INTERVIEW
2016.02.10
昨夏に2ndアルバム『Blooming!』をリリースした内田 彩が早くも新作を発表! しかも今回はエレクトロ・ポップとシリアスなロックでそれぞれ構成された2種類のコンセプト・アルバムを同時にリリースするという。ますます勢いを増す彼女のアーティスト活動の取り組み方について、今回の2枚の制作の様子を中心にたっぷりと語ってもらった。そこにはこれまでの経験を踏まえなければ決して出てこなかったアーティストとしての姿勢が強く表れていた。ロング・インタビューの前篇をお届けする。
ジャンルを絞ることで広がった表現の幅
――今回リリースされる2枚のコンセプト・アルバムの『Sweet Tears』と『Bitter Kiss』に収録された楽曲は、2ndアルバムの『Blooming!』用に作られていた楽曲だそうですね。
内田 彩 はい。まず『Blooming!』の制作のときのお話をすると、アルバムの中にエレクトロ・ポップな曲とシリアスなロックの曲を入れることになったんです。どちらも私にとってはあらたな挑戦をした楽曲でした。「Like a Bird」「with you」という楽曲が収録されたのですけれど、コンペからそれぞれの1曲を選ぶまでがすごく大変でした。最初は100曲ぐらい候補があったのをディレクターが15曲ずつぐらいに絞ってくれて、そこからさらにアルバムの流れに沿う形の1曲を選びました。だから、すごくいい曲だけれどもアルバムから外れた曲もたくさんあったんです。であれば、それぞれのコンセプトに合った形で1枚にまとめたらどうでしょうと私から提案させていただきました。それでも15曲からまた6曲ずつを厳選するのは大変だったんですけど(笑)。
――では今回の2枚の出発点になった「Like a Bird」と「with you」について改めて伺いたいと思います。新挑戦だったこの2曲はアルバム制作後もイベントやライブで歌う機会があったかと思いますが、内田さんの中でどんなふうに身についていきましたか?
内田 「Like a Bird」はレコーディングのときも、皆さんきっとこういう曲が好きだろうなと思いながら録っていたので、ファンの方に「こういう格好いい曲を待っていました」と期待どおりのリアクションをいただけたのがすごくうれしかったです。リリース後のフリー・ライブのときは、こういう曲をライブで歌うのが初めてだったので、最初はどういうふうに歌えばいいんだろう思っていたのですが、まずは客席をあまり意識せず歌に向き合うように私ひとりが歌っている姿を見て楽しんでもらうようなパフォーマンスを心がけました。その後、何度かイベントで歌わせていただくうちに、「今日はお客さんに向けて歌ってみよう」とか、いろいろと試すこともしてみたところ、ディレクターから<今日はちょっと優しい「Like a Bird」だったね>とか<今日はすごく開けていったね>と言っていただけて、こういうかっこいい曲でもいろんな表現の仕方ができるんだなということを教わった曲でもありました。「with you」のほうは本当にかわいらしい曲ですが、今までの曲ともちょっと違うし、初披露の時は私もファンの方もお互いに探り探りなところがありましたね(笑)。それでも回を重ねるごとにお客さんの振りを私がマネしたりして、ライブ映えする楽曲になったと思います。昨年12月5日のライブでも本編の最後に歌わせていただきました。歌詞の中ではひとりの人物のことを歌っているけれども、ライブではタイトルのとおり“あなたと一緒に”ということで、締めくくりとしてみんなに語りかけるように歌い、距離を縮めてくれるような曲に成長したなと思いました。
――そして今回発表される『Sweet Tears』と『Bitter Kiss』。楽曲のジャンルはエレクトロとロックで、そのジャンルが好きな人にとってずっと同じジャンルを聴いていられるという楽しみがありますね。
内田 そうですね。1stと2ndアルバムでは爽やかなバンド・サウンドを基本路線としていて、いろんな曲調を楽しんでいただけましたが、今回はジャンルをギュッと絞ってことで逆に広がった部分も大きいと思います。ロックならロックと決めたことで、そこを外さなければどこまでやってもいいわけなんです。今までの活動ではかわいいキャラクター・ソングを歌うことが多かったので、ハードめな曲調でやり過ぎて引かれないかなという心配もあったんですけど(笑)。今回こういうコンセプト・アルバムにすると決めてしまえば、そういったことを考えないでいいから、ちょっと歌詞も大人っぽくなっていて、恋愛のテーマとかビターな感情とかを前面に押し出しています。
――コンセプト・アルバムとしてのテーマは何か考えましたか?
内田 私は音楽の専門的な知識はわからないのですが、今回は発売が2月10日なこともあって、“バレンタインデーをテーマにしたアルバムに沿うような歌詞にしていただけたら”とオーダーをさせていただきました。なので、愛や恋や人間の感情がテーマになっています。
――挑戦でしたか?
内田 私にとってはそれほどでもなかったです。逆にかけ離れた歌詞だと分かりづらいなと思って。ソロの名義で出すので、愛情や恋といった誰にでも通じる感情を歌えたらいいなと思い、1曲ずつ歌詞の世界観を表現できたらと考えました。
――世界観といえばジャケット・ビジュアルも印象的です。
内田 1stや2ndはデビューということもあって、真っ白なイメージとかナチュラルさをイメージしていたのですが、今回はコンセプトアルバムということで、すごく人の手を加えた感じにしたかったんです。そこでメイクアップアーティストの双木昭夫さんにお願いしました。双木さんはドーリーメイクの元祖とも言える方で、調べてみたら私が昔から見ていて可愛いなと思ってきたジャケットとか写真集とか、あれもこれも双木さんの手によるものだと分かって、夢のようでした。私にとってすごく嬉しかったのは、双木さんが打ち合わせの時から写真一枚から物語を作るというアイディアをいろいろと考えてきてくださったことでした。やっぱり物語を伝えたいということをずっと思ってきたことだったので。「Bitter Kiss」では「この子は箱に閉じ込められていて出られない」といったように写真一枚から物語を想像できるようなスタイリングからセットまでを作ってくださいました。
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