REPORT
2016.03.04
『アイドルマスター シンデレラガールズ』のWEBラジオ「CINDERELLA PARTY!(以下、デレパ)」の公録イベント“CINDERELLA REAL PARTY 03 ~あつまれ!プロデューサー すてきなパレードin らんらんホール~”が2月28日、東京・よみうりランド内らんらんホールで開催され、番組主宰(パーソナリティ)で本田未央役の原紗友里、多田李衣菜役の青木瑠璃子、ゲストの橘ありす役の佐藤亜美菜、速水奏役の飯田友子、片桐早苗役の和氣あず未、大槻唯役の山下七海が出演した。
イベント開始とともに、会場奥の壁面がゆっくりとオープン。晴天の野外の光が眩しく差し込むと、逆光の中思い思いのポーズを決めた6人が登場。ステージに歩み出た6人がバズーカで金銀テープを射出するという公録とは思えないド派手な演出が行なわれた。今回の会場は客席や壁が可動するホールだったため、それを活かした演出がやってみたかったとのことだ。
公録ではいつも「イカタコ」などのイベント名をもじったコンセプトでグッズ作成をする「デレパ」だが、今回はイベントの頭文字の一部をつないで「あすパら(アスパラガス)」をコンセプトにグッズを作成。あすパらガールズと命名されたゲスト陣もTシャツにアスパラステッカーを貼ったり、パーカーなどと合わせて思い思いにアレンジして個性を見せていた。
前半の公録パートでは、キャラクターとして今後歌ってみたい楽曲や、会場となった遊園地にちなんだトークも行なわれた。佐藤は「私ジェットコースターごっこが大好きなんですよ!」と飯田に後ろから抱きつき、がたんがたん、と小刻みに震えながらジェットコースターそのものの真似を行なう荒業を見せ、シンデレラ一門の適性を示していた。
公録では「デレパ」ならではのバラエティ色が強いコーナーも。ジェスチャークイズコーナーにはよみうりランドのマスコット・グッドくんとラッキーちゃんが登場。原率いるチーム二十歳と青木率いるチームプリプリロックに分かれ、グッドくんとラッキーちゃんがジェスチャーで示すお題を当てていく趣向だ。グッドくんとラッキーちゃんは抜群のジェスチャー力で、酔っぱらいを演じる姿には山下から「かわいいかよ!」の声が飛んでいた。
ソロで、フルサイズで、生ライブで! 初めて尽くしの『デレステ』楽曲初披露も
ライブパートは主宰の原・青木による番組テーマソング「でれぱDEないと」からスタート。前回公録では「イカタコ」コールで大盛り上がりだったこの曲だが、今回の間奏はアスパラガスを剣に見立てて闘う2人、原が剣豪のように切りつけ、何事もなかったように踊り出す青木に怪訝な顔の原……といった寸劇が繰り広げられた。「でれぱDEないと」については客席のコールがいまいち戸惑い気味なため、青木は「コール本に入れてもいいのよ」と語っていたが、原が「(コールが入れにくい)原因は明らかで、私たちが毎回違うことやるから」ともっともなことを指摘していた。
主宰が盛り上げたあとは、ゲスト陣によるソロ楽曲のコーナー。トップバッターは和氣で登場は和氣あず未だ。「Can’t Stop!!」といえば、昨年の舞踏会(2ndライブ)で巨大なお立ち台に立ち、他のキャスト陣をダンサーとして引き連れてのジュリアナ風パフォーマンスが印象的だ。今回のステージでは、「でれぱDEないと」を歌い終えた原と青木がステージに待機。3人で扇子を構えると、まさかの3人揃って扇子を振るいながらのパラパラ風ダンスを披露。トリオダンスは冒頭のみだったが、疾走感と客席の乗りやすさでは随一の楽曲だけに、一糸乱れぬ会場のコールと共に大きな盛り上がりを見せていた。ところで、“あず”未と“パラ”パラを踊るから「あすパら」なのかな、と思ったのだがたぶん気のせいだと思う。
続いて登場の山下はソロ曲「Radio Happy」の初披露か……? と思いきや、流れ始めたイントロはまさかの『シンデレラガールズ スターライトステージ』から「Snow Wings」! 『デレステ』楽曲のライブ初披露が「デレパ」公録というまさかのサプライズだ。原曲は5人曲で、ここぞというところで山下演じる唯の甘やかな歌声がアクセントに効いていた感じだが、ソロは当然唯成分100%。なかでもハッとするほど印象的だったのが高音で“Wing of snow”のフレーズを響かせるロングトーン。ギリギリの高い音域で気持ちよく高らかに歌い上げながらも、唯らしさを失わない歌声は、これは天性のものだと感じさせられた。フルサイズだと決め所が畳み掛けるように来るので、その心地よさを存分に感じることができた。
そして『デレステ』楽曲初披露がもう一曲、飯田の「Tulip」だ。ゲーム内でこの曲を歌うLiPPSのリーダー・奏を演じる飯田はまさに適任だ。原曲は曲調はアダルトだが、LiPPS全体として見るとキュートで華やかな歌声の比率が高く、飯田演じる奏は「なんてね」のとびきり印象的なフレーズで全てを持っていくイメージだった。今回のステージの飯田が非凡だったのは、『デレステ』の奏を再現するの“ではなく”、もし奏が「Tulip」をソロで歌ったらどう表現するか、のイメージの側に楽曲を引き寄せてみせたことだ。身体のラインを指先ですっとなぞりあげていくような仕草や、顔を隠していた両手のひらを左右にゆっくり開いていく間から現れる眼差しなどがゾクッとするほど蠱惑的。飯田と奏の作り出す世界に客席を引き込んだうえでの「なんてね」はさらに破壊力を増している気がした。
会場の空気を歌の世界に引き込む楽曲といえば佐藤の「in fact」も負けてはいない。舞踏会では、ステージに立つ佐藤自身の喜びと緊張と、様々な感情がないまぜになった張り詰めた空気に会場が呑まれるような感じだったが、今回の佐藤はもう少しフラットに、丁寧に橘ありすを表現していたように思う。間奏のとぼとぼと歩く姿や、儚さすら感じさせる表情、ささやきかけるように繊細な「なぜ…」のフレーズ、それらひとつひとつから橘ありすを濃厚に感じる。舞踏会では客席位置的に「背中の佇まい」から感じていたものが、距離の近い会場で観ることで補完できた。元AKB48のリアルアイドルという肩書が注目されがちな彼女だが、さっきまでジェットスターごっこをしてはしゃいでいた女性が、ありすとしてステージに立った瞬間スイッチがガチンと入れ替わる“憑依感”は役者としての彼女のオリジナルだと思う。
濃密なソロ4曲を息をするのも忘れて見つめていただけに、原と青木が新曲「デレパレード(仮)」でいつもの楽しい「デレパ」の空気に戻してくれたのはちょっとほっとしたかもしれない。サンバのリズムに合わせて歌うハッピーな歌詞は原と青木自身が作詞したもの。スクリーンには歌詞が表示され、歌詞中に仕込まれたななめ読みのメッセージや、顔文字が映るたびに会場から驚きや笑いが起こる。そんな明るく楽しいパフォーマンスがガチライブっぽい流れの中で浮いていなかったのは、原と青木がきっちり準備してきたダンスや、歌っている2人の姿の華やかさがきっちり「アイドル」していたからだと思う。
そして今回のライブの大きなサプライズが、全員で歌う「M@GIC☆」だった。TVアニメ『シンデレラガールズ』の最後を締めくくる大団円の曲だけに、ライブでは大人数で歌うことが前提の楽曲。それだけに、グループアイドル感はありながらも、それぞれのボーカルの色が端々に感じられる6人編成はなかなか絶妙。何より今回の公録が『シンデレラガールズ』初イベントである山下にとっては、この曲をステージで歌うのは舞踏会に代わるTVアニメのひとつの区切りになったのではないだろうか。TVアニメを締めくくる楽曲と、『デレステ』から生まれたこれからのシンデレラたちのための楽曲が共に歌われたこのイベントは、ひとつの時代の節目になるかもしれない。
今日はクールとパッション属性のアイドルばかりの珍しいイベントだったが、「お願い!シンデレラ」のキュートパートが佐藤と山下だったのは誰もが納得だろう。山下にとってはもちろんこの曲も初めてで、やはりライブで「おねシン」を一緒に歌うとようこそシンデレラガールズへ! という感じがある。印象的だったのは、キレッキレなダンスを見せる山下の動きの起こしが、ほんのわずかだけ周囲より早い時がたまにあったことだ。公録のミニライブで合わせの練習の時間があまり取れなかったのは想像に難くないが、動きに自信がなければ動きはむしろ遅れがちになるもの。今回のイベントに向けて、自分自身でできる範囲の準備としてダンスを身体に叩き込んできてくれたことが感じられてうれしかった。
ゲストは全員、TVアニメシリーズ後半から登場した顔ぶれ。舞台は「デレパ」というちょっとカラーの違う場所。そのなかで新鮮で新しく、だが間違いなく『シンデレラガールズ』のステージが観られたのは、様々なプロジェクトの中で広げてきた『シンデレラガールズ』の多様性と可能性が結実したように思えた。まさか「デレパ」でこんな気持ちになるとは思わなかったが、良い意味で予想を裏切ってくれるのが「CINDERELLA PARTY!」という番組なのだろう。
Text By 中里キリ
WEBラジオ「CINDERELLA PARTY!」公録イベント“CINDERELLA REAL PARTY 03 ~あつまれ!プロデューサー すてきなパレードin らんらんホール~”
2月28日(日)【東京】よみうりランド内らんらんホール
<セットリスト>
1.でれぱDEないと
2.can’t stop
3.Snow Wings
4.Tulip
5.in fact
6.デレパレード(仮)
7.M@GIC☆
8.お願い!シンデレラ
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