INTERVIEW
2014.03.27
榊原ゆいにとって、実に6年ぶりとなるElements Gardenとのアニメタイアップコラボレーションシングル「聖剣なんていらない」が5月にリリースされる。これはTVアニメ『星刻の竜騎士』のOPテーマとなっており、疾走感のある曲調に美麗なメロディとハイトーンが絡み合う、4月からの新番組シーズンに大きな話題となること間違いなしの素晴らしい楽曲に仕上がった。さらに彼女はこれに先立ち、3月末に自身の足跡をたどるカバー曲集をリリースする。精力的な活動で、この春注目の“ゆいにゃん”に、レコーディングのようすをじっくりと伺った。
――新曲の「聖剣なんていらない」を聴かせていただきましたが、ものすごくかっこいい曲で、榊原さんの手応えとしても相当なものがあったのではないでしょうか?
榊原ゆい そうなんです!できあがったとき、感動しました!!
――では、そんなこの楽曲の制作の経緯について教えてください。
榊原 TVアニメ『星刻の竜騎士』のOPテーマに決まったときに、音楽プロデューサーから「誰か一緒に作りたい人いない?」と聞かれたので、「久々に、Elements Gardenの上松範康さんにお願いしたいです」と言ったら、こころよくOKをいただけたんです。上松さんとのアニメタイアップは今でもファンから非常に愛されている「片翼のイカロス」という楽曲以来だったので、今回の「聖剣なんていらない」に相当気合を入れてくださったそうで、楽曲と一緒に歌詞も思い浮かんだそうです。「もう事務所でずっとテンションが高くてさ~」と、佐藤ひろ美ちゃんから聞きました(笑)。今回、アレンジを担当してくれた喜多智弘くんは「片翼のイカロス」が好きでElements Gardenに入ったという方なんです。以前お会いしたことはあったのですが、ガッツリ組んで担当してもらうのは初めてで、メチャクチャ喜んでくれて、「ゆいちゃんのこと大好きでね~」と。これも佐藤ひろ美ちゃん情報です(笑)。それって、こちらとしてもすごくうれしいことで、上松さんも喜多くんもすごく愛情を持って作ってくれたので、これはいい歌になるはずと確信していました。
――楽曲を受け取っての印象はいかがでしたか?
榊原 まず感じたのは、「これは来ちゃうな」と(笑)。メロディもどこか「片翼のイカロス」的な展開がありつつも、切なすぎるのではなく明るく感動する方向で、『星刻の竜騎士』の主人公・アッシュの気持ちにぐっと寄り添っている感じが伝わってきました。
――収録の様子についてお聞かせください。
榊原 この曲って、すごくキーが高いんです。それこそファルセット(裏声)で歌うか、地声で歌うかの検討も重ねて、ひとつキーを下げて試してみたほどでした。それでキーを下げたらどこか冷静な感じで歌えちゃったんです。でも、この歌は淡々とかっこよく歌うよりも、一生懸命さや熱さをのせるべきだと思って、高くて大変だけど元の高いキーで歌うことにしました。歌詞もすごく等身大で飾っていないんですね。Bメロの「ヒーローだって どんなんだって なりきってやるからさ」という歌詞からはアッシュの本気の気持ちがすごく伝わってきたので、音取りは難しかったんですけど、感情と熱だけを考えられるように歌を身体に染み込ませてレコーディングに挑んだんです。とにかく音が高くて、力強くも切ない。がむしゃらな中にある繊細さを調節していきました。
――榊原さんは男性キャラの目線で歌うことは多い方ですか?
榊原 そうですね。PCゲームの主題歌は主人公視点の曲がけっこうあるので歌う機会は多いですね。今回でいうとアッシュって、男っぽいとか格好いい感じではなく、普段はちょっと天然なところがあって頼りない感じなんですけど、ここぞというところでは男らしさを発揮するんです。最後のサビ前に「僕は」とあるのですが、そこに真剣な気持ちで男らしさを覗かせたりと、アッシュの性格を踏まえながら歌作りを決め込んでいきました。
――2番には女の子の気持ちが入ってきますね。
榊原 ヒロインのエーコは強気な子で、アッシュに対してガンガン言ったりするんですけど、一方で「私の居場所」とも言っていて、照れ隠しの気持ちもあるんだろうなと性格も想像しながらですね。作品のOPテーマなので、そこは主人公とヒロインの性格や関係性をきちんと追いつつ表現したいなと思いました。
――榊原さんはナヴィー役として出演されていますが、どんな思いで役に臨まれていますか?
榊原 まぁエロ担当なのでそこに徹しようかなと(笑)。ナヴィーはミステリアスなキャラクターなのですが、最初にクライマックスがあるので、第1話をお見逃しなく、といった感じです(笑)。キャスト陣の中でも「ここまでいいの!?」みたいな感じです。アッシュ役の高橋くんはアニメで初めて主人公役を演じるのですが、いきなり第1話でちょっとかわいそうになってきちゃうくらいいじめちゃいました(笑)。
――榊原さんはナヴィーのどんなところがお好きですか?
榊原 こんなこと言っていいかわからないですけど、おっぱいの形がすごくいいですね!(笑)。この作品にはけっこう巨乳キャラが出てくるんですけど、そのなかでもすごいんです。私的にはここを推していきたいですね。
――これまで収録されてきてどんなところに見どころを感じますか?
榊原 主人公とヒロインの成長劇が素敵な描かれ方をしていますし、人間性の交わり具合もそれぞれにあって、キャラクターが持っているものが深いなと思います。収録も後半に差し掛かっており、みんな魂のこもった演技や本気の叫びを気合を入れて演じていますので、そのあたりを楽しんでいただければと思います。
自分を見つけるきっかけになったカバーアルバム
――3月26日にはアニメソング・ゲーム主題歌をカバーしたアルバム『LOVE×CoverSongs』をリリースされましたが、この企画はどのように決まったのでしょうか?
榊原 今までは夏にアルバムを出して、冬頃にもう1枚リリースしていたのですが、今年はシングルも出しきってしまったので、新しいアイディアとしてカバーアルバムという案が出ました。私みたいなアニオタ・ゲーオタとしては、好きな曲をカバーしたものをリリースさせていただけるなんて、もう仕事にしてもいいんですかってくらいで(笑)。それで曲をピックアップしたんですけど多すぎて、ようやくなんとか10曲に選りすぐりました。初のカバーアルバムなのでみなさんにとってキャッチーなものを選曲しつつ、曲調も色々違うものにしたりとか、その中での声色も少しバラけるように選曲をしたので飽きずに聴いてもらえるとは思います。
――カバー元の楽曲の年代も幅広いですよね。
榊原 アニメの曲は私が聴いて育った曲や、オタクとして過ごした時代の楽曲です。レコーディングがすごくスムーズで、リアレンジをしてくださったAngel Noteのみなさんからも「ホントに好きなんだね」と言われたのが印象的で「ラムのラブソング」はフルバージョンで2回歌って終了したほどでした。これはアルバムの中で一番の萌えソングにしようとアタリはつけていたんです。『美少女戦士セーラームーン』や『少女革命ウテナ』は当時グッズもめっちゃ買っていて、ガチオタでしたねぇ(笑)。そんなウテナの「輪舞-revolution」のカバーには奥井雅美さんご本人がコーラスを入れてくださったんです!偶然、別の現場で一緒したときにご挨拶したついでに今回のお話をしたら「おぉ、それならコーラスやったるわ」って。「えっ、こんなにあっさり決まっちゃっていいの?」って感じで、あまりの突然の出来事に実感が湧かなくて(笑)。その帰り道になってようやく感動がグワッと湧いてきたんです。元々、ウテナオタだった私がカバーをさせてもらうだけでうれしいのに、ご本人がコーラスを入れてくださるって。過去に行けるなら当時の私に伝えたいくらいですよ(笑)。収録の際は私が先に歌ったものに、奥井さんがコーラスを入れてくださいました。最後に奥井さんと私で掛けあいをする箇所があるのですが、何回も聴いて「ホントに一緒に重なっている……!」って確認しちゃいました。こういう時にサッと協力してくださる奥井さんのお人柄もステキですし、この仕事をやっていてよかったな……と思いました。私の趣味が思いっきり入っていて申し訳ないんですけど、非常に思い入れの強いアルバムになりました。
――榊原さんのそういうオタクなキャラクターが、周りのみなさんやファンの方から認知されているからこそあえて伺いたいのですが、ひとりのオタクとしてそしてプロの歌手として、心中どのような想いで憧れの楽曲に向かわれたのでしょうか?
榊原 もちろん、オタクとしてカラオケで歌っていた頃とは気持ちのうえでも全然違います。あの頃はモノマネをしていましたが、今求められているのは榊原ゆいが歌うカバー曲というカラーで、リスペクトはしつつも、元の歌についてあまり考えないようにと思って歌ったら、Angel Noteさんによるリアレンジのおかげもあって、結構自然と自分のカラーになったんです。さらに言うと、元の曲がある分自分の中で比べられるんですよね。ここは自分がプロとして培ってきたテクニックを使って歌っていたんだな、とか。そういう部分が自然と出てきたのはある意味発見でしたし、カバーアルバムを出すことで自分を見つめ直すことができたかなと。
――なるほど。
榊原 私は本家がいちばんだと思っているんです。これは揺るぎない。それがわかっていて、自分なりに大好きな曲を歌うという考えなんですけど、ご本人のカラーが強すぎて自分で歌っても「これじゃない」と思うこともありました。特にいとうかなこちゃんの「青い記憶」は、この作品のヒロインを演じていたのでサントラをいただいてから私も好きでずっと聴いてたので、彼女独特の歌声と雰囲気が頭の中を回るんです。だからと言って、モノマネするものではないし、よく聴きこんでいた分、自分の歌い方をまとめるのが難しかったです。
――その後、どのタイミングでご自身のカバーしたバージョンを愛せるようになりました?
榊原 レコーディングのときも、いとうかなこちゃんの声を受け入れながら録りつつ、自分の声の出し方を探りつつですね。やりながら見つけていった感じです。それで最後まで録り終わったときに聴いたら、やっと耳が自分の声色に慣れてきたというか、まとまった感じがしたと自分でも思えたんです。そういうことも起こるんだなと。本家の強さというかオリジナルの素敵さを改めて分かったし、自分も色々見つめられる形ができたので楽しかったです。
ファンにも伝わる、カバー曲を歌う楽しさ
――ゲーム主題歌のカバーの方はいかがでしょうか?
榊原 私といえばPCゲームの曲で育ってきたようなものなので、特に私がメインヒロインを演じた主題歌や仲良くさせてもらっている方の中から選曲させてもらいました。シモツキン(霜月はるか)の曲は本人と相談して決めたんです。去年イベントで何度もご一緒したので、そのときにいろいろお話して、考えてみたらほかにバラードが1曲もなかったので「恋獄」をいただきました。
――そんなPCゲーム主題歌が並ぶなかで、T.M.Revolutionの「Naked arms」は少々意外な選曲に思えました。
榊原 西川貴教さんとは仲良くさせていただいていて、ちょうど出会った頃にこの曲のPVを観させてもらって、それがメチャかっこよくてずっと聴いていたんです。もともと1曲は男声の曲を入れようと思っていたので、この機会に選ばせていただきました。
――この曲を男声でアグレッシブに表現するのはどんな経験でしたか?
榊原 今まで自分の曲のなかにも男声で歌った曲もあったんですが、それはゼロから作っているものなので自分の中の男を出せばよかったんです。でもこの曲は西川さんが完璧に歌って出来上がっている。それに対して私の男声でカバーを挑戦する意味は「好きだから」という情熱だけ。元々、私の男声での歌い方というかテクニックな部分はたまたま西川さんの歌い方と似ていたので、そこはすんなりいけたのですが、やっぱり声が軽かったりしちゃうので、そこをどのようにして女だけど荒々しさを出そうかと、男になりきるイメージで歌いました。一番難しかったのは上のハモリをファルセットで歌うんですが、私が本線を男声で歌ってきても、ハモリを裏声にすると女声になって雰囲気が変わってしまうので、がんばって男声の意識のまま裏声を出すことで上手く締めることができました。
――大変な部分もおありでしたが、今回のカバーは歌手としていい経験になったのでは?
榊原 単純に好きな曲が歌えて楽しかったです(笑)。ほぼ連続で毎日2曲ずつ録音したんですが、まったく喉も潰れず本当に楽しく毎日過ごせて、これが仕事でいいのかなと思うくらい楽しませていただきました。この楽しい気持ちをファンの皆さんに伝えようとTwitterで毎日「今日は何のレコーディングで、アレンジは誰それさんです」ってつぶやいていたら、ファンの方のお返事で「ゆいにゃん超~楽しそうなんですけど?」って(笑)。やっぱり本人が楽しく作ったアルバムってファンに響くと思いますし、そういう気持ちを届けるのがいちばんだなと思います。
――過去ログは必見ですね。さて、3月29日には大阪で、4月5日には東京で「Coupling With★LOVE×Live 2014」というライブが控えていますが、これはどんな内容になるのでしょうか?
榊原 私の春のライブはファンの参加型で、セットリストを投票で決めるのですが、今回はシングルのカップリング曲に少し光を当てようと。タイトルトラックに比べてあまり歌われないけど、その中にも人気曲がいっぱいあるので。自分で曲を決めるのもいいんですけど、投票に参加してもらってファンの方が聴きたい曲を歌うのもひとつのライブの作り方かなと。きっとイントロがかかったときニヤニヤしながら聴いてもらえるかなと思います。当日は投票で選ばれた曲を歌いつつ、カバーアルバムからも何曲か、そして「聖剣なんていらない」も歌おうかと思っています。CDの発売はちょっと先の5月14日なのですが、自分のライブでしっかりとお披露目したいなと思います。振りも自分でつけたのでそれもライブで見ていただけたらなと思います。東京公演には、KOTOKOちゃんと佐藤ひろ美ちゃんがスペシャルゲストに来てくれるので、コラボをお楽しみに!
Interview&Text by 日詰明嘉
【プロフィール】
サカキバラユイ/10月13日生まれの声優・シンガーソングライター。LOVE×TRAX Office所属。PCゲームからTVアニメまで幅広い作品に出演。2004年より歌手活動を始め、これまでに36枚のシングルと10枚のオリジナルアルバム、3枚のベストアルバムをリリースしている。
■リリースインフォメーション
榊原ゆい アニソン&ゲーソンカバーアルバム
『LOVE×CoverSongs』
2014年3月26日発売
品番:LXCH-0007
価格:3,000円(本体)+税
発売元:合同会社LOVE×TRAX
販売元:株式会社KADOKAWAメディアファクトリー
<収録曲>
輪舞-revolution(TVアニメ『少女革命ウテナ』OPテーマ) / 奥井雅美
“らしく”いきましょ(TVアニメ『美少女戦士セーラームーンSupers』)/ Meu
空色デイズ(TVアニメ『天元突破グレンラガン』OPテーマ) / 中川翔子
ロマンティックあげるよ(TVアニメ『ドラゴンボール』EDテーマ) / 橋本 潮
ラムのラブソング(TVアニメ『うる星やつら』OPテーマ) / 松谷祐子
Naked arms(PS3・Wii『戦国BASARA3』メインテーマ) / T.M.Revolution
恋獄(PC『カルタグラ~ツキ狂イノ病~』主題歌) / 霜月はるか
原罪のレクイエム(PC『プリズム・アーク』セカンドオープニング) / KOTOKO
ハローグッバイ(PC『グリーングリーン3ハローグッバイ』OPテーマ) / 佐藤ひろ美
青い記憶(PC『”Hello,world.”』OPテーマ) / いとうかなこ
ニュー・シングル
榊原ゆい『聖剣なんていらない』
2014年5月14日発売
品番:ZMCZ-9231
価格:1,200円(本体)+税
発売・販売元:株式会社KADOKAWA メディアファクトリー
<収録曲>
「聖剣なんていらない」
作詞:上松範康 作曲:上松範康 編曲:喜多智弘
ほか、カップリング・各off Vocalを含む全4曲を収録予定
■ライブ情報
『Coupling With★LOVE×Live 2014』
<公演日時>
大阪:3月29日(土)開場 14:00/開演 14:30
東京:4月5日(土) 開場 15:00/開演 16:00
<チケット料金>
大阪料金:スタンディング/4,800円(税込) ※入場時に別途ドリンク代が掛かります。
東京料金:1Fスタンディング/5,300円(税込)※入場時に別途ドリンク代が掛かります。
<会場>
大阪会場:OSAKA MUSE
東京会場:赤坂 BLITZ
主催:LOVE×TRAX
企画:合同会社トライアット
制作:ユニオンマスターエンターテインメント
お問い合わせ:オデッセー 03-5444-6966(平日11:00~18:00)
『Coupling With★LOVE×Live 2014』特設サイトはこちら!
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