REPORT
2016.09.10
『アイドルマスター シンデレラガールズ』のライブイベント「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 4thLIVE TriCastle Story」神戸公演2日目が9月4日、神戸・ワールド記念ホールで開催された。
『シンデレラガールズ』初の大型地方ライブ2日目には、島村卯月役の大橋彩香、多田李衣菜役の青木瑠璃子、双葉杏役の五十嵐裕美、白坂小梅役の桜咲千依、三村かな子役の大坪由佳、前川みく役の高森奈津美、小日向美穂役の津田美波、佐久間まゆ役の牧野由依、諸星きらり役の松嵜麗、安部菜々役の三宅麻理恵、城ヶ崎美嘉役の佳村はるか、2日目から参加の佐々木千枝役の今井麻夏、赤城みりあ役の黒沢ともよ、龍崎薫役の春瀬なつみ、神谷奈緒役の松井恵理子、星輝子役の松田颯水が登場。サプライズゲストとして、渋谷凛役の福原綾香、本田未央役の原紗友里が出演した。
今回のライブが「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 3rdLIVE シンデレラの舞踏会 – Power of Smile -」の映像演出をより進化させ、ステージ上のLEDモニターに『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ』のキャラクターを人間大で表示することで「キャラクターと一緒に歌い踊るライブ」を実現したのは初日にもレポートした通り。2日目は同じ曲でも前日とは違うキャラクターが登場したりと細かな工夫がされていた。
2日目も「とどけ!アイドル」と「ゴキゲンParty Night」からスタートし、セットリストのベースは両日共通だ。衣裳は、杏仁豆腐氏がデザインした『スターライトステージ』1周年記念衣裳の「アクロス・ザ・スターズ」を再現したもの。マーチングバンド的な礼装に、ザ・アイドル衣裳のイメージがある赤いチェック模様を取り込んでいる。赤の鮮烈さと輝かしい白のコントラストが印象的で、ステージ上LEDの映像や色とりどりの照明を背景にしても鮮やかさが際立つ。全員がずらりと並ぶと、その中でも初アイマスライブ参加の春瀬の髪型を含めたビジュアルのキャラクター再現度の高さが目を引いた。
大橋の「S(mile)ING!」は本当に楽しさにあふれていて、「プロデューサーっさーん!島村卯月、これからもがんばりまーす!」は今まで一番元気な呼びかけだったかもしれない。大橋は久々の「S(mile)ING!」に緊張もしたようだが、「(アニメより)もっと先に行った卯月をイメージしました」とのことだった。津田の「Naked Romance」は、ステージを移動する時にあわてないゆったりした足取りで、走るときも動きのかわいさを意識していることを感じる。津田がすごいなと思ったのは、「みんなで(「毒茸伝説」を歌う時の松田颯水のように)悪い顔をしよう」となったときに、「(悪い顔をするのは)津田でいいですか?」という言葉が自然に出てくること。小日向美穂はこんな表情や仕草を見せるし、こういうふるまいはしない、というイメージが確固としてあるのだと思う。その上で、“これは美穂ではなく津田美波”と断って誰よりも悪い顔をしてきちんと笑いを取るのにはプロの仕事を感じる。
「エヴリデイドリーム」の牧野は、オレンジの強い照明の中、センターステージにダンサー2人と登場。逆光気味の中、右手のリボンを左の手首に当てる決めポーズで静止しているのはとても絵になる。右手をとりまくリボンの根本できらきら光るのは指輪だろうか。「アクロス・ザ・スターズ」の背中の大きなリボンが、まゆと牧野にはとてもよく似合う。曲調がワルツ調になるときの、スカートをつまんで舞うフェミニンな感じがまゆらしい。2日目の牧野はよりにこにこしていて、「私のもてる最大限のアイドルぶりを具現化していました」とのこと。『デレステ』でまゆが踊る最新のダンスを積極的に取り入れているのも印象的だった。
高森の「おねだり Shall We ~?」は、猫耳で合わせたダンサー2人との並びが三姉妹のようだ。元々ショーアップされた大階段でのパフォーマンスをイメージした曲だけに、壮麗なキャッスルセットはとてもよく合う。この曲では毎回ニュアンスを変えてくる高森だが、それが一番でるのが「すきありっ」の声。今回はちょっと低いところから入ってくるいたずらっぽい感じで、語りかける相手との距離感の近さを感じる。高森によれば「今日はちょっと強気」とのことだった。「TOKIMEKIエスカレート」で登場した佳村は「神戸のみんな、盛り上がってる〜?」の一言で会場のハートをわしづかみに。佳村もダンスに『デレステ』の最新の振付を取り入れていた。佳村が「ダンサーさんと合わせられる範囲で振付を変えたいです」と志願すると、ダンスの先生やダンサーたちも新しい振付に変えようと対応してくれたそうだ。
2日目のセットリストの流れを一番大きく変えたのは、松田の「毒茸伝説」があったことだろう。数年前の大阪のアニソンコンテストシーンでは、大阪の松田姉妹と言えば知らない者がなかったほど。今回の神戸公演は松田の関西凱旋公演と言ってもいいだろう。メッシュを入れてビジュアルも輝子度を上げた松田の「ひやーはーっ!」の叫びがはらむ狂気一発で会場は星輝子の領域に。神戸公演ではメインステージのセンターに当てる、演者が白飛びして後光が差すほど強い照明が1基あったのだが、色とりどりの照明の中哄笑する松田が激しく発光するのはサイケデリックというか、トリップ感が強い。無尽蔵のパワーと声量で暴れ回り、客席を煽りたてながら扇動者は花道を往く。時に声を裏返らせながら「最後まで叫べ!!」と煽り続けた松田だったが、歌い終えて素に戻ったあと「リハとはまったく違うことをたくさんやってしまいました…」と恐縮していたのがいかにも彼女らしい。
「Twilight Sky」で青木が「輝くお城を今日も駆け抜けていくぜ!」と叫ぶと、会場は青とオレンジのサイリウムで夕暮れの空に染め上げられる。1stライブでファン発の企画としてスタートした光の演出だが、今では青木からもここは当然やってくれるよね、という信頼を感じる。今回のステージは滑り込んでの膝つきエアギターもあり、これまで重ねてきたトワスカの集大成的ステージ。花道を戻るとき、「それじゃつまらないよね」で一回振り返ってのキメが入るのがびしっと決まって気持ちいい。
「みんなに甘さ、届けまーす!」はもちろん大坪の「ショコラ・ティアラ」。ステージにダンサーたちが次々と登場し、客席にマシュマロを投げ込んでいくのは昨日と同じ演出。ところが花道に現れるダンサーにまぎれて、次の曲で登場するはずの松嵜がマシュマロ投げ娘として登場!試行錯誤しながらマシュマロを幾つも同時に投げこむフォームは野球を愛する彼女ならでは?前日の流れでは、最後は大坪がかごの底のマシュマロを見つけてパクリと食べたのだが…ここで大坪が取り出した白いふわふわしたものが妙に大きい。その正体は肉まん!神戸は三宮〜元町あたりで一貫楼、老祥記、551の蓬莱などのうまい肉まんが購入できる肉(豚)まんシティでもある。ライブレポートのメモに「肉まん食べやがった!」と書いたのは初めての経験だった。
続く「ましゅまろ☆キッス」では、お返しに大坪がきらりのステージに参加。「大好きに私もいれて」のフレーズに(ええんやで)という顔をしたり、手をつないでくるくると回ったり。大坪は歌詞に合わせて「どこどこー、ふふふっ」「たいへんっ」「ぷにぷに」といった合いの手を入れていくのだが、このあたりのタイミングと表情の見せ方が大坪は抜群にうまい。動きや演出は松嵜のプロデュースとのこと。マチ★アソビなどのローカルなステージでいろいろと工夫をしてきた松嵜の意見が、周年ライブのパフォーマンスにも活かされるようになったのは感慨深い。だがそんな素敵なステージにMCでオチをつけたのが大坪。指先に肉まんの残り香が残るまま手をつないで踊っていたことを明かすと、流石にマジで? という顔になる松嵜だった。
ステージ映像演出ともっとも相性が良いパフォーマンスを見せるのが、桜咲の「小さな恋の密室事件」だ。個人的にちょっと嬉しかったのはバックダンサーとして映しだされるキャラクターが前日とは変わって、蘭子がいたこと。歌鈴や森久保の表情は楽曲にあっているし、リアルダンサーのちょっと攻撃的な感じと涼の雰囲気はぴったりだったのだが、やはりこの曲と小梅=桜咲と蘭子の組み合わせはものすごくしっくりくる。蘭子梅、早くライブで見たい。『デレステ』では「小さな恋の密室事件」がライブ直近に配信されたこともあり、直前までダンサーたちとダンスの再現を詰めていたとのことだった。楽曲の終わりはスクリーンにノイズが走り桜咲の姿とともにかき消えるように終了。ラストの瞬間に笑い声が聞こえたような、キャラクターたちがノイズに消える時もビジュアル的なエフェクトがあったような気がしたのだが、一瞬過ぎて確認はできなかった。心霊ビデオを見ていて何か違和感を覚えたような気分なので、早くBDで確認したい。
それぞれの意外な一面を見せてくれたのが、牧野、津田、青木の「Love∞Destiny」だ。この曲での津田は妖艶そのもの。憂い、誘い、惑わすような感じで、客席に背中を向けて腰を揺らし、身体のラインを指先でなぞる動きにはぞくっとさせられる。津田が「Naked Romance」やMCで小日向美穂らしさをどこまでも大事にしていた伏線があるからこそ、このステージも美穂が新しい表現に挑戦しているんだと受け取ることができたのだと思う。面白かったのは青木の表現。青木はどんな大人の表情を見せてくるのかとおもいきや、歌声自体はかなりかわいく伸びやか。多田李衣菜がちょっと背伸びしながら歌っているのだが、歌の世界を全部理解できてはいないような、そんな雰囲気だ。「Love∞Destiny」イベントコミュを思い出す感じだが、5人ではなく3人で歌うこのバージョンではそのギャップにより個性が際立ってとてもよい。だがそんな2人に挟まれてなお、牧野のパフォーマンスは神がかっていた。普段の牧野とまゆからは想像できない、髪を振り乱すような激しいダンス。情感だけでなく、『デレステ』のまゆの難易度の高いダンスも積極的に取り入れており、このステージに賭ける牧野の気持ちが伝わってきた。まゆセンターとしての新しい表現に酔いしれつつ、いつか牧野と渕上が両翼のフロントに立つ「Love∞Destiny」も見てみたい!と改めて感じたのだった。
「生存本能ヴァルキュリア」は2日目はハイファイ☆デイズ組+松井、松田という組み合わせ。物語的なバックボーンはあまりなく、リアルロボットアニメの主題歌になりそうな疾走感がある楽曲に自分とキャラクターをどう対応させるか、というテーマだろうか。舞うような動きの中で「眼力」で魅せる黒沢など、ハイファイ組の楽曲によるギャップが見られたのも良かった。だがやはりこのステージの基調になっていたのはセンターの奈緒であり松井だった気がする。楽しくて仕方ない、という感じのニカッとした笑顔の人、の印象が強い松井のクールな、あるいは挑発的な表情はとても新鮮で、歌い終えた松井の「みんなー、かっこよかったー?」がいつもの松井で、ちょっと安心してほっこりしたほどだ。もうひとつは「生き残れ!」の力強いソロを担当した松田の強烈な印象度。初日は千菅春香、2日目は松田颯水のまったくタイプの違う魂のこもったソロを聴き比べられることのなんと贅沢なことか。やはり松田の「叫び」には特別なものがある。
指定曲を歌う5人をユーザー投票で決定する「Starlight Casting」コーナー、2日目の指定曲は「純情Midnight伝説」。5位の黒沢と4位の佳村が手をつないで立ち位置に向かうのが微笑ましい。以下順位は3位神谷奈緒、2位多田李衣菜、1位星輝子。歌唱全体のムードは明るく元気でお祭り感に満ちたものだった。青木が特にノリノリだったが、松田と松井もとても楽しそうに歌っていた。たぶん佳村が一番「かかってこいよ」感があったのが面白い。歌い終えた黒沢は「楽しかったー!かっこ良くは歌えないけど楽しく歌わせていただきました」と満足気だ。楽しいステージとは一転ちょっとウェットな感想を漏らしたのが松田で、「星輝子ちゃんにあげられる初めての一番でした。輝子ちゃんに投票してくれた皆さんありがとうございました」と涙混じりに語っていた。「毒茸伝説」があまりに強烈なアクセントとなるためにジョーカー的な登板も多い輝子と松田だが、ふたりがファンの声で真ん中にたった日として今日のことは覚えておきたい。
「Tulip」の楽曲とMVには、演者の違った一面を引き出す力があるのかもしれない。「それでは聴いて下さい!」と叫んだ佳村がちょっと照れながらも投げキッスをびしっと決めたのはセンター担当の自覚故だろうか。楽屋で投げキッスについて思い悩んでいたであろうことがちょっとしたやりとりから伺える。佳村がキメどころの「なんてね」をたっぷり溜める感じは実にカリスマだ。キュートメンバーが多いこともあって全体としては陽性の「Tulip」なのだが、どこか遠くを見つめるような大坪の風情や、客席をまっすぐ射抜くように見つめる三宅の姿はやはり新鮮だ。歌い終えたあと「もう一度投げキッスやってよ」と振られた佳村が「じゃあみんなでやろう!」と逆襲したり、みんなで投げキッスをして次の曲振りのはずが、三宅らが裏切ってステージ上が(主に佳村が)紛糾したりと、大人の曲調とは違ったわちゃわちゃした仲の良い引きだった。
そんなちょっと散らかった空気の色を、笑顔ひとつと「いくよー!」の叫びで塗り替える力が松井にはある。「2nd SIDE」の「虹色橋」のフレーズに合わせて客席がサイリウムを虹色に変えると、松井は大感激の笑顔で「神戸にも、きれいな虹色橋かかったなー!」。見ている側がうれしくなるぐらいの笑顔に客席も応えようとするから、毎回美しさと盛り上がりが増していくのも納得だ。つい盛り上がりポイントに目が行きがちだが、Aメロの振付が『デレステ』バージョンになっていたりと、隠れた努力も忘れない松井だ。
「それは、ななやで〜!」と関西仕様で登場した三宅の「メルヘンデビュー!」。曲中にはスクリーンの映像で間違い探しをするコーナー?があったのだが、初日は3問中3問正解、2日目はさっぱりわからず5問中1問正解と完全に打ち合わせ無し。そんな三宅のステージだが、2日目は「体力もつのは一時間」のあたりのぷるぷる感がどこまで演技なのかわからないぐらい、体力的には結構キツそう。三宅がすごいのは「まだまだ行けますよー!」から本当に持ち直していくこと。会場が本気で頑張れーと支えて、きっちり歌いきったラストで三宅が「おわりよければすべてよし!」と締める。このリアル安部菜々感は狙っては出せない味だろう。
そんな三宅がステージ下で「(会場を)あっためてくるね」と伝えたのが、「あんずのうた」の出番を待つ五十嵐だ。ステージ上のパフォーマンスとお城のビジュアル演出に目が行きがちだが、お城の上空にニコ生風のコメント弾幕が投影されているのは2日目初めて気がついた。2日目「あんずのうた」のキーになったのが、LEDモニターに投影されるキャラクターモデルたちだ。まず、バックダンサーが三好紗南、荒木比奈、大西由里子という組み合わせ。五十嵐は「後ろに働かないオタ的な子たちがいて杏にボス感があった」と表現していたが、歌詞の「ゲーム漫画アニメー」に対応するサブカル好きダンサーズというわけだ。そして見せ所はやはり替え玉大作戦で、歌っている五十嵐の「替え玉」として杏が登場するという多重構造。3Dモデル自体は他のダンサーたちと同じなのだが、背景を真っ暗にすることで杏が浮かび上がってそこにいるような、AR的な視覚効果を出していた。それにしても『シンデレラガールズ』の個人曲で最初に観客前で歌われたこの曲が未だに鮮烈で、もっとも盛り上がる曲であり続けるのは驚くべきことだ。
メンバー的に2日目の真打ち登場感があったのが今井、黒沢、春瀬による「ハイファイ☆デイズ」だ。オリジナルメンバー中3人による歌唱は2日目のみ。黒沢の圧倒的な運動量と表現力、今井のハイスパートでキレの抜群なダンスについては7月の新木場イベントでも堪能できたが、新顔の春瀬のビジュアル、動き、空気全体が元気いっぱいな子供、龍崎薫そのものなのは特異な個性だ。各人の個性がそれだけ違っても全体のベクトルは全力で前向きなエネルギーで包まれ統一されているのは素晴らしかった。黒沢が「特別なものをプロデューサーさんから頂いた特別な曲なので、すごく一生懸命練習して、仲の良いメンバー同士で話し合いながらやりました」と語った中にも楽曲への思い入れを感じた。
そして、裏の裏とはこのことか、完璧なサプライズで観客を手のひらで踊らせたのが「Snow Wings」だ。冒頭、スクリーンに表示されたのは「Snow Wings 大橋彩香」のソロ表示。ユニット曲をソロで歌うのは意外だが企画としてありだし、会場物販の限定CDが「Snow Wings」のメンバーソロバージョンだったこともなるほど感を後押ししていた。歌い出しからのロングソロ(当然だ)で大橋ならではのボーカルの表情豊かな表現力を楽しんでいると、上手と下手に表示されていた渋谷凛と本田未央の映像の前に、瞬時に福原綾香と原紗友里が現れて歌い始めた時の驚きたるや。大橋のソロに圧倒的な存在感があるからこそ生まれた意識のエアポケット。そこに2人はまさに「魔法のように」現れた。取材席が会場後方だったからどうにか全体が見渡せたが、アリーナ前方で大橋に集中していたら何が起こったかわからなかったに違いない。会場に時間差で波のように広がる驚きと喜びの津波。いるのが当たり前の3人だったからこそ、揃って笑顔をはじけさせることの尊さをあらためて感じた。大橋が間奏で「凛ちゃんと未央ちゃんが来てくれました!」と嬉しそうに報告したが、大橋はずっとキャラクターの名前で呼び続けていたのが印象的だ。余談だが、凛とユニット・トライアドプリムスのメンバーとして活動する神谷奈緒役・松井がMCに呼びこまれた際に「凛だー!」とぱたぱた尻尾を振りそうなぐらい嬉しそうに入ってきたり、最後のMCで松井が「凛も来てくれて」「凛も加蓮もいないステージは初めてで」と語っていたりで、松井がトライアドのことをすごく大事にしていることが伝わってきた。
「咲いてJewel」は今日は青木、今井、桜咲、松井という4人編成。照れの要素なくまっすぐかっこいい松井がやはり新鮮だったが、クールにキメる楽曲の中で、しなやかな動きの今井とずばずばっと直線的に疾くかっこいい青木の動きの質の違いなどが感じられた。「きみにいっぱい☆」は黒沢、春瀬、松嵜、松田、佳村の5人で、黒瀬と春瀬、それに松田を加えた3人が元気いっぱい、弾けるような動きで遊びまわるようなステージングを見せた。キャラクターのイメージを重ねるなら、きらりと美嘉の周りを子どもたちが走り回っているようだ。特に春瀬が初ステージの硬さをまったく覗かせずに「まるで子どものようにはしゃぎまわる感じ」だったのは、作りこみだとしたら素晴らしいし、素だとしたらなおとてつもない才能なように思えた。曲終わりに次曲の「明日また会えるよね」組が登場したのだが、大坪を筆頭に彼女たちもまたにっこにこだった。
「明日また会えるよね」は全員キュート属性アイドル7人による多幸感あふれるステージ。いつまでもひたっていたくなるような幸せな時間だっただけに、ああ、明日はもうライブはないんだなと思うことが寂しい。「Precious time!」の合唱に「それな!」みたいな反応をしてしまうことに、あまりの幸せさに語彙が少なくなっていることを感じる。そしてラスト前、エンディング感のある楽曲として選ばれたのは「メッセージ」。ひとつめの「お城」の物語を締めくくるのには、この曲のきらめき感が一番ふさわしかったように思う。
そしてライブ本編ラストは「GOIN’!!!」だ。個人的にはものすごく楽しそうな松田と、ここぞとばかりに圧倒的なエネルギーを爆発させる黒沢の姿が特に印象的。神戸のアリーナを埋め尽くした黄金は星の海のようで、忘れがたい光景となった。
アンコールの一曲目は『スターライトステージ』1周年記念ソングである「BEYOND THE STARLIGHT」。前向きな王道感が強いバンドサウンドでありながら、どこかちょっと毛色が違う新しいテイストを感じるのは、MONACAの中でも『デレステ』以前はアイマスイメージがまったくなかった石濱翔の起用も大きいかもしれない。星々の海を超えた、輝きの向こう側にあるものが何かであるのかは、10月に控える残りふたつの城で見えるはずだ。
ここで最後はやっぱりあの曲で……というのが前日の流れだったのだが、「ちょーっと待って!」と割って入ったのは我らが千川ちひろさんだ。ここで新たに紹介されたのが、10月13日に発売されるPlayStation VR専用ソフト『アイドルマスター シンデレラガールズ ビューイングレボリューション』の映像だ。シンデレラたちにとってはファーストライブが行なわれた舞浜アンフィシアターの円形ステージを舞台に、ステージで歌い踊るアイドルたちのライブをVRで体験できるソフトだ。大橋が福原と原紗友里のサプライズ組も呼びこんで「初披露したいと思います!」と宣言したのは、『ビューイングレボリューション』の主題歌「Yes! Party Time!!」だ。イントロからコミカルで心が浮き立つようなパーティナンバーで、様々な要素が入ったなんとも欲張りで贅沢な楽曲だ。大橋がソロでコミカルに歌った後(盛り上がりすぎて歌詞は聴き取れなかった)に「声もうわずるけど〜」と全員で続けたり、クライマックスの「ワンツースリーGO!」のカウントアップに合わせて銃を撃ったりジャンプしたり。「もーいっかい!」でアクションをおかわりしたりのギミックが満載でとにかく楽しい。それでいてしっとりしたパートでは「バラートのあとにはシングルメドレー 迎えに来ないで最終ベル 胸のチャームがこう呟くの まだまだ一緒にいたい」と、ライブ終盤の心情をここまで鮮やかに描けるのかと驚くほど。これは早くフルで聴きこみたいと思わされる初披露だった。
ラストナンバーはもちろん、全員そろっての「お願い!シンデレラ」で締め。サプライズゲストやメンバーの一部変更はあったものの、基本は共通セットリスト、両日30曲弱という構成でこれだけ完成度と満足度の高い地方公演を組めるのは、ライブコンテンツとしての『シンデレラガールズ』の成熟を感じる2日間だった。最後に、全員の締めの挨拶を一言ずつ抜粋して紹介しよう。
津田 神戸、出しきりましたー!でももっとステージにいたいと思うのは美穂ちゃんとプロデューサーさんたちのおかげだと思います!
青木 いつもより130%で頑張ろうと思ってたら、200%で頑張れました!
黒沢 LVの皆さんも神戸の皆さんも、これからもみりあの成長を見守っていて下さい!
高森 新しい曲にたくさんチャレンジさせて頂ける2日間で、気持ち新たに引き締まる思い、です!
松井 シンデレラガールズは好きかー?みんな、大好きだー!また会おうー!
松嵜 私きらりのことも喜ばせてあげたいんです。きらりと杏ちゃんにお誕生日おめでとうって言ってくれませんか?
一同 きらり、杏、お誕生日おめでとー!
杏 ありがとぅ!(男前)
今井 素晴らしいステージに立たせて頂いて感謝、感謝です。今後もよろしくお願いします。
五十嵐 皆さんがいないゲネはただしんどいんです。でもいま、とってもいい汗かいてます! ほんとに楽しかったです。ありがとうございました!
牧野 今日は本当に楽しくて嬉しくて幸せな時間でした。「まゆ、今日からまた頑張れます♡」
佳村 ステージが怖い時も思いますが、そういう時はみんなの笑顔を思い浮かべて、心を込めることだけは大切にしています。
三宅 うさみん星はありまぁす!神戸公演にありました!すごく楽しい2日間でした!
大坪 幸せを与える側も幸せなんだなとわかりました。豚まん、おいしかったです!
松田 我は、輝子ちゃんは、燃え尽きました!またみんなと燃え上がれるように頑張るので、みんな帰りはきのこ食べて帰れよ。
桜咲 またみんなとステージに立てるように、小梅ちゃんとあの子と頑張ります。「ありがとう、だいすき。」
春瀬 薫ちゃんと私の初めてのステージがこんなに大きくて、皆さんの笑顔がみられてすごく幸せでした。
原 今日はプロデューサーの気持ちでステージを見つめてステージに上がりました!
福原 どの曲もかわいくてかっこよくて最高!プロデューサーさんがアイドルが好きなのと同じぐらい、私もアイドルたちが大好きだ!
大橋 次のお城にバトンを渡せたと思います。もう泣きませんよ!ますます盛り上がる『シンデレラガールズ』をよろしくお願いします!
Text by 中里キリ
THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 4thLIVE TriCastle Story 神戸公演2日目
2016.09.04 神戸・ワールド記念ホール セットリスト
M01:とどけ!アイドル(THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS)
M02:ゴキゲンParty Night(THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS)
M03:S(mile)ING!(大橋)
M04:Naked Romance(津田)
M05:エヴリデイドリーム(牧野)
M06:おねだり Shall We ~?(高森)
M07:TOKIMEKIエスカレート(佳村)
M08:毒茸伝説(松田)
M09:Twilight Sky (青木)
M10:ショコラ・ティアラ(大坪)
M11:ましゅまろ☆キッス(松嵜、大坪)
M12:小さな恋の密室事件(桜咲)
M13:Love∞Destiny(青木、津田、牧野)
M14.生存本能ヴァルキュリア(今井、黒沢、春瀬、松井、松田)
M15:「Starlight Casting」純情Midnight伝説(松田、青木、松井、佳村、黒沢)
M16:Tulip(五十嵐、大坪、高森、三宅、佳村)
M17:2nd SIDE(松井)
M18:メルヘンデビュー!(三宅)
M19:あんずのうた(五十嵐)
M20:ハイファイ☆デイズ(今井、黒沢、春瀬)
M21:Snow Wings(大橋、福原、原紗友里)
M22:咲いてJewel(青木、今井、桜咲、松井)
M23:きみにいっぱい☆(黒沢、春瀬、松嵜、松田、佳村)
M24:明日また会えるよね(大橋、五十嵐、大坪、高森、津田、牧野、三宅)
M25:メッセージ(大橋、青木、五十嵐、桜咲、大坪、高森、津田、牧野、松嵜、三宅、佳村)
M26:GOIN’!!!(THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS)
アンコール
EC01:BEYOND THE STARLIGHT(THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS)
EC02:Yes! Party Time!!(THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS)
EC03:お願い!シンデレラ(THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS)
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