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INTERVIEW

2015.02.27

分島花音ニューアルバム『ツキナミ』リリース記念スペシャルインタビュー!

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TVアニメ『WIXOSS』シリーズの主題歌などで知られる分島花音がNEWアルバムをリリースする。チェリストでありながらシンガーソングライターでもある彼女の世界観や歌声は個性に溢れ、このアルバムはそのルーツともいえる楽曲から、ライブを通じて磨かれていった楽曲、そして最新のアニメ主題歌までが網羅された、彼女を知るのにピッタリの1枚だ。今回、新たにアルバムに収録された楽曲解説を通じて、彼女の音楽観とその足取りをうかがうことができた。

――今回のアルバムには近年のアニメ主題歌からライブで披露されている楽曲を音源収録されたりと、さまざまな楽曲が含まれていますが、これを1枚にパッケージングするにあたってどのようにテーマを考えましたか?

分島花音 アニメのテーマソングの場合、資料を読んだり考えたりして、すごく脳を使うので「脳の音楽」と位置づけ、一方でふだんのライブで演奏している曲は、衝動的に出た感情をそのまま歌ったりするので「心臓の音楽」としました。一見バラバラだけれども、どちらも自分の体から出てきたものなので、それをひとつにパッケージングしたという形です。

――それはこのジャケットイラストともリンクする部分でしょうか?

分島 イラストも脳と心臓のメタファー(暗喩)なんです。表面の方はナースの絵柄なんですけど、知性の象徴としてナイチンゲールが浮かんでこのイラストにしてもらいました。人に対して何かをする、つまり楽曲を誰かに聴いてほしいとか届けたい相手がいるということを意識しています。そして裏面の心臓は、心の躍動を外に伝えるための血液の循環をモチーフとしています。

――アルバムタイトルの『ツキナミ』にはどんな思いが込められているのでしょうか?

分島 『ツキナミ』を「月並み」と書くと「平凡」みたいな意味で捉えられるかもしれませんが、この言葉って本来は「月ごとに決められた=月極」という意味なんだそうです。つまり切っても切れない関係性、私にとっての音楽を表すのにちょうどいい言葉だと思ってこのタイトルにしました。同時に、脳と心臓の音楽の話で言うと、どちらも「にくづき(月)」がある言葉なので、そういう思いつきとか衝動的なフィーリング感を合わせていろんな意味をかけています。

――2曲目に「ツキナミ」というタイトルの楽曲が収録されています。アルバムコンセプトを決めてからこの楽曲を作られたのでしょうか?

分島 最終的に歌詞に落とし込んだのはコンセプトを決めた後だった気がしますね。楽曲としては先ほどの自分と音楽の関係性の気持ちを歌っています。今までこういうストレートな歌詞を書く機会があまりなかったので、すごく素直なことを歌っているので恥ずかしい気持ちもあるんですけど、今しか歌えないものだなと思ったので入れてみました。

――今?

分島 はい。今歌わなくてはいけないことっていうのは、過去に歌えなかったこと、そして未来ではまた意味合いが違ってくることだったりします。このアルバムにはシンガーソングライターを目指していたときに作った楽曲も入っているのですが、そのときすぐに世に出ず、今このタイミングで音源になるというのは経験値が必要だったんだと運命的に決められていたような気がすごくして。今回、「ツキナミ」という楽曲を作ったのも、10代の時に作った曲が世に出たのと同時に、歌に対する自分の気持ちを歌っておかないと、もう歌えないかもしれないと思ったので。かつての自分に、こうしてたくさんの人に聴かれる機会をもらっているんだよと歌ってあげたいという思いですね。

――アルバム収録曲には編曲としてsugarbeansさんのお名前が多く入っていますが、これは?

分島 sugarbeansさんは私のライブでバンマスとしてずっと入ってくれていて、(スタジオ)音源がない曲をライブで披露するにあたってのアレンジをしてくれましたので、今回もお願いしました。

――となると、sugarbeansさんが編曲でクレジットされている楽曲は、ライブで披露されていた楽曲ということでしょうか。

分島 最後の「モンスター・スター」は今回このアルバムのために書き下ろした曲です。「さんすくみ」はライブでもよく披露する曲なのですが、この曲を作るときに打ち込みのダンスミュージックの印象を持っていたので、音源になるならスタジオ盤にしかできないことをやりたいと思って、白神真志朗さんへお願いしました。

――分島さんのチェロとダンスミュージックの融合が意外な組み合わせだったのですが、原案は分島さんの中にあったんですね。

分島 はい。この曲の場合はポップテイストなイメージが頭のなかにあったので、それにチェロを重ねながら上手くバランスを取って打ち込みと合わせていったという感じですね。これは2~3年前に作った曲で、ちょうどその頃、忙しくてマネージャーに「私があと2人くらいいたらもっと楽なんだけど」って愚痴を言っていた時に、「それを歌詞にすればいいじゃない」って言われて作った楽曲です。でも分離したらまずいこともあるので、ひとりでないといけない理由も歌っています。私がよくtwitterでネタにしているのでファンのかたにとってもお馴染みの曲だと思います。

――一方、つづいての「チョコレート」は温かいイメージの曲ですね。

分島 リズムはピアノに任せて、ウッドベース、パーカッションもウッドメインのもので、派手なサウンドを一切取っ払って弦メインでという柔らかい感じにしています。フルート、クラリネットも入っています。

――間奏にパッヘルベルのカノンが入っているのはsugarbeansさんのアイディアですか?

分島 これは私からのリクエストです。ライブで何回か演奏していて2,3年前くらいにフルコーラスを書いたときに間奏にはカノンを入れようと思って。

――曲の原形はもっと以前でしょうか?

分島 高校の頃に仲の良い友だちがいて、その子の学校に忍び込んで屋上でお菓子を食べていた頃の思い出を歌にしています。当時、岩井俊二さんの「花とアリス」という映画をその子が好きで、そういうイメージとか女の子の友情とかちょっとしたすれ違いとか、いろんな思い出が入った曲です。

――「芸術家のかわいい想像たち」はジャジーで懐かしい雰囲気のある楽曲ですね。

分島 これは10代の頃に作った曲です。当時、小島麻由美さんがすごく好きで、ジャズを聴くようになったんです。元々、基盤としてクラシックは好きだったのでその延長で聴くようになって、裏拍メインの楽曲をいくつか作った中の一曲なんです。当時はギターもベースも弾けなかったのでとにかくチェロを重ねて作りました。レコーディングではライブのサポートメンバーに入ってもらって一発録りという、かなりライブに近いサウンド感ですね。

――内容についてはどんなモチーフでしょうか?

分島 父が芸術関係の仕事をしていて、私が小学生の頃にスランプを経験していたんです。今考えるとおこがましいのですが、それを見ていて子供心に「こんなに能力があるのに、それを上手く表現できないってもったいないな」とすごく感じたんです。私も自分の限界に絶望したり未熟な部分に打ちのめされて、逃げ出したいと思うようなときもあるのですが、そんな自分に対して作品が活を入れているというイメージで書いた曲です。自分の生み出したものとか才能をちゃんと信じてあげないと、今後何も生み出せなくなってしまうからそこは信じてあげようと。

――そうした自分を省みる楽曲を書くのは勇気のいることでしたか?

分島 いえ、若かったのであまりそういうことを考えていなかったのかもしれません(笑)。これも10代の頃だったと思います。すごく恐縮している部分と過信している部分が同居しているような感じで、いい曲が書けたときに「自分ってスゴい」って思った翌日に「もうダメだ~」って波が激しくて、一喜一憂しながら音楽に向き合っていました。そういう意味ではあっという間に青春が終わってしまったので、今になって青春をやり直しをしている感じです(笑)。

――現在ではその波というのはいかがでしょうか?

分島 学生の頃は本当に孤独に作っていたので1か100かという感じだったんですけど、今はチームで作っているの感があるので心強いですね。昔よりは打たれ強くなったかなと思います(笑)。

――最後の「モンスター・スター」はどんなモチーフでしょうか?

分島 これは書き下ろしで、届ける相手に対する思いを歌った曲です。学生の頃は他が見えない状態で音楽だけに集中するという状況だったんです。でも音楽をやる上で音楽だけを追いかけていてはダメで、聴いてくれる人がいることの大切さをプロになってから改めて痛感しました。独りよがりな楽曲ではなく、聴いてくれる人に届けるために何をしたらいいかと考える楽曲作りに変わっていきましたね。そういう意味を含めて聴いてくれる人に向けて歌った曲です。

――すべての楽曲を作詞作曲されたこのアルバム制作を改めて振り返っていかがですか?

分島 自分の楽曲でフルアルバムで作ったのは今回がはじめてなので、任せてもらえることがすごくありがたかったですし、ちゃんと自分のアルバムだと言える作品になったのではないかなと思います。アニメの主題歌に関わることで、アニメをきっかけに出会うことができたかたもたくさんいました。すごく温かく迎えてくださってすごく嬉しかったです。

――そして、4~5月にはこのアルバムを引っさげてのワンマンライブツアー『TSUKINAMIC』が控えています。

分島 お客さんに非日常な空間を楽しんでもらえたらなと思いながら毎回考えています。まだ音源になっていない曲も演奏したりしますし、アレンジもテーマに合わせて変化させたりもするので、ふだんとは角度を変えた曲を楽しんでもらえたらと思います。

Interview&Text by 日詰明嘉


 

●CDリリース情報
分島花音『ツキナミ』
2015年2月25日発売
【完全限定生産仕様(CD+BD)】
news-1501191600-c002
価格:¥4,500+税
品番:1000547190
<CD>
1. killy killy JOKER(TVアニメ『selector infected WIXOSS』OPテーマ)
2. ツキナミ
3.さんすくみ
4.チョコレート
5. signal(TVアニメ『ストライク・ザ・ブラッド』EDテーマ)
6.ファールプレーにくらり(TVアニメ『To LOVEる-とらぶる-ダークネス』EDテーマ)
7.サクラメイキュウ(PSPゲーム『フェイト/エクストラCCC』主題歌)
8.芸術家のかわいい想像たち
9.ナイチンゲール
10. world’s end,girl’s rondo(TVアニメ『selector spread WIXOSS』OPテーマ)
11.モンスター・スター
<Blu-ray>
・signal Music Video
・killy killy JOKER Music Video
・world‘s end,girl’s rondo Music Video
・ツキナミ Music Video
【通常盤】
news-1501191600-c003
価格:¥2,800+税
品番:1000547192
<ワンマンライブツアー『TSUKINAMIC 』 >
4月26日(日)【大阪】SHINSAIBASHI VARON
5月 1日(金)【東京】SHIBUYA CLUB QUATTRO

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