REPORT
2016.06.15
6月4日、fhánaの全国ツアー“What a Wonderful World Line Tour 2016”の追加公演がZepp DiverCityにて開催。fhánaの世界観を凝縮したステージに、会場のファンも一体となって酔いしれていた。
音と光で作り上げた、提示したい世界観
開演前、ステージ上には楽器のほかに無数のLEDライトの柱が。BGMの音量が大きくなるにつれて徐々に暗転し、ブルーに照らされるステージ。やがてLEDライトに明かりが灯り、メインステージが照らされストロボも焚かれる。3~4分ほど、たっぷり時間を使って世界観を作り上げたのちに、メンバーがステージに登場。すっとtowana(Vo)がスタンドマイクの前に立ち、「The Color to Gray World」からライブスタート。イントロでは、逆光に4人の姿が浮かび上がる。towanaのハイトーン・ボイスが光の矢となって暗闇を切り裂いていくのを示すかのように、1サビから徐々にフロアが照らされていく。そしてステージ奥の幕が虹色に染まったかと思ったら、一瞬の暗転ののち「虹を編めたら」へと繋がる。メロ部のtowanaと佐藤純一(Key/Cho)との掛け合いのコンビネーションのよさが、楽曲の世界へとスッと会場を引き込んでいく。それを示すかのように、フロアからは右手が上がり、サビではtowanaがそのすべてとぐるりと目を合わすようなしぐさも。この曲と「コメットルシファー ~The Seed and the Sower~」では、スカートのレース部をひらひらさせて舞いながら歌うtowana。歌声はもちろん、そのパフォーマンスも気持ちのままに心の中から湧き出てきたものをそのままアウトプットしているかのようだ。「tiny lamp」でtowanaが再びフロア最前と目線を合わせると、必殺ナンバー「divine intervention」で怒涛のアニメ主題歌4曲連続のラストを飾る。いつしかステージ上は紅く染まり、その効果も相まってフロアは序盤のクライマックスを迎える。
曲明けに一礼すると、本公演初のMCタイム。「ついに、このときが来ました!(kevin mitsunaga(PC/Sampler))」とメンバーからもこの日を待ち焦がれた言葉が聞かれ、さらには「今日は、すげー長いんで!(yuxuki waga(Gt))」との宣言も飛び出し、場内にさらに期待が高まる。
と、気づけば佐藤がギターを抱え、最新アルバムの中でも随一のロッキンさを誇る「little secret magic」をツインギターで披露。towanaがスカートひらりと最前を煽れば、yuxukiのギターソロもかっこよくキマり、サビでのジャンプを裏でkevinが一緒に飛んで煽っていたりと、抜群のチームワークを見せてくれた。「Critique & Curation」は1コーラス目を佐藤が歌い、towanaが担当する2コーラス目に入ったところで、照明が青から黄色にサッと切り替わり、ターンチェンジを視覚的にも明確にしていた。そしてダンスナンバーらしく「c.a.t.」ではクラップで盛り上がり、「Antivirus」ではメインのスタンドマイクのほかにラジオボイス用のマイクも活用。ブルーの照明とともに空想的な世界観を作り上げ、浮遊感とともに「lyrical sentence」へと続く。そして「いつかの、いくつかのきみとのせかい」のイントロではkevinとtowanaがクラップを煽り、同時にステージは水色の世界へと変貌。ハイトーンボイスなのにトゲなくじんわり聴かせるボーカルで、温かな空間を作り出していく。
MCでは、佐藤から5月5日にfhánaが結成5周年を迎えたとの話題が切り出されると、それを思い返しての思い出話に花が咲くステージ上。そんな“はじまり”を思い返すようなトークのあとに告げられた次の曲のタイトルは、「ケセラセラ」。彼らのデビュー曲を、この日はウッドベースを用いて少しジャジーなアレンジで披露。原曲の持つ温かみと郷愁が、ともにより増幅されたように感じられた。そこから2曲、「追憶のかなた」「ホシノカケラ」とバラードが続く。この2曲ではtowanaは座って歌い上げ、yuxukiも座ってのギター演奏を披露していた。そしてミドルナンバー「街は奏でる」のサビで、ようやく明るさを取り戻すステージ。長い夜が明けたかのように、間奏で佐藤からkevin、yuxukiと順に少しずつサウンドに加わっていくのも、灯がともる感があっていい。続く「Cipher」でも、フロアの盛り上がりはじわじわと増していった。
曲が終わると、このブロックの趣旨を「『Cipher』はfhánaのすべての歌詞を書いてもらっている林 英樹さんに初めて書いてもらった曲で、『街は奏でる』はtowanaが最初に歌ったfhánaの曲。『ケセラセラ』も含めて“ここから始まった”曲たちです」と佐藤が説明。さらに最新アルバムタイトルや曲タイトルに込めた意味についても続け、最後には
「人と人ってわかりあえないし、人生に意味なんかないかもしれない。でも、だからこそ一周回って希望があるかも。演奏してて心が通じあってるなと感じるときがあるから、分かり合える瞬間は確実にあると思う」と。そんな佐藤のほうを向き、じっと耳を傾けるメンバーたち。そして続ける。「僕たちの作った音楽を聴いてくれている間っていうのは、僕たちみんなの心が繋がっている気がする。そんな音楽を、こうして共有できて誇りに思います」と。
そんな語りからのアルバムリード曲「What a Wonderful World Line」は、音盤の2曲目として聴くのとではまったく感じ方が違った者も多かったことだろう。ステージ奥の幕がアルバムジャケットで使用されている黄色・ピンク・水色・青の4色に染まったこの曲、2サビの入りではフロアの奥や2階席にまで届くようにぱあっと笑顔と歌声が広げられ、Dメロの最後にライトがフロアを照らした瞬間、ステージとフロアとが“わかりあえた”ような、そんな希望さえ感じられたのだ。そして続く「Relief」では、フロアはイントロからクラップで盛り上がる。それを受けてステージ上のボルテージも徐々に上がり、後奏では各パートがバトルするかのような見せ場を作り出す。
そしてここからライブはラストスパートへ。「ワンダーステラ」でもう一段階会場全体の熱気を上げると、こちらも鉄板ナンバー「星屑のインターリュード」へ。フロアの一体感は間違いなくこの日いちばんのもので、towanaもサビ前のコーラスを発するフロアからの声を受け止めてから、サビへと突入する。また、1分近くある後奏もこの曲は聴きどころで、フロア上のミラーボールが作り出す満点の星空の中で繰り広げられるサウンドプレイは感動モノだ。その余韻も残しつつ佐藤のピアノソロから始まったラストナンバー「white light」のサビでは、四筋のスポットライトがメンバー4人を照らし、towanaも最後の最後まで、まさしく絶唱と言えるような歌声を披露。フロアも彼らの奏でる音にじっと聴き入り、この4人の作り出す音の世界に、誰もが最後まで魅せられていた。最後は、佐藤のピアノソロとともにひとりずつメンバーがステージを降り、演奏しきったところで一礼ののち佐藤も降壇。4人のステージは、ここでひとまず完成を見た。
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