INTERVIEW
2016.05.10
今回のゲストは『たまゆら』シリーズ、『ファイ・ブレイン 神々のパズル』、『M3〜ソノ黒キ鋼〜』などを手がけたアニメーション監督・佐藤順一さん!
佐藤監督が監督したOVA『絶滅危愚少女 Amazing Twins』では、声優としてだけでなくOPテーマ・EDテーマを担当した千菅さんが、佐藤監督のお悩みを解決します!
さて、今回はいったいどんなお悩みが飛び出すのか?
佐藤順一 実は面と向かい合う前に千菅さんのことは見てるんですよ。オーディションの最終審査のときの映像を見ていまして。
千菅晴香 どんな印象でしたか?
佐藤 みんなは田舎っぽいとか言うけど、なんだろうね、「産地直送」みたいな味わいがありましたね(笑)。素材感があるなと思いました。
千菅 産地直送(笑)。メモメモ!
佐藤 実際に歌うとパワフルな感じがガツンと来るので、ああアーティストなんだなと感じました。
千菅 最初にお会いしたのは『たまゆら』で劇中のスキャットなどをやらせてもらったときですよね。そのとき声優としてお仕事をしたことがなかったので、1クール分アフレコ現場を見学させてもらったんですが、監督とキャストさんとのコミュニケーションを初めて間近で見て すごく和やかで楽しそうだなって。私それがアニメのアフレコ現場の最初の印象なんですよ。
佐藤 超楽しそうみたいな(笑)。
千菅 「こうやるんだ」って初めて思いました(笑)。
佐藤 作品性もあり、キャストも知ったなかでやっていますので、和やかに適当にギャグを飛ばしたりして、儀武(ゆう子)さんから突っ込まれたりしながらやっていましたね(笑)。
千菅 『たまゆら』って作品自体には「ギャグアニメ!」って感じじゃないんですけど、中の人はけっこうギャグセンスがすごいなと感じて。
佐藤 笑わせたら勝ちって思ってる人がけっこういますからね(笑)。
千菅 作品と作ってる過程にギャップがあるものなんだなと思いました(笑)。
佐藤 わりと特殊な例かもしれませんけど……(笑)。イベントやラジオでは出るかもしれませんけど、あまり表には出ない部分ですね。
千菅 『M3〜ソノ黒キ鋼〜』でもお世話になったんですけど、かなりダークでシリアスな内容なのに、現場では皆さん面白くてそれも印象に残ってます。
佐藤 作品に皆さん突っ込んだりしていましたからね(笑)。
——収録での千菅さんはいかがでしたか?前々回檜山さんには「かなり苦戦していた」とうかがいましたが……。
千菅 飲み会で檜山さんに「へたくそ過ぎてヤバい」みたいに言われて、「先輩ってそれを率直に投げかけてくださるんだ」ってうれしくなったのを覚えています。
佐藤 千菅さんのキャラクターは最初何でもないオペレーターだったんですけど、話が進むにつれて上司にあたる須崎の右腕になるぐらい親しくなるんですよ。百合っぽい感じで(笑)。それは最初シナリオになくて、やりながら出てきた展開なんです。千菅さんが一生懸命やってるって姿勢もあるんですけど、とにかく「付いていきます臭」がすごかったので(笑)、千菅さんがやってなかったらああはならなかったと思いますよ。
千菅 「付いていきます臭」(笑)。そういえば『M3』の打ち上げなんですけど、そのとき私味付け卵を家で作るのにハマってて、そのお話や、「マルちゃん正麺をゆでる美味しいゆで方」みたいなのを佐藤監督に教わっていたのを覚えてます。
佐藤 そんな話しましたっけ(笑)。
千菅 重曹を入れると美味しく茹でられるというお話を聞いて。
佐藤 そうですね、乾麺を茹でるときは重曹を入れると生麺の食感になるんですよ。
千菅 っていう話をして、味付け卵ハマっててたのが二年くらい前なんだなって思ったら急に懐かしく感じました。今は味付け卵もう作ってないんですよ。
佐藤 今は何かハマってるんですか?
千菅 ポテトサラダを作るのにハマってます。
佐藤 どうやって作るんですか?
千菅 「暮らしの基本」ってサイトにハマってるんですよ。そこに基本のポテトサラダっていうレシピがのってて、芋と玉ねぎとピーマンときゅうり、マヨ3粒マスタード1ツナ缶のみ……っていうのが本当に美味しくて!だけど友人からすると24才にしてまだその段階かみたいな(笑)。調べたらギリシャヨーグルトとはちみつを和えるのも美味しいらしいんですよ。とかって話を何となくしたくなるのが、佐藤監督です(笑)。
佐藤 ポテサラを入れるときにきゅうり入れるじゃないですか。塩もみしてから入れると全然美味しいですよ。
千菅 そのサイトに書いてありました!玉ねぎを水にさらす時間まで細かく乗っていて、そのひと手間ですごく美味しく変わるのが感動的で。。
佐藤 基本ができてますね(笑)。ならばもう私が教えることはないです。
千菅 佐藤監督は何を話しても「それはね」ってちゃんと返してくれるんですよ。それがうれしくてつい話してしまうところがありますね。そういう知識ってどうやって仕入れてるんですか?
佐藤 やってみて経験からですね。最近スタッフの中でチャーシューを作るのにハマっている人がいて、なかなか臭みが抜けないというから、「それはね、最初に焼酎で煮るんだよ」って話をしました(笑)。自分で作ってたときの経験上それがいちばん臭みが消えたので。
千菅 そういう着眼点とか、日常に根差した会話が捗るところがすごいと思います(笑)。
——打ち上げってそんな話をするんですね(笑)。佐藤監督としてはお話を重ねるなかで千菅さんの第一印象から変わってきた部分はありますか?
佐藤 『たまゆら』でイベントで出てもらったことがあるんですよ。広島の音楽祭のイベントで、最後に出演者が挨拶するんですけど、内容は覚えてないんですけどそのときの千菅さんの話し方がすごく印象的で。すごくていねいに何かを伝えようとしてて、どこに向かうかわからないけど一生懸命さは伝わるというのが印象的でした。真面目ってひと言ですませるのも難しくて、ポテトサラダの話ひとつとってもていねいに伝えてしまうのはひとつの魅力だなと思いますね。
——そして『絶滅危愚少女 Amazing Twins』では作品を佐藤監督が、楽曲を千菅さんが歌われているという形でご一緒されましたが、楽曲を聴いていかがでしたか?
佐藤 すごくパワフルな歌声と楽曲だなっていうのが最大の魅力でしたね。作品自体も「元気になってもらう」作品でありますし、オープニングを聴くときにひとつ思うのが、「最終回で流したら盛り上がって終われるような曲がいいな」ってことなんです。例えばTVシリーズ52本だったら52話最終回にオープニングを流してわっと盛り上がるのがいいと思うんですよ。ラストのイメージにあててみて、泣ける、とかいいな、って思うかどうかが基準としてあるんですけど、「絶滅危愚少女」のパワフルさはピッタリきていい感じでした。
千菅 歌ってても作品のテーマがスッと入ってきて、全力少女っていうのが引っかかりもなく捉えられたっていうのが印象深いです。”全力少女”っていうならこねくりまわしても仕方がないので。
佐藤 猪突猛進みたいな(笑)。力強さが前面に出たんでしょうね。
千菅 一方でエンディングの「心アシンメトリー」は普遍的に心の切なさと暖かさを表現していて、作品のテーマとの繋がりも流れてパッと分かりやすかったですね。オープニングとエンディングって他のアニメもそうですけど曲自体は全然違う曲で、それぞれが作品の持つ異なるテーマを感じられるように毛色も違ったりするじゃないですか。それをどっちも歌うことで肌で感じられたのは貴重な体験だったなと思いますね。
佐藤 EDテーマの方は信頼感みたいなのが軸でしたね。
千菅 すごく「いい話だな」って感じになって終わる曲でした。
——オープニングやエンディングって監督ご自身から意見を出されたりするんですか?
佐藤 こんなのがいいなっていうのもあったりしますけど、基本的には聞かれたらテーマをお伝えする、あとはアーティストさんの感性にお任せします。やっぱり音楽を作る方は異なる感性を持ってたりするので、「違うよ」って言うと可能性を狭めちゃうかもしれないと。むしろ広がれ広がれってやるのが監督の仕事のひとつで、違う感性で広がっていくようなものが欲しいと思ってます。
千菅 アニメってみんなで作るものだからそういう作り方ができるのは面白いですね。
佐藤 アーティストでも、作画やアニメーターの人たちも役者さんもスタッフ一人ひとりが演出家なんですよ。それぞれが工夫するというひとつひとつが演出なので、そうして広がっていった方が勉強にもなりますしね。
千菅 一人ひとりが演出家……すごくいい話です!
お悩み相談開始!
千菅 そんな佐藤監督のお悩みとはなんでしょうか?
佐藤 心のこもったありがとうっていうのってどうすればいいでしょうか?
千菅 ご自分がありがとうって言うときに心がこもってる感じを出すにはどうしたらいいかってことですか?
佐藤 そうですね。”サトジュン祭”っていうのをやってもらったんですけど、そこで奥さんが手紙を読んでくれたんですよ。こちらも「ああ、いつも本当にありがとう」って思うんですけど、「いつもありがとう」っていうのはどういう言い方をすればちゃんと伝わるんだろうって。大げさにすると嘘っぽいし、簡潔に答えても素っ気ないじゃないですか。
千菅 それは難しいですね……。
佐藤 なかなか面と向かって言える機会もないのでどうしたものかなと。あとは作品の感想をツイッターとかで言われたとき、どう返せばいいんだろうって。「ありがとうございます」にするか、「!」を付けた方がいいか、いっぱいつけて「!!!!」にするか。
千菅 逆にわざとらしいから「!」を付けないほうが本当の言葉なのかとも考えちゃいますよね。
佐藤 それですね。でも「ありがとう」の五文字でなんだか素っ気ない。じゃあ「あ り が と う」にするのかとか(笑)、時間は即返すか吟味して返す感じで時間を置いた方がいいのか、とかいろいろ考えちゃうんですよ。
千菅 (笑)なるほど!……うーん、直接言うときは、顔を見て話すってことで伝わるんじゃないかと思うんですよ。でもツイート?あれは難しいですね!だって寝転がって打ってるか正座で打ってるかわからないじゃないですか。
佐藤 「!」も簡単につけれますからね。
千菅 これは本当に難しいですね。私はけっこうさっぱりした文字面の方が伝わるなって感じるんですけど、そうではないと考える人もいて。人それぞれですよね。本当にそう思います。これにしましょう。そんな佐藤監督に合うのは……
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これです!
千菅 わあ、やっぱりイントロかわいいですね。
(熱唱中です♪)
――熱唱終了――
佐藤 なるほど、何となくわかりますね。”気持ちが飛んで行け”っていう。
千菅 また伝えたいけど伝えきれないところで止めてるからいい曲だなって思うんです。この曲の子が、これ以上出し始めちゃったら健気さがなくなっちゃう。”伝えたいけど伝えきれない”っていうところで止めていいものなのではないか?と思います。
佐藤 なるほど、これは効いた感じありますね。さくらちゃんのように気持ちを伝えたい気持ちを持って臨みます(笑)。
~相談を終えて~
<千菅さんのひと言>
日常に根差した会話が弾んだのがすごく楽しかったです(笑)。麺を茹でるとか普段の誰しもやる日常を面白く、こだわりを持って見ているのが監督の作品にすごく出ているんだろうなと思いました。お悩みも誰もが持ってるお悩みだったんじゃないかと思って、すごく考えさせられました。誰が見ても「心がこもった」と思うありがとうは、実は言えなくてもいいんじゃないか、そういう言葉は「なかなか言えない」ぐらいのところに置いておいてもいいんじゃないかなと思ってこの曲。「もっと気持ちがあるのに!」っていうのも別の原動力になったりもしますしね。監督の作品みたいにテーマ感のあるお悩みでした(笑)。
<佐藤さんのひと言>
千菅さんがそんな悩み多い人だとは思いませんでしたが、何故こんな企画をやってるんでしょうか(笑)。治すよりも共感してもらえることで気持ちが楽になりましたね。声優さんの千菅さんとは仕事の回数は多くないんですが、自分を表現していこうという気持ちの強い人なのでこれからどんな役をやってもらおうかと考えるのも楽しみですね。お悩みについては「伝えたい想いみたいなのは誰しもあって、伝えようとする」っていうのは誰しもあるものだなと、歌を聞きながら思いましたね。これで1年分のシリーズができそうなテーマですね(笑)。
INTERVIEW & TEXT BY 大用尚宏(クリエンタ)
PHOTOGRAPHY BY Mao Yamamoto
<本日の一曲>
TVアニメ『カードキャプターさくら』OPテーマ
「Catch You Catch Me」
グミ
<本日の相談者>
佐藤順一さま
愛知県出身のアニメーション監督、演出家。TYOアニメーションズ所属。代表作に『きんぎょ注意報!』、『美少女戦士セーラームーン』、『おジャ魔女どれみ』、『ケロロ軍曹』、『カレイドスター』、『プリンセスチュチュ』、『ARIA』、『たまゆら』等がある。2016年7月放送開始となるTVアニメ『あまんちゅ!』では総監督を務める。
<今回取材にご協力いただいたお店>
パセラリゾーツ六本木店
★宴会に最適な限定コース¥3,500~
〒106-0032
東京都港区六本木5-16-3
TEL:0120-911-086/HPはこちら
6thシングル
TVアニメ『学戦都市アスタリスク』EDテーマ
「愛の詩-words of love-」
発売中
品番:VTCL-35225
価格:¥1,400+税
<CD>
1.愛の詩–words of love–
作詞:山田稔明 作曲・編曲:Rasmus Faber
2.Lonely Feather / 歌 : シルヴィア・リューネハイム(千菅春香)
作詞・作曲・編曲:Rasmus Faber
3.愛の太陽 / 歌 : シルヴィア・リューネハイム(千菅春香)
作詞:岩里祐穂 作曲・編曲:Rasmus Faber
4.Lonely Feather-a capella version- / 歌:シルヴィア・リューネハイム(千菅春香) 作詞・作曲・編曲:Rasmus Faber
5.愛の詩–words of love–(Instrumental)
6.Lonely Feather(Instrumental)
7.愛の太陽(Instrumental)
1st フルアルバム
『TRY!』
6月22日発売
【初回限定盤(CD+DVD)】
品番:VTZL-108 価格:¥3,700+税
【通常盤(CD)】
品番:VTCL-60427 価格:¥2,900+税
●ライブ情報
千菅春香DEBUT LIVE「FIRST TRY!」
7月9日(土)16:00開場 17:00開演
会場:shibuya duo MUSIC EXCHANGE
チケット料金:指定席 6,000(税込) スタンディング 5,000(税込) ※1ドリンク代別途
チケット一般販売:6月11日(土)スタート!
プレイガイド:
キョードー東京 0570-550-799
チケットぴあ 0570-02-9999 Pコード 296-863
ローソンチケット 0570-084-003 Lコード 76469
イープラス
お問い合わせ:キョードー東京 0570-550-799
(平日:11時~18時 土日祝:10時~18時)
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