REPORT
2015.12.07
『アイドルマスター SideM』初の単独ライブイベント“THE IDOLM@STER SideM 1st STAGE〜ST@RTING!”が12月6日、舞浜アンフィシアターで開催された。今回は夜の部をレポートする。
今回のイベントにはユニット「Jupiter」より寺島拓篤(天ヶ瀬冬馬役)、松岡禎丞(御手洗翔太役)、神原大地(伊集院北斗役)、「DRAMATIC STARS」より仲村宗悟(天道輝役)、内田雄馬(桜庭薫役)、八代拓(柏木翼役)、「Beit」より梅原裕一郎(鷹城恭二役)、堀江瞬(ピエール役)、高塚智人(渡辺みのり役)、「High×Joker」より野上翔(伊瀬谷四季役)、千葉翔也(秋山隼人役)、白井悠介(若里春名役)、永塚拓馬(冬美旬役)、渡辺紘(榊夏来役)、「W」より山谷祥生(蒼井享介役)、菊池勇成(蒼井悠介役)、「S.E.M」より伊東健人(硲道夫役)、榎木淳弥(舞田類役)、中島ヨシキ(山下次郎役)が登場した。
「Jupiter」は、2010年9月の東京ゲームショウ2015で存在が明かされ、2011年2月発売の『アイドルマスター2』に961プロ所属として、765プロの前に立ちはだかる男性アイドルユニットとして登場。今回「元961プロ所属アイドル」の肩書きと共に「Jupiter」のメンバーを紹介する映像は圧倒的な歓声で迎えられた。冒頭の挨拶、昼間は万感の涙で言葉をつまらせた松岡だったが、夜の部では「みんな、待っててくれたんだよね! Jupiter、戻ってきたよ! 今日も一緒に頑張ろうね!」と、翔太になりきった「らしい」挨拶を見せてくれた。
夜の部が始まったときに思ったのは、会場の空気がなんだかできあがっているな、ということ。会場のボルテージと歓声は昼の部以上。中には昼の部で既に温まっているプロデューサーもいただろうが、会場にいるプロデューサーの背後に夜の部で行われたライブビューイングの全国のプロデューサーの熱が加わっていたから、と考えるのは非科学的だろうか。ショートドラマコーナーで台本を持つ手が小さくふるえているキャストがいたり、緊張の色が見えるキャストの側にもその膨大な「熱」は伝わっていた気がする。
ライトが落ちた中ステージに幾つも影が現われ、影絵になって踊る中、全員での「DRIVE A LIVE」でライブはスタート。『SideM』のテーマソングとしてすっかり定着しつつある楽曲だが、ライトが照らしだしたステージでセンター前列に「DRAMATIC STARS」、そして後列に「Jupiter」が並び立つ姿はやはり特別かつ新鮮だ。「W」は軽快に、「S.E.M」は重厚に。ユニットらしさがあふれるソロを歌い継いでいく。最後はアンフィシアターの特徴である大きくせり出した円形ステージに全員が入り乱れ、お祭り感あふれるスタートとなった。
「High×Joker」はまずは「HIGH JUMP NO LIMIT」を披露。切り込み隊長としてライブのボルテージを上げていく。客席はユニット色のサイリウムを振り、コールで声を揃えるアイマスらしい応援だが、歓声の多くを女性が占めるのはやはり独特の空気感だ。「High×Joker」は『SideM』ユニットでは最多の5人ユニット。腕を横薙ぎにふるい、屈みながら地面に手をつくような連続性のある振りをバババッと勢い良くこなし、一糸乱れぬジャンプを見せ、といった激しいダンスでキレと統一感を出すのはかなりの運動量と練習が必要なはずだ。だが歌詞に合わせて励まし合ったり、肩をぶつけあったり、肩を組んでにかっと笑う5人はとにかく楽しそう。クライマックスは野上の「「High×Joker」、合体!」の声に答えて永塚、渡辺、白井が騎馬戦の騎馬を組み、千葉が騎乗でエアギターをひきまくった。騎馬組の3人も曲に合わせて騎馬全体を屈んだり伸ばしたりでリズムを取っていたのは面白かった。どの楽曲でもいつもキラキラの笑顔で場を明るくする野上だが、この曲の落ちサビで一瞬想いを込める真剣な表情にはドキリとするものがあった。最強タオル曲「JOKER×オールマイティ」は「手拍子!」「今度はみんなの番!」と煽りながら会場のテンションをどこまでも高めていく。5人が限りなく自由に動きまわるハイジョにはアンフィシアターという会場はピッタリだった。
個人的に、『SideM』に限らないいろんなプロデューサーさんに見てほしいユニット筆頭…かもしれない「S.E.M」は、まずは「∞ Possibilities」を披露。パープルの照明とレーザー光線と近未来的な衣裳の組み合わせが完璧だ。この曲でボーカル的に気持ちいいのは「Try!!」「現状(いま)を!」「越えてー!!」の歌い継ぎだと思うのだが、今日はここのビブラートの効いたボーカルの伸びが最高の仕上がりでふるえるほどかっこいい。「Study Equal Magic!」についてはリリイベでは「是非見てほしい怪曲」といった紹介をしたのだが……あれ、これ、かっこよくない? 立ち上がりから顔を伏せたままの妙なムーブ、グリコポーズ、蹲踞からのぴよぴよ、そして盛り上がりどころでのたけのこポーズ。説明するとおもしろムーブでしかないのだが、ステージ中の伊東、榎木、中島には一切テレがない。するとだんだん、これがS.E.M流であり、やっぱりかっこいいんじゃなかろうか……という気持ちになってくる。ステージ後の客席の反応ももちろん「キャー!」だが、そのあとに「とんでもないものを見てしまった……」という感じのざわめきが追いかけてくるのが「Study Equal Magic!」の特徴だろう。大人の先生がちょっと馬鹿なことに全力で打ち込む姿はかっこいい、それを改めて実感するステージだった。
「W」は「Pleasure Forever…」で、円形ステージの中央の奈落からせり上がって登場。元サッカー選手アイドルである2人のステージを見て気がついたのは、今までライブハウスで行われたCDリリースイベントでは、超満員の観衆の頭越しだったため、腰から上しか見えていなかったんだな、ということ。サッカーという個性を反映してか、Wの振付はフットワークの軽快さが印象的で、ソロ歌唱コーナーでもう一人はヒップホップ調の相当激しいダンスを見せていたりする。歌いながら飛行機のようにステージ中を駆けまわる姿を見ていると、「W」にはライブハウスのステージは狭すぎたかもしれない。2人が背中合わせになってペタリと座り、そのあと立ち上がる動きがあるのだが、昼の部では菊池がちょっとよろけてしまった。リベンジを誓った夜の部では、今度はお互いの背中を支えにするっとたちあがる動きをばっちり決めてみせた。ところが、双子だなぁ…と思ったのは、2曲目の「VICTORY BELIEVER」で、決め所の客席にレッドカードを出すくだりで、今度は山谷がカードを出しそびれてしまった。悔しそうな山谷だったが、レッドカードを出す演出をやりたいが衣裳にポケットがない「W」のために、スタッフが手縫いでポケットをつけてくれたというほっこりエピソードを明かしていた。「VICTORY BELIEVER」で面白かったのは間奏で2人がエアリフティングのパス交換風のダンスをしていたことで、キャラクター要素をこうやってダンスに取り込むのは興味深かった。
「Beit」は9月の公録では梅原が不在だったこともあり、久しぶりに3人がステージに揃った。最初のリリイベでは梅原の光り輝くような存在感に目を奪われたのだが、「想いはETERNITY」でステージに立った3人の真ん中で堂々とした表情を見せる堀江を見て、真ん中にいるのが似合うようになったなと感じた。線の細い堀江が真ん中でしっかりとした存在感を放つと、左右を固める長身の梅原と高塚とのバランスがとてもよくなる。ソロパートでも歌い上げる梅原と、少しみのりらしい色気がある高塚とではカラーが違って面白い。公録で堀江と高塚がステージや練習の場数を踏んだことで、格段にユニットとして良くなった気がする。「スマイル・エンゲージ」では、3人の笑顔に注目した。ステージに登場して、小さな笑みを見せた堀江の肩に、梅原と高塚が後押しするように手をかける。梅原は、「歩いてきたワインディングロード」のフレーズを歌う時に、何かを思い浮かべるように優しい笑みを浮かべた。では高塚は? といえば、堀江がソロパートで頑張って歌っているのを見守っている時に一番優しい笑顔をしており、Beitはいいユニットだなぁと思った。高塚は「願いを込めて花を咲かせよう」のフレーズでちょっと感極まったように見えて、その想いを「きれいな華を咲かせてくれてありがとー!」の叫びに込めているように感じた。
一曲目「DRAMATIC NONFICTION」で登場した「DRAMATIC STARS」は、内田が薫っぽい眼鏡をかけて登場して会場とLVの観客をあっと言わせた。3人のカラーに輝く階段ステージで見せたパフォーマンスでは、眼鏡内田の縦ノリが絶好調。内田は全身でリズムを取り、過剰なまでにダイナミックな動きが印象的なため、メインステージで一番高い左右のお立ち台が実に似合う。階段を下りながら眼鏡を投げ捨てた後の内田は、より歌声が情感豊かに。特にラスト間際の「一瞬で世界を塗り替えていくよ」の気迫はすさまじかった。八代は「雲間に射してた陽光のような」のフレーズに合わせて光を探し求めるような表情を見せたり、広い会場ならではの表現をしているのが印象に残る。八代は精悍な眼差しだったり、ちょっと色気を感じさせたり、ステージでの表情の幅が広がった気がする。夜の部の「DRAMATIC NONFICTION」は3人ともパワフルで、一転間奏で背を見せ逆光のライトに溶けこむような姿には神々しささえ感じた。「STARLIGHT CELEBRATE!」は3人の絆を強く感じるステージ。3人が手を重ね、仲村が内田と八代の瞳を強く見つめてから、天に取り合った手を掲げるくだりは特に印象的だった。
壮大なピアノの調べに乗せ、スクリーンの映像は広大な雲海を駆け抜けその彼方の星の海に至る。「Planet scape」が流れ始めると、ステージの階段に腰掛ける「Jupiter」の3人をスポットライトが照らしだす。夜の部の松岡は翔太のキャラクターとして歌うことをより丁寧に心がけていた気がする。だが何よりも印象的だったのは、客席を照らしだす一面の「Jupiter」グリーン。昔から「Jupiter」を応援するファンが、この光景をどれほど見たかったことか。そしてそれは、ステージの3人もきっと同じだろう。3人が客席の側に歩み出ると、松岡が寺島の肩にそっと手をおいた。3人の静かな想いを感じさせたのが「Planet scape」だとすれば、3人の想いの強さが形になって現れたのが「BRAND NEW FIELD」だった。優しい調べと足元から眩く照らす逆光の中現れた「Jupiter」だが、楽曲が走りだすと3人の動きも一気にテンポアップ。振付だけでなく3人の横の動きがぴったりあっているのが印象的で、すっーと糸を引くようななめらかな足さばきや、ズバッとした足振りのキレなど、フットワークで魅せられるのは相当の練習量を感じさせる。特に松岡のダンスの完成度は「BRAND NEW FIELD」が段違いにいい。動きのひとつひとつに表情を感じたのが寺島で、ステージ前に出る時も片足で跳びはねるように楽しそうな軽快なステップを見せたり、天に向けて拳を撃ちぬく振りも星に届けとばかりに全力だ。歌いきった3人がキメのポーズで、やりきった最高の笑顔を見せていたのが印象的だった。
「Jupiter」の締めのMCは5年間の想い、そして支えてくれたプロデューサーや、今日のステージを実現させてくれた周囲への感謝にあふれていた。中でも記憶に残ったのは、神原がアイマスのステージに立つことはもう無いのかと一度は思ったと語った後、満場のプロデューサーたちへの感謝と、これからの5年分の恩返しを語りながら男泣きしたことだ。神原の言葉に、「DRIVE A LIVE」の「ずっとずっと諦めない、この手が届くまで」のフレーズが重なった。一番涙のイメージがなかった神原の涙に、寺島がお前が泣くのかよ、という感じの優しいリアクションをしていたのがとても、「Jupiter」らしかった。もうひとつの印象的な涙は、「Beit」の高塚だ。朗らかに語りだした高塚だったが、“Jupiterと”315プロの仲間と一緒にステージに立てた喜びを話すと、表情がくしゃくしゃになった。いちプロデューサーとしてアイマスを愛してきた高塚がアイマスのステージに立ち、プロデューサーたちの歓声で支えられた経験は、彼だけの宝物だろう。ハイジョの最強ムードメーカー・野上までも涙で声を詰まらせるウェットな流れになったが、ガラッと流れを変えたのは「S.E.M」だった。榎木が明るく涙を笑い飛ばし、中島がイヤモニ越しや控室でも会場の歓声が聞こえてふるえた話をした後に(新アイドル発掘オーディションで選ばれる予定の)後輩には絶対に負けるつもりはないとおどけてみたりと、先生たちはやっぱり大人だな、と思わされるMCだった。
締めの挨拶の最後は、仲村が笑顔で今日は本当に楽しかったと力説。そして「今日はファーストライブ、ここからがスタートなんです」と、未来につなげる言葉。ラストに全員で歌う「DRIVE A LIVE」で仲村と寺島が、そして「ドラスタ」と「Jupiter」が肩を組み共に歌う姿は、本当に最高の光景だった。
告知コーナーで挨拶に立ったアイドルマスター総合プロデューサー、坂上陽三氏が『SideM』を「5年10年と続けていきたいコンテンツです」と語ると、会場にはさざ波のような温かい拍手が広がった。10年アイマスを支えてきた男の言葉はやはり説得力が違う。
「Jupiter」の登場から5年、彼らの想いは最高のライブで報われた。また5年後、『SideM』がどうなっているかは誰にもわからないが、信じて願い続けていればこんな素敵な答が待っていることもあるのだと、この日のライブが教えてくれた。
Text By 中里キリ
“THE IDOLM@STER SideM 1st STAGE〜ST@RTING!”夜の部
2015.12.06 舞浜アンフィシアター
<セットリスト>
M01:DRIVE A LIVE/全員
M02:HIGH JUMP NO LIMIT/ High×Joker
M03:∞ Possibilities/S.E.M
M04:DRAMATIC NONFICTION/DRAMATIC STARS
M05:Pleasure Forever…/W
M06:想いはETERNITY/Beit
M07:Planet scape/ Jupiter
<ショートドラマ>
M08:STARLIGHT CELEBRATE!/DRAMATIC STARS
M09:JOKER×オールマイティ/ High×Joker
M10:Study Equal Magic!/S.E.M
M11:VICTORY BELIEVER/W
M12:スマイル・エンゲージ/Beit
M13:BRAND NEW FIELD/Jupiter
<社長あいさつ>
M14:DRIVE A LIVE/全員
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