REPORT
2015.11.17
9月最終週の放送で5年間の歴史に幕を下ろした、文化放送 超A&G+の人気番組「A&G NEXT GENERATION Lady Go!!」。その番組パーソナリティたちの卒業イベントが、舞浜アンフィシアターにて10月18日に開催された。
正真正銘、番組の歴史の終着点となるこのイベントには、全国から2000人以上のファンが駆け付け、会場の座席を瞬く間に埋め尽くした。開演時間をむかえ場内が暗転すると、ステージのスクリーンには5人のパーソナリティの番組初回放送と、つい先日の最終回の映像が映し出される。この映像を見るだけでも、5人ともがパーソナリティとして明確に大きく成長してきたことが伺い知れ、番組を追ってきた者としては複雑な感慨が押し寄せてくる。
ステージが明転すると、壇上には月曜日担当・上坂すみれ、火曜日担当・小松未可子、水曜日担当・大久保瑠美、木曜日担当・高森奈津美、金曜日担当・三上枝織の5人が登場し、それぞれの挨拶とともに自己紹介をしていく。放送終了から2週間が経っているということもあり、5人ともライフワークのようだった生放送がなくなった違和感にも徐々に慣れてきたとのこと。
まず最初のコーナーは、番組の歴史を年表形式で振り返るというもの。2010年10月から始まったこの番組はエピソードの数も膨大で、抜粋形式でも振り返るだけでかなりの長尺となる。
控えめに言っても「笑いを取ることに貪欲」な5人だけあって、紹介されるエピソードも「三上、クリスマスツリーに肉とホタテを飾る」「高森、パンチラテロを起こす」など、常時アクセルベタ踏み状態なものばかりだった。しかしさすがに放送最終回付近を振り返る話題になると、5人とも感慨深げな表情を見せる。なかでも最終回のラスト3分で号泣してしまった大久保は、「自分でも完全に予想外だった」と話し、自身のキャリアの中で初のレギュラーだったというこの番組への思い入れを伺わせた。
続くコーナーは「各曜日の代表キャラがイベント見学に来た」という設定の、キャラクターなりきりトーク。三上は「ハニー枝織」、高森は「なちゅみ」、大久保は「瑠美男さん」、小松は「マザーミカコ」と、それぞれが放送で印象的だったキャラクターに扮して登場するなか、最後の上坂はまさかの「質問シロイドSumire」。上半身をすっぽり覆う着ぐるみのため、椅子に座ることもできないという体の張りっぷりと、登場するなり「このアップル信者どもめ!」というキレ味鋭いコメントで笑いをかっさらっていく。
提示されたトークテーマも「パーソナリティとの関係は?」「自分のことをどう思ってる?」というなかなか攻めた質問で、前者では「お母さんが高飛びするから木曜日のスタジオに来た」「ギャラを払うという約束で」などの内角ギリギリの回答が飛び出す。後者の質問では大久保が「水曜日と木曜日は変態リスナーが多いイメージだから……」と言った瞬間に客席から「踏んでくれー!」という声援が飛ぶなど、送り手と受け手の確かな信頼関係(?)が感じられる一幕もあった。
続けてなだれ込んだ番組イベント恒例の朗読コーナーは、これらの曜日キャラが一堂に会して食卓を囲むという、いささか狂気を感じるストーリー。ここでも高森と上坂の「パパとママは精一杯輝いて星になるんですよ」発言など、台本なのかアドリブなのか判断がつかない危険球スレスレの発言が飛び交い、最後は終了を告げる鐘が鳴ったから退散するというファンキーな幕切れで、客席から困惑混じりの爆笑をさらっていった。
朗読コーナーが終わり5人が退場すると、ステージ中央のリフトから巨大なコタツが登場し、トークパート最後のコーナーがスタート。5人が回転するコタツに入ってぶっちゃけ女子会トークを繰り広げるというシュールな光景が展開された。ここでも「今だから言える!正直意味がわからなかったGet Lady Go!!」と題して、これまでおこなわれた曜日共通コーナーに対してのダメ出しをしたり、「最後の聖戦、きのこ派?たけのこ派?」という議題で双方の派閥に分かれて過激な論争が勃発したりと、あらためて5人のチークワークとトーク力の高さを感じることができた。
「最後に5人でやっておきたいこと」というテーマでは、5人そろって番組ゆかりのアイテムを詰め込んだタイムカプセルを作り、卒業祝いケーキに入刀し、ステージ上で客席も含めた記念写真を取るという、パーティー感あふれるやりとりが連続した。最後の記念撮影では、プロのカメラマンによる記念撮影のほかに、小松によるスマートフォンを使ったステージ全景のパノラマ撮影も行われ、3テイクにわたる挑戦の末、この日ステージ全体の様子が無事おさめられた。
トークパートが終わり、15分の休憩がはさまれたあと、メンバー5人が番組を通してのテーマだった“白”の衣装に着替えて登場し、ライブ・パートがスタート。ここでは歴代のOPテーマとEDテーマが惜しげなく全て披露された。先日発売された卒業アルバムのために作られ、.lady.としての最後の曲となった「君と僕との1ページ」では、上坂が感極まって歌に詰まってしまったところに、すかさず小松と大久保がフォローを入れるチームワークを見せてくれた。最後は全員がステージ上を隅から隅まで渡り歩き、声援を送ってくれた観客へと何度も「ありがとう」を伝え、5人はリフトによって舞台下の奈落へと消えていった。
しかし5曲を歌いきったライブコーナーが終わっても、イベントの時間的にはまだ余裕が残されている。では何が起こるのかと客席が注目するなか、ステージ上には5脚のパイプ椅子と演台が設置された。この時点で、これから目にする出来事の内容を察した客席からは、複雑な気持ちを吐き出したようなどよめきが上がる。やがて演台に姿を現したのは、5年前の番組立ち上げから今日まで、5人のパーソナリティを見守り、ともに歩んできた高橋“キャップ”和也プロデューサーだった。こうして番組の指揮者直々の卒業証書授与式という、この日の最も主たるプログラムがスタートした。高橋氏はパイプ椅子に着席した5人の名前を呼び、ひとりずつへ感謝の言葉と卒業証書を手渡していく。
ここでのやりとりでも、メンバーごとにそれぞれ違った個性や高橋氏との関係性が浮き彫りにされていった。2011年に一足早く“卒業”した寺本來可に代わっての番組登板となった上坂は、途中参加というハンデを持ち前の強烈な個性で跳ね除けたことを評価された。小松は番組初期からの高いフリートーク技術と、メンバー間の親睦を積極的に深めたまとめ役としての人柄が称えられた。大久保は生放送中に多彩なキャラクターを演じ分ける役者としての力量と、それゆえに当初抱えていた“自己を表現することへの葛藤”を5年間で見事に克服した姿を絶賛された。高森は上坂に比肩する個性と、他メンバーをドライブに誘うなどの年長者ならではの交流について称賛を受けた。三上は企画立ち上げ時に高橋氏から直々に任命された、番組リーダーとしての務めを見事に完遂したことについて感謝された。
卒業式で証書の授与が終われば、次に待っているのは卒業生からの答辞だ。上坂から曜日順に、5年間をともにしたリスナー、スタッフ、メンバー、そして自分自身へのメッセージが読み上げられていく。過去の自分への手紙や、“10月18日の生放送”という形でのトークなど、当時形式は5者5様だが、共通して感じられたのは、全員が心からこの番組を楽しみ、そして愛しているということだ。別れの挨拶なので、演者からも客席からも涙が流れるのは当然といえば当然だが、それでも湿っぽさ一辺倒にならず、笑いも織り交ぜて進行していく様子を見て、「ラジオ番組として、本当になんと素晴らしい形で成長したものだなぁ」と感涙したのは筆者だけではないはずだ。
最後に答辞を読み終えたメンバーへのサプライズとして、ステージ上にはリスナーからのメッセージを集めたボードが運び込まれる。100枚や200枚では済まない量のメッセージを前にして、5人は楽しい時間の終わりを惜しむかのように感想を言い合うが、本当に時間一杯となり、別れの挨拶を言う時がきてしまった。三上と大久保が提案した最後の挨拶は、「それではそろそろお時間です。ここまでのお相手は~」という、なじみ深い番組エンディング時のもの。そして「これからもみんな一緒に!Lady」「Go!!」というステージと客席一体となった番組名コールをもって、5年の歴史を締めくくる卒業式は閉式となった。
番組は終了という節目を迎えたが、だからといってそれが5人のパーソナリティと、それを取り巻く人々が築いてきた信頼関係の終了とイコールになるわけではない。ここで一旦別れた道は、きっとまた近い未来に彼女たちの下で交わるに違いない。5年前に番組が掲げた「「次世代の声優界を引っ張っていく5人」という大仰なキャッチフレーズが、5年後の現在に事実となっている様を見れば、それを確信するのは容易いことだろう。
Text By 市川太一(クリエンタ)
「Lady GO!! 卒業イベント ~1841日の奇跡~」
10月18日(日)舞浜アンフィシアター
<セットリスト>
M-01:Open Tuning
M-02:Progression
M-03:星を捜して
M-04:A Little Magic
M-05:君と僕との1ページ
●リリース情報
Go!! ~Lady Go!! 卒業アルバム~
発売中
品番:COCX-39249
価格:¥2,000+税
<CD>
1.君と僕との1ページ
2.Open Tuning
3.Progression
4.星を捜して
5.A Little Magic
6..lady. Overture
7.Open Tuning (EDM Remix)
8.Progression (EDM Remix)
9.星を捜して (ピアノ・インストバージョン)
10.君と僕との1ページ(オリジナル・カラオケ)
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