REPORT
2015.04.15
2014年にアーティストデビュー5周年を迎えた伊藤かな恵。『5枚でつながる5周年プロジェクト』や、YouTubeランティスチャンネル内で公開された主演ドラマ「5枚でつながる5周年劇場」の制作など精力的な5周年記念活動を行ってきた彼女が、2015年1月から名古屋、大阪、東京を巡る約2年ぶりのツアーを行った。今回はその千秋楽となる東京・赤坂BLITZでのライブをレポートする。
5周年記念活動の集大成となるライブ・ツアー、その千秋楽ということでまさにアーティスト・伊藤かな恵の魅力を凝縮したようなライブとなった。
万が一アーティスト・伊藤かな恵をご存知無いという読者に、アーティストの魅力をごく簡潔に伝えるとするならば、アツミサオリなど縁の深いアーティストによって作られた楽曲の良さと、本人ののびやかな歌声・エモーショナルな作詞だろうか。その片鱗は本WEB連載のスペシャル企画のインタビューも参照してほしい。そしてライブの魅力はといえば、実力抜群の”伊藤家BAND”による生演奏&アレンジ、さらに何といっても”伊藤家のホームパーティにご招待”というコンセプトによる独特の空気感が挙がるだろう。本人の資質もあいまって、いい意味でのゆるさ・距離の近さが会場全体に漂っていて、この空気感は他のアーティストのライブにはない魅力だと言えるだろう。
ライブが始まると、知る人ぞ知る「レディース&ジェントルメン!伊藤家にようこそ!」の前口上と共に赤いドレス姿の伊藤かな恵が登場。満員の赤坂BLITZを見渡して、「伊藤家ちょっと広くなってる!」といったトークで会場をひとしきり和ませたのち、「ホームパーティ、レッツスタート!」の掛け声とともに1曲目の「Happy Garland」がスタート。この曲は5周年プロジェクトの先駆けとなった曲だ。
5周年プロジェクト第3弾の「打ち上げ花火」。しっとりした歌い出しからスカ調のサビに弾けるこの曲で、会場はお祭り騒ぎの様相を呈する。
続いては一転してゆるやかなバラード「いじわるな恋」。情感たっぷりに歌い上げられる曲に、最前の方ではサイリウムを消し、うっとりと聞き入った。歌い終わった伊藤が丁寧にお辞儀をした瞬間、万雷の拍手が鳴り響いたのが印象深い。
ここで最初のMCが入る。”伊藤家”におけるMCは、伊藤が思いついたことを喋っていくようなゆるいもの。客席後方に手を振ると、前方がさっとしゃがみ、伊藤が「そんなちっちゃくないぞ!」とむくれるというやり取りなど、客席と対話するような独特の空気感がとても居心地がいい。
ゆるい空気ながらも歌に入ればさすがの堂々たる姿。伊藤自身が作詞を担当した「コンパス」はギターとピアノが響く爽やかなロックサウンド。続く「アンバランス」は伊藤自身がシンガーソングライターユニット・アキダスに惚れ込んで作詞・作曲をオファーしたという曲で、シティ感溢れる洒落た楽曲。CD音源で聞いても良質な楽曲たちだが、それらを力強い生バンド演奏とアレンジで聞けるというのも今回のライブツアーの魅力のひとつだ。
そんな中続く伊藤のデビュー曲「ユメ・ミル・ココロ」では、曲が始まる前に伊藤のもとにギターが届けられる。ざわつく観客に「まだ弾くかわかんないからね!かっこだけかもしれないから!」と言う伊藤だが、もちろんそんなわけもなく、この日のために練習したというギター弾き語りを披露。バンドを従えての演奏に会場は湧き、曲が終わっても「もう一曲!」と「ギター!」コールが始まってしまう。家主がギター演奏を披露し、無理なギター要求コールには「え?帰れ?」と聞きちがえたり「セットリスト決まってるんだから!」と赤裸々に返すやり取りが、”伊藤家のホームパーティ”というゆるい空気感を体現していて微笑ましかった。
バンド紹介という名のバンドメンバーいじりを経て、トークではたくさんの出会いをくれた『花咲くいろは』と、ランティス祭りでのnano.RIPEとの出会いを語る。そんんな中歌うはもちろん、nano.RIPE・きみコが作詞作曲した5周年プロジェクト第2弾「ルーペ」だ。前トークも相まって深く感情移入して歌う様に感じ入ってしまう。
続いてアツミサオリが作詞作曲した「マイザーズドリーム」、「オレンジ色」を披露。3曲続けて縁の深い作詞作曲によるバラードを情感こめて歌う姿は、素敵な曲に対する返礼のようでもあった。また全編通して明確な振りのない伊藤の曲だが、今回のライブでは歌詞をなぞるような小さな振りもあり、それがまたかわいらしい。
ここで伊藤が一時下手袖にはけ、しばし伊藤家BANDによるインスト演奏がスタート。これがまた恐ろしくかっこいい!今回のライブでの生バンド演奏による楽曲アレンジは、これで音源化してほしいというぐらい素敵だったが、そうした彼ら伊藤家BANDの確かな演奏力の下支えあってこそと改めて気付かされた。
そして演奏はシームレスに「ドレミファソラシドのうた」に移行し、伊藤が白地にドットパターンの衣装と、指揮棒をもって登場。「みんな一緒に歌って―!」という言葉通り、指揮棒を振りながらサビではドレミファソラシドの大合唱という楽しい後半戦の開幕になった。印象的だったのは、歌いながらでどうしても4拍子の指揮がずれる伊藤が、最前列のファンに教えられながら指揮を直す一幕。間奏の間に「え?違う?こう?」と聞き返す姿は、他ではお目にかかれない「まさに伊藤家!」という光景だ。
曲のあとは「ここは自由に喋っていいとこだ」という言葉通りの非常にゆるいフリートークがスタート。「前半はかしこまったドレス、後半はみんなと騒ぐために元気なこの衣装」という衣装の話や、インドネシアで手に入れた新しい楽器の紹介、果てはお立ち台に張られたヒラヒラ(大阪、名古屋ではホームパーティの手作り感を出すために、このヒラヒラが会場に貼られていた)と自由奔放に話題が飛ぶ。
「(台のヒラヒラを)後ろの人見えるー?」というと、オールスタンディングの最前列がサーっとしゃがみ、後ろの人に見えるようにしたのも”伊藤家”ならではの暖かい光景だ。
そんなゆるいトークから、「そろそろ歌いますか」の言葉で急に「オーロラ」がスタート。続く5周年プロジェクト第5弾「Shooting Star」も含めて、のびやかな伊藤の歌声が映える2曲に、会場の盛り上がりは最高潮に。
続くシングル「COLORS!」収録の「片想い」では、ライブアレンジのためか曲の始まりでとちってしまう。……が、ここでも会場全体が笑顔で見守るような空気で、会場の熱が途切れなかったのが印象深い。むしろ盛り上がりに盛り上がる会場。
「Starting Point」は5周年プロジェクトの最初に伊藤かな恵自身が作詞した曲だが、本人がその後のMCで「この曲を歌うと私の中の”あむちゃん”が騒ぎ出す」という発見を報告。昔からの伊藤かな恵ファンにはうれしい発見だ。
ラストの曲、「きみからはじまる」は5周年記念プロジェクトの最後に自身が作詞した楽曲。サビの「♪おはようございます~ありがとう ごめんね」と挨拶を連ねていく箇所では、歌詞に併せてお辞儀などをするジェスチャーを見せた。ライブ後にCD音源で聞いていても目に浮かぶような、素晴らしくエモーショナルな振り付けだった。
アンコール後、濃い緑のライブTシャツ姿で登場した伊藤は、今回のライブツアーで恒例となっていた今日の日替わり曲を披露。名古屋では「君がいれば」大阪では「誘惑マーマレード」と歌ってきたが、千秋楽のこの日は「メタメリズム」をチョイス。ファンの思い入れも深いこの曲で、生バンドによるこの日のためのアレンジも効いた演奏で会場はヒートアップする。
そしてラストは文句なしに盛り上がれる曲「つまさきだち」。恒例の、曲の最後にみんなでつまさきだち(ジャンプ)は、今回5周年を記念してなんと55回!無茶な要求にバンドメンバーもきっちり応えて決めを刻み、会場全体で数えながら55回ジャンプを達成してしまった!なんてノリのいいライブなんだ。
ラストのトークでは、最前列で「ツナガルケシキ 次は長野で」というファンの手づくり横断幕が掲げられるというサプライズも。ツアー中の「長野でライブしたい」という伊藤の発言を受けての横断幕だったが、これには伊藤もびっくりして、喜びのあまり涙がこぼれる。
伊藤は「5周年プロジェクトではいろいろと考えることもあったけど、答えはこの場所にあった。”私はみんなではしゃげる場所を作りたいんだ”って。だから会いに来てくれてうれしい。みんなの力はすごいんだよ!」と心境を吐露。非常に月並な感想になってしまうが、今回のライブでは、メインキャストはもちろん、スタッフ、バンドメンバー、そして支えてくれるファンがいてこそのライブであるということを強く感じた。それは、彼らすべてが”伊藤家”という括りで繋がっているからこそなのかもしれない。
Text by 大用尚宏(クリエンタ)
伊藤かな恵 Live Tour 2015″ツナガルケシキ”赤坂BLITZ公演
2015年2月8日 赤坂BLITZ
【セットリスト】
1. Happy Garland
2. 打ち上げ花火
3. いじわるな恋
4. コンパス
5. アンバランス
6. ユメ・ミル・ココロ
7. ルーペ
8. マイザーズドリーム
9. オレンジ色
10. ドレミファソラシドのうた
11. オーロラ
12. Shooting Star
13. 片想い
14. Starting Point
15. きみからはじまる
アンコール
EN1. メタメリズム(日替わり曲)
EN2. つまさきだち
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