『アイドルマスター SideM』のCD「THE IDOLM@STER SideM ST@RTING LINE 13・14・15発売記念イベント」が11月19日、六本木ニコファーレで開催された。今回は夜の部を中心にレポートする(写真は公式提供のため、昼の部のもの)。
同イベントには各ユニットCDより、もふもふえんから岡村直央役の矢野奨吾、橘 志狼役の古畑恵介、姫野かのん役の村瀬 歩、F-LAGSから秋月 涼役の三瓶由布子、九十九一希役の徳武竜也、兜 大吾役の浦尾岳大、Legendersから葛之葉雨彦役の笠間 淳、北村想楽役の汐谷文康、古論クリス役の駒田 航が出演、柏木 翼役であり、もふもふえん大好き・八代 拓がMCを担当した。
これまで2チームごとのイベントで各ユニットと楽曲の魅力を伝えてきた「ST@RTING LINE」発売記念イベントだが、シリーズラストということで、今回はもふもふえん、F-LAGSに、「新アイドル発掘オーディション」企画で選ばれた最新ユニットLegendersを加えて9人+司会の大所帯となった。これだけの大所帯を軽やかに回しながら、おいしいところでは自分もどんどん入っていこうとする八代の成長には驚くしかない。今回行なったゲームコーナーは旗揚げゲームの旗の上げ下げに合わせて残りのメンバーが動物の鳴きマネをする内容で、楽しく盛り上がりはしたのだが、いかんせん勝敗がものすごくわかりにくい。案の定昼間はちょっと勝敗ぎめでぐだぐだっとしたので、夜はどうするのか……と思いきや、八代は「勝敗は別にいいや。面白かったし!」とバッサリ!たしかに別に決着が必要な企画ではなかったし、八代の無茶振りにメンバーたちが食らいついて悪戦苦闘する様子はそれだけで面白かった。
人数の多さから来るワイワイ感もあって全体的に盛り上がって進むトークだったが、少々予定進行から外れた時に古畑の頭が一瞬真っ白になった様子が見えたりすると、SideMとしての初ステージ、緊張しないはずがないことを思い出す。そうなると頼れるのは経験値がある三瓶や村瀬で、村瀬が時におばちゃんっぽい喋りになったり、ガヤガヤした中で、それはアイドルとしてギリギリなんじゃないの?という単語を発した犯人を見つけてみたら三瓶だったりと会場も笑いっぱなしだ。小さめの箱でわいわいやっている時ならではの笑いの神が降りたのが駒田で、海や船を題材にしたクリスっぽい台詞を言うたびに何かが出演者のツボに入る状態で、司会の八代は後ろを向いてふるえていたほどだった。
さて、ライブについてはユニットごとに見ていこう。まずは三人共脱帽物のかわいさを見せたもふもふえんから。イベント開幕、MCや挨拶なしで歌から入った「うぇるかむ・はぴきらパーク!」は、昼間は実は硬かったのかも、と、夜の部ののびのびとした表現を見てわかった。間奏では3人でだるまさんが転んだで遊んだり、遊び疲れて眠くなってしまったりという、直央とかのんのゆったりふわふわとしたテンポ。それを志狼がガラッと元気で明るく変えてサビに雪崩込んでいく感じが楽しい。歌い方に関しては、古畑は素の歌い方にくせがあるため、志狼らしくまっすぐに歌うように気をつけたそうだ。全員高い声での演技ができるもふもふえんだが、なかでも村瀬の高音域の広さ(もちろん高いだけではなくとてつもなくかわいい)は特筆モノだし、古畑の少年らしい元気さやんちゃさが弾けそうな感じもいい。ステージの出はけの際、古畑が駒田に「だーれだ!」をいたずらにやった時のいちゃいちゃ感には、客席からうっとりしたため息のような反応が漏れていた。
だがもふもふえんのセンターは、岡村直央役の矢野奨吾だ。仮歌は女性だったという「もっふ・いんざボックス」では、矢野の「かわいい」に対するこだわり、隙のなさを感じた。とにかく、動きの全て、表情の全てが「かわいい」のシグナルを発している。たとえば曲に合わせて両手を打ち鳴らすような動きをする時、「パン!」と音はならない。いかにも直央ならこんなかな、という感じで「ぽふ…」と鳴らすのだ。「しっぽがチラリ見えたら」のフレーズに3人揃っていかにもな感じで振り向いてお尻を軽く振ると、三瓶の提案で取り付けられたという動物しっぽがコミカルに揺れる。かわいいは正義と感じざるをえないステージングだ。
「夢色VOYAGER」で登場したF-LAGSは、三瓶が徳武に、浦尾に、そして客席に準備ができたことを確かめると大海原の旅に出航する。上体を後ろにぐいーっとそらしながら、上体をぐぐっと回す動きのダイナミックさがいかにも男の子アイドルらしい。そのうち手の動きがついて気がついた、これは揺れる甲板に両足を踏ん張って、身体よりも大きな希望の旗をうち振るう振付だ。「プロデューサーさん、出航ですよー!」と叫ぶ三瓶の歌声は、もちろん力強い男の子のそれだ。F-LAGSは客席を三色のトリコロールに染め上げたい気持ちがあるようで、上手は赤、真ん中は白、下手は青に塗り上げる練習をしていたので、2ndライブで客席にトリコロールが描けたら3人も喜ぶのではないだろうか。
「夢色VOYAGER」のレコーディングでは徳武の九十九先生の声で歌うにはもう少し低くないと、という希望でキーを下げたとのこと。だがそれでふたりにすごく申し訳ないと落ちこんだ徳武は、「With…STORY」では絶対にキーを下げて迷惑をかけないぞと誓って歌いきったとのことだった。実は浦尾は徳武がキーを下げてくれるとちょっと思っていたというから面白い。そんな浦尾は「君がいれば怖くないよ」のフレーズで、ふたりの顔を見ていると本当にステージの怖さがなくなるとのことだった。
「With…STORY」は訴えかけるような楽曲だが、実はダンスは力強くなかなかに激しい。3人ユニットでボーカルパートを担当していないふたりがむしろ動きの中で強い表現をしているのはSideMならではの要素かもしれない。3人はこの曲は踊らないのではと思っていたが、前回Altessimoがしっかりと踊っているのを見て、この曲もダンスはあると覚悟したそうだ。ダンスもソロで目立つというよりは、ボーカルパート以外のふたりシンメトリーの動きで見せ、ユニットのど真ん中には芯として三瓶と涼がいるという印象だ。ラララの大合唱で会場とともに大きく手を振ると、最後は眩し気な表情の3人が、行く手の航路と未来を見上げていた。
Legendersは、彼らにしかできない表現、それも大人の……をとても強く志向したパフォーマンスだ。「Legacy of Spirit」の冒頭は紫のライトの中、3人が不規則に動きながら絡み合うような動きを見せる。ストップモーションのキメの連続はコマ送りのようで、夜の部はより演出にそった決まり方をしていた気がする。ボーカルやダンスもぴったりと合わせるというよりは、それぞれの個性を強く出してぶつかりあうようなパフォーマンスだ。中でも笠間と駒田の個性のぶつけ合いがすごく、特に駒田の腰つきなどは大人のアイドルにしか見せられない動きだ。
だがそんな3人がぴたりと揃う場面が時々あって、なかでも3人がお互いの背を追うように円を描いて回りながら歌い、その背後から超クールなコーラスが降ってくるようなイメージの動き(通称、時計)はゾクゾクするかっこよさだ。良かったのは3人が「さぁ!」「さぁ!」「さぁ!」と客席に手を差し伸べていくところだが、見事に3人のニュアンスが違う。簡単に馴れ合うのではなく、凌ぎ合いながら磨き合っていくようなテンション感を感じる。この「さぁ!」はレコーディング中、スタッフとのコミュニケーションの中でぽんと生まれたというから驚きだ。
3人の関係性のヒントになりそうなのが、「String of Fate」について笠間が語った「ビジネスライクと思われがちな3人が、つながりを紡いでいく」という言葉だ。強い力を放つふたりの間で、汐谷は北村想楽らしさを出して、想楽が秘めた想いを歌に乗せる我が道をまっすぐ進んでいて、結果として3人のバランスが取れているような。そんな不思議なユニット感を感じたのだった。
10人揃っての「DRIVE A LIVE」ではもふもふえんとLegendersの正反対の個性が、歌の中の存在感でせめぎあっているのが面白く、とてもオリジナルだ。最初に前後列2列のフォーメーションを取ったとき、三瓶が八代たち長身なメンバーたちの後ろに入ると、やはりとても小柄に見える。ところが三瓶が前列に出てセンターにバンと立つと、その華やかさと存在感で大きく見えるのがとても面白い。
夜の部の「DRIVE A LIVE」ではメンバーのフリームーブが少し増えていて、肩をぶつけあったり、ハイタッチをかわしたりするのが楽しい。ラスト前の告知コーナーでは『アイドルマスター シンデレラガールズ』と876プロがコラボすることも紹介されていたのだが、その後だからこそ?三瓶の「we are 315!」の声は一際大きく響いていたような気がした。10人で練習に時間を注ぎ込み、ステージの輝きを体験した10人は、ステージと、会場のプロデューサーたちと別れがたそうだった。救いはそんな彼らと、3ヶ月後には会場で、あるいは劇場で再会できるということ。
告知コーナーでは、2017年2月1日に柏木 翼、伊瀬谷四季、東雲荘一郎、姫野かのん、古論クリスが参加する新CDシリーズ第3弾「THE IDOLM@STER SideM ORIGIN@L PIECES 03」と、315プロの新共通全体曲が発売されることが発表された。2月21日に幕張で行なわれる「THE IDOLM@STER SideM 2nd STAGE ~ORIGIN@L STARS」で、彼らがどんな新しいきらめきを見せてくれるのかに期待したい。
Text by 中里キリ
THE IDOLM@STER SideM ST@RTING LINE 13・14・15発売記念イベント
2016年11月19日(土)六本木ニコファーレ
<セットリスト>
M01:うぇるかむ・はぴきらパーク!/もふもふえん
M02:夢色VOYAGER/F-LAGS
M03:Legacy of Spirit/Legenders
M04:With…STORY/F-LAGS
M05:String of Fate/Legenders
M06:もっふ・いんざぼっくす♪/もふもふえん
M07:DRIVE A LIVE/全員
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