさっき並んでた切手も買えばよかったじゃないですか(笑)。
北川 あんまり絵柄に惹かれなかったから……(笑)。でも今も書類を送るときとかに、普通に窓口に持って行けば普通の切手を貼って送ってもらえるんだけど、わざわざ売ってる記念切手を買って貼ってるんだよね。もうコレクションはしてないけど、ちょっと大きくて変わった絵柄の切手を買いたくなるのは、当時の習慣が残ってるからかもしれない。
藤村 でもたしかに、そういう封書が来たときに貼ってある切手が可愛いとうれしい気持ちにはなります。剥がして集めるとこまではいかないと思いますけど……。
北川 今も1円切手とか2円切手ってあるのかな?
――端数の切手は私も時々使いますね。
北川 2円切手の絵柄はアヒルだったけど、今はどうなんだろう。500円切手が緑色の怖い顔した仏様だったのは覚えてる。
――もう500円切手って普通に暮らしてるとそうそう使わないですよね。
北川 コレクションを始めた最初の頃は安いやつしか買えないから、とりあえず郵便局に行って「1円から50円まで、ある切手全種類ください」みたいな買い方してたな(笑)。
藤村 北川さんがこんなに切手好きだとは……。
――たぶんこの企画始まって以来、トークの最長記録ですよ(笑)。そんな切手の博物館の後は恒例の神社仏閣めぐり、「金乗院」というお寺に行きました。ここには目白不動尊がありまして、東京の五不動のひとつなんだそうです。
藤村 それは目黒不動も仲間なんですか?
――そうです。目白、目黒、目赤、目青、目黄の五色あるんですが、目黄が2つあるらしいんです。文献に出てくるのは江戸の初期ごろからなんですが、目黒とか目白っていう地名はもっと前からあって、それが不動尊にちなんでついたのか、目黒にある不動だから目黒不動になったのかは諸説あるらしいです。
藤村 それって、全部回ったら何かもらえるんですか?
――そういう特典はありませんが、そうやってグループ化された各所を巡るのが昔のレジャーみたいなものだったんだと思います。七福神巡りなんかと同じですね。
北川 目白不動は建物が結構新しかったね。むしろお寺の向かいの洋品店の方が歴史ありそうな見た目だった。
藤村 北川さんあそこでも「グンゼの肌着20%割引」にめっちゃ食いついてましたね(笑)。
――ちょっと調べたんですが、目赤が本駒込、目青は太子堂、目黄は三ノ輪と平井にあるそうです。正直なところ目黒不動以外は廃れてしまった感じですね。
北川 目黒ひとり勝ちだ。
藤村 黒星だ。
北川 負けてるじゃん(笑)。
――そしてお寺の後は、東京カテドラル教会に行きました。
北川 あそこはどういう教会なの?
――カトリックの教会なんですが、70年代から80年代の建築物でコンクリートの打ちっぱなしになってるんです。
藤村 不思議な形でしたね。
――最近でこそ古い教会が建て替わったりして、いろいろな形をした建物が見られますが、当時の教会であの形状はかなり前衛的だったそうです。
北川 たしかに教会だって説明されるまでは何の建物か分からなかったね。
――そして現在、ホテル椿山荘にいるわけですが。
北川 素敵な場所ですよ。
藤村 アフタヌーンティーしてる方々もいらして。
北川 アフタヌーンティーってしたことある?
藤村 ありますよ。
北川 あ、そうなの。へぇー。
藤村 でもこんなに……ちょっと聞いてくださいよ!自分から振っておいて(笑)。
――完全に振り逃げですね。走者を送らないバントでした(笑)。
北川 (笑)。そのときはどんなお店だったの?
藤村 私は街中にあるちょっとしたカフェだったので、ここほどゴージャスじゃなかったです。
――それでも、いわゆる3段の食器に食べ物が乗ってくる形式で?
藤村 そうですそうです。あれを下から順番に食べるんですけど、そんなにお腹が空いてなかったので全然食べられなくて。いちばん上に乗ってたカヌレなんか半分怒りながら食べてました(笑)。
北川 結局食べたんじゃん(笑)。アフタヌーンティーってどうしてそんなにいっぱい食べ物が出てくるの?
――昼食の代わりなんだそうです。イギリスでは3時になったらお茶を飲むのが生活習慣になっていて、お茶に合った食べ物が選ばれてあの形になってると。
北川 そうなんだ。日本のこたつに煎餅とかみかんが乗ってるようなものか。
――すごく納得できますけど、何でそんな急角度のローカライズをしたんですか(笑)。ではお茶も一段落したところで、おふたりの目白の選曲を聴いていきましょうか。今日はどちらからいきますか?
藤村 じゃあ私いきまーす。
★藤村’s Select
SUPERCAR「STORYWRITER」
藤村 これは『交響詩篇エウレカセブン』の挿入歌で使われてたんです。ボルダリングジムの中では音楽が流れてるんですけど、結構ノリノリな曲が多いんですよ。有線放送のところもあるんですが、そうじゃない場合はスタッフの方が趣味で選曲してて。あとボルダリングの試合の動画を見てても、だいたいイカした感じの曲が流れてることが多いんです。
北川 ボルダリングって試合があるの?
藤村 ありますあります。より多く登った方が勝ちっていうルールが多いです。私はまだそのレベルまではいけないですけど。
北川 スケボーなんかだとハードロックとかパンクが流れてるイメージだけど……。
藤村 どっちかというと、もうちょっと電子音が多い曲のイメージですね。そういう、個人的にボルダリング中に聴きたい曲ということで選びました。
――藤村さんはこの曲は『エウレカセブン』で知ったんですか?
藤村 そうです。これを聴いただけでエウレカのことを思い出してちょっとグッときますね。
――アクションシーンで流れることが多かっただけに、その後に出たゲームとかでも使用されてましたね。
北川 じゃあこれを聴くとエウレカのシーンも思い浮かぶ感じなんだ。
藤村 そうなんです。エウレカ、ぜひ見てください。
北川 見てた見てた。後半からだけど。エウレカがもう髪の毛短くなった後で、「何があったんだろう?」って思ってた(笑)。
藤村 いいお話なんですよ。曲もかっこいいですし。ボルダリングやるときも気分がノリます。
――では続いて、北川さんの選曲を……さっそくファイルに日付が記載されてますが。
北川 はい。今月発売の花澤香菜ちゃんのアルバム『Opportunity』から新曲です。
★北川’s Select
花澤香菜「雲に歌えば」
藤村 めっちゃ可愛いじゃないですか。
北川 例のごとくプロモーションです(笑)。
藤村 でしょうね!
――もはやおなじみの。今回もプロデュースから参加されてる感じですか?
北川 そうですね。つい先日マスタリングを終えたんですけど、この音源はまだ作ってる途中のバージョンです(笑)。
――これはまた思いっきりポップな方向に振った曲ですが、聴きどころは?
北川 ポップなところです(笑)。今回はアルバム全体のテーマが「イギリス」で、テーマに沿っていろんな人にいろんな曲を書いてもらってるんですが、その中でもうちょっと明るくポップな曲が欲しいなと思って、自分で書いた曲です。たぶんアルバム中でいちばん明るくて楽しい雰囲気の曲なんじゃないかと。
藤村 念のために聞きますけど、これは目白とは関係は……。
北川 ないです!
――よくぞ聞いてくれました(笑)。まあ今日曇ってましたから。それぐらいしか繋がりが……。
北川 2月22日発売です。よろしくお願いします!
――気持ちのいいプロモーションをありがとうございます!じゃあ次回の駅を決めてもらいましょうか。
北川 よーし、はいっ。
――出目は「28」なので次回は「目黒」ですね。五不動の話をしたところでなんとも奇遇な。念のために聞きますけど、おふたりは何か思い出とかは……?
北川 ないです!
――ですよねー(笑)。
藤村 何か策を考えておかないと。
――こうなると藤村さんにかかってる感じですが、大丈夫でしょうか?(笑)。
藤村 えっと、頑張ります!(笑)。
(次回、目黒篇へつづく!)
PHOTOGRAPHY BY 山本哲也
INTERVIEW & TEXT BY 市川太一(クリエンタ/学園祭学園)
●今回のSelect Song
★藤村’s Select
SUPERCAR「STORYWRITER」
★北川’s Select
花澤香菜「雲に歌えば」
●リリース情報
花澤香菜 4th アルバム
『Opportunity』
2月22日発売
【初回生産限定盤(CD+Blu-ray)】
品番:SVWC-70251~52
価格:¥3800+税
※ロンドン撮りおろし 48P フォトブック付き
【通常盤(CD)】
品番:SVWC-70253
価格:¥3000+税
<CD>
1.スウィンギング・ガール
2.あたらしいうた
3.FRIENDS FOREVER
4.星結ぶとき
5.滞空時間
6.カレイドスコープ
7.透明な女の子
8.Marmalade Jam
9.Opportunity
10.ざらざら
11.雲に歌えば
12.FLOWER MARKET
13.brilliant
14.Seasons always change
15.Blue Water
<Blu-ray>
特典映像
●店舗情報
バックカントリースキーとクライミングの専門店「カラファテ」
【住所】東京都新宿区下落合3-2-12
【営業時間】平日(月・水・木・金曜日)11:00-20:00 土曜日 10:00-19:00 日曜・祝日 10:00-18:00
【TEL】03-3952-7117
【定休日】毎週火曜日
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