REPORT
2014.10.07
みんな一緒だよ。
沼倉の「Rebellion」はクールでかっこいい響の、楽しそうにおたまでハートを描く「しあわせのレシピ」はかわいい響をとことん堪能できる両極だ。そして締めの楽曲は少し意外な「初恋 ~一章 片想いの桜~」。
初恋をテーマにした「生っすかSPECIAL 01」に収録された楽曲だが、歌っていたのは我那覇 響、四条貴音、星井美希。かつて「プロジェクト・フェアリー」と呼ばれ、765プロのかけがえのない仲間となり。一緒の時を過ごした3人が歌う、少し成長した恋の歌。それは沼倉の東京公演を締めくくるにはふさわしい楽曲に思えた。
原のステージは心浮き立つような「Princess Snow White」からスタート。前日は歌わなかった「風花」だが、この曲は今の原らしさ、貴音らしさを形作ったとも言える曲であり、進化を続ける楽曲でもある。
MCでは、原が「M@STERPIECE」をイメージして“みんな一緒だよ”という想いを込めたというイラストがスクリーンに表示され、「みんな一緒やで」という鼻歌を披露する場面も。ほかの楽しいMCの中でも何度も繰り返していた「みんな一緒だよ」という言葉は、原の心からの言葉だったのだと思う。
やさしい罵倒
今回釘宮らしさをいちばん感じたのは、ゆるいMCでのやりとりだった。中村の「I Want」の女王様然とした雰囲気についてのトークで、今井が“あずみ様”こと浅倉と、ツンデレっぽい伊織を演じる釘宮に客席をののしって!と順番に振ったとき、釘宮は「ののしらなくてもみんな頑張れる!」とかわした。
ところが釘宮はその1時間半後、「私台本にないこと苦手なの……」と言いながらも、自分から“ご褒美”として「何みんなピンクの棒なんて振っちゃって!この変態!ド変態!!変態大人!!!」と、客席をののしって大歓声を浴びた。今井によれば、ステージ裏では「(無茶ぶりをした)麻美が気にすると思って」と言っていたそうだ。
いつもていねいに、完璧に準備をしてステージに臨む釘宮だからこそ、無茶振りはあまり得意ではない。だが一度無茶振りを断ったあとで、振りを入れた今井や、楽しみに待った客席のことが気になる。それでやっぱりやることにして、ステージでどんな台詞を言うかを考えて、心の準備をして、しっかりできる状態になってから自分のコーナーでやってみせる。この、完璧主義と仲間や客席への優しさ、気遣いのバランスに、釘宮理恵という人の人柄がとても出ている気がした。
釘宮の二日目だけの披露は「my song」。長い長い道のりを歌う楽曲と、優しさの中にどこかはかなさや郷愁を感じさせる釘宮の歌声の相性があまりにも良すぎて、今では釘宮と伊織の楽曲という印象が強い。優しくていねいに紡がれる詞の世界を改めて受け止めると、このライブのコンセプトやメッセージが、この曲にすべてこもっているように思えた。
最初で最新の“最強”
二日目のゲストには、スペシャルゲストとしてPS3『アイドルマスター ワンフォーオール』玲音役の茅原実里が登場した。ゲーム『ワンフォーオール』発売後最初の周年ライブであることを考えれば納得の人選だが、11月には武道館公演を控えているアーティストが『アイマス』のステージに立つのにはやはり驚かされる。
「アクセルレーション」は茅原実里そのものでありながら、そこに玲音の個性を加えた感じで、この無敵感はまさに最強のライバルにふさわしい。「玲音の歌への情熱に共感するし尊敬します」と語った茅原は、同時にアイマスという存在、空間と、客席のあたたかさにも感激していた。
茅原といえば、アイマス最初期にコミカライズ展開された『アイドルマスター relations』付属のドラマCDで、最強アイドル“魔王エンジェル”の一員を演じていた。「魔王エンジェル」は初代アーケード版における“レベル16”ランクSの、まさに最強の強敵だった。アイマスの中で何度も繰り返されてきた新しい“始まり”の象徴的な楽曲たちを強烈に意識させるライブで、最初の強敵に縁のある人物が、最新のライバルの演じ手としてステージに立ったのは、9年間を総括する意味できっと偶然ではないように思う。
9年目の約束。
ソロコーナーの最後にステージに立ったのは、今井麻美。9年間のアイマスのすべてを総括するのであれば、やはりTVアニメの半年間の物語の全てを凝縮して辿り着いた「約束」を歌わないわけにはいかないだろう。
「約束」を9年を経た如月千早のすべてを込めた楽曲だとすれば、彼女の始まりの曲はやはり「蒼い鳥」だ。初日のステージでは、TVアレンジで、生バンドとの響き合いを楽しむ今の今井麻美の本領を感じることができた。
だが二日目の「蒼い鳥」は、今井自身の希望で敢えて、オリジナルの「M@STER VERSION」で。如月千早の歌の世界にどこまでもどこまでも深く潜るような、歌だけに生きる生硬だった頃の千早のような、全身全霊の歌唱。それもまた、今井麻美が演じてきた如月千早の一部だ。
そして孤高の歌姫だった千早が、仲間との絆を手にして初めて歌えた楽曲である「約束」。その最後、メインステージの様々な場所から中村が、釘宮が、平田が、下田が、浅倉が、沼倉が、原が現れて声をひとつにしていく。ここまではきっと演出だったはずだ。
だが転調後のソロパート。本当に涙で歌えなくなってしまった今井の姿を、初めて見た。
その瞬間のメンバーの息を呑んだ感じは、演出ではありえない。すぐに感じ取った中村たちが、声をひとつにして今井のボーカルを支えたのは長年の経験とつながりの賜物だろう。やがて涙と、少しのはにかみをたたえながら立ち直った今井のボーカルに、今度は客席の「ラララ」の声が重なっていく。長い長い時とたくさんの経験を経て、もう如月千早は、一人ではなかった。
「THE IDOLM@STER」を8人と、新しい仲間である茅原実里がともに歌い、9周年最後のステージは幕となった。それぞれが思い思いの言葉を残してステージを去り、最後に残ったのは中村と今井。誰もアイマスを知らなかった頃、いちばん最初にファンの前でアイマスを歌った2人だ。
「私ね、アイドルマスターが始まって、みんなで時間を過ごし始めた頃。趣味や特技を聞かれて、何もなかったの。そのときディレ1さんが、『お前がずっと、10年ぐらい前からやっていることや、続けていることで、いいんじゃない』って」
「あれ?繪里ちゃん今、天海春香として、何年目?」
「10年め。」
長かった9周年ツアーは終わり。だがこれが、新しいスタートだ。
Text by 中里キリ
THE IDOLM@STER 9th ANNIVERSARY WE ARE M@STERPIECE!!”
2014.10.05@東京体育館 東京公演最終日
セットリスト
M01:READY!!(全員)
M02:ラムネ色 青春(今井、釘宮、原、沼倉)
M03:太陽のジェラシー(中村)
M04:Vault That Borderline!(中村)
M05:I Want(中村)
M06:Honey Heartbeat(下田)
M07:黎明スターライン(下田)
M08:ジェミー(下田)
M09:迷走Mind(平田)
M10:自転車(平田)
M11:チアリングレター(平田)
M12:何度も言えるよ(浅倉)
M13:Kosmos, Cosmos(浅倉)
M14:First Step(浅倉)
M15:Day of the future(中村、沼倉)
M16:9:02pm(下田、原)
M17:チクタク(今井、釘宮)
M18:livE(平田、浅倉)
M19:ONLY MY NOTE(全員)
M20:アクセルレーション(ゲスト茅原)
M21:待ち受けプリンス(中村、平田、下田、浅倉)
M22:Rebellion(沼倉)
M23:しあわせのレシピ(沼倉)
M24:初恋 ~一章 片想いの桜~(沼倉)
M25:キミはメロディ(釘宮)
M26:Sentimental Venus(釘宮)
M27:my song(釘宮)
M28:Princess Snow White(原)
M29:風花(原)
M30:ふたつの月(原)
M31:Fate of the World(今井)
M32:蒼い鳥 (M@STER VERSION)(今井)
M33:約束(今井+全員)
M34:M@STERPIECE(全員)
E01:虹色ミラクル(全員)
E02:THE IDOLM@STER(全員+茅原)
■『THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!』Blu-ray&DVD購入者対象イベントの出演者が決定!
いよいよ10月8日(水)に発売となるBlu-ray&DVD『THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!』。その購入者限定イベントとして2015年2月15日(日)に開催される『THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!打ち上げパーティー』の出演者が決定致しました!
<イベント概要&出演者情報>
イベント名:THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!打ち上げパーティー
開催日時:2015年2月15日(日)
開催場所:ZeppTokyo
<出演>
中村繪里子、浅倉杏美、平田宏美、釘宮理恵、原 由実、沼倉愛美、滝田樹里、赤羽根健治、木戸衣吹、大関英里、渡部優衣、伊藤美来、雨宮 天、夏川椎菜、麻倉もも
★10月8日(水)に発売となる以下の劇場版Blu-ray&DVD(完全生産限定版)にイベントチケット販売申込券を封入!
●イベントチケット販売申込券封入対象商品
『THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!』
・『シャイニーフェスタ』アニメBlu-ray同梱版(完全生産限定版)
・Blu-ray&DVD(完全生産限定版)
※通常版DVDには封入されませんのでご注意ください。
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