INTERVIEW
2015.08.31
3人の音楽クリエイターが集まったユニット・eyelis。クリエイター集団ならではの多彩なサウンドで良質な楽曲を生み出してきた彼らが、約2年半の時を経てTVアニメ『赤髪の白雪姫』のEDテーマ「絆にのせて」をリリースする。そんな彼らに、今回の新曲やニュー・シングルについてお話を聞いた。
エンディングにはキャラクターみんなが出てくると言われていたので、白雪さん目線というよりは、一歩引いた俯瞰視点から物語を眺めているようなイメージで書きました(川崎)
――曲を作るにあたって原作を読みこんだと思いますが、いかがでしたか?
前口 渉 僕は結構少女漫画とか、漫画も読むほうなんですが、絵がすごくきれいで服装や小物も細かく書き込まれていたので、こういう世界観を描ける方って珍しいんじゃないかなと思いました。アニメでどう動くのか楽しみにしていて、実際見たら「劇場版かよ!」ってくらいのクオリティーでびっくりしました(笑)。
川崎里実 やっぱり白雪さんが魅力的だなと。私はどちらかというと少年漫画とかを読むことが多かったので、主人公が前向きに何かに立ち向かっていく作品というのは私の好きな作品のど真ん中だなと感じましたし、この作品の歌詞を書かせてもらえることはすごく特別なことだと感じました。
増田武史 現実世界では、真っ直ぐに生きれてる人ってきっと限られているじゃないですか。今さらですが自分の生き方を見直すきっかけになったというか、基本女性目線の作品ですが、男の僕でもそういう気持ちになりました。
――新曲は本作のEDテーマということで、曲作りはどのように行なわれたんでしょうか?
前口 各自が印象に沿って作品作りをしようって言うことが最初でしたね。何曲かみんなで出し合って、その中の一曲が増田さんの曲でした。
増田 eyelisは3人で集まって一緒に作業すると言うより、それぞれの分担で持ち寄ってできているって感じですね。さらに今回はプロデューサーさんと「EDテーマだから、とかは気にしなくていい」と言われていたので、そこから曲のイメージを膨らませて行きました。
前口 増田さんの音源は最初からクオリティが高かったです。7曲ぐらい出し合って、最終的に表題曲とカップリングの3曲を選びました。
――ユニット内コンペみたいな作り方はクリエイター・ユニットならではですね。増田さん作曲の表題曲「絆にのせて」はまた頭の3拍子のイントロが印象的で、王宮っぽいイメージがありました。
増田 頭の三拍子のところとアップテンポな本編とはテンポ感がぜんぜん違うんですが、最初にあのイントロありきで歌のある本編に突入するということでイメージが浮かんできて、自分の中でもかなり曲のポイントにしています。頭の3拍子の、舞台となってる王宮のイメージから曲になだれ込むからこそ歌の本編が生きますし、フルサイズだと2番が終わったところにも導入しています。
――なるほど、またアニメ本編の印象からEDにつなぐブリッジの役割も果たしてますよね。
前口 あそこテレビサイズだと短いんですよね。もうちょっと長く聴きたいんですけど(笑)。
増田 自然とあの部分が欲しくなって来たというのは原作を読み込んでの舞台の印象がきっかけになってるとは思います。
――そして歌詞は川崎さんの作ですが、こちらもかなり作品に寄り沿った形になっていますね。
川崎 EDのイラストには白雪さんだけじゃなくキャラクターみんなが出てくるよということは言われていたので、白雪さん目線での歌詞というより、一歩引いた俯瞰視点から物語を眺めているようなイメージで書きました。白雪とゼンの絆だけじゃなく、他にもキャラクターたちの絆がいっぱいあって、それが赤髪の世界観をカラフルなものにしているなっていう印象をタイトルに込めました。実は「絆にのせて」というフレーズは歌詞中には最後にしか出てこないんですが、全体としてそこに向かって書いていっています。
――歌入れはいかがでしたか?
川崎 スタジオで収録するのは久々だったんですが(笑)、ディレクターさんが直前に他の現場でコーラスとしてスタジオに呼んでくださって、スタジオ環境に慣れさせてくれたんです。それがあったので少しリラックスできて、いい緊張感で臨むことができました。
前口 今回他に矢吹さんの仮歌があっての歌入れだったんですよね。仮歌があってどうでした?
川崎 やっぱり歌の字乗りが分かりやすかったです。いつも無機質なシンセメロに対してどういうニュアンスで歌を当てようかって考えるので、すごくありがたかったです。
――川崎さんの仮歌から始まったeyelisで川崎さん以外の仮歌というのも新鮮ですね(笑)。歌のニュアンスはご自身ではどう解釈されましたか?
川崎 サビは短調(マイナー)なメロディラインなので、立ち向かっていく白雪さんの強さを出しつつ、Aメロの部分はすごく長調(メジャー)なので楽しく。私はアニソンとなるとかわいく歌ってしまうんですが、「それは違うよ」と言われて。もうちょっとどっしりと、素直に歌えるようにディレクションしていただいて、こういう歌い方におさまりました。
――カップリングの「銀世界」は前口さんの作・編曲ですが、コンセプトはどういったところから?
前口 最初に作って出していた曲があったんですが、「EDらしくなくていい」と聞いていたので、「もっと明るくOPっぽくていいかな?」と思いまして。サビ頭のメロディを皿洗いしているときにふと思いついて「コレは作らなきゃ!」と(笑)。「まだ間に合いますか?」って連絡して、それからはすぐ作りましたね。思いついてから曲にして仮歌を入れてもらうまで非常に短い期間で作ったので、すごく新鮮な曲です。
――タイトルから想像していた曲調とは違って明るい曲調でした。
前口 そうですよね。けっこう動くメロディで。白雪をイメージして作って、こういうのが流れてきたらいいなってことで作っていました。
――歌入れはいかがでしたか?
川崎 ロックな楽曲ということで、実は高校の頃、ロックはすごく聴いてたんです。あまり最近はロック好きを出してないんですが、当時の血が騒いで私としては楽しかったです。家で声を出してからレコーディングに臨んだんですが、ひと暴れしてから行くという感じでした(笑)。
前口 特に「銀世界」のようなガチャガチャしたような曲だと川崎さんのような声質を乗っけるのは難しかったりするのですが、今回は本番でもすごく波形の整ったボーカルで、スムーズに乗りましたね。
川崎 ロック魂感じました?
前口 感じました! 仮歌のときもかっこよく歌っていてくれたので、そのままの流れで熱のある感じでした。
――そして3曲目「僕は今」ですが、これは川崎さん作曲、前口さん編曲ですね。
川崎 実は最初の時点ではアップテンポの曲だったんですが、編曲でミディアムバラードになったんです。実際こうなったら「こういう方法もあるんだ」とすごく気に入りました(笑)。自分が作った曲じゃなくなっているような感覚というか。
――これは編曲の段階で変えたんですか?
前口 そうですね。編曲するにあたっていろんな人から意見が出始めたときに、スローからミディアムの音源にしたら面白いんじゃないかなっていう話があって。実際やってみると大正解で、「おおっ」と思いました。
――そう聴くと曲の見方が変わりますね。自分の作曲で人の歌詞となると歌入れも印象が違いますか?
川崎 これも家で練習して行ったんですけど、原作を読み込んでいたので、歌詞の意味を考えながら練習してたら本当に泣けてきてしまって(笑)。逆にレコーディングでは泣くと声が変わってしまうなと思って、考えすぎないように、あっさりした感じで歌いました。
増田 表題曲では泣かなかったんだ?(笑)
川崎 もういっぱいいっぱいで、展開によって表情がガラッと変わるので、技術的な感じで向かってたんです。すみません、泣かなくて……(笑)。でも自分の歌詞で泣くのってちょっと恥ずかしい気もするので(笑)。
――最後に今後の意気込みをお聞かせください!
前口 今後もアニメに寄り添った作品を作っていきたいと思っています。あと今回川崎さんが歌っているのですが、ぜひとも男子eyelisもやってきたいですね(笑)。熱い作品なら合う気がします、僕は歌いませんが(笑)。クリエイター・ユニットで曲の作り方からしてジャンルを問わずなのがeyelisの強みなので、いろんなアニメに寄り添えられればなと思っています。
川崎 私も少年漫画がすごい好きなので、増田さんの歌声を全面に押し出す作品を作りたいなと思いますし、デュエットとかも挑戦してみたいですね。
増田 音的には実際に刺激し合いながら作れていると思っているので、今後も質を高めて、リスナーの方にもより満足していただけるモノを作っていけるようにっていう気持ちだけをしっかり持って行きたいなって思っています。それは3人共同じだと思います。個々が成長しつつ、eyelisとしても成長できるように。ボーカルにつきましても、そういうチャンスをいただけたら全力で(笑)。歌うことももちろん好きなので。
――ありがとうございました!
Interview & Text By 大用尚宏(クリエンタ)
●リリース情報
TVアニメ『赤髪の白雪姫』EDテーマ
絆にのせて
8月19日発売
品番:1000572327
価格:¥1,200+税
<CD>
1.絆にのせて
作詞:川崎里実/作曲・編曲:増田武史
2.銀世界
作詞:矢吹香那/作曲・編曲:前口渉
3.僕は今
作詞:矢吹香那/作曲:川崎里実/編曲:前口渉
4.絆にのせて(TV EDIT)
5.絆にのせて(Instrumental)
6.銀世界(Instrumental)
7.僕は今(Instrumental)
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