REPORT
2016.06.27
2016年6月4日、パシフィコ横浜国立大ホールにて、“新田恵海 LIVE 2016 EAST EMUSIC〜つなぐメロディー〜”が開催された。昨年秋以来となる声優・新田恵海のソロライブで、この日初披露となる新曲を含めて全19曲を歌った。さまざまな想いが込められた渾身のライブの模様をレポートする。
緊張感も吹き飛ばす魂の歌声!
会場には数多くのファンが詰めかけ、開演前から場内BGMにコールを入れるなどすでに温まっている状態。みんながこのライブで直接彼女の歌声を聴ける時を待ちわびている。そんな期待と、わずかな緊張感が漂う中、ライブは幕を開けた。
注目の1曲目は「盟約の彼方」。スクリーンに映し出された無人の荒野をバックに登場した新田恵海は、背景も相まって孤独に戦う戦士といった雰囲気だ。「わたしらしく在るため もう迷わない」——そんな歌詞の曲を最初に持ってきたところに、今回のライブに懸ける彼女の一種の覚悟のようなものが感じられる。
2曲目は一転して、定番の盛り上がり曲「EMUSIC」だ。これは今回のライブのタイトルにも冠されていることからもわかるように、新田恵海の音楽——EMUSICを象徴するような曲である。観客の声を合わせたコールが会場に響きわたる。もう緊張感も不安も吹き飛んで、みんな全力でライブを楽しむモードに引き込まれていった。「大きな声で、せーの!」「EMUSIC!」のファンとの掛け合いもバッチリで、見事な呼吸というしかない。
曲が終わるとまずは最初のご挨拶。「パシフィコ横浜国立大ホール、ここは私にとって大切な思い出がある場所です。今日ここで、みなさんといっしょに“EMUSIC”を奏でられるということが、本当にうれしいです!」と、この場に立てた喜びを語る。
3曲目は「探求Dreaming」。これは彼女の2ndシングルであり、アニメ『探偵歌劇 ミルキィホームズ TD』のエンディング主題歌でもあった曲だ。続く曲は「優しい世界そして未来へ」で、パワーあふれる楽曲が続いていく。
すると今度はちょっと趣きを変え、雪の季節の歌、「言葉より強く」を歌う。会場には観客の白いサイリウムが輝き、ちょっとした雪景色を作り出していた。
さて、その次には「普段なかなか歌わない曲」と前置きして、「HEARTFUL WISH」を披露。これはPSPのゲーム『リトルウィッチパルフェ 黒猫魔法店物語』の主題歌であり、彼女が歌手として最初に歌った曲である。まさかここでこの曲を聴けるとは! という感じだが、思いもよらず新田恵海の原点ともいえる曲を再確認することができた。続く「想いよ届け」もゲームの主題歌だ。
「パシフィコ、まだまだ行けるよね? みんなで行こうぜ、“想像を超えた世界”!」と元気よく歌いだしたのが8曲目「想像を超えた世界」。何度も拳を天に突き出し、力強く歌い上げる。
さすがに張り切りすぎたのか、曲が終わると「声がカスカスになるほど全力で歌っています!」と言いつつも、「でも私に手加減は似合わないと思う」と彼女らしく最後まで全力で走ることを宣言する。
バンドメンバーの紹介があった後、前半最後の曲は「スピカ」。ステージの階段に腰を掛け、しっとりと歌う。背景には無数の星がきらめいていた。
曲が終わると彼女は星空の下に消え、インターバルのムービーが流された。映像は「過去・今・未来」全てを「つなぐ」というテーマで制作された撮り下ろし映像であり、新田恵海の表現力の高さや強いメッセージ性、アーティスト性が見事にパッケージされた4分間だった。
みんなとえみつんを“つなぐメロディー”
スクリーンにひまわりの花が映し出されると、チュチュスカートに衣装替えした彼女が登場。一気に大きな歓声が上がる。曲はもちろん「笑顔と笑顔で始まるよ!」だ。彼女のデビュー曲であり、アーティスト・新田恵海はここから始まった。後半のスタートにふわさしい曲に、黄色のサイリウムで観客も大盛り上がりである。
続いての「Rainy*flower」は黄色い傘を持って、軽快なステップで歌う。深呼吸の「はぁーっ」という部分がかわいらしい。最後は傘を閉じてダンスも披露した。「後半は楽しい曲をたくさん歌いたい」ということで、次の曲は頑張るみんなへと、日常を描いた「Dear everyday」だった。
歌い終えると、突然改まった表情で「みなさんにちょっとお話したいことがあります」と彼女は切り出した。
途端に、会場に緊張が走るのがわかる。一体、えみつんは何をいうつもりなんだろう……固唾を飲んで次の言葉を待つ。
「(1stライブの時に)『WONDER! SHUTTER LOVE』という曲で、私が首から下げていたカメラで実際に写真を撮っていたんですが、その写真がですね、なんと……一枚も撮れていませんでした!」
バンド(ジャジャーン♪)
深々と頭を下げるえみつん。前回のライブではステージ上で新田本人が写真を撮ったのだが、トイカメラのフィルムの巻き取りがうまくいかず、全然写真が撮れていなかったそうだ。悲しいお知らせだが、なぜかみんな嬉しそう。
「今回はそのリベンジの意味も込めて……なんと、デジカメを買ってもらいました!」
バンド(ジャジャーン♪)
……いちいちバンドの効果音が入る、このくだり一体なんなん?(笑)。まあそんなわけで、次の「WONDER! SHUTTER LOVE」ではバンマスとふたりでステージ上から客席の写真を撮りまくり。デジカメなので、今度こそみんなの笑顔が確実に撮れているはずだ。
そして次は「いっしょに歌ってください」と呼びかけて、「きらめきを夢みて」を歌う。スクリーンに歌詞が映され、みんなといっしょに曲を完成させた。
ライブ本編最後の曲は、「私は運命だったり、流れだったり、命だったり、何よりもこうして私たちが出会えた“縁”というものを大切に、これからもつないでいきたいと思って、この曲の歌詞を書かせていただきました」という「つなぐメロディー」。“過去と今”、“今と未来”、“みんなと私”をつなぐ曲……これを彼女は最後の曲に選んだのだった。
「今、ここにいて、歌っている私が、私の全部です」
アンコールの大歓声に応えて、再登場した彼女は「世界ノ全部ガ敵ダトシテモ」を静かに熱く歌い上げる。なかなか歌う機会がないという曲だが、「今日は私にとってとても特別な日なので歌わせてもらった」という想いの込められた選曲だった。
続いての曲は「世界で一番元気のいい“CHA-CHA-CHA”を聴かせてくれますか!?」との煽りから、「NEXT PHASE」。もうみんなこの時を待っていたとばかりに、全力で“CHA-CHA-CHA CHA-CHA-CHA マエニマエニ 進メ!”とコールを叫んでいた。
そして一旦、彼女は舞台から姿を消した後、鳴りやまぬ歓声に応えて再び姿を見せる。
ダブルアンコールではこのライブのために彼女自ら作詞・作曲したという初披露の新曲、「暁」を披露。それは彼女の魂の叫びのような、アーティスト・新田恵海の凄さを改めて再認識させるバラードだった。
「今、ここにいて、歌を歌っている私が、私の全部です。本当はすごく情けない姿をみんなに見せるのは後ろめたい気持ちもあるんだけど……。不安だったり、希望だったり、いろんな感情が日々の中にあると思います。だけど、私は誰かひとりでも私の歌を聴きたいといってくれる人がいる限り、絶対に歌うことをやめません。何があっても、歌だけは絶対に捨てない!」
最後にそんな決意を表明した彼女は、とても晴れやかな表情に変わっていた。もちろん、会場のファンも暖かい拍手でこれに応えるのだった。最後の最後の曲は「OURS POWERS」で、全ての想いを解き放ってライブは幕を閉じた。
ライブ終演後、会場のあちこちから「これからもえみつんを支えていこう」という声が聞かれた。この声がある限り、きっと彼女はこれからも歌い続けることができるだろう。
7月31日には神戸国際会館こくさいホールで、“新田恵海 LIVE 2016 WEST EMUSIC〜つなぐメロディー〜”が開催される予定。今度は関西で、彼女がどんなライブを見せてくれるか注目だ。
Text By 金子光晴
“新田恵海 LIVE 2016 EAST EMUSIC〜つなぐメロディー〜”
6月4日(土)パシフィコ横浜
セットリスト
M-1 盟約の彼方
M-2 EMUSIC
M-3 探求Dreaming
M-4 優しい世界そして未来へ
M-5 言葉より強く
M-6 HEARTFUL WISH
M-7 想いよ届け
M-8 想像を超えた世界
M-9 スピカ
M-10 笑顔と笑顔で始まるよ!
M-11 Rainy*flower
M-12 Dear everyday
M-13 WONDER! SHUTTER LOVE
M-14 きらめきを夢見て
M-15 つなぐメロディー
EN-1 世界ノ全部ガ敵ダトシテモ
EN-2 NEXT PHASE
EN-3 暁
EN-4 OURS POWERS
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