REPORT
2015.02.20
2014年2度目のCitta’で完全燃焼ライブ開催
2014年12月28日に桃井はるこ(以降「モモーイ」)のワンマンライブが行われた。同年7月の“Live in じぱんぐ!2014”に続き、半年と開けずにCLUB CITTA’での開催となった。“Friday Night Gig”でモモーイは、O-Eastのことを「節目節目でライブしている」箱と語ったが、チッタも小学生時代から通った彼女にとっては気持ちが引き締まる「特別な場所」。そして「昭和」から続くこの場所はよりモモーイの歌声が馴染む場所に思え、見る側として訪れてもどことなく本拠地感を感じてしまう。
だがまずは、オープニングアクトとして「のんちゃん」こと元Little NonのNOZOMIが登場。夏のモモーイライブではゲスト扱いだったが、今回はモモーイのレーベルメイトとして「開幕」の大役を務める。
「年末はお巡りさんが忙しい時期なので」という理由から警察官をモチーフに、しかしすらりとした脚がまぶしいショートでタイトなホットパンツといういでたちは、視線を送らずにいられない艶やかさ。しかし、夏のゲスト参加時、歌う前に必ず「次の曲は新曲です!」とコメントし、会場を沸かせたカブセ芸は今回も健在で、1曲目が終わった後に「次の曲は……」のコメントが出ると知っている観客は大きな声で応えていた。そして、「悩むときはそのままの自分で、夢見るときは殻を破って自分よりももっと大きく」という思いで生んだ「等身大 To Do」、「人間で一番重要なのは欲望」「自信の無さに負けてしまわないように」という気持ちを込めた「LIVE IN HOPE」で会場を盛り上げる。この日の物販では、3年ぶりの音源化となるCD(そのジャケットに描かれたモモーイとのんちゃんは実母・永野のりこによる)を並べることができた彼女。その喜びをMCで伝えた後は、四つ打ちのピュアソング「つぶやきひとつぶ」、ゴーゴーを踊りたくなるようなGSサウンド系「ありのままじゃいられない」と夏に披露した佳作2曲を。さらには、「言葉とか思いの力をいつまでも信じていきたい」との思いで作った新曲「Yes」とつなげる。
作曲は活動再開にあたって始めたばかり、という彼女だが、このミディアムテンポの「Yes」は今後の彼女に注目したいと思わせる要素が詰まっていた。のんちゃんが敬愛するモモーイ同様、メロディラインで勝負しつつも色濃い歌謡曲っぽさ。モモーイファミリーでありながら個性を感じさせる、そんな素敵なレーベルメイトになりそうだ。ラストの「きらりきらり」の前に放った「最後の曲です」の言葉に対し、会場からは「そこをなんとかーっ」のコールも引き出し、着実に客の心をつかみ始めている彼女に期待が膨らむ。
のんちゃんの退場後、流れてきた神秘的なシンセ。稀代のメロディーメーカー、歌う哲学者、桃井はるこが遂に登場する。ショルダーキーボード「キー太」を携え、弾き語りで「Good Morning!」の1番を歌い上げると流れるように「Sunday early morning」へ。’08リリースのアルバム『Sunday early morning』で前者は収録最後の12曲目、後者は1曲目として収録されており、エンドレスループを果たすように作られた2曲。そんなことを思っていると、モモーイとモモイスト(=桃井はるこファン)が愛を歌い合う「mebius ring」に入る。
3曲を終え、モモーイはこう言う。「今年の歌い納めなんですよ」。カウントダウンライブの誘いもあったが、夏のライブ「じぱんぐ」の段階ですでにチッタを押さえ、そこを歌い納めにすると決めていたために「お断りした」と彼女は話す。「今日が大晦日なんで!」「どんどん曲に行きますから」「バラード歌いませんので」、そんな言葉で会場を煽ると、その宣言通り「恋のタイム・リミット」「夏より熱い冬」を連投。manzoの昭和アレンジに心揺さぶられていく。続くMCで話したように、カナダのファンがモモーイのイメージで作ってくれたという、マント&ヘソ出しという空飛ぶ魔法少女チックな衣装で歌い、跳ねる彼女の姿に会場の熱気がどんどんと渦巻いていく。
次は「冬が好きじゃないから冬の曲がないんですよ、基本的に」「だけど、これは個人的に冬をイメージして作った」という2曲を放つ。“オイオイ”の声を出さずにいられない「始発にのって」では、1番のサビ前歌詞を「次は川崎ー、川崎でございますー」(車掌アナウンスの物真似で)に変え、相変わらずの高いライブ力を見せ付ける。そして、「脳内遊園地」「強いて言えば外国の、映画に出てくる」ようなイメージで作った「Night Park ☆」を歌い上げた。
モモイストが喉を休める暇がないのを分かってか、2曲ごとにMCを挟んでいくモモーイ。ここではモモーイライブに欠かせないコール本にも言及。
「今日は年忘れのクセに変化球な曲を歌おうと思って」「だから、的中してなくない? すみません」「(来た方は)何歌うかなって考えてくださったと思うんですよ。まるで有馬記念でどれが来るかな、みたいな。違うか」
そこからの流れで「この曲は最近、歌ってないんだが」「ANIRYOKUのテーマ(=We say Yeah!)の次に簡単だと思うので一緒に歌ってもらえると嬉しいよ」と話し、「MOKO MOKO ROCK!」へ。まさにコール&レスポンスという一曲で、間奏に「Smoke on the Water」のフレーズを入れるというしゃれっ気も受け止める曲だ。ウキウキした気持ちのまま、同じくモモーイとのやり取りが楽しい「Party!」に突入。四つ打ちスカとロックチューンを行き来するメロディに、一層背中を押された気がして高揚感が増していく。
MCを挟み、「次もラジオの曲です!」の言葉で始まったのは「Cue!」。会場は、一瞬驚きが、そのすぐ後に喜びが満ちあふれ、このファンレター口上バリバリの電波ソングを全身で受け止める。楽しい気持ちが一気にクラスチェンジし、跳ねつつネジが一本ずつぶっ飛んでいく感覚を味わうと、今度は「High!High!High!-」。レアな楽曲たちにモモイストたちは充足感に満ちていった。
ここでモモーイは、アンセブの頃は連続して歌うと翌日には声が枯れ、点滴を打ちながら仕事していたが、今はすごく元気で「まさに“How old am I?”って感じですよ」と話す。そして「年齢を忘れてこの歌を歌いたい」と言うと、ピアノの旋律が流れ出す。そして聴き慣れた一節を歌い上げるモモーイ。「アキハバラブ」と分かってざわめく会場だが、通常のイントロに入ればきっちりとコールを決める職人芸。“ハルコ×6+ハルコーッ!”をチッタに響かせる。そして「恋のヒメヒメ☆ぺったんこ」。多産のモモーイだけに、直近のワンマンライブ3本で毎回披露された曲は数少ないが、そのうちの1曲(他は「Hide and seek」、アンコールを含めても「LOVE.EXE」)。近年のテッパン曲である。さらにはMCを入れずに「め・あ・り・ひ・と」。四つ打ちエレクトロながら、kzによるミディアムテンポでセンチメンタルなメロディということで、モモイストも体を委ねる時間だ。モモーイも曲後には歌詞を引用し、「皆さんの光で私は生きていけるんですよ」の泣ける言葉(しかし、「多分、サイリウムの光に老化を防ぐ効果があるらしいよ。カッコ、モモーイ調べ」と付け加えたが)。
歌い終わるとモモーイは、最近のモモイストは「結婚ラッシュかも?」とファンレターから得た実感を話し始める。会場に来ていたカップルに対しても「おめでとうございます」との言葉。結婚・カップルネタでトークを続けるモモーイに、フロアからは「ハルコ、俺と結婚してクレー!」の雄叫びが。「何も聞こえないなぁ」と交わすモモーイだが、「人生が1000回ぐらいあったらモモイスト一人一人と結婚したいよ。そんなこと考えたりする」と貴重な甘甘な発言も聞かせてくれた。
イントロのタム回しがモモーイ曲らしい名曲「Brand new music」でも会場は跳ねに跳ね、曲終了後に会場から拍手が挙がるもモモーイは「さいごのろっくー!」の言葉をかぶせる。そのラスト、モモーイの「ゴーゴー!」に会場が“オイオイ”で応えて曲が終わると、間髪入れずにハイハットのカウントから今度は「天罰×4!」。怒涛とはまさにこのことだが、モモイストは負けじと「Fu! Fu!」から「エンジェルはるこ~」の口上、歌に入っても「ダメダメ」の合いの手を入れてくる。いつ見てもモモーイとモモイストの絆を思わずにいられない。だがこれでもまだ終わらない。ここでの「Hide and seek」、そのコール&レスポンスは一度体験するとやみつきになる最高の盛り上がり曲。モモーイは客席を昇天させにかかっていると震えを感じずにはいられなかった。
ついにここで「楽しく年が忘れられそうです!」「カラオケで私の曲歌いましたとかこの曲を聴くと元気が出るとか、そう言われることが多い曲を立て続けにやって、お開きにしたいと思います……」との言葉が。モモイストからは「そこをなんとかーっ!」の叫び。思わずモモーイも「わ。このホーム感……ヤバイ」と感激を口にする。
しかし、限りある時間の終わりは近い。告げられた曲名は「WONDER MOMO-i ~world tour version~!」。最強最高の曲イントロが流れ、ピコピコ音の中でモモーイはこう口にする。
「一緒に言ってくれないかなぁ……」
勿論会場はあらん限りのパワーを込めて「ガンガリマーッス!!」。曲が終わるとハジけきった身体に厳かなアウトロを浴び、力を使い切った戦士の顔でモモーイに拍手を送る客席。ここで終わってもおかしくない盛り上がりのセトリ。だが、モモーイは客席の力を、夢をもっと引き出す。「もっと、夢、見よう!!~2011Ver.~」、そしてラストソングとして「これが最後の曲になりました。マジカルナースになりきって」の言葉からの「愛のメディスン~アニサマバージョン~」。
来年5月で15年目の歌手活動に入るモモーイ。クイーンオブポップスinアキバである彼女だけに、度重なるアンコールを受けても平気なほど、持ち曲に名ポップスが満ちている。だが、近年の彼女が出した答えは一振りにかけるバッターのごとく、本編に全てを注ぎ込むことであった。アンコールありきでは考えない、サムライの心意気。殺人的なセットリストのワンマンライブが増えていたが、この夜はその集大成だったように思える。
勿論、モモイストの切望に応える意味で、1度のアンコールは用意していた。モモイストからの声に応え、モモーイが、バンドメンバーがステージに舞い戻る。長くモモーイライブを支えてきたギターのとーるちゃんは言った。「モモイスト最高」。それを聞いてモモーイも言った。「最高であり最強だと思います」。これらはこの夜一番の名言だと思うが、これから始まるアンコールはそんな彼らに贈る感謝の思いでしかない。
「アンコールって本来はないはずのものじゃん」「だから自由に」ということで、キーボードでの弾き語りメドレーを始めるモモーイ。「LOVE.EXE」が始まると、手拍子と100%のコールで支えるモモイスト。そして、コールのための間を作りながら歌を続けるモモーイ。そして一番までが終わるとバンドが参入。
「これがホントにホント、ラストソーング。一緒に歌ってねー!」
再度、1番のAメロから高らかに歌い上げるモモーイ。200%のコールで追随するモモイスト。サビ前に「完・全・燃・焼!」と叫んだモモーイは、サビ後では「全力で行くぞーっ!」とさらに煽った。跳ね、叫び、目の前で全力をぶつけてくるモモイストを引っ張るモモーイ、その光景は一つの愛の形だった。
「10年、20年、30年、いや50年! モモーイはこれからも歌い続けるぞーっ!!」
最後は会場全体でのジャンプでライブは締められた。館内は明るくなり、BGMとしてカウントダウンソング「Count down! Party night!」が流れる。しかし、そこにコールを混ぜながらも2度目のアンコール「まだまだはるこが見たーいっ!」(にしてもこのコールを考えたファンは賞賛したい)が終わらない。すると、「もう……こんなの、特別なんだからね」の言葉と共にモモーイが現れ、不測の事態のWアンコールが始まった。ただし、「完全燃焼した気でいたんですけど、皆さんに呼ばれたらまだまだ歌いたいなあって思っちゃったんです」と話しつつも、「会場の時間の都合とかあるらしいので」と困った様子のモモーイ。「また来年ってことだな」と締めようとするが、やはり収まらないモモイストを前に、何かを歌おうとするが決まらないモモーイ。そこへモモイストの言葉から「あ、カイトか」とサビを歌い出す。「カイト」から「Life is free」「Romantic summer」と1サビだけのメドレーをモモイストと完了させた。「続きはまたやろうな」「辛いことがあったりとかしたら私の歌を聴いて元気になってくれたらいいなと思いながら、年末年始、曲作りをしまーす」「良いお年をー」モモイストたちにしばしの別れを告げ、今年最後の、そしていつも通り熱過ぎるモモーイライブは完了した。
Text By 清水耕司(ボーグナイン)
「How Old Am I ?!」 桃井はるこ 年忘れライブ!!
2014年12月28日Club Citta’セットリスト
OP ACT/NOZOMI
1. 世界中より君とのL.L.L.
2. 等身大 To Do(新曲)
3. LIVE IN HOPE(新曲)
4. つぶやきひとつぶ
5. ありのままじゃいられない
6. YES(新曲)
7. きらりきらり
桃井はるこ
1. Good morning!
2. Sunday early morning
3. mebius ring
4. 恋のタイム・リミット
5. 夏より熱い冬
MC
6. 始発にのって
7. Night Park ☆
MC
8. MOCO MOKO ROCK!
9. Party!
MC
10. Cue!
11. High!High!High!~氷室屋ロック~
MC
12. アキハバラブ -summery summer version-
13. 恋のヒメヒメ☆ぺったんこ
14. め・あ・り・ひ・と
MC
15. Brand new music
16. さいごのろっく
17. 天罰!エンジェルラビィ
18. Hide and seek
MC
19. WONDER MOMO-i -world tour version-
20. もっと、夢、見よう!!-2011 Ver.-
21. 愛のメディスン-アニサマバージョン-
MC
EN-1. Animetic Love Letter~LOVE.EXE(弾き語り)~LOVE.EXE -momo-i quality version-
W EN-1. カイト~Life is free -momo-i version-~Romantic Summer(アカペラ・ワンフレーズ)
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