INTERVIEW
2016.01.27
フィーチャリングシンガーとの濃密な制作現場
――ある種ここも実力がわかってるなかでのフィーチャリングシンガーですね。それぞれの印象についてお聞きしたいと思います。まずはLiSAさん。田淵さんはよくご一緒されてますが、畑さん的にはどう思われましたか?
畑 曲の印象しかなかったんですが、印象よりもタフでしたね。見た目は華奢で少女っぽいじゃないですか。歌に関して気合い入ってるのが「かっこいいなこの子」と。だからこそ女性的な歌詞を聴いてみたいと思って「JURASSiC KiSS」とかは作りました。
――今までの畑さんのマナーとして女を引き出したいという野望があると思いますが、それをぶつけられたんですね。
畑 まさに! 勘もいいし、自分の表現したいことをコントロールして歌う強さは見ていて清々しかったです。一緒にお仕事できて本当によかったと思います。
田代 大体畑さんに言われましたが(笑)、それ以外では礼儀正しく爽やかな子で、気持ちよくお仕事させていただきました。
――田淵さんからするといつも違う部分はありましたか?
田淵 やっぱりただ提供するという仕事と全然違いました。「LiVE DiVE MHz!!」は「LiSAといえばこれ!」ってふうに見えるんですが、実は展開がかなり多んです。こういうとっ散らかる構成って歌がうまくないとできないんですけど、「できる」と思ってやってみていて実際レコーディングをしてみるとできない、そういう部分を何度でもできるまでやり直すっていうスポ根精神みたいな気持ちで臨んでくれました。ボーカルディレクションをちゃんとするのも初めてだったんですが、今まで現場で見るLiSAちゃんはひとりで自分の中でイメージを作り上げてる印象があったんです。そこに冷やかしレベルでも意見を入れることで彼女のこなくそ精神が引き出せるのが面白いなと思って。録り方に関しても新しいアプローチが見れたなと思います。
――小松未可子さんは皆さんとは初めましてですよね。シンガーとして見たときはいかがでしたか?
畑 魅力的だったよね。
田代 やっぱりうまかった。ロックっぽくも女性的にもできるという声質で、表現力が豊かですよね。
畑 曲もそうだったね。「ふれてよ」は女性の心からの気持ちを歌ってるんだけど、それが全然いやらしくなくて、すっごく切なくて。私これ、もう聴く度に泣いちゃうんだけど(笑)。シンガーであり役者であるってこういうことなんだなって。
――これまでの小松さんのワークスにもない部分ですよね。普段はカラッとした印象が強いので。一方もう一曲の「short hair EGOIST」は彼女のイメージに近い部分ですね。
田淵 今までの小松さんの楽曲の中で僕が好きだったものの延長上で曲を作ろうと思ったんですけど、今までのワークスと比較してもより攻撃的な部分が色濃く出る感じになったなと思います。すごくうまくまとめて歌う方だなという印象があったので、そこに対してテンポ的にも早口とかも攻撃力の高いものが出てくるというのはありそうでなかったアプローチかなと。
畑 強さと脆さを出せたかなって。ちょっと、自分たちを褒める感じになっちゃうけど(笑)、すごくいい感じに出来た気がします。
――そして鈴木このみさん。「星の名は絶望」は田代さんの顔がパッと思い浮かぶ楽曲ですけども(笑)。
田代 そうですね。直球で「このみちゃんこういうの歌ってよ」って部分だと思います。デビューシングルの「CHOIR JAIL」を畑さんと僕で作ったんですが、そこから年月が経って数年分の表現力が加わったときにどういうものが生まれるのかな、というコンセプトです。
――彼女はメタル修行も多かったので、この曲調はそれも想起させますね。
田代 そこは狙いましたね。ギター編曲の新井弘毅君が「こういうのやりたかったです」って言ってくれて。やれるだけのバキバキのギターを弾き倒してくれて、そうなるとギターに負けないように歌わないといけない! ということでこのみちゃんを追い込もうと(笑)。楽器と歌で殴り合うほうが成長が見てとれるだろうと考えました。
――実際成長をご覧になっていかがでした?
田代 元々デビューのときからうまいんですけど、歌い方すごく変わりましたね。
畑 うん変わった。やっぱりあの頃は子供だったんだなって(笑)。その初々しさから出る必死さというのもあるんですが、すごくトレーニングしてコントロールしてるんだなって、積み重ねてきた練習がよくわかりました。
田淵 脳髄直結でやってる部分が多いと思うんですが、飲み込みもすごくよくて、ディレクションに対しての対応も早くて鍛えがいがあるといいますか。いい意味で何にでも合わせられるというのは、歌を仕事道具にして仕事をするんだという気概が強いからだと思います。
畑 そういうふうに育って来たんじゃないかな。仕事をしていくなかで自分は歌しかないって。
――吸い込みのキャリアを見てしまう部分はありますよね。そして、面白いのが東山奈央さんのチョイスですよね。
田淵 黒須さんが『神のみぞ知るセカイ』の中川かのんちゃんで印象に残ってたみたいで。ご本人がソロデビューをしてないので、そこに対してどういうパフォーマンスをするかというのを黒須さんが楽しみにして選出してくれたという。期待がすごく高かったですね。
畑 ご本人もすごくしっかりと仕事と向き合う方で、お若いのにね。自分でやりたいこと、やれること、提案できることというのをお話してくれて。歌詞も、私が最初書いたものは彼女がしっかりしてるから設定を高く見積もった女性像で書いてしまったんですね。それに対して「等身大だとそこまで大人じゃないんですよ」と。「それはもうちょっと先の私かもしれません」と言ってくれて。
――でもそれを言うのってほんとしっかりしてるってことですよね。
畑 そう! しっかりしてるじゃんって思ったんだけど(笑)。もし今後ソロ活動することになったら……と、将来に向けて楽しみだなっていう思いが芽生えたりしました。そのときにQ-MHzを思い出してくれるといいなって(笑)。
――仕上がりとしてはソロアーティストという形ではご自身で作品を出してないので、ある意味声優らしいソングライティングだなと感じました。
田淵 そこも打ち合わせのときにヒアリングしてたんですよ。どういう歌を歌いたいですか? と聞いたときに彼女の中では、「今まで声優として自分本来のものではない曲を歌っていて、ようやく自分本来のものが歌えますがどうですか?」っていう問いのようにもしかしたらなっていたのかもしれません。なぜなら彼女はその質問に対して「自分は役者の強みを出したいです」ってバンと言ってきて。本当にパフォーマンスする意味をわかってる人なんだなと。どうすると自分がいちばん輝けるのかっていうのをすごく知ってる人なんだなと思い。それはすごくかっこいいことで僕もすごくテンションが上がりましたね。
――そして、かねてから畑さんが「かわいいかわいい」と言い続けてる南條愛乃さんですが。
畑 はい、かわいいかわいい! これからも言い続ける(笑)。
田淵 畑さんのラブが溢れ続ける現場でしたね。あんま僕ら3人が入る隙間ないんじゃないのっていう(笑)。
畑 「お前ら黙っとけよ」みたいな(笑)。
田代 入れてくれない感じありましたね。ずっとガードしてましたよね。
畑 ずっと興味あったんですよ。声にも興味あったし、彼女の曲をいろいろ聴いたなかで、それ以外のことを一回やってみたいなと思って。それこそ私が作家として関わったときの彼女でもないところになぜかすごく自分のアンテナがビンビン反応してるんですよ。
――それは実際どういうところなんですか?
畑 少女じゃないというか、「かわいいのに女子感のなさ」みたいなのが一瞬あるじゃないですか。少年と少女の間をゆらゆらするとことか、そういう性別のなさみたいなところに魅力を感じていて、思い描いてたものが実現できてよかったです。でも結構張りきって作曲まで頑張ったんですけど、家にこもって作り続けたら破滅的で邪悪な曲ばかりが量産されていって(笑)。「あれ? これってQ-MHzのアルバムに入れるのはどうかと思う……」みたいなものばかり。なかでも大人しめのものを形にして投げてみたんだけど、投げながら違うなこれって(笑)。そうしたら「どこかパートだけ考えたらいいんじゃないでしょうか」って球が帰ってきました。
――先ほどお話に出たQ-MHzシステムですね。
畑 Q-MHzってそれやっていいんだ!って思い出して、ちょっと作ってバトンタッチすることでやっとポップさを持った曲として皆さんにお届けできるようになりました(笑)。
田代 ちょっと鬱っぽかったからね。暗くて遅かったです(笑)。
――畑さん的にはそれで「たぶん合う」とは思ってるんですよね(笑)。
畑 思ってる(笑)。でもそれはこのアルバムじゃなくてそういう要望があればそれで一枚みたいな。ないと思いますが(笑)。でも結果的にすごくいい球が投げられたと思います。ちょっと不思議担当かなと思っていて、「La fiesta? fiesta!」は少年少女ゆらゆらみたいな感じで、「愛シカタナンテ知ラナイ」は愛の歌なんだけど、性のにおいのしない純粋さ、いちばんきれいなところを掬い取れる歌声みたいなものがあるんですが、それが聞けてうれしかったです。
――畑さんの思うかわいさは表現できたと。
畑 私が思っているかわいさをキュッと切り取ってのプロデュースですから!(キリッ)
――逆にほかのふたりに感想聞きづらいですね(笑)。
田淵 言論統制が起きてるから余計なこと言えない(笑)。
田代 まあ大体そういう感じですよね。
田淵 右に同じ。
畑 (笑)。
――それぞれ各シンガーに対しての欲求に合わせて楽曲を作っていて面白いですね。
畑 今回作家としてじゃなくてプロデューサーとしての役割も出せたのではないかと思います。
――これでQ-MHzとしての活動もスタートということになりますがいかがですか?
畑 アニメのクレジットに登場するような仕事をするのが夢です! アニメの主題歌とか担当したいですね(笑)。
――急に新人っぽく(笑)。
田淵 (笑)一曲単位とか楽曲提供とかもしてみたいですね。
田代 僕たちも走りだしたばかりなので何でもやっていきたいですし、いろんな方とご一緒したいと思います。
田淵 やっぱりバンドじゃないところで単体で仕事してるなかで気づいたのが、何事も愛が残るものじゃないといいものにならないなと。それはクライアントからしての「頼んでよかった」でもあり、ユーザーから愛されるものでもある。僕ら4人はいろいろキャリアを積んだなかでそれをわかってる人たちだと思うんですよ。そのためにできるアイデアもあるし、協力できる4人だとも思うので、「Q-MHzがやってよかったな」「Q-MHzはいい曲しか書かないな」っていう実例を作っていくのが目標かなと思います。引き受けたからには楽しく仕事するってのも同じくらい大事だなと思っていて、そういう空気作り的な意味でも提供できればなと思います。
畑 過剰に愛を注いでね(笑)。全身全霊を持って愛させていただきます!
INTERVIEW BY 澄川龍一(リスアニ!)
TEXT BY 大用尚宏
●リリース情報
1stアルバム
『Q-MHz』
1月27日発売
【CD+ブックレット+スリーブケース】
※ダウンロード販売は2016年2月3日(水)スタート
品番:TFCC-86538
価格:¥3,500+税
<CD>
01. LiVE DiVE MHz!!(featuring LiSA)
作詞・作曲:Q-MHz 編曲:Q-MHz、滝 善充(9mm Parabellum Bullet)
Guitars:滝 善充(9mm Parabellum Bullet) / Drums:城戸紘志 / Bass:黒須克彦
02. ふれてよ(featuring 小松未可子)
作詞・作曲:Q-MHz 編曲:清水哲平
Guitars:清水哲平 / Bass:黒須克彦 / Other Instruments:清水哲平
03. 星の名は絶望(featuring 鈴木このみ)
作詞・作曲:Q-MHz 編曲:新井弘毅
Guitars:新井弘毅 / Drums:城戸紘志 / Bass:田淵智也 / Other Instruments:新井弘毅
04. 手探りで今のなかを(featuring 東山奈央)
作詞・作曲:Q-MHz 編曲:齋藤真也
Guitars:海老澤祐也 / Violins & Violas:室屋光一郎 / Bass:黒須克彦 / OtherInstruments:齋藤真也
05. La fiesta? fiesta!(featuring 南條愛乃)
作詞・作曲:Q-MHz 編曲:齋藤真也
All Instruments:齋藤真也
06. I, my, me, our Mulberry(featuring 東山奈央)
作詞・作曲:Q-MHz 編曲:Q-MHz、齋藤真也
Guitars:田代智一 / Other Instruments:齋藤真也
07. JURASSiC KiSS(featuring LiSA)
作詞・作曲:Q-MHz 編曲:CHRYSANTHEMUM BRIDGE
Sax:武田真治 / Other Instruments:CHRYSANTHEMUM BRIDGE
08. 愛シカタナンテ知ラナイ(featuring 南條愛乃)
作詞・作曲:Q-MHz 編曲:Q-MHz、牛尾憲輔
Guitars:山本陽介 / Other Instruments:牛尾憲輔、黒須克彦
09. short hair EGOIST(featuring 小松未可子)
作詞・作曲:Q-MHz 編曲:Q-MHz
Guitars:三澤勝洸(パスピエ) / Drums:城戸紘志 / Bass:田淵智也 / Other Instruments:黒須克彦
10. 「ごめんね」のシンデレラ(featuring 鈴木このみ)
作詞・作曲:Q-MHz 編曲:中西亮輔
Guitars:伊藤 賢 / Drums:城戸紘志 / Bass:黒須克彦 / Other Instruments:中西亮輔
<購入特典>
■タワーレコード
トークイベント抽選券付きQ-MHzロゴステッカー
■アニメイト
蒼樹うめ先生描き下ろしメンバーイラスト使用アザージャケット
■TSUTAYA RECORDS各店
メンバープリントサイン入りアーティスト写真ポストカード
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