みずからをクリエイティブ音楽集団と名乗る絶望ノ果てのクリシェが、11月4日(金)初台DOORSを舞台に、アトリエシネマのオープニングアクトとして初ライブを行った。
声優・上坂すみれのアルバム『20世紀の逆襲』へ『20世紀の逆襲 第一章~紅蓮の道~/第二章~蠱惑の牙~/第三章~絶境の蝶~』を楽曲提供したことで、一部の人たちの間に存在を強く示していた絶望ノ果てのクリシェ。表舞台を担っているのが、彩希妃(歌唱)/香純妃(機械)/英鈴蘭妃(弦)3人のパフォーマーたち。加えて、作詞家/作曲家/編曲家たちが存在を彩る形を取っている。
絶望の果てには、一体どんな景色が広がっているのか?!果ての景色の先に希望を求めるのか、それとも闇に飲み込まれ朽ち果ててしまうのか。絶望ノ果てのクリシェは、「崩壊した世界」を舞台に、未来へ向けた物語を綴れ織ってゆく…。
『生命の色』
絶望の果てへ導くように…欠けた想いを嘆くように響く、美しくも悲愴を携えたピアノの旋律。やがて、重厚な音の響きが幾重にも重なりだした。その音色は眩い光に包まれながら、黒い交響(狂)曲へとその姿を変えていった。絶望ノ果てのクリシェが描き始めた物語。それは、世界の終わりを嘆くように歌う『生命の色』から幕を開けた。彩希妃は絶望が支配した物語を、激しく吠える音の唸りを背に、崩落し、悲しみに支配された世界を舞台に、僅かでいい未来へ繋がる光になろうと雄々しく語りだした。
嘆きを秘めながらも凛々しく激しく響く英鈴蘭妃のヴァイオリンの音色。突き刺す激しさの中でさえ優しく包み込む香純妃の作りあげた麗美な調べ。何より、漆黒の世界を飛び超え何かをつかもうとするよう彩希妃は勇壮に高らかに歌いあげていた。「絶望の果てに君が望むなら」「君の色になろう」と、彩希妃は『生命の色』を差し出すように手を伸ばしていた。
『Annihilation』
希望を失くした暗い奈落へ堕ちてゆくように、彩希妃は轟く音に乗せ迷い人(観客)たちを連れだした。『Annihilation』が見せたのは、朽ち果てた世界。頭を振り乱し、何かへ挑むよう堂々と歌う彩希妃。彼女が我々に示したのは、絶望の世界の中で如何に足掻き、その先に立ち向かえるか?!という強い意志。
ダークでゴシックでハードな、何より彩希妃の歌声には確かな力が漲っていた。勇ましく吠える歌の中に垣間見た嘆き。彼女は、絶望の世界で彷徨う人たちへ向け「恐れるな」「壊れるな」と痛く言葉を突き刺しながら、目の前にある黒い現実を次々と壊していた。何もかもが燃え尽き、光をすべて失った中でさえ、明日は見えるのだろうか?!絶望ノ果てのクリシェは投げかけた、「生き抜け この腐の時代を」と。闇の中で猛る演奏を糧に、立ち上がる意志と勇気を鼓舞するように…。
『20世紀の逆襲~第三章~絶境の蝶~』
「ようこそおいでくださいました。絶望ノ果てのクリシェと申します。今宵の演奏会をどうぞ、ごゆっくりお楽しみください」。
流れたのが、声優・上坂すみれへ提供した楽曲のセルフカバー『20世紀の逆襲~第三章~絶境の蝶~』。幻想浪漫な調べに乗せ、ひと言ひと言を紡ぐように歌いあげる彩希妃。次第に勇壮さを増してゆく演奏の上で舞い踊る彼女の姿は、漆黒の中に現れた希望のよう。黒い蝶と化した彩希妃を、ゴシックでロマネスクな演奏が闇に塗り潰された空へと華麗に舞い上がらせていた。次第に躍動を増してゆく演奏。その曲が連れた果ての先には、確かに光が見えていた。それが黒く鈍い光だとしても…。「明日におびえ絶望して」いたとしても…。
『晦冥のゆりかご』
「楽園壊れて行き場失う」。絶望ノ果てのクリシェが綴れ織った物語は、ふたたび切々としたピアノの音色に乗せ、彩希妃が悲しみを抱きながら歌う形で始まった。一転、黒い痛みを持って炸裂した演奏。『晦冥のゆりかご』が示したのは、生きることの意味。絶望の中へ、一体どんな未来を見いだすというのか?!
それでも絶望ノ果てのクリシェは黒い痛みと嘆きを突き付けるゴシックラウドシンフォニアな狂騒曲を通し、その先に明日が待っていると示してきた。「今こそ光をめざそう」、『晦冥のゆりかご』が最後に示したのは、この場所から這い上がれという希望の叫びだった。。。
絶望ノ果てのクリシェが与えてくれたのは、漆黒の中に…痛む恍惚に安住や逃避を求めるな。絶望の先にはかならず光や希望が待ち受けているからという未来。荒れ狂う姿と美しく嘆く表情を一つ一つの物語の中へ交錯させながら、終始、絶望ノ果てのクリシェは闇の果ての先に広がる明日を見つめ、歌い奏でていた。黒い熱狂に現実を忘れ興奮に溺れながら、最後に心救われるような温かさを抱けたのも、絶望ノ果てのクリシェが「果ての景色のその先」を垣間見せたから?!その世界は嘆きと絶望が支配していた。その物語を重ねていけば、そこには未来が見えてくる?!どんな微かな希望も、この日は示してくれた。
作詞及びプロデュースを担う杉山小絵子は、絶望ノ果てのクリシェの世界観についてこう語ってくれた。
「絶望ノ果てのクリシェは、絶望という奈落の果てに、じつはしっかりと光や希望を見ている存在。人は、絶望の中から見いだした答えこそが一番強い希望の光になる。だから絶望ノ果てのクリシェが綴る詩には、かならず希望の光が射し込んでいる。
きっと日常には、嘆きや悲しみ、痛み、不安、何より闇や絶望を心に抱えながら日々を生きている人たちもいると思います。そういう人たちの闇に支配された心に少しでも絶望ノ果てのクリシェが光を射していけたら。何より、絶望ノ果てのクリシェが「あなた様」の未来に希望を与えていけたなら」
絶望ノ果てのクリシェは、2017年3月22日(水)に1stアルバムを発売することを発表。ライブも定期的に行うことを表明しているように、これから絶望ノ果てのクリシェがどんな「絶望の果ての景色」を見せてくれるのかを楽しみにしていたい。まずは花咲く春に、どんな絶望の果ての風景をアルバムを通し描き出してゆくのかが楽しみだ。
11月4日(金)
<セットリスト>
『生命の色』
『Annihilation』
『20世紀の逆襲~第三章~絶境の蝶~』
『晦冥のゆりかご』
TEXT:長澤智典
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