INTERVIEW
2016.03.02
昨年初の日本武道館公演を大成功に収めた藍井エイルがニュー・シングルをリリース。タイトルは「アクセンティア」。この楽曲に込められた思いとは――。たっぷりと話を聞いた。
――2015年はワールド・ツアーを含めて意欲的にライブに取り組んだエイルさん。2月10日には、昨年11月2日に行った初の日本武道館ワンマンの映像作品「Eir Aoi Special Live 2015 WORLD OF BLUE at 日本武道館」がリリースされました。改めて武道館を振り返って、どう感じていますか?
藍井エイル あのときのドキドキ感とワクワク感は、今までにないものでした。ステージに立つまでは、いつになく不安もあって。いつもはご飯がのどを通りまくってるのに(笑)、武道館の前日はスープしか飲めないくらいに緊張もしましたし。
――武道館ワンマンへの想いは、それくらいエイルさんにとって特別なものだったんですね。
藍井 そうですね。武道館への想いは、リスアニ!さんにも深く関わっているんです。まだ北海道に住んでいたとき、私が初めて武道館でライブを観たのが“リスアニ!LIVE”。そこから想いが強まったということもあり、今年1月の“リスアニ!LIVE 2016”でも、自分がまた武道館に立てることを、すごく感慨深く感じてました。
――そんな思い出を感じていただけて、うれしいですね。そんな武道館には、どんな景色が広がっていましたか?
藍井 1曲目、ポップアップで登場するためにステージ下で待っているとき、重永(亮介)さんが武道館のために作ってくれたオリジナルのSEが流れてきて、「ああ、ここまで来ることができたんだ」という想いで涙が出そうになってました。そして「アヴァロン・ブルー」のイントロが流れ出し、スタッフさんの「まもなくです!」という大きな声が響いて、最高潮の緊張感とワクワク感の中で飛び出して行ったら、そこは真っ青な景色で。
――まさに“WORLD OF BLUE”ですね。
藍井 でも、いつも見せていただいている真っ青な景色だけじゃなくて、気持ち……目に見えるものじゃない、お客さんの声や動き、想いみたいなものが、ステージに立った瞬間にぶつかった衝撃があったんです。私たちの「武道館という場所に来てくれて本当にありがとう」という気持ちと、「今日の武道館、いいステージを作ろうね」というお客さんの気持ちが。そのぶつかり合いを感じた瞬間、本気で泣きそうになって。あの日のステージは、涙を必死で堪えるところから始まったので、映像も最初の数曲は私の表情もすごく硬いと思う。ほんと想定外だったので、自分でも驚いちゃいました(笑)。
――まずそこからが、武道館ワンマン映像の見どころで(笑)。
藍井 あははっ、そうなるのかな?(笑)。あのライブはセットリストもシングル曲を全部歌うと決めて、特効を駆使したステージ演出も流れも、いくつも波が来るようなメリハリを大事に作り込んでいきました。映像だと、私の後ろのカメラから見た感動的な客席の景色も楽しんでいただける。すごく皆さんとの距離が近かったことを感じてもらえると思いますし、まだ観たことはないけど藍井エイルのライブに興味がある方には、集大成的な内容を楽しんでいただけますね。
――エイルさんに馴染み深いゲストの登場も、その集大成に華を添えました。「サンビカ」など数々のエイル楽曲の作詞・作曲でタッグを組むAoのギター・ボーカル、安田貴広さんもアコースティック・ギターで共演されて。「空を歩く」のインスト、ふたりで歌った「A New Day」もバンド&ストリングスと共演した「Roses」も印象的でした。
藍井 安田さん、リハーサルからものすごく緊張してて、本番のセンターステージでも「処刑台かよ!」なんて言ってましたね(笑)。私もともとAoの大ファンなので、尊敬するアーティストと一緒に立てたステージが武道館、しかも生でハモってもらえて大感激でした。
――そんな安田さんとの2016年初のコラボレーションとなったのが、3月2日リリースのニュー・シングル「アクセンティア」。これはPS Vita『デジモンワールド -next 0rder-』の主題歌ですが、ゲーム好きのエイルさんにとっては『デジモンワールド』もなじみ深い作品?
藍井 もちろん! 私、小さい頃に初代の『デジモンワールド』が大好きで、めちゃやってました。夜じゃないと出てこないデジモン、闇属性のデジモンとかいるんですけど、怖くて館の中に入れないとか……そういうかわいい時代もあったんです!(笑) 子供の頃の感動が忘れられなくて、今でも『デジモンワールド』の新作が出ると遊んじゃいますね。
――『デジモンワールド』愛が詰まった「アクセンティア」なんですね。
藍井 はい、まさに。大好きな作品なので、『デジモンワールド』の素晴らしさを最大限の力を込めて伝えたかったし、自分の中でのキーワードも「幼さ」でした。私が『デジモンワールド』をプレイしていたときは、わからないことだらけ。疑問に思うこともたくさんあったし、不可能なことを何でも可能にできるんだと信じていた純粋無垢な気持ちに溢れていました。作詞は安田さんとの共作なんですけど、そういうものをどれだけ歌詞に散りばめられるかを考えながら、作っていったんです。
――曲調もティーンエイジャー感に溢れたといいますか、とても元気の出る瑞々しいロック・ナンバーです。
藍井 そう、若々しくて。アップテンポでノリやすくて、青春を感じられる曲調。でも……聴いていると、どこか切ない。音楽のジャンルとしてはちょっと違うんですけど、受け止めた感覚が青春パンクに通じるものがあるなって。真っ直ぐな感じ。例えば心が“みかん”だったとすると、みかんの皮を全部むかれた状態にされていく感じ。この曲を聴くと、自分の心が剥き出しになるみたいな。
――空を飛びたい、星を掴みたいと、なぜ大人になると言えなくなるんだろう? というフレーズもあって、無垢だった頃の自分を思い出しますね。
藍井 そうなんですよ! それこそ私も、なんで『デジモン』の世界に行けないんだろうと思ってました(笑)。
――いつ、そういう想いをなくしてしまうんでしょうね。
藍井 うーん……社会に出たくらいからなのかなぁ。できることもできないと決めつけて、自分で可能性を潰してしまうようにもなるし。
――そうならないでいたい、そうならないでほしいという願いも感じられますね。
藍井 「アクセンティア」というタイトルも、安田さんがデモ曲を作ってくれたときからついていました。造語なんですけど、“accent”に“ier”をつけた“強調する人”という意味。私が感じたのは、日々の生活の中に彩り、幸福というアクセントをつける人という意味合いでした。「アクセンティア」には、私もなれるし、あなたもなれる。片方が背中を叩いて「行ってこい!」ではなくて、“君”と“僕”が肩を組んで、「よし、二人三脚で一緒に歩こう!」と言っているイメージ。だから、1番のサビは“今君を見つめているアクセンティア”なんですけど、ラストのサビは“今僕を見つめているアクセンティア”に変わっている。お互いがお互いにとって「アクセンティア」という存在であろうという、応援歌でもありますね。
――今回も安田さんのいらっしゃる札幌でレコーディングされたそうですね?
藍井 はい。ボーカルは疾走感があるぶんブレスのタイミングが難しいし、サビはキーも高いままなので、腹筋の痛さが結構な勢いで(笑)。安田さんにもアレンジやイントロのギターのストロークも何パターンも考えてもらい、たくさん悩ませてしまったんですけど、苦労したおかげでとてもいい曲に仕上がったと思います。
――カップリングには、またテイストの違う2曲が。ミディアム・スローの切ない「Close Friend」は、こちらもエイルファンにはおなじみ、W安田さんのもうおひとり、安田史生さんの作曲ですね。
藍井 はい。これは約5年くらい前になるんですけど、デビュー前に安田史生さんに作っていただき、歌っていたデモ曲の中の1曲。前からずっと歌いたくて、歌詞を書き直してアレンジを変え、満を持して音源化しました。
――これは、別れの歌?
藍井 はい。別れの歌ではあるけど前向き。「ちょっと悲しい気持ちもあるけど前を見ていこう」という気持ちと、春の景色を重ね合わせた曲になっています。だから、歌詞の中にも“花”とか“雪解け”といういうワードが出てくる。私の故郷の北海道感覚でいうと、4月でもまだ雪は残っているから“3月で春”というのは想像しにくいんですけど(笑)、イメージを膨らませながら詞を書きました。
――切ない曲調が、胸に染みます。
藍井 そう、安田史生さんの曲って、どこか冷ややかというか……北海道の景色が広がりやすいと感じていて。「frozen eyez」や「Reunion」、「MEMORIA」なんかもそうなんですけど、春夏秋冬でどれ? と言われたら、秋か冬のイメージがある。そういう切なさが漂うのが、安田史生さんの曲の魅力。なので、この曲も完全に春というよりは、雪解けで春のにおいが少しし始めた感じかなと。なので、歌詞も下を向かずに、上を向いて歩くイメージ。主人公ふたりの紆余曲折からの今、を感じてもらえたらなと思います。
――そして、春の兆しを感じた後に聴いていただくもう1曲は、ズバリ?
藍井 「春~spring~」ですね! まさか私がヒスブル(Hysteric Blue)を歌える日が来るなんて、うれしくてうれしくて! カラオケでも、この曲を入れるとみんなが「わかってるね~!」と盛り上がる名曲ですからね。
――元Hysteric Blueで、これを作詞・作曲した楠瀬タクヤさんは、エイルバンドのドラマーとして武道館公演でもサウンドをサポートしてくれていました。
藍井 はい。タクヤさんに、ぜひこれを歌いたいという気持ちをお伝えして実現したんです。なのでレコーディングも原曲とアレンジを変えつつ、タクヤさんがドラムのエイルバンドで演奏しました。スタジオでも、私がタクヤさんにこの曲のどこが好きかを延々と語りながら、曲を作った時のことをインタビューしちゃいました(笑)。
――歌詞の“歌が好き”という印象的なフレーズは、歌い手であるエイルさんの心にも響きますよね。
藍井 そうなんです。その言葉に自分が歌手をめざしていた学生時代のことをすごく思い出すって、タクヤさんにも力説しました(笑)。勉強したり、部活をやったり、バンドを組んだりするなかで、「私。やっぱり歌うのが好きだな」と思ったことが何度もある。多くの人に愛されている曲だからプレッシャーもありましたけど、私らしい表現と愛情を込めて歌わせていただいて。今回のシングルは3曲とも透明感が強くて、とても若々しい1枚になりました。
――そんな春らしいナンバーとともに、3月19日の宇都宮公演を皮切りに、全国ツアー<Eir Aoi LIVE TOUR 2016 “D’AZUR-EST”>がスタートしますね。
藍井 藍井エイル史上、最多会場のライブハウス・ツアーになるんですが、宇都宮、さいたま新都心、長野、松山、熊本、旭川、神戸、京都と、初めましての会場もたくさんあるんですよ。今回はツアー・タイトルが“D’AZUR-EST”。“最上級のD’AZUR”という意味で、3rdアルバム『D’AZUR』を掲げた内容になります。そもそも『D’AZUR』は、幅広い楽曲を収録していて、進化してきた藍井エイルと新しい藍井エイル、ふたつの要素が込められていました。なので今回は、そんな私の両面を見せられるライブにしたい。とくに、新しい藍井エイルには期待してもらえたらなと! 楽しみにしていてください。
INTERVIEW & TEXT BY 阿部美香
●リリース情報●
「アクセンティア」
3月2日発売
SMEレコーズ
【初回盤/CD+DVD】
品番:SECL-1851~1852
価格:¥1,500(税込) ※1
【通常盤/CD】
品番:SECL-1853
価格:¥1,300(税込)
【デジモン盤/CD+DVD】
品番:SECL-1854~1855
価格:¥1,400(税込)※2
©本郷あきよし・東映アニメーション
©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.
[CD]
①アクセンティア②Close Friend③春~spring~④アクセンティア(Instrumental)
[DVD]
※1…「春~spring~」ビデオクリップ、Eir in Mexico City the movie
※2…『デジモンワールド -next 0rder-』オープニング映像
●ライブ情報●
Eir Aoi LIVE TOUR 2016 ”D’AZUR-EST”
3月19日(土)HEAVEN’S ROCK 宇都宮 VJ-2
3月21日(月・祝)HEAVEN’S ROCK さいたま新都心 VJ-3
3月26日(土)仙台 Rensa
3月30日(水)名古屋 ダイアモンドホール
4月3日(日)東京 Zepp Tokyo
4月8日(金)金沢AZ
4月10日(日)長野 CLUB JUNK BOX
4月14日(木)松山 サロンキティ
4月16日(土)広島 BLUE LIVE HIROSHIMA
4月22日(金)福岡 DRUM LOGOS
4月24日(日)熊本 Be.9 V1
4月29日(金・祝)旭川 CASINO DRIVE
4月30日(土)札幌 ペニーレーン24
5月6日(金)神戸 VARIT
5月8日(日)京都 MUSE
5月11日(水)大阪 BIG CAT
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