REPORT
2014.12.14
「出だしから飛ばしていきましたが、皆さん体力大丈夫ですか?」と告げ、「なかなか披露する機会がなかったので」と、カバー・アルバム『FAYvorite』から楽曲を披露。コーラス隊として登場したのは、開演直前の生ナレーションを担当した佐藤ひろ美とμという豪華な顔ぶれ。登場するやいなや「弁当食べ過ぎて衣装がキツい」「なんか衣装が引っかかる(笑)」と全開の佐藤が、いい意味でテンションが張り詰めていた客席をほどよく弛緩させる。アコースティック・コーナーということで観客を着席させ「ルパン三世のテーマ」を披露。コーラス隊がクラップを呼び込み、ジャジーなルパンの始まりだ。足を組んでのスキャットが艶かしい。続けてカバー曲もう1曲。こちらは「みんなで踊りましょう!」と「エロティカ・セブン」を再びクラップで盛り上がる。なかなかに艶っぽい仕上がりに、“7周年”でもまた聴いてみたい……なんて欲をかきすぎだろうか。
佐藤も入って和やかムード。飛蘭からコーラス隊へ感想のフリがあったかと思えば、佐藤から飛蘭へブーケが渡される。と、ここで「投げるのがヘタ」と自称する飛蘭。実際ブーケトスもまさかの直線コースで前方客席に着地。そのうえ「右手で投げたのに左側が痛い」と、本ライブ中にしては珍しいゆるりとした時間が流れていた。
そんなMCを経て、カバー最後の1曲を披露。ポップ調にアレンジされた「世界が終るまでは…」で、彼女は名曲を2014年色にアップ・デイト。エモーショナルさとスタイリッシュさが入り混じった歌声も、飛蘭ならではだ。
ここでこのライブならではの企画「コラボコーナー」へ。と言ってもただ単にアーティストとコラボする普通の企画とはひと味違う。事前に募集されていた「『WHITE justice』を飛蘭と一緒に歌いたい!」という人の中からひとりを抽選。そのままステージに上がってもらい、デュエットするというファン夢の企画。幸運にもその座を射止めたのは女性であり、感激の面持ちのままともに「WHITE justice」を歌う。思えば、この曲は飛蘭自身初のガンダム主題歌でありキラー・チューン。夢がかなうにはこれ以上ふさわしい楽曲はないのではないか。そしてそれを憧れのアーティストとともに歌ったその感慨はいかほどだろうか。彼女がステージから客席に降りる際の歓声は、まさに“英雄の帰還”であった。
ここで飛蘭も一旦ステージをあとにし、バックバンドがそれぞれの実力を見せつけるプレイタイム。そのとき、誰もが疑うことなくプレイが終われば飛蘭がステージに戻ってくるものだと思っていた。バンドのプレイタイムも終わり、「Blood teller」のイントロが流れ……と、ここでマスカレイドをつけた飛蘭が登場したのは、なんと客席通路!このZepp Tokyoというハコで、まさかまさかの超絶接近戦である。もちろん高まらないわけがない観客に、一人ひとりと目を合わせながら、手錠をかける(※直後のMCで外す)などコミュニケーションを取りながら通路を歌い歩く飛蘭。これも5周年のフェスティバル感あってこその演出だ。そのままステージに上がり「SERIOUS-AGE」「螺旋、或いは聖なる欲望。」を続けて披露。再びスイッチを切り替えた彼女、これぞ“ボーカリスト”である。体をいっぱいに揺らして歌唱するそのさまは、さながら体の隅々にあるエネルギーを最大限絞り出して届けているかのようだった。
直後のMCでマスカレイドこそ再度プレゼントとして客席へ投げ入れたものの、ムチだけは「マネージャーがSMショップを回って探してきてくれた」から、あげられないとのこと。そしてバンドメンバーの紹介と、めでたくニュー・アルバムの発売が決定したとの告知をしたあとに、再度「皆さんまだ元気ありますか!?怒涛な感じで行きますよ!」とギアをチェンジし、その言葉通り再び“怒涛の”5曲連発。最新ナンバー「東京ゼロハーツ」から始まり、一部前後しつつも彼女の歴史を今一度遡っていくかのようなクライマックスだ。神々しくも力強い同曲で発進すれば、「Last vision for last」「蒼穹の光」とパワフルかつ緩急キマった歌声を披露。飛蘭自身も舞台上をとにかく動きまくる。
「飛蘭と言えばの、ラストのこの2曲行くぜー!!」と観客を煽ってから、この日のクライマックスへ。「Errand」では真っ赤に染まる客席を観て、改めてうれしそうな表情を見せる飛蘭と、それをさらに盛り上げんとする客席とが呼応しあう。そしてラスト曲はもちろんこの曲、「mind as judgment」。5周年のアニバーサリーライブでこの曲に帰結するのは、当然のことだろう。もちろんイントロのカウントダウンから会場中は大盛り上がりで、会場は一体感に加えて全力感さえもが乗っかっていた。そんな客席を観て、彼女はこう叫んだ。「サイコーだよー!」と。思えば、今に至るまでの彼女のベースすべてが詰まったこの曲。その曲でこの境地に至ったことは、このライブの中でもっとも幸せなことだったはずだ。最高潮の空気の中、ステージはフィナーレを迎える。
この空気の中で、アンコールの声が湧き上がらないわけがない。まずバンドメンバーが登場すると、その声は「飛蘭!飛蘭!」に変わる。
その声を受けて颯爽と登場した飛蘭は、悪魔の鎌を手にしつつ変わらぬパワフルさで「Dead END」からアンコールパートをスタート。再び飛蘭が、始まりの物語を描き始めた。こうしてみると、改めて客との掛け合いのある曲が多いことにも改めて気付かされる。
鎌も客席に(若干暴投気味に)プレゼントしたところで、ここで長めのMCへ。ライブタイトルの由来やコンセプトが「ここに来てくれたみんなが、大きなテーマパークに来たような感覚になってくれたらいいな」と「(秋の入口だけど)ハワイアン的な感じでリラックスして来てもらえるように」というものであることを明かす。そして、ここ1年の葛藤を素直に伝え、ファンと想いを共有したのちに、改めて今回のライブのありがたさや10周年に向けて支えてくれた人々への感謝の想いを込めてセットリストを組んだことと、来てくれる方々にとにかく笑顔になってほしかった、という胸の内を伝える。そしてその素直な想いの吐露の先には、シンプルだけど一番大切な言葉が待っていた。「とにかく、本当にありがとうございました」という。
だが続けて「これからが始まり」とも語る彼女。そう、先述の通り、もう10周年を見据えた戦いは始まっているのだ。「これからもみんなを引っ張っていきたい」との力強い声に応える拍手は、とても温かかった。
そしてタオル曲「HAPPY SOUL DANCE」。若干ライブ時間が押していたため、サビ部分をひとさらいしたあとに即スタート……という若干雑な教え方だったものの、ここはファンとの阿吽の呼吸で見事に乗り切る。ピアノの音色の軽やかなこの曲は彼女の未来へのテーマソングにふさわしいものであり、そのうえレクチャータイムも含めて、彼女の願いどおり会場には笑顔があふれていた。
目一杯楽しんだあとは、オーラス「Never Slash!!」でいよいよFAYLANDも閉園の時間。再び通路を縦横無尽に行き来し、カラーボールを投げたりゼロ距離でのコミュニケーションを取ったりと、閉園にふさわしい“パレード”の様相を呈していた。
ステージに戻った彼女はマイクオフで精一杯の声で「ありがとうございました!」と感謝の叫び。一礼したあと我々に見せてくれた表情は、まぎれもなく最高の笑顔だった。
曲数もアトラクションも盛りだくさんだったのに、あっという間に過ぎ去ってしまったこの日のライブ。彼女のここまでの集大成と観客の笑顔と存分に楽しむ姿、これらが揃ったこの空間は、紛れもなくみんなの楽園“FAYLAND”だった。自身が語るように10周年に向けてどう走り抜けてくれるのか?そしてその集大成をどんな形で見せてくれるのか?この楽園を見せられて魅せられた者としては、いくら気が早かろうがその期待は尽きないのだ。
Text by 須永兼次
飛蘭デビュー5周年記念ワンマンライブ-FAYLAND-
2014.10.03@Zepp Tokyo
【SET LIST】
1:Polaris
2:終末のフラクタル
3:本能のDOUBT
4:God FATE
5:BLUE BLAZE
6:RED decision
<MC>
7:ルパン三世のテーマ
8:エロティカ・セブン
<MC>
9:世界が終るまでは…
<MC・デュエット抽選>
10:WHITE justice(with 一般参加者)
<バンドタイム>
11:Blood teller
12:SERIOUS-AGE
13:螺旋、或いは聖なる欲望。
<MC>
14:東京ゼロハーツ
15:Last vision for last
16:蒼穹の光
17:Errand
18:mind as Judgment
<Encore>
EN-1:Dead END
<MC>
EN-2:HAPPY SOUL DANCE
EN-3:Never Slash!!
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