REPORT
2014.03.09
スペシャルゲストのコーナーが終わり、ここからはいよいよ1st PLACE所属アーティストたちの出番。その先頭を切ったのは石風呂。先ほどオープニングアクトとして出演した“コンテンポラリーな生活”のギターボーカル・朝日 廉は、“石風呂”の名義でボーカロイド曲のプロデュースも行っているのだ。ニコニコ動画で人気を博した「夕暮れ先生」や、「ゆるふわ樹海ガール」といった代表曲を、石風呂自身のギター演奏と生歌で披露するステージは、この会場ならではのグルーヴと爽やかさに満ちていた。さらに後ろのスクリーンには彼の描くイラスト“キライちゃん”が映され、そのどこかシニカルでありながら愛嬌に溢れたタッチが趣深い。コンポーザー、作詞家、ミュージシャン、そしてイラストレーター……とそのマルチな才能はライブでも遺憾なく発揮されていた。
ここでステージ上部から透過型スクリーンが降りてきて、先の展開を察した会場前方のファンから悲鳴にも似た歓声が上がる。ステージ後方の巨大スクリーンがその名とイラストを表示するのに合わせて、ステージ中央の透過型スクリーンにその姿がプロジェクションされ、いよいよボーカロイド・IAが登場! 筆者は3D投影されたボーカロイドをライブ会場で見たのは初めてだったが、その鮮明な画質と細やかな動きには驚かされた。確かにIAがそこにいると思えるくらい、まざまざと感じられる存在感。IAが届ける歌とダンスは、出力されたものでありながら、紛れもない「ライブ」のパフォーマンスだった。
はじめに披露した楽曲は「SEE THE LIGHTS」と「LIVEDRIVE」。“IA PROJECT”は、これまで自動車レース“SUPER GT”やレーシングチーム“LEXUS TEAM SARD”とのタイアップ、コラボレーションを行ってきた。後方のスクリーンにはそのイメージ映像や、レースをダイジェスト編集した映像が流れ、スピード感全開の楽曲と相まって最高に格好良い! 次の曲、世界が終わる日を歌った刹那的な歌詞が印象的な「ヘッドフォンアクター」では、作曲を手がけたじんがギター奏者として登場し、ひときわ大きな歓声が上がる。続いて「ワンツーハロー」のイントロが流れると、後方スクリーンには再び“キライちゃん”の姿が。ここでは作曲の石風呂がギター参戦し、IAの傍らでステージを盛り上げる。そして最後はレースクイーン風のチューブトップ衣装にお色直ししたIAが、“SUPER GT 2013”のオフィシャルイメージソング、「アメリカ~We are all right!~」を歌ってフィニッシュ。ボーカロイドがこんなにも熱いライブステージを作れるとは――そんな驚きと、これから先に拡がる演出表現の可能性を感じずにはいられない、高揚感たっぷりのステージとなった。
そして間髪入れずに流れた“カゲロウプロジェクト”メドレーで再び色めく会場。2014年4月から『メカクシティアクターズ』のアニメ放送を控えていることもあり、その期待の大きさが客席からひしひしと伝わってくる。やがて後方スクリーンに“じん×メイリア(GARNiDELiA)”が表示されるとともに、じんのギターカッティングで「カゲロウデイズ」が始まる。ボーカルを担当するのはメイリア。その透明感と力強さを併せ持つ歌声はボカロ曲と相性抜群なばかりか、楽曲の良さをいっそう大きく引き出していた。ファンキーなバンドサウンドが夜の浮遊感を演出する「夜咄ディセイブ」は生演奏で聞くとまた格別なものがあるし、サビのメロディがとにかくキャッチーな「夕景イエスタデイ」ではじんがコーラスとしてメイリアとハモる光景が実にエモーショナル。じんとメイリア、このライブならではのコラボステージは、まさにふたりの才能が溶け合った大充実の内容だった。
トリを務めるのはLia。Key作品の楽曲でも際立って人気が高い「夏影」(PCゲーム『AIR』挿入歌)を、より壮大なサウンドでアレンジした「夏影~Cornwall summer mix~」を冒頭から歌い上げ、その圧倒的な歌唱力と表現力、そして透き通った歌声で会場を魅了する。バラードから一転して「絆-kizunairo-色」や「ローレライの詩」などのアップテンポな曲でも、その歌唱の迫力は全くブレる所を知らない。さらに2014年1月から放送中のTVアニメ『ウィザード・バリスターズ ~弁魔士セシル』OPテーマ「JUSTITIA」も披露し、懐かしい曲だけでなくリアルタイムな楽曲でも聴く者を圧倒する。美しいメロディと英詞で「愛」という大きなテーマを歌い上げる「THE FORCE OF LOVE」をはさみ、来る本編ラストは名曲中の名曲「鳥の詩」。この歌に関しては、ただそっと聴き入っているだけで、サイリウムを振ったりコールを入れたりせずとも、会場がひとつになっていくのを感じた。楽曲の力とボーカルの力が壮大に合わさったLiaのステージは、会場全体を包み込むようにして幕を下ろした。
アンコールに応えてLiaが再登場し、歌い始めたのは「My Soul, Your Beats!」(TVアニメ『Angel Beats!』OPテーマ)。2コーラス目からは、あの透過型スクリーンがまた降りてきて、なんとIAも再登場!最後のサビでLiaとIAがユニゾンするシーンは圧巻の一言に尽きる。生身の歌手であるLiaと、彼女の声を元に作られたボーカロイドIAの歌声が重なりあう光景は、コラボステージが多かった本公演の中でもひときわ意味深い。サビの“聞こえた気がした 感じた気がしたんだ”という歌詞は、新たな歌の表現のありかを見つけ出そうとしているようだった。
本公演の1日目にあたる2014年3月1日(土)は1st PLACE株式会社の創立10年目の最後の日であり、2日目の3月2日(日)は11年目の始まりの日。これまでを総括する豪華なステージが目白押しだった本公演のラストは、記念すべき新たな門出を祝うかのように、出演者がステージで横一列に並び「ワールド・コーリング」を合唱して終幕。同社が手がけてきたコンテンツの幅広さと、そこに集まる力強い才能の数々、そして今後に広がる無限の可能性を感じさせる、4時間にも及ぶ大充実のライブイベント。その最後には、祝福と期待が込められた、満場一致の拍手が送られていた。
Text by 山中貴幸
1st PLACE 10-11th CELEBRATION LIVE「KEEP HAVING FUN!」”
SETLIST
2014年3月2日@六本木・アミューズミュージカルシアター
M01 あばよライバー / Rock,stock and the Barrel(ナナホシ管弦楽団)
M02 ゴミ箱人間さん / コンテンポラリーな生活
M03 死なない声を探す / コンテンポラリーな生活
M04 Brave Song / 多田葵
M05 I miss you / 多田葵×富樫美鈴(Veil)
M06 Alchemy / marina
M07 Thousand Enemies / LiSA
M08 Crow Song / marina×LiSA
M09 ambiguous / GARNiDELiA
M10 Lamb. / GARNiDELiA
M11 夕暮れ先生 / 石風呂
M12 ゆるふわ樹海ガール / 石風呂
M13 SEE THE LIGHTS / IA
M14 LIVEDRIVE / IA×JIN
M15 ヘッドフォンアクター / じん feat.IA
M16 ワンツーハロー / IA feat.石風呂
M17 アメリカ~We are all right!~ / IA feat.じん
M18 カゲロウデイズ / じん feat. メイリア(GARNiDELiA)
M19 夜咄ディセイブ / じん feat. メイリア(GARNiDELiA)
M20 夕景イエスタデイ / じん feat. メイリア(GARNiDELiA)
M21 オツキミリサイタル / じん feat. メイリア(GARNiDELiA)
M22 アウターサイエンス / じん feat. メイリア(GARNiDELiA)
M23 サマータイムレコード / じん feat. メイリア(GARNiDELiA)
M24 夏影~Cornwall summer mix~ / Lia
M25 絆-kizunairo-色 / Lia
M26 ローレライの詩 / Lia
M27 JUSTITIA / Lia
M28 THE FORCE OF LOVE / Lia
M29 鳥の詩 / Lia
~アンコール~
Enc-1 My Soul, Your Beats! / Lia×IA
Enc-2 ワールド・コーリング / 全員
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