INTERVIEW
2015.05.04
20世紀に少年少女だった人達に向けて、当時の名曲を時代に即したアレンジとクリアな音源で提供し、原曲を知らない若い世代には名曲の存在を知らしめるきっかけとして機能する。そんな志高きカバーアルバムの第2弾がリリースされた。
高橋洋子チームがどのような思いで選び、演奏し、歌ったのか、蘇った名曲達について彼女の思いを聞かせてくれた。
――前作の『1』でのアレンジは、大森・鷺巣・島健・佐藤・笹路という5人体制でしたが、今回は笹路さんお一人がすべての編曲を手がけられています。
高橋洋子 やっぱり前回は、他の曲がどんなアレンジで上がってくるのか分からないので、シンプル過ぎたり、妙にとがっていたりということがないように皆さん悩まれたと思うんですよ。でも、今回は笹路さんだけですので、「この曲がこうならこっちは……」という風にトータルでのバランスを見ながらの引き算足し算ができたので、よりディープなアレンジができたと思います。
――歌入れはいかがでしたか?
高橋 わりと「いっせいの、せ」で録ったんですよ。だから、自分が間違えると他の方に迷惑をかけるので、すごいミュージシャン達が緊張しながら「1、2、3……」って小節数を指で数える、みたいなシュールな光景があって(笑)。でも、いい演奏があればいい歌になる、いい歌があればいい演奏になる、そういう世界だと思うんですよね、音楽って。だから、「じゃあ、仮歌を」って言われて録ったのに、そのテイクが使われることが多かったですね。やっぱり「空気」が入るんですよ。夜中の2時とかに歌ってるのに声が出る出る(笑)。すごくやりやすかったですね。「残酷-」なんかは特にそうでしたし、「魂ルフ」なんかも勢いありますよね。
――どちらもギターのカッティングがとてもオシャレでかっこいいですよね。遠くから聴こえるような抑え目な音量も絶妙で。
高橋 そこが笹路さんの「あえて」ですよね。本当にかっこいいんですよ。「ははうえさま」も、バカボン鈴木さん「グッと来たよ」と仰っていました。あの方はお坊さんの資格も持っているので、修行時代とか思い出したのかもしれませんね(笑)。
――ぜひ、各曲の選曲理由や思い出などもお伺いしたいと思いますが。
高橋 「カリキュラマシーンのテーマ/3はキライ」(を提案したの)は私です。『カリキュラマシーン』の歌はいつか歌いたいと以前から思っていたんですよ。とにかく、「3はキライだ」を死ぬほど真剣に歌ってみたかった!(笑)。ホント、平成版『カリキュラマシーン』があったら出演したいぐらいに好きなんですよね。大人のおふざけというか、一つの音楽を提供するという裏に、時間や手間や遊び心や志が入っている気がするし。なんとなくその匂いは出せたかな、とは思うので、ぜひYouTubeか何かででも一度見てほしいですね。皆さんにとっての入り口になれれば、という思いでした。本当はもう1曲入れたかったんですけど、古い番組なので権利元がはっきりしなくて諦めたんです。3曲をつなげられたら全体のつじつまも合ったとは思うんですけど。でも、この2曲をメドレーにできたのは笹路さんだったからです。カフェでかかっててもおかしくないような大人なアレンジです。ただよく聴くと“3は嫌いだ”って言ってる(笑)。
――「ひこうき雲」は松任谷由実さんのコーラスをされていた高橋さんにとっては思い出深い曲では?
高橋 そうですね。でも、これは(キングレコードの)大月(俊倫)さんセレクトなんです。ブックレットにも書かせていただいたんですけど、小学校三年生ぐらいの時、TVで由実さんを見て、電流が走ったんですよ。こんな素晴らしい表現方法があるのかと。当時、父親に言われて嫌々ピアノを習ってたんですけど、自分で探し回って「ひこうき雲」の入っている弾き語りの本を買ってきて弾きましたね。今ならちょうど、(『風立ちぬ』の主題歌という)アニソンという意味も新たに込められるし、あらためて敬意を込めて歌わせていただきました。この曲と向き合うことで、いろんなことを思い出したし、原点回帰のきっかけにもなったし、由実さんの素晴らしさも分かったし。できれば由実さんにも直接ご報告したいですね。
――「真っ赤なスカーフ」は?
高橋 これは大月さんの十八番です(笑)。
――え? 大月さんが歌うんですか?
高橋 よく歌います。すっごく上手いんですよ。実は『1』でも大月さんから候補として上がってはいたんですけど、正直、大月さんのイメージが強すぎて(笑)。今回でも「どうやって歌おう」って一番悩んだ曲でしたね。でも笹路さんが、今の時代に高橋洋子が歌うなら、という素晴らしいアレンジを施してくれたので、「前から歌ってましたけど?」って感じでサラッと歌えました。益々好きになりましたし、(大月のイメージが)緩和されましたね(笑)。
――「あなた」は大ヒット曲ですね。
高橋 でも最近はあまり流れる機会も少ないですよね。なので、この名曲を残しておかないと、という思いでした。小さい頃からよく歌ってましたし。
――今回歌ってみた感想は?
高橋 笹路さんの話になるんですけど、彼の現場に行くとヘッドホンバランスがパーフェクトの状態なんですよ。普通は自分で調節しますし、しかも私はかなり小さい音でレコーディングするんですよ。でも、笹路さんのセッティングは完璧。本当に一ミリのズレもない最高のバランスだったんです。その時、「あ、笹路さんはこういう音の世界に住んでるんだ」って思いましたね。不思議な体験でした。笹路さんとは今回、音のバランスや方向について色々話す機会があったんですね。例えば、音が聴こえる角度や方向って大事なんですけど決まりってのはなくて、斜め45°から聴きたいと思ってもフィーリングの問題なんです。体調などにも左右されますし。で、この話をすると分かる人と分からない人に分かれるんですけど、笹路さんと私は全く同じ意見でした。「僕と同じ話をするよね」って言われましたね。そうやって、同じ音の世界や耳を共有しながら、かなりコアな話ができたのは楽しかったですね。
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