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REPORT

2014.10.06

右手に憧れを、左に情熱を。“THE IDOLM@STER 9th ANNIVERSARY WE ARE M@STERPIECE!!”東京公演初日レポート

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『アイドルマスター』の9周年ライブツアー“THE IDOLM@STER 9th ANNIVERSARY WE ARE M@STERPIECE!!”の東京公演初日が10月4日、東京体育館で行なわれ、中村繪里子(天海春香役)、今井麻美(如月千早役)、釘宮理恵(水瀬伊織役)、平田宏美(菊地 真役)、下田麻美(双海亜美・真美役)、沼倉愛美(我那覇 響役)、原 由実(四条貴音役)、浅倉杏美(萩原雪歩役)が出演。さらに初日のサプライズゲストとして、音無小鳥役の滝田樹里が登場した。

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大阪・名古屋で4公演を行なった9thツアーも、残すところ東京2公演となった。大阪6人、名古屋6人に別れて行なったメンバーが、東京公演に集結。『アイドルマスター』の9年間の「これまで」と「これから」を辿るような2日間となった。

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このツアーは、各メンバーがソロ曲を3曲、その日参加していないメンバーの楽曲のカバーコーナーがあり、その前後を全員曲や複数人数での歌唱曲で挟んでいく構成。人数が増える東京は構成が変わるかとおもいきや、基本構成はそのままで人数が増えた分楽曲が増えるという非常に贅沢でうれしいセットリストだ。

 

進化と変化を随所に感じさせたステージ

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初日で印象的だったステージを幾つか紹介すると、下田の「YOU往MY進!」は6周年ライブの名古屋公演以来、3年ぶりだろうか。久しぶりに歌ったこの曲は、なんとタオル曲として進化。いきなりの振りにもかかわらず即座に対応する客席のプロデューサーたちも流石だ。タオルを振りながらカメラに寄った下田が頭にタオルを乗せて温泉気分に浸ったりとまさに下田劇場、このステージがどれほど楽しかったかは、即座に物販のライブタオルが売り切れたというエピソードが証明している。

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全身から振り絞るような「いえーい!」でアニメの名場面を再現して登場した浅倉は、まずは「ALRIGHT*」を披露。バンドメンバーが前に出て、浅倉と一緒にジャンプしながらの演奏は浅倉自身のリクエストだという。大阪に続いての「Kosmos, Cosmos」では、大阪ではサプライズだった楽曲が、ステージを重ねるにつれて“浅倉杏美の”雪歩の自然な楽曲として輝きを増していくのを感じた。アニメで花開いた今の雪歩の「ALRIGHT*」、今の浅倉だから向き合えた過去につながる「Kosmos, Cosmos」とくれば、最後が雪歩の未来につながる完全新曲「あの日のナミダ」だったのは必然だったかもしれない。ストリングの優しい調べとともに紡がれた詞は、雪歩と、浅倉自身を描いているようにも思えた。かつての涙を笑顔で振り返りながら、笑顔で駆け抜ける。そんな楽曲だった。

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平田は東京公演でついに伝家の宝刀「迷走Mind」を解禁、衣装の飾りがずれるほどの熱唱を見せた。平田はMCコーナーのたびに「実は言い忘れたことがあって…」と、過去公演での話し忘れや、やり忘れたことを回収。最後のMCでおもむろに「まっこまっこりーん!」の叫びを決めると、隣の浅倉がインパクトの強さにMCの内容が飛んでしまうひと幕もあった。

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釘宮は、大阪での体調不良を押してのステージから2ヶ月。コンディションを整えて、笑顔とマイペースさを持って東京に戻ってきた。東京で初公開の「キミはメロディ」は息を飲むかわいさ。「プライヴェイト・ロードショウ (playback, Weekday) 」「フタリの記憶」は大阪以来の披露だが、釘宮本人はもちろん、客席も心の底から彼女のパフォーマンスだけに集中できたし、水の補給にまつわるたわいないやりとりさえうれしい。元気な姿でステージに戻ってきてくれて、ありがとう。

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今井は自身も念願だったという『ミリオンライブ!』の「Blue Symphony」を初披露。ミリオンシアター組の数々の歌い手が歌ってきた楽曲だが、今井が歌うとまるで個人のために誂えたように馴染んで聴こえる。ここしかない心憎いタイミングで「志保、琴葉、恵美、新しい翼をありがとう!」とミリオンの仲間たちの物語を連れてくるのはさすがのひと言だった。千早の原点である「蒼い鳥」は、TVアレンジで披露。生バンドとのセッション感にあふれるステージングは今の今井麻美だからこその表現に思えた。

 

最強のライバル。最高の仲間。

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名古屋のレポートでも触れたが、沼倉愛美演じる我那覇 響、原 由実演じる四条貴音は、2009年に発売されたPSP版『アイドルマスターSP』内のライバル事務所・961プロに所属するライバルキャラクターとして登場した。沼倉、原、そして星井美希役の長谷川明子の3人は、パシフィコ横浜で開催されたアイマス3周年ライブにサプライズで登場。高らかに765プロへの挑戦状を叩きつけて「オーバーマスター」を披露したインパクトは未だ語りぐさとなっている。

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今回沼倉が歌った「オーバーマスター」は、現アイマスサウンドプロデューサーの中川浩二氏が作曲。mft氏が響や貴音の名前を詞に織り込んだ専用楽曲であり、765プロの穏やかな空気に対置したソリッドさ、スタイリッシュさが印象的だ。沼倉のスペックの高さを十全に引き出し、「Next Life」に代表される沼倉と響のクール系楽曲の方向性のベースとなったと言ってもいいだろう。

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そんな“かっこよくて、完璧で、天才な!”響の一面のイメージの先にある完成形が、今回披露した「Rebellion」だ。沼倉のボーカルとダンスのキレが思う存分堪能できる楽曲だが、真の見せ場はフルサイズの後半にある。そこまでは響のイメージカラーである浅葱色(エメラルドっぽい、緑と青の中間)に染まっていた客席が、歌詞の“目覚めゆく真実の赤”のフレーズに合わせて、一斉に真紅に染まるのだ。それは一見クールな沼倉と響が内に秘めた情熱そのもので、東京で燃え上がったそれは今までのどのステージよりも見事な“真実の赤”だった。

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だが我々は響のもうひとつの顔…というより、それこそが素顔である明るくて、元気で、仲間や家族思いな一面を知っている。個人的に思い出すのは、沼倉が「Brand New Day!」を新曲として歌ったとき、明るい響ちゃんらしさが出せてうれしい、ととても喜んでいたことだ。そして今回のステージ、ソロコーナーの最後に「この曲が歌える日を、心待ちにしていました!」と本当に強い思い入れを感じさせて歌ったのが「shiny smile」だった。

その理由は、なんとなく思い当たった。沼倉がライブで歌う「shiny smile」は優しく、強く。海辺を元気いっぱいに駆けまわる響の姿が目に浮かぶようで、ああ、これが彼女がステージで表現したくて、6年間一緒に育ち、あたためてきた「765プロの」響なのだと、ストンと落ちてきたのだった。
我那覇 響のスタートラインと、その進化系。そして765プロの仲間として得た強さと優しさ、しなやかさ。その両方が見える3曲だった。

 

かつての理想を形にした現在地

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原が歌った「KisS」は、「オーバーマスター」が961プロのシングルとしてリリースされた際のカップリング曲だ。作曲の橋本由香利はアニメ畑で長く活躍しており、今ではよく行なわれるようになった「新しいジャンルのクリエイターがアイマスサウンドに吹き込む新しい風」の先駆け的存在だ。その曲調と、yura Darkが紡いだ詞は妖艶そのもの。

原が以前「KisS」を歌ったステージといえば、2009年1月の961プロシークレットイベントまで遡る。渋谷で300名ほどの当選者を前に、原、沼倉、長谷川の3人での披露だった。当時は歌唱技術の確かさにうなったものだが、今の原が歌っている姿を見れば、表現力が段違いであることは明らかだ。

今思えば、まだ無名の原と沼倉が、先輩演じる765プロを向こうに回して「天才的な強敵」を演じるには、少し背伸びした楽曲の力による後押しが必要だったのだと思う。だが6年の時を経た原はこの曲を自分のものにして、自分だけの表現を乗せていた。当時役柄としてまとった大人の自分の姿に、6年後の原が追いつき、さらに先に行った姿がそこにあった。

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今の原だから歌える「恋花」、そしてこれからの原と貴音が歌っていくであろう新曲「ふたつの月」。原の進化とこれからを強く感じさせたソロコーナーだったが、わずかに過去の香りを感じたのが、カバーコーナーで原と下田が歌った「9:02pm」だ。アーケード時代の色合いが強いこの曲と、後にメンバーに加わった貴音と原の関わりは比較的薄い。だが原がこの曲を歌う姿は本当に自然で、もし、貴音と響が最初から765プロのメンバーだったら、きっと貴音はこんな曲を歌っていたんだろうな…と、不思議な郷愁を感じた。

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