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INTERVIEW

2014.09.30

刻を越えて、進化し続ける楽曲と歌声。鮎川麻弥『1984』リリース記念スペシャル・インタビュー

――84年の8曲もありますが、9曲目は新曲ということで、「この空を見上げたら」。しっとりしたバラードですが、今回作詞、作曲された際にイメージされたものはなんでしょう。このアルバム用に書かれたものなのでしょうか。

鮎川 もちろん。このアルバムを作る際に、「新曲は1曲だよ」って言われて(笑)。これにすべてを注ごうと思って、メッセージとここまで私を支えてくださったみなさんへの感謝の気持ちと、愛情と人生観やいろんな気持ちを限られた音符にすべて入れようと吟味して作りました。

――30周年というアニバーサリーを多分に込めていると。歌詞のなかにも「刻を越えて知った」とか。

鮎川 さすが、うれしい!わかってくださったのですね。あのタイトルを入れたのはみんなへのプレゼントです。その前の「生きていく答えはきっとやさしさだと」というのは「風のノー・リプライ」の一節のアンサーを入れています。

――全体的に鮎川さんの書かれる詞としてはメッセージがはっきりしているし、シンプルでストレートな詞ですよね。

鮎川 理解力がすごい!さすがだなぁ(笑)。うれしい。作り手としてはそこまでちゃんとわかってくださるとご褒美ですよね。ありがとうございます。

――アルバムの構成としても、「風のノー・リプライ」があって、そのあとにこの曲が入っていると84年からの今のメッセージが入っているというのもなるほどと。

鮎川 私、考えて考えて作るタイプなんですよ。その分時間もかけるので、わかってもらえるとうれしいです。空を見上げるといろんな人の顔が浮かぶんですよね。応援してくれた人や、関わって一緒に苦労してくれるスタッフもそうですし、歌を小さい頃から習わせてくれた親ももちろん。いろんなことが思い浮かぶなぁと思って。それが全部感謝だなと、この曲の中に入れたかったですね。歌を歌う状況を作ってくださったのは私の歌を愛してくれるファンの皆さんですから、その人たちが私に生きる力をくれたんですね。そのままそれを歌にしようと思ってそれを書いちゃいました。そうじゃなかったら30年もやってこられないですよ。ひとりじゃ絶対無理。

――84年のカバーに1曲新曲をいれることでそういう気持ちがあると。

鮎川 今の気持ちを伝えたいなぁと。1曲でもいいからそれができてよかったです。

――9曲がありつつ、ボーナストラックとして、セルフ・カバーですが「Ζ・刻を越えて」と「星空のBelieve」の英語バージョンが入っていますが、これはニール・セダカさんの原曲なのでしょうか。

鮎川 そうですね。カバーと言っても遡った原点のカバーです。

――これはすごいレアですね。

鮎川 アニソンのカバーとして英語のものがありますが、もとにあったということがすごいことで。

――2000年代などに新しく英語でカバーしたものとかは聞いたことがあるんですが、もともと存在していたことですよね。『Ζガンダム』の放送の頃はいかがでしたか?

鮎川 富野監督がニール・セダカさんの大ファンで、LAにお住いのニールさんのお宅に直接うかがって、作曲依頼をされたそうです。ニールさんに曲を書いてもらいたい、直接行くというのを当時のキングのディレクターさんが冷や汗をかきながら同行して、直々にお願いしたら、「こういう曲があるんだけどどう?」と出されたものだそうです。日本に帰ってきてアレンジが終わったあとに、竜 真知子先生に詞をお願いして。

――アニメ・ソングなのに英語の歌詞が多いですよね。

鮎川 「Ζ・刻を越えて」は富野監督が作詞で、英語のイメージがあったのでしょうね。

――時代としてもそうですし、『ガンダム』としても新しいものをということだったんでしょうね。最先端感があります。改めて聴いてみて、OPとEDともに鮎川さんなのに、アプローチが全然違いますよね。OPはハードなアレンジで、EDはポップで。同時期のレコーディングだと思うのですが、いかがだったのでしょう。

鮎川 最初「星空のBelieve」がOPだったんですよ。それで竜 真知子先生に書いていただこうということで。当時B面の曲は富野監督がお書きになることが多くてその感じで作られたんです。それが作っている最中に「Ζ・刻を越えて」の方がOPとしては力強さとか、アレンジが合っているということになって、監督が「こっちの方が」とおっしゃられて。当時監督がずっとレコーディングに立ち合ってくださって、ボーカルディレクションもしていただいて。「麻弥ちゃんここはね、こういう世界観なんだよ」とか。

――アニメだからということもあると思いますが、結果的に「Ζ・刻を越えて」がOPになって、重厚なロボットアニメの曲になり、EDはホッとする部分があり。

鮎川 結果的には絶対そのほうが良かったですね。だって今だと考えられないでしょ?

――今となっては全然イメージがつかないですね。この2曲も歌い続けられている楽曲ですが、先ほどのお話にありましたが、歳を重ねるほどに発見であったり、進化であったりがあるとおっしゃられていましたが、ご自身の中で歌声を保つのはいろいろなことがあると思いますが。

鮎川 歌手ってアスリートに近いところがあって、体が楽器ですから。コンディションを自分でコントロールするのに、日常生活で絶対風邪をひけない。ステージ前何週間も節制した生活をするとか、ストイックですよね。

――アニメファンは当時と同じものを意識していて、“スーパーロボット魂”でも演奏はオリジナルじゃないですか。そのなかでまったく劣らない歌声で、鳥肌が立つんですね。時を重ねて衰えなかったり、劣化しなかったりという部分でファンも支持しているのかなと思います。

鮎川 支えてもらって、応援してもらっている以上、倍にも、10倍にもして返していかないとという想いはありますよね。そのために自分を高めて、モチベーションを保っていくのは仕事ですね。もっと時間が経てば大変になっていくと思いますが、先輩たちはそれをやっていますから。そういう先人がいらっしゃるから、そこを目指してお手本にしたいし、勇気をいただくし。私がへこたれていられないと思います。また後ろには後輩がたくさんいますから、負けられないと思いますしね。

――2000年代に入ってから、水木一郎さんを筆頭としたアニソンの流れというものもあって、昔からあるアニソンの層の厚さ、歴史の深さを感じるなと思って。すでにこのアルバムはリリースされて31年目に向かわれていると思いますが。

鮎川 こういうくっきりとした区切りでアルバム制作ができましたので、この反響とかをみつつ、この流れが出来たらなとも思いますし、こういうカバーのレコーディングをしてみて、すごく面白かったんです。だから意欲がまた増えました。どんどん新しいアルバムが作れればと。あと、ライブとかイベントとか生の歌でファンの方と触れ合える機会を増やしたいと思っています。

――生で聴ける歌声はCDとはまた違う楽しみもありますし。

鮎川 CDの歌はもちろん楽しんでいただいて、生で伝わるハートはライブならではですから、大事にやっていきたいです。できればもっとこまめに地方にも行きたいんですけどね。呼んでいただければどこでも行きますので!呼んでいただいたところから何かが広がれば素敵なことだと思います。

Interview by 澄川龍一(リスアニ!)
Text by 田中尚道(クリエンタ)


■アルバム情報
鮎川麻弥『1984』
発売中
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価格:3,000円+税
品番:KICS-3088
【収録曲】
1, 悲しみがとまらない (作詞:康 珍化 作曲:林 哲司 編曲:杉山卓夫)
2, 桃色吐息 (作詞:康 珍化 作曲:佐藤 隆 編曲:杉山卓夫)
3, 瞳はダイアモンド (作詞:松本 隆 作曲:呉田軽穂 編曲:杉山卓夫)
4, つぐない (作詞:荒木とよひさ 作曲:三木たかし 編曲:杉山卓夫)
5, いっそセレナーデ (作詞・作曲:井上陽水 編曲:杉山卓夫)
6, 雨音はショパンの調べ (作詞:Paul Mazzolini 作曲:Pierluigi Giombini 訳詞:松任谷由実 編曲:杉山卓夫) 
7, 北ウィング (作詞:康 珍化 作曲:林 哲司 編曲:杉山卓夫)
8, 風のノー・リプライ (作詞: 売野雅勇, 作曲: 筒美京平 編曲:杉山卓夫)
9, この空を見上げたら (作詞・作曲:鮎川麻弥 編曲:杉山卓夫)(新曲)
ボーナス・トラック(ガンダム35周年記念)
10,Ζ・刻をこえて (Better Days Are Coming)(英語Ver.)(作詞・作曲:Neil Sedaka 編曲:渡辺博也) 
11, 星空のBelieve (Bad And Beautiful)(英語Ver.)(作詞・作曲:Neil Sedaka/Philip Cody, 編曲:渡辺博也)

★ハイレゾでも音源配信中!
【配信サイト】

e-onkyo music
mora
VICTOR STUDIO HD-Music.

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