INTERVIEW
2014.08.27
――ではこれら音楽が絵と合わさって、作品の完成度として印象深かった話はありますか?
合田 やっぱり、最終話は特別でしたよね。
牛尾 「Hero Theme」のブレイクとペコの「ッシャー」がパツンとハマってくれたAパートのところ、すごく気持ちよかったです。
――アバンの回想シーンから「Ping Pong Phase2」が流れ出し、ジワジワと盛り上がりながらOPテーマ(「唯一人」)に繋がっていくところも素晴らしかったです。
牛尾 第3話で「Ping Pong Phase」を使っていただいたとき、監督が僕の目を見て「インターハイもう一回あるんですよ」とおっしゃったんです。なので勢いだけで勝手に「Ping Pong Phase2」を作ったんですが……使い道があってよかったです(笑)。
――ちなみにこのシーンは小学生たちの演技も特徴的で。
木村 あれは役者もリアル小学生たちですね。
湯浅 木村さん、あそここだわっていましたよね。アフレコできれいなテイクをわざと選ばないんです。あえて声が裏返ってたりとか、そういうのを使って。
――「手のひらを太陽に」を歌っていた子供たちは?
牛尾 アバンに出てきたいじめっこたちに、女の子をプラスして。
木村 6人で合唱団を作りました。アニメでは歌が始まる直前に外野からの声援と、最後のほうに子供たちが遊んでいる声が入って。いいですよね、あれ。
牛尾 いいタイミングに仕上がって本当によかったです。最終話は合田さんから各シーンの尺を事前に聞いていて、それに合わせて編曲していくことができたんです。だからBパートの最後でリアレンジ曲も絡めて「Tendemess(5years after)」「Farewell Song」「Hero Appears(Reprise)」と繋げていただいたところなんかは、最高でしたよね。
合田 スケジュール的にはかなり負担をかけてしまいましたが……ギリギリのタイミングでも正確な意図をやりとりできたのは、牛尾さんが日頃からダビング現場に顔を出されていたからなのだと思います。
木村 『ピンポン』の現場って、スタッフ全員がとにかくしつこいんですよ(笑)。誰かひとりだけがしつこいと大変だけど、みんなに良くなるなら最後の最後まで粘りたいって気持ちがあるから、苦じゃないんですよね。楽しくできる。
合田 そういえば牛尾さん自身も、ダビング現場で急に「チャイナのお母さんのテーマも必要ですよね」とか言って、あえて茨の道を選んでいましたよね(笑)。
牛尾 「今夜までに上げます!」「朝までに仕上げます!」みたいなことをしてたので、途中からダビングのスケジュールをマネージャーに報告するのをやめました。怒られるから(笑)。でも念願だったんです。アニメでメインのコンポーザーをやるのは。だから気持ちだけが先走ってトゥーマッチにならないよう、出しゃばらないようにするのだけは気をつけて……。
湯浅 楽しかったですよ。作曲家がこんなに絡んでくるのは初めてのケースだったので(笑)。
――最後に、今回の『ピンポン』では、何をテーマにご自身の仕事に取り組まれていましたか?
合田 原作を読んだときにすごく爽やかな気持ちになれて。何かに熱中することへの尊さみたいなものを、音楽でも伝えたいなと思っていました。普段の仕事だと結構暗めのドラマとか多いので、それとは真逆の爽やかな、でも熱くて人間くさくもある作品で自分なりの表現ができて、すごく楽しかったです。あと実は私、電気グルーヴが好きでして、牛尾さんとご一緒できて本当に光栄でした。
牛尾 そうだったんですか!?早く言ってくださいよ〜(笑)。個人的に僕の中で『ピンポン』は、“負けっぷり”が際立って良い作品なんですよ。だから音楽でそこをちゃんと表現したいというのがあって、ただの青春群像劇で終わらない、観る人の何かにちゃんと響く曲を作れればなと思っていました。自分の愛が暴走しちゃって、申し訳なく思う部分もあるのですが……(笑)。
木村 制作期間にして3ヵ月とちょっと……すごく必死になって作っていましたけど、何を目指していたのかといえば、やっぱり監督がやりたいことをとにかく実現したいってことですね。監督が言うこと、やりたいことを一生懸命理解する。その意図を察して自分なりのアイデアも入れ込みながら、監督が掲げる理想に近づこうとしていたのを思い出します。
湯浅 僕のコンテ、わかりづらいんですよ。だから木村さんから何度も電話があって、「これ誰ですか?」「この人でいいんですか?」とか聞かれてました(笑)。一生懸命解読していただいて、ありがたいなと思いました。『ピンポン』は作っていると本当に卓球がやりたくなる作品でした。青春とか勝ち負けとか、そういうのも確かに大事だけど、「卓球楽しいなぁ」って感じが伝わればそれでいいんじゃないですか?この作品は。
Text(序文) by 林 信行(slf)
Interview&Text by 西原史顕(リスアニ!)
■ピンポン COMPLETE BOX情報
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2014年8月27日(水)発売
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品番:ANZX6281~5
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<完全生産限定版特典>
★松本大洋描き下ろしBOX
※湯浅政明によるラフを、松本大洋が描き下ろしたコラボイラスト!
<封入特典>
★本編DISC3枚+CD2枚:計5枚組★
・オリジナルサウンドトラック(2枚組)
⇒牛尾憲輔が「ピンポン」のために描き下ろした楽曲を多数収録
・湯浅政明の創作ノート
・アニメーションメイキングブック
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<映像特典>
・絵コンテギャラリー
⇒湯浅政明による全11話分の絵コンテをデータで完全収録
・ノンクレジットOP/EDムービー
・オーディオコメンタリー
・PV、ラリーCM完全収録
●通常版同時発売
『ピンポン STANDARD BOX』(通常版)
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価格:¥22,000+税
品番:ANSB6281~3
※本編DISC3枚組
TVアニメ『ピンポン』
■STAFF
原作:松本大洋(小学館 ビッグスピリッツコミックス刊)
監督:湯浅政明
キャラクターデザイン:伊東伸高
音楽:牛尾憲輔
色彩設計:辻田邦夫
美術監督:Aymeric Kevin
撮影監督:中村俊介
編集:木村佳史子
音響監督:木村絵理子
制作:タツノコプロ
(C)松本大洋・小学館/アニメ「ピンポン」製作委員会
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