INTERVIEW
2016.03.08
アイドル・私立恵比寿中学のメンバーとして活躍するかたわら、TVアニメ『アカメが斬る!』新OPテーマ「Liar Mask」で2014年11月26日にソロ・デビューを果たした真山りかさん。アニメやゲームが大好きという彼女が、毎回題材を決めてそれぞれ深く掘り下げて勉強していくこの企画。第8回となる今回は、雑誌の編集部が見てみたいということで、真山さんがリスアニ!編集部にやってきました! 遊びに来るだけじゃなく、この企画らしく真山さんがディープに雑誌の作り方について学んでいきます。
というわけでリスアニ!編集部のあるエムオン・エンタテインメントさんにやってきました。その名のとおりスカパー!にて「MUSIC ON! TV(エムオン!)HD」を放送するかたわら、「リスアニ!」など雑誌の製作も行う会社です。
そんなエムオンから発刊されているのが、今さらの紹介になりますが業界唯一のアニメ音楽雑誌「リスアニ!」。2010年にVol.1を創刊して以来、アニメのクールに合わせて季刊で号を重ねつつ、別冊としてキャラクター・ソング特集号、『アイドルマスター』特集号などの特集号を発刊しています。
では、早速リスアニ編集部にお邪魔します!
真山りか こんなふうになってるんですねー。
見慣れないオフィスの雰囲気にテンションの上がる真山さん。おや、後ろにいらっしゃるのは……
というわけで今回はゲストとしてリスアニ!編集長の澄川龍一さんにご出演いただきます。澄川さんに編集部を案内してもらいつつ、雑誌の作り方について教えていただきました!
編集部の机にはCDが山盛りで置かれていたり、栄養ドリンクが乗っていたりと若干カオスな状況です。
真山 さすが編集の机という感じです。すごい! 寝袋もありますよ。
リスアニ!編集長 澄川龍一 忙しい時期には泊まり込みでやることもしょっちゅうです。
真山 編集の方って激務で寝袋とか栄養ドリンクとかのイメージがあったので、本当に見れてよかったです(笑)。
――真山さんは雑誌や本の作り方ってどれぐらいご存知ですか?
真山 うーん……マンガだとプロットを作って、ネームを作って、ラフを書いて、下書きして、清書して……。
――そうですね、それをうまく並べてコピーしてホッチキスで止めたりすると本の形になります。基本的には雑誌も同じような作り方をしています。まずはプロットのように本の中身に何を載せるかを決めて、ネームのようにそれをどこにどのように載せるかを決めるんです。
真山 なるほど!
澄川 そのために我々は普段編集会議というものをして、どんな作品やアーティストを取り扱うかを決めます。その前段階として、各メーカーにこれからどんなアニメをやるのか、どんなアーティストのリリースがあるのかといった話を聞いたり、今何が人気があるのか、これから何が人気が出そうかといった情報を集めていきます。それを元に、今回の表紙や、写真撮影するアーティストや扱うページ数を決めていくんです。例えばVol.24では人気のある『〈物語〉シリーズ』の劇場版やアプリ上の新シリーズ『暦物語』があったので、巻頭特集にしています。
真山 2期とかシリーズが続いてるものはすでに人気があるのがわかってますけど、これからの新作を取り扱うのは難しいですよね。
――そういうところはオタク的には次のクールのアニメどれが熱いか、みたいな話に近いですね。
真山 たしかに!(笑)。それなら私もよくやります。
澄川 うちはそれに加えてアニメ音楽雑誌ということで、音楽を大きく取り扱える作品を巻頭特集に、というのが基本になります。ただやっぱり表紙で取り扱う作品の人気で売上がかなり変わってくるのである程度予想するのも大事になってきますね。いちばん予想がハマったのは「リスアニ!Vol.10.1」の別冊キャラクター・ソング『ラブライブ』特集号。当時はアニメ化前でそれほど『ラブライブ』を扱われていないときに思いきってやってみようと取り扱ったので、かなり売れました。
真山 本当だ! それぞれのお写真も少し初々しい感じで、今見てもすごく面白いですね。
澄川 このときは髪型も定まってないですからね。ここからアニメがスタートしてみんなだんだんキャラに寄せるような髪型にしていくんです。
真山 本当に歴史的価値がありますね。
澄川 そうして掲載する作品やアーティストが決まってきたら、台割というものを作ります。
真山 だいわり?
澄川 なかなか馴染みがないと思いますが、本を作るときの設計図、あるいは漫画で言うとネームに近いと思います。どの作品に何ページ使ってどこに置くのか、雑誌は何百ページとあって、何人も関わって作るので、こうして管理して共有しないと本が作れないんです。
真山 たしかにページ数が多いし、ほかの人と一緒に作るから頭の中だけだとこんがらがっちゃいますよね。なるほどです!
澄川 それから各メーカーに問い合わせて取材日の調整や資料の請求をして、決まり次第取材や撮影をこなしていきます。ここまでが前段階の準備ですが、いちばん時間がかかるところですね。取材ではライターさんやカメラマンさんと同行して、取材後には彼らに原稿や写真を用意してもらいつつ、編集としては今度はそれぞれのページに何を置くかを決めるためにラフというものを書きます。
真山 本当にラフですね。
澄川 僕のはラフすぎてちょっとお見せできないんですが(笑)、これを見せてデザイナーさんに写真をどのように置くか、文字をどういうふうに配置するかを決めてもらうんです。
――先ほどのマンガの例で言うと、ネームの部分ですね。ただ基本的に編集が写真や文字をきれいに配置する技術はないので、マンガで言う清書の部分をデザイナーさんにお願いするという形でやります。
澄川 僕は、技術がないのとデザイナーさんとの付き合いが長いのもあってかなりラフにお任せしちゃうんですが、編集さんによってはPC上で出来上がりに近い配置のイメージまで作って送ったり、メンバーカラ—など色味にこだわりがあるときは文字や背景の色を指定したりということをします。
真山 私で言うとページに紫色を使うみたいなことですね。
澄川 あと撮影取材で撮り下ろしの写真があるときは写真を選ぶのも大変ですね。何しろ何百枚撮った中から、載せられるのは5~6枚だけ。ベストショットを選んで載せなくちゃいけないんです。
マネージャーみぞっち 本当に大変だから。カメラマンさんめっちゃ撮るから。
澄川 あんまりお見せできないのはもはや悲しいですよね(笑)。カメラマンさんも調子がいいときはバババッといいカットを連続して撮っていくので、微妙に違ういいカットが山ほどあるんですよね。
マネージャーみぞっち そうそう!
真山 (笑)いつもお疲れ様です!
澄川 そうしてデザイナーさんから上がってきたものをレイアウトと言うんですが、これを見てさらに微調整をしていきます。
真山 レイアウトというのでかなり出来上がりに近く見えるんですが、ここからさらに手を加えるんですか?
澄川 文字の配置や色味の調整といった細かいところから、撮影取材で撮り下ろしの写真がある場合は配置されたものを見て微調整していきます。
真山 どういうところを見るんですか?
澄川 実際に配置されて出てきたものを見ると「やっぱりこっちの表情のほうがしっくりくるな」というものがあって、そうやってベストな一枚を探すという感じです。微妙に口を閉じてたり開いてたりといった違いなんですが、ふとした表情という感じにしたくてきょとんとした表情を選んだり……。
真山 あっ、ほんとだ! 表情が違う。実際に載った写真のほうがよく見えます。
澄川 これも大変なわりに細かいことなんですが、たまに読者の方のTwitterとかでそうして選んだカットやポーズが評判良かったりするとうれしいですね。
マネージャーみぞっち でもそれで同じようなのまた選ぶと今度は飽きられちゃうんだよね。
澄川 そうですね、あざといとか言われちゃったりして。
――このへんはアイドルのマネージャーも同じ苦労をしているんですね(笑)。
澄川 そうしてできたレイアウトは文字の部分がダミーになってるんですが、それをライターさんから上がってきた原稿とチェックに送って、チェック済みのものをDTP屋さんに送って文字を入れてもらいます。それで出てくるのがゲラというもので、雑誌に使う紙と同じものに刷るので本チャンとほぼ同じ仕上がりになってるので、全体の色味をチェックしたり、文字を入れてみたけど文字数が多くて溢れてしまうのを見つけて都度調整します。あとは誤字脱字の修正ですね。この作業を校正と言って、怠ると“インド人を右に”とかになっちゃうわけですね(笑)。
真山 例えばインタビューしたときにちょっと話が少なかったりしたらどうするんですか?
澄川 そういうときはインタビューしてる段階でわかるので、レイアウトの時点で写真とかを多くして文字数を少な目にしてもらいます。でも、例えばユニットだとひとりが喋ってひとりは発言が少なくてということがあって、そういう場合はなるべく均等になるようにしたりします。エビ中でもそういうことないですか?
真山 エビ中も、私がかなり喋るので慣れてるライターさんだと「真山さんちょっと黙って」という感じでほかの人に振ったりします(笑)。
澄川 (笑)そこまで露骨じゃないですが、話を振ったりはしますね。そうして校正を何度か繰り返して、校了というところで僕たちの仕事は終わりです。
――そのあとも印刷して書店に並ぶまでも多くの人が関わっています。
真山 すごい、作るときから本当にたくさんの人が関わってて本が手元に届くんですね。自分で思っていた以上に。
澄川 それこそCDのブックレットだったり漫画だったりといった紙物はすべて、書く人デザインする人といった作る側から、メーカーの人だったり様々な人が目を通してようやく出来上がるので、なかなかひとりで作るってわけにはいかないですね。
真山 そんなこと聞くとアニメイトとかで「これ買おうかな……でもあんまり絵柄が好きじゃないし……」とか買わないというのができなくなっちゃいます(笑)。
澄川 ユーザー側からするとでも表紙で判断するのは当然ですよね。合う合わないもありますが、それを選んでいただくのは読者の皆さんで、反省を次に活かすのも僕ら側ですから。
真山 私たち側としても、雑誌の売り上げを左右する表紙を飾らせていただくこともあるんですが、そんな大事な部分を任せていただいてるんだなと思うと、もちろんいつも真剣かつ楽しく撮影させていただいてますけど、もっと頑張らなきゃという重みを実感します。
――雑誌の撮影して、そのあとの工程を知ってるアイドルはなかなかいないと思うので、その責任感は貴重ですね(笑)。
編集長の秘密に迫る!
真山 ところで、編集長はどんなふうにしてこの業界に入ったんですか?
澄川 この業界に入ったのは29歳ぐらいで、CDショップの店員を経て、Jポップとか洋楽とかのライターとかやり始めました。
――バックボーンとしてJポップやアイドル、洋楽好きという過去をお持ちなんですよね。
澄川 エビ中も『えびぞりダイアモンド!!』の頃から聴いてます。
真山 ほんとですか? ありがとうございます!
澄川 clubasiaでイベントあったときとかも観ていて。
真山 ティッシュ投げてたやつだ。
澄川 そのときに物販でCD全部買って、見させていただいています。
真山 ありがうございます! もちろんアニメとかもお好きなんですよね。どんなものを通ってきたんですか?
澄川 いちばん人生持ち崩したな、と思うのは高2ぐらいにやっていた『ときめきメモリアル』ですね。
真山 『ときメモ』ですね!
澄川 面白いゲームがあるぞと聞いてやったら、ゲームやって恋愛できるなんて最高じゃないか、やった!って(笑)。最後は高校卒業したら付き合えますからね。
真山 その感覚すごいわかります!
澄川 当時はあんまりそういうゲームがなかったですからね。あとは高3で『サクラ大戦』とか、同年代はなんだかんだ言ってゲームの影響は強いと思います。アニメだとちょうど高2のときに『エヴァンゲリオン』が始まるという。
真山 中学2年生の心を持ったまま大人になったやつですね。
澄川 連載の第0回(「アニメ・アニソンに声優やゲーム……真山りか、今ハマってるものを語りつくします!」)でも語ってましたが、真山さんはどんなところからオタクの道に入ったんですか?
真山 今思い出すと、ある日高熱を出したときに観た『魔人探偵脳噛ネウロ』は結構最初の衝撃かもしれません。アニメって平和なものだと思ってたからすごい衝撃的で。それから中学の友達経由でハマっていって、『銀魂』を観て、沖田(総悟)さんが鈴村(健一)さんだったので声優さんという職業に興味を持ってという感じでした。
澄川 やっぱり中学でこじらせるんですね(笑)。かなり根深いものをお持ちというのは連載を見てても思います。
真山 でも最近勉強が足りてなくて、まだまだです。
――真山さんのこう言っちゃう感じが実にオタクの根深い性質を感じますね。もっとすごい人がいるから自分はオタクとしてはまだまだと。
澄川 そんなこと言って、本業はアイドルですからね(笑)。
真山 (笑)あとリスアニ!さんは“リスアニ!ライブ”とか、「リスアニ!TV」もありますよね。雑誌のほうとどういう関係があるんですか?
澄川 適度に連携を取りつつという感じですね。TVはTVチームが別にあって動いているんですが、例えばヒャダインさんプロデュースで小松実可子さんの楽曲を、「リスアニ!TV」の主題歌に起用させていただいたときは、雑誌のほうでもご褒美に寿司を食べるだけの企画を特集したり、たまにTVのほうで僕がインタビューを担当したりします。“リスアニ!LIVE”も同様で、僕はトーク台本を書いたり、ライブのグッズを宣伝する役ぐらいですが(笑)、やっぱり雑誌やWEBで取材したりライブを観たりというのが元になって、このアーティストに出演してほしいというふうにオファーしたりするんです。
真山 全部のおおもとが雑誌になってるんですね。今まで手がけて記憶に残ってる記事はありますか?
澄川 先ほど挙げた『ラブライブ!』特集号は印象に残ってますね。あと今回の「リスアニ!Vol.24」の『物語シリーズ』の表紙は、前回の「リスアニ!Vol.8」のときの戦場ヶ原ひたぎの表紙と実は合わせているんです。
真山 おお、胡坐かいて、反対向きになってますね。すごい、2012年だから4年越し! でもこういうこだわりってオタク的にはうれしいところなのですごくいいと思います!
澄川 胡坐といえば、「リスアニ!Vol.19」のときに南條愛乃さんに胡坐をかくポーズしてもらって撮ったんですが、読者さんがすごい熱のこもったコメントをくれて「声優さんに胡坐をかかせるなんてすごいと思います!」って(笑)。たしかにかわいかったのでこれはうまくハマったなと思います。
真山 胡坐! かわいいです!
澄川 写真系だと、「リスアニ!Vol.24」では新田恵海さんに冬をテーマに写真を撮ってもらったんですが、撮るときのイメージが“某スキーCMのポスター”。デザインされたものを見たらそのまんまのものが上がってきて、してやったりと思いました(笑)。
真山 ほんとだ! このままポスターで貼ってそうですね。それにしてもこうして聞いたら、何年前の特集とかでもすぐに思い出の仕事がちゃんと出てくるのが本当にすごいと思います。さっきのオタク話じゃないですが、そういう根深い部分と熱意を持って作ってるからこそですよね。
澄川 ありがとうございます(笑)。熱意もそうですけど、やっぱり読者さんから反応があると印象に残りやすいですね。これからも読んでくれる人を大事にした雑誌作りをしていきたいと思います。
真山 「リスアニ!」って裏の裏まで知りたいオタクの中のオタクの方が読む雑誌というイメージがあったので、どんな方々が作ってるんだろうと思っていたんですが、すごく安心するにおいを感じました(笑)。今日はありがとうございました!
というわけで大好きな本・グラビアなどのお仕事にも関わる雑誌の裏側を知ってひとまわり成長した真山さん。これからの活躍が楽しみです!
そんな真山さんの所属するエビ中のニュー・アルバムが発売されます。私立恵比寿中学の3rdフル・アルバム『穴空』は4月20日リリース!
初期から作曲としてエビ中に携わる前山田(健一)さんをはじめ、アニメの主題歌タイアップや曲提供も手がける田村歩美(たむらぱん)さん、フジファブリックさん、そしてなんとあの菅野よう子さんなど、アニソン・ファンにも馴染みのある作曲陣が携わるアルバムになっているようです。ご期待ください!
次回はいよいよリスアニ!WEBらしいテーマ、“アニメ音楽”について、真山さんの好きな音楽を紹介していただきます。こちらもお楽しみに!
INTERVIEW & TEXT BY 大用尚宏(クリエンタ)
PHOTOGRAPHY BY 高橋妙子
●リリース情報
私立恵比寿中学 ニュー・アルバム
『穴空』
2016年4月20日発売
【初回生産限定盤A/Blu-ray(エビ中ヒストリーメドレー LIVE@氣志團万博2015)】
価格:¥4,444+税
【初回生産限定盤B/2CD(さいたまスーパーアリーナLIVE CD(1日目公演のみ))】
価格:¥3,333+税
【通常盤】
価格:¥2,857+税
※全種共通特典 トレカ封入(全9種のうち1種ランダム)
<CD>
01. 埋めてあげたい(Interlude)
02. ゼッテーアナーキー
03. 春休みモラトリアム中学生
04. ポップコーントーン
05. 面皰
06. エビ中出席番号の歌 その2
07. マブいラガタイフーン(Interlude)
08. 夏だぜジョニー
09. MISSION SURVIVOR
10. ナチュメロらんでぶー
11. あな秋いんざ夕景(Interlude)
12. ポンパラペコルナパピヨッタ/五五七二三二〇
13. お願いジーザス
14. 全力☆ランナー
15. スーパーヒーロー
16. 参枚目のタフガキ
●ライブ情報
私立恵比寿中学JapanホールKeikiiiiツアー2016~the snack bar in gakugeeeekai~
4月23日(土)千葉・市原市市民会館
5月1日(日)福岡・福岡サンパレス
5月3日(火・祝)愛知・名古屋国際会議場センチュリーホール
5月5日(木・祝)大阪・大阪国際会議場メインホール
5月8日(日)広島・上野学園ホール
5月14日(土)埼玉・大宮ソニックシティ 大ホール
5月15日(日)香川・アルファあなぶきホール
5月22日(日)北海道・ニトリ文化ホール
5月27日(金)東京・NHKホール
6月4日(土)沖縄・沖縄市民会館 大ホール
6月11日(土)新潟・新潟県民会館 大ホール
6月12日(日)宮城・仙台サンプラザホール
6月19日(日)神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホール
6月25日(土)兵庫・神戸国際会館こくさいホール
7月2日(土)東京・東京国際フォーラム・ホールA
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