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REPORT

2016.12.28

「冒険の途中」は、芹澤 優の「伝説」の始まり。 “Yu Serizawa Birthday Live ~Present Box~”レポート

「冒険の途中」は、芹澤 優の「伝説」の始まり。 “Yu Serizawa Birthday Live ~Present Box~”レポート

12月18日、芹澤 優のバースデー・ソロライブ“Yu Serizawa Birthday Live ~Present Box~”が、Zepp DiverCity(Tokyo)にて開催。ライブの第1部にてソロ・デビューも発表した彼女は、そのデビュー・ミニアルバムの楽曲はもちろん、これまで彼女が歌ってきたキャラソンや彼女にとって思い入れの深い楽曲のカバーなども披露。“芹澤 優”を目いっぱい感じられる素敵なライブが届けられた。本稿では、その第2部の模様をレポートする。

ステージできらめく、“多彩な青”の光

ステージにはライブタイトル通り、高さの異なるプレゼントBOXが幾個も存在。その側面はLEDモニターとなっており、楽曲に合わせた演出でステージを彩る。開演時間を迎えるとinterludeとともにブルーのライトが場内を照らし、ステージ中央のいちばん背の高いBOXの頂上に本日の主役・芹澤 優が堂々登場。のっけから「マジカル☆ラブ」で、アイドルオーラ全開のステージをスタートさせる。この数年での歌声自体のスキルアップはもちろん、振付の密度がi☆Risほどでないということもあってボーカルでの表現力が際立つ。だがその振付も、余裕があるように見せつつも隅々まで魅せ方に気を配ったもの。その2点ともが、この曲のみならずすべてのキャラソンにおいて行き届いていたという点は、冒頭ではあるがまず手放しで絶賛したい点だ。他方サビ前「Shining!」のタイミングで場内の照明がイエローに染まったのは、スタッフの彼女への愛の表れか。続く「絶対秘密主義!」では、指差しのあるフリを活かしてファンとより明確にコミュニケーションを取っていく。そんななかでキーは近くとも歌声のトーンを気持ち低く、葉子として歌っていく芹澤。ラスサビでは「今日は盛り上がっていくでー!」と、久々に葉子の言葉を織り交ぜるというサービスも交えてくれた。そして白と赤のスポットに照らされて「いくよー!」とのシャウトから、凛々しいナンバー「BRGHTEST LOVE」へ。ほぼノンストップでの3曲目だが、息切れも目立った音ブレも見受けられない。それほど絶好調すぎた芹澤は、あくまで凛々しくこの曲を歌うマキシ様を表現してみせた。

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ここでこの日の初MC。i☆Risでも恒例の自己紹介「いつでもー!みんなをー!I loveゆーちゃーん!」を行う……が、最後の部分で急遽ファンにロングトーンを振る芹澤。そんなかわいいイジワルが出てしまうのも、「ここにいる誰よりも、芹澤が楽しみにしてた!(芹澤)」から。MCの言葉の端々からも自らのワクワクをあふれさせながら、続いての楽曲へ。

ここから2曲はミドルポップゾーン。「コトバ・デ・ダンシング」では歌声の表情豊かに振り幅大きく、お芝居の要素も散りばめた“キャラソン”の魅力全開で歌う。ただ、間奏での早口言葉をキメたときだけは、さすがに達成感からドヤっていた。そして“新人声優”彩崎ゆうの「Song For You!」のカバーでは、上手のBOXの縁に腰掛けて、かわいらしく足をぶらぶらとリラックスさせながら歌に専念。そんななかでファンと目を合わせる際の表情もまた、特段のうれしさが詰まったものに。

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今度は、1ヶ月弱前に大成功に終わったi☆Ris日本武道館ワンマンから今に至るまでの、素直な気持ちを語り始める芹澤。「ライブの直前1週間、ひとりでリハとかレッスンをして、メンバーのありがたみを痛感しました。なので『i☆Risも一生懸命やる』っていうことだけは、ちゃんと伝えたいなって。デビュー前からひとりでのライブはやりたかったけど、i☆Risを4年やれての今日だからこその良さが、このライブにあるんだろうな、と思います」と語る。その言葉は自身のラジオ等でも語ったものと同じ、ブレのないものだった。
そしてこの日の衣装について話題は移る。今回はオサレカンパニーの茅野しのぶが細部までこだわって手がけたスペシャルな衣装ということで、かつてはそれを観る側だった芹澤もこれには大興奮。そんななかで、彼女の推しポイントは、フリの激しいi☆Risの衣装には今までなかった、足首の出たピンヒールだとか。

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そんな「夢がギュッと詰まった時間(芹澤)」であるこの日のライブは、ここからは凛々しさや力強さの前面に出たナンバーが続く。まずはスピーディーで雅な「金糸雀」。イントロで黒のコートを身にまとうと、その歌声は鋭く力強いものに。ただ彼女の中音域が持つ独特の甘さもほのかに残っており、それらの特性の凸凹がうまく噛み合って1曲を作り上げていた印象。その世界観を、和の女性らしい艶やかなパフォーマンスがより引き立てていった。続く「Out Of Control!」で歌声の力強さはさらに増し、両サイドに攻撃するようなフリなど、『乖離性ミリオンアーサー』の世界観や彼女演じるベイリンにも結びついていく。その一方でサビのロングトーンの切り方には小悪魔っぽさも感じられ、ただ勇ましいだけではないキャラクター像を作り上げていた。

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そのまま後奏中に芹澤は一旦降壇。そこからシームレスにピアノの音色が流れ、一旦場内はクールダウン。そして気づけばステージ中央には電子ピアノが据えられ、そこに白のドレッシーな衣装で芹澤が座り、ピアノを爪弾き始める。ゆっくりしっとりと奏で、弾き語り始めたその曲は、この季節にピッタリの中島美嘉の「雪の華」。彼女が弾き語る姿が観客を驚かせ目を引いたが、やはりボーカルも聴き逃してはならないポイントで、最高点での透き通るようなファルセットに加え、楽曲の展開に合わせて終盤では伴奏とともに歌声にどんどん想いが乗り、見事に激情を表現していた。披露後、中盤のミスタッチを振り返り、ぴょんぴょん跳ねながら軽く「ム・カ・ツ・クー!」と悔しさを露わにした芹澤だが、ピアノを「小学生の頃ちょっと習っていたくらい」な彼女がここまでの形できたのは、「ひとりじゃなきゃやらないようなことをやりたかった」という彼女の信念あればこそだろう。

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さらに彼女は、“芹澤 優”としての新曲「Imaginary」を披露。歌唱前に「恋の歌のようで、みんなに向けた曲」と語ってから歌い始めたこの曲は、こちらもピアノが前に出た優しいバラード。グロッケンやウィンドベルの音色が、星空感をも演出している。そこに、サビではストリングスなども加わり、ぐっと壮大な世界が構築されていった。その雰囲気から一転、再びマキシ様としての「outshine」でアグレッシブなナンバーへと回帰。ここで特に驚かされたのが、サビでのパフォーマンス。先ほど話題に出たピンヒールで、高々とジャンプしてよろめくことなく片足着地をキメたのだ。そのワンシーンが、この日のためにあらゆる点を細部まで仕上げてきた、芹澤 優の想いと姿勢を凝縮したもののようにも感じられた。その気迫もあってか、この曲も音源以上に歌声の圧力が強く感じられる1曲となっていた。

そして「ここからラストスパート! みんなが『うおっ!』となる曲ばっかりです!」と宣言した芹澤。期待を高めたところで披露したのは、昨年彼女がヒロインを務めた『俺がお嬢様学校に「庶民サンプル」としてゲッツされた件』のOPテーマ「イチズレシピ」のカバー。キャラソンかと思うほどの表情をつけて終始楽しそうに歌いつつ、サビではさらに至上のキュートさをトッピング。そのうえサビの「ゲッツ!」では客にマイクを向けて一体感さえ作り上げてしまうという、ハンパない芹澤 優のアイドル性が会場を圧倒する1曲だった。そうして気持ちを持って行かれているなかで、「Sweet time Cooking magic~胸ペコなんです私って~」を披露するなんて反則以外の何物でもない。ポンポンと曲に合わせて跳ねながら、あんらしいかわいげをこのミドルポップに乗せていく。またBOX側面にマカロンと音符、五線譜が舞うのも、イラストさえ用いていないものの最大限に“福原あん”としてライブする、粋な演出ではないだろうか。
そしてそのバトンは、『プリティーリズム』から『プリパラ』へと渡る。「ぷりっとぱ~ふぇくと」が始まった瞬間の芹澤のみれぃへの変貌っぷりは鳥肌モノだった。しかもピンヒールのまま、サビでの両足開脚ジャンプからの着地をはじめ、この曲の激しい振付を妥協なくやり遂げていったのだ。そのうえ間奏ではステージを駆け回り「ぷ・り・ぷ・り!」とコールを煽っていく。さらにDメロラストを「新しい声優アイドルみせる」と自らの意志を提示するかのように歌詞を差し替え、芹澤 優としてもみれぃとしても、ぱ~ふぇくとな1曲として届けてくれた。

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そして本編ラストを飾ったのは、彼女の心のなかにずっとある大切な曲、TVアニメ『満月をさがして』EDテーマ「New Future」。背後のBOXに歌詞が映し出されるなか、その言葉を大事に歌声に乗せていく芹澤。サビラストの「many thanks for you!」のフレーズは、ファンへ投げかけるようにちょっぴり強めに歌い上げた。この歌詞を背負う演出は大正解で、彼女の抱えた想いと楽曲との重なり方をファンにも伝えてくれたし、サビで「Let’s sing a song!」の大合唱も発生。それに若干グッときたように伺える場面もあったが、芹澤の歌声にはカケラも影響がない。そうして歌詞通り「この歌この夢は終わらない」ことを予感させながら、しっかり彼女は大切な曲を歌い切り、ステージを降りた。

ソロもグループも、2017年は“楽しんで”全力で!

BOXにリボンの掛かった銀世界が映し出されるなか、ファンからは「ゆーちゃん!」とアンコールの声が。それに応えて再登壇した芹澤は、4月にリリースするミニ・アルバムでの自身のソロ・デビューを改めて報告。その一方で「でもi☆Risは辞めませんよ!」と改めて力強く宣言。「私はi☆Risをやってる自分が好きだし、ソロもやりたいし、どっちも本気なんです! ソロもアイドルもi☆Risも、もちろん声優も超全力でやるので、これからもついてきてくれたらなって思います!」と続けていた。

そしてアンコール1曲目を飾るのは、そのミニ・アルバムのリード曲「Voice for YOU!」。「ハッピーで、まさに今の気持ちを詰め込んだ曲です」との紹介から歌い始められたこの曲では、靴を履き替えた芹澤がダンスパフォーマンスも含めて全力のステージングを展開。「みんなで一緒に盛り上がれるところが多い曲」と曲前に語っていたように、Bメロなどにフリの中に自然とジャンプでファンを煽れる部分が存在。その一方で、Dメロ明けのダンスタイムからキレイにジャンプを決めたり、イントロの難しいポイントでピタリと片足立ちで止まったりと、同時にテクニカルな部分でも魅せてくれた曲。どれほど高まる楽曲に仕上がっていくのか、今後が楽しみだ。

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そんな盛り上がりを受け、ここで第2部のみのスペシャルゲスト・平野綾が登場! 声優・アーティスト・女優などマルチに活躍する平野は、芹澤にとっては「誰より私がうれしい」とこぼすほど格別の存在である。
そもそも芹澤は幼い頃からアニメが好きで、芸能界にも漠然と憧れを抱いていたが、中学生の頃に観た『涼宮ハルヒの激奏』で“ライブパフォーマンスもできる声優”である平野に憧れを抱き、声優を目指すきっかけとなったのだ。そんな「自分の原点となる憧れの人」である平野とは、2014年放送のTVアニメ『寄生獣 セイの格率』で初共演。さらに2016年春には“アニソンヒストリージャパン”で同じイベントへの出演は果たしていた。しかしこのように並び立ってのライブでの“共演”はなく、芹澤初のソロライブを祝しての、満を持しての初共演の実現となったのだ。
登場するやいなや、センターで芹澤をハグする平野。その後も褒めまくられて照れまくる芹澤、曲振りをしかけたところで「と、その前に?」とそれを平野が制し、ステージ袖へ。同時に場内に流れ出す「Happy Birthday」。それに合わせての会場中からの大合唱を前に、平野がバースデーケーキをステージまで運んでくる。このサプライズには、うれしさを爆発させる芹澤。その喜びのなか、観客を背に両手で「22」を作って平野・ケーキと一緒に記念撮影を行った。
これで逆に地に足がついたのか、「じゃあ祝っていただいたし、22年で最高の誕生日プレゼントもらっちゃおうかな!」とギアの入った芹澤。平野とふたりで歌うのはもちろん、「冒険でしょでしょ?」だ。サビでの平野による上ハモに、眼前にはこの曲を歌う彼女を改めて祝福する彼女の声援。なるほどたしかにこれは“22年で最高の誕生日プレゼント”だ。のちに「宇宙一の幸せ者だなって思います」と語ったように、うれしさの極みにいるかのような表情で、芹澤はこの曲を楽しみ尽くしたのだった。

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「世界一宇宙一、幸せな22歳ガールだと思います!」とこのコラボを総括した芹澤は、ラストに向けてファンへのメッセージを語り始める。「デビューして4年間、まだまだだなぁって思うこともいっぱいあるし、力不足で悔しさを感じるときもあって……ダメなとこばっかだなって思うけど、22年生きてきたのは間違ってなかったし、ここにいるみんなが私の22年を価値あるものだと思わせてくれています」と声を詰まらせながら素直な言葉を吐露。「悔しかったことはあるけどムダだったことはないと本当に思っていて……このステージを作ってくれた人たちや今日のために来てくれたいろんな人たちが、私を応援しててよかったなって思えるように、これから先i☆Risも声優もソロももっともっと頑張って……頑張るだけじゃなく、楽しんでやれたらなって思います!」と、それをこれからへの意気込みにつなげてくれた。

そして“これから”に向かうためにラストに歌うのは、彼女が初めてアニメのEDテーマを飾った曲、「レモネイドスキャンダル」。曲前に彼女が言った「最後は超笑って、超ハッピーで!」という言葉も、この曲がここに置かれた理由のひとつなのだろう。この曲でもしっかりとフリをこなしつつ、まるで会場に集ったファン一人ひとりの顔と声を噛みしめるように、BOX上も含めてゆったりステージを闊歩する。サビ前の「シャイニング!」で再び照明はレモン色に染まり、間奏ではまたも会場全体に投げキッス。「ありがとう」がめいっぱい詰め込まれたプレゼントをファンへ贈りつつ、最後はBOX上でビシッとキメ。自身の門出を、自らで祝してみせた。
曲明け、「22歳の伝説の始まりじゃー!!」と高らかに宣言した芹澤。ステージ上からすべての観客へくまなく手を振ったところで、最後に「みんなのことが大好きです。ありがとうございました!」との言葉を残して、彼女はステージを降りたのだった。

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“圧巻”。その二文字が実によく似合う1stソロライブだった。ロックにバラード、そしてこの日彼女に非常に似合っているように感じられたミドルポップまで幅広い楽曲を歌い切り、決して踊りやすくはない靴でも「ぷりっとぱ~ふぇくと」など激しいダンス曲を踊りきった彼女に、その二文字以外何を与えられようか。
加えて印象的だったのが、最後のメッセージの“楽しんで”という言葉。ここまで4年で刻み込まれたストイックさに楽しげな空気が合わされば、きっと2017年は今以上にたくさんの人を魅了してしまうことだろう。たしかにソロ・グループで、声優・アイドルとして活動する大変さは間違いなくあるはず。だが心の奥底に“楽しさ”さえ持っていれば、ファンと一緒にこの日が起点の伝説だって作れてしまうはずだ。

Photography By HAJIME KAMIIISAKA
Text by 須永兼次

“Yu Serizawa Birthday Live ~Present Box~”
2016.12.18@Zepp DiverCity(Tokyo)
【SET LIST】
M1.マジカル☆ラブ/秋月マキシ(芹澤 優)
M2.絶対秘密主義!/白神葉子(芹澤 優)
M3.BRIGHTEST LOVE!/秋月マキシ(芹澤 優)
M4.コトバ・デ・ダンシング/小野小梅(芹澤 優)
M5.Song For You!/彩崎ゆう(カバー)
M6.金糸雀/桃太郎(芹澤 優)
M7.Out Of Control!/ベイリン(芹澤 優)
M8.雪の華(弾き語り)/芹澤 優(カバー:中島美嘉)
M9.Imaginary/芹澤 優(新曲)
M10.outshine/秋月マキシ(芹澤 優)
M11.イチズレシピ/芹澤 優(カバー:アイドルカレッジ)
M12.Sweet time Cooking magic~胸ペコなんです私って~/福原あん(芹澤 優)
M13.ぷりっとぱ~ふぇくと/みれぃ(芹澤 優)
M14.New Future/芹澤 優(カバー:Changin’ My Life)

EN1.Voice for YOU!/芹澤 優(新曲)
EN2.冒険でしょでしょ?/芹澤 優 ゲスト:平野 綾
EN3.レモネイドスキャンダル/秋月マキシ(芹澤 優)


●リリース情報
芹澤 優ソロミニアルバム
2017年4月発売

芹澤 優1st写真集『君と』
2月10日発売

【DVD付き通常版】
価格:¥4000+税

【ゲーマーズ限定版(写真集+DVD)】
価格:¥4630+税
ゲーマーズ限定版Ver.オフショットDVD付

i☆Ris 14thシングル
TVアニメ『プリパラ』新OPテーマ
「タイトル未定」
3月8日発売

●ライブ情報
i☆Ris 3rd Live Tour 2017
2017年4月から9ヵ所17公演を巡る全国ツアー!
オフィシャルHP抽選先行実施中!
受付期間:1月9日(月)23:59まで

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