REPORT
2015.07.16
6月7日、fhána初のワンマン・ライブツアー“Outside Melancholy Show 2015”の追加公演が東京・恵比寿LIQUIDROOMにて開催。ツアーの出発点でもある東京に戻ってきた彼らは、ツアー初日とセットリストをガラリと変更。超満員のフロアを前に、大ボリュームの計24曲を披露した。
次々と飛び出すキラーチューンで、彼らの音楽世界へとご招待
まずは彼らの世界観を連想させるような、詩的なメッセージを組み込んだOP映像を上映。雰囲気を作り上げたところでスクリーンが落ち、「天体のメソッド ~Quote from Stardust Interlude~」からライブスタート。静かな曲調にマッチする、涼やかにそっと抜けていくようなtowanaの歌声がLIQUIDROOMを少しずつfhána色に染めていく。そしてデビュー曲「ケセラセラ」へ。ここまで2曲、音源から狂いなく再現されてきたが、楽曲のムードも相まってtowanaの表情は楽しそうな、晴れやかなものとなり、“ライブならでは”の要素を見事にプラスしていた。徐々にギアを上げた彼らは、ここから鉄板曲「いつかの、いくつかのきみとのせかい」やアッパーなナンバー「君という特異点[singlar you]」や「lyrical sentence」など、開演から一気に7曲を畳み掛ける。
ここでようやくひと息入れ、ゆったりとしたMCでツアーの思い出を振り返る4人。今回のツアーで東京以外のライブを初めて経験したfhánaだが、京都を訪れた際には、yuxuki wagaとfhánaのプロデューサーとが、鴨川にかかっていた橋の先めがけてダッシュ。ところがその半分の距離も行かずに心が折れた……というエピソードで会場に笑いをもたらす。
そんな思い出も語りつつ、いよいよ迎えたツアーファイナル。「始まりがあれば、必ず終わりもあるわけですよ」と切り出したのは、佐藤純一。ただそれだけで終えず、「何かが終わるということは、それは何かが始まりでもある」と続け、「はじまりのサヨウナラ」と「約束のノクターン」を披露。そして、towanaがfhánaの正式メンバーに加入したメジャー・デビュー前の楽曲「街は奏でる」へと繋ぎ、“終わりの先の始まりの約束”を予感させてくれる。さらにkevin mitsunagaのソロ・パフォーマンス曲「Town is like a Melody」が続き、メンバー個々の魅力も見せる。
未来を信じたくなる、“現在”の瞬間。
“次に何が飛び出すのか?”そんなワクワクを保ったまま、再びVTRが上映される。独特の世界観を持った映像に乗るポエトリーな言葉が、この場に集った人々の胸に沁みわたる。ある種フロアのコンセントレーションが高まったところで届けられたのが、「Cipher」。4年ほど前、「『何か』を感じてもらえれば」とVOCALOIDの歌唱によって動画投稿サイトにUPされたこの曲が、初めてtowanaによって歌われる。
曲明け、佐藤が「fhánaが出会ったきっかけでもあるSNSに、人と人とのつながりの変化や可能性を感じた。そこに希望を感じながらも、『そもそも人はなんで“感情移入”できるんだろう?』とか、そういう問いを歌った曲でした」とこの曲に込められた想いを改めて紐解くと、MCはそれにとどまらず「次の曲も初披露です!」と続く。それは、今夏放送のTVアニメ『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ ツヴァイ ヘルツ!』OPテーマに起用される「ワンダーステラ」。序盤はゆるめに入りながらも、サビに向かって徐々に疾走感と攻撃性を高めていくこの曲、アルバムを経たfhánaの新しい挑戦の詰まった1曲である。かわいさを持ちながらも圧力のあるtowanaの歌声も、『プリヤ』にピッタリだ。
そしていよいよライブはクライマックスへ。「前の人、うしろの人、元気ー!?押しつぶされないようにね!」というラストの高まりの予告めいた言葉もありつつ、佐藤から改めてこのアルバムに込められた想いが語られる。
「『Outside of Melancholy』っていう1stアルバムのタイトルには、“憂鬱の向こう側へ行こう”“今のこの世界を肯定しよう”っていう想いがあって。過去の選択次第では前前違う自分になっていたかもしれないけど、実際今の僕はこの僕でしかなくて。これからもたくさんの選択を積み重ねていくことになるけど、どれを選んだって“このあとこうなる”なんてわからない。だからこそ、過去の選択の結果でもあり未来の原因でもある“現在”を信じよう、という意味を込めました(佐藤)」
淡々としながらもブレない彼の想いの吐露こそが、このライブのラストスパートの合図。この想いがいちばんに込められているであろうアルバム『Outside of Melancholy』のリード曲「Outside of Melancholy ~憂鬱の向こう側~」で、フィナーレに向けて再出発だ。佐藤のMCからのこの繋がりは、たまらなく胸いっぱいになってしまう。そしてここからはキラーチューン続き。「divine intervention」はイントロが流れるやいなやフロアからファンの大歓声が上がり、続いてファンの手が挙がる。それをkevinのサンプラーパフォーマンスがさらに煽る。こうしてボルテージがピークまで高まったところでの「星屑のインターリュード」は、本当に反則だ。フロアの熱狂と、切なさ混じりのメロディアスなサウンド、そして澄んだまま高く高く羽ばたいていくtowanaのボーカル――この場でしか感じられない心地よさは、確かに存在した。そのまま「ありがとうございました。最後の曲です」とのtowanaの言葉から、本編ラストナンバー「white light」へ。アルバムでもラストを飾るこの曲では、曲タイトルどおり、白いライトに照らされてこの曲を届けるfhánaの姿があった。長い後奏で紡いだ音の調和こそが、今のfhánaが到達した“憂鬱の向こう側”のように感じた。
見つけあった僕たちは、一緒に“憂鬱の向こう側”へ。
となれば、もう少し観ていたいと思うのがファンの性。呼び続ける声に応えて、4人が再登場。サビの変拍子がフックになり、それを活かした振付で観客との一体感を生み出した「光舞う冬の日に」から始まり、浮遊感を持ちながらも、後奏でそれぞれのメンバーがアツいプレイを見せた「kotonoha breakdown」へと続き、最後はキラー・チューン「tiny lamp」へ突入。OPテーマとなっていた『ぎんぎつね』を連想させる、橙と紅に照らされるステージを前に、フロアのボルテージはまたまた上昇する。
……と、ここでもMCなしでステージを降りたfhána。となれば当然フロアからは「もう1回!」の声が響き渡る。三度登場したメンバーは、改めて歓声に応える。すると唐突に「今日も湯気がすごいね」と語り出す佐藤。なんでも「ツアーの最初の公演のとき、プラスチックのフタだったのに楽屋のお弁当の中身が“湯気で見えない”(佐藤)」ことが発端になったこのワード。そして「それがTwitterとかで『今日も湯気で見えなかったです!』って言われてて、来てない人にはすごい熱気みたいに見えてた。だからネットだけではわからない。現場に来なければ共有できない(佐藤)」とこの現象をうまく着地させたところで、ツアーグッズの紹介へ。今回のグッズは「普段使いで着て、街に行けちゃう(yuxuki)」ほどこだわったおしゃれなもの揃いともあって、その紹介にも自然と熱が入る。
そして、今度はtowanaが「京都に行って『ケセラセラ』のMVを撮影した鴨川をみんなで走ったりして、そのときの想いを思い出しました。こんなに短期間にたくさんライブをすることが初めてだったので、ライブのたびにどんどんライブが好きになったし、みんなの笑顔にすごく幸せな気持ちにさせてもらって。逆に不甲斐なくて悔しいところもあったけど、そんなところも全部含めて、一生に一度しかない初めてのライブツアーに来てくれたみんなや一緒に作ってくれたスタッフさん・メンバーみんなに感謝しています」と今回のツアーを総括。続けて再び佐藤が「『Outside of Melancholy ~憂鬱の向こう側~』の歌詞に『君が僕を見つけてくれた』のような一節があるんですけど、自分以外の誰かがこの自分を見つけてくれたっていうことによって、特別な存在になれるんじゃないかな――そういう気持ちを込めました。僕たちfhánaは、今日来てくれた皆さんに見つけてもらえたからこそこうして歌えていて。僕たちも、今日皆さんのことを見つけることができた。それにみんなも、お互いに見つけ合うことができたんじゃないかな、と思います。それこそが“憂鬱の向こう側”なんじゃないかと思います」とMCを締めくくる。
そしていよいよやってきた、本ツアーのラストソング。それはデビュー曲「ケセラセラ」のAcostic Ver.。きっとこの選曲は、ライブ中盤で佐藤が語っていた「終わりがあれば、始まりがある」という言葉と繋がっているのだろう。だから、おそらくこれは4人にとっては次なる道のりへの第一歩なのだろう。しっとりとしたアレンジではあったがそこに終焉の悲しさはまったくなく、最後まで晴れやかな音色だった。
自らの持つ空気感を大事にしながら、そこに観客を巻き込んでひとつの世界を作り上げたこの日のfhánaのステージ。きっと、この日LIQUIDROOMに集ったすべての人が、それぞれの“憂鬱の向こう側”を見つけることができたはずだ。見えるものが人によって違っていても構わない。辿り着いた“憂鬱の向こう側”に、今を肯定できるものさえ見えていれば。そして、その光に向かって生きていく私たちのそばに、いつまでもfhánaの音楽がともにいてくれたら、この上なく幸せなことだろう。
Text by 須永兼次
<fhána 1st Live Tour“Outside Melancholy Show 2015”追加公演>
2015.06.07@恵比寿・LIQUIDROOM
【SET LIST】
M1.天体のメソッド 〜Quote from Stardust Interlude
M2.ケセラセラ
M3.君という特異点[singlar you]
M4.いつかの、いくつかのきみとのせかい
M5.lyrical sentence
M6.innocent field
M7.スウィンギングシティ
<MC>
M8.はじまりのサヨウナラ
M9.約束のノクターン
M10.ホシノカケラ
M11.街は奏でる
M12.Town is like a Melody(kevin solo)
-転換・VTR-
M13.Cipher
<MC>
M14.ワンダーステラ(新曲・TVアニメ『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ ツヴァイ ヘルツ!』OPテーマ)
M15.ソライロピクチャー
M16.True End
<MC>
M17.Outside of Melancholy ~憂鬱の向こう側~
M18.divine intervention
M19.星屑のインターリュード
M20.white light
-Encore-
EN1.光舞う冬の日に
EN2.kotonoha breakdown
EN3.tiny lamp
<MC>
WEN1.ケセラセラ(Acoustic Ver.)
●リリース情報
TVアニメ『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ ツヴァイ ヘルツ!』OP主題歌
「ワンダーステラ」
8月5日発売
品番:LACM-14378
価格:¥1,300+税
<CD>
01. ワンダーステラ
作詞:林 英樹 作曲:佐藤純一 編曲:fhána
02. cymbals will ring
作詞:林 英樹 作曲:kevin mitsunaga 編曲:fhána
03. ワンダーステラ(Oii “Patchwork” Remix)
作詞:林 英樹 作曲:佐藤純一 編曲:Oii
04. ワンダーステラ(Instrumental)
05. cymbals will ring(Instrumental)
●グッズ情報
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