REPORT
2014.02.24
『アイドルマスター』が過去最大の2DAYSライブ“THE IDOLM@STER M@STERS OF IDOL WORLD!!2014”を2月22日・23日、さいたまスーパーアリーナで開催した。今回は二日目の模様をレポートする。
二日目には765プロから中村繪里子、長谷川明子、今井麻美、仁後真耶子、浅倉杏美、平田宏美、下田麻美、釘宮理恵、たかはし智秋、原由実、沼倉愛美、滝田樹里、『アイドルマスター シンデレラガールズ』から福原綾香、松嵜麗、佳村はるか、大橋彩香、原紗友里、青木瑠璃子、五十嵐裕美、山本希望、高森奈津美、黒沢ともよ、三宅麻理恵、『アイドルマスター ミリオンライブ!』から麻倉もも、田所あずさ、山崎はるか、渡部優衣、木戸衣吹、Machico、シークレットゲストとして『アイドルマスター ディアリースターズ』から戸松遥が参加した。
二日目には男性アイドルを中心としたソーシャルゲーム『アイドルマスター SideM』の事前登録開始がサプライズで告知された。会場は男性比率が多めのプロデューサーたちだが、PVの中で『アイドルマスター2』でおなじみの男性アイドル・天ヶ瀬冬馬の画像が登場すると、会場はボルテージの高い、暖かい大歓声に包まれた。二日目は冒頭の諸注意を『ぷちます!』のPとキャラクターたちが担当、ライブの最後の締めは高木社長に託された赤羽根プロデューサー(TVアニメ/劇場版)が担当していた。
●4番目の“赤”
戸松がアイマスのさいたまスーパーアリーナにサプライズゲストで登場と聞いて、驚いた人もいるかもしれない。彼女が演じる日高愛は、2009年に発売されたDS用ソフト『アイドルマスター ディアリースターズ』に登場したキャラクターだ。ボーカル属性の日高愛は太陽のような明るさで突き進む元気娘で、あこがれの先輩は天海春香。象徴色はスプラッシュレッド。イノセントブルーの水谷絵理と、ノイエグリーンの秋月涼、3人の主人公たちの真ん中にいつもいる存在だ。
戸松と花澤は、2009年に開催されたアイマス4周年ライブにシークレットゲストとして登場。アイドル衣装を華麗に着こなした戸松の華やかさと笑顔は、DS版主題歌「“HELLO!!”」のショートバージョンと、全員曲である「THE IDOLM@STER」への参加だけだったにも関わらず、鮮烈な印象を残した。その後小規模なシークレットイベントや東京ゲームショウのステージイベントへの参加はあったものの、アイマスの大きなライブに戸松たちが参加したのは4周年が最初で最後。彼女たちのパフォーマンスを一度見てみたい人は、本当にたくさんいた。
それから、4年半が過ぎた。物語を体験することを大事にした同作は今でも熱心なファンがたくさんいるが、やはり数年前のタイトルからのゲスト出演はなかなか難しい。それでもアニメに愛、絵理、涼の3人がゲスト登場したりするたびに、「もしかしたら、いつか…」と、ずーーーーっと夢に見てきたのが、日高愛たち“876プロ”のアイドルを応援するプロデューサーたちなのだった。
だがそんな淡い夢の実現の時は、予想もしないタイミングで訪れた。メドレーのさなか、昨日と同じ順番で聞こえてきた「“HELLO!!”」の歌い出しは、会場にいるどのアイドルのものとも違っていた。それは記憶の中にある歌声を、少しだけ優しくしたような物。狐につままれたような感覚で見つめたステージから登場したのが、日高愛役の戸松遥だった。アイマスアイドルの衣装で登場した戸松はかつてと同じように華やかで、笑顔で、数年前とまるで変わらないよう。だが、呆然とした夢のような時間は、「いっせーの!」の声で現実に引き戻された。この曲で声を合わせてのかけ声は、転調の合図。ということは…フルサイズだ!!
メドレーの中でフルサイズ歌唱という心憎い掟破りで、日高愛とプロデューサーたちの時間は、誰も見たことがない新しい時を刻み始めた。メドレー後に戸松は、中村繪里子と、山崎はるかと、大橋彩香と共に挨拶に立った。「『アイドルマスター ディアリースターズ』で日高愛を演じている戸松遥です」。戸松の中で、現在進行形の日高愛が息づいている。それだけで、宝物をもらったような気がした。
機会があれば、神前暁が曲を手がけ、yuraが詞を書いた、アイマス史に残る名曲である「“HELLO!!”」を聞いてみてほしい。転調前の3人が叫ぶ「いっせーの!」にあふれる圧倒的な多幸感と、何かが始まる予感に、きっと新しい“夢”が見たくなるはずだ。
●仲間とならできること
初日のライブを経て、41曲+メドレー13曲という途方も無いセットリストが、これまでのアイマスの9年間の歴史とこれからのすべてを抱きしめるような、随分欲張りなもくろみであることが見えてきた。始まりの曲「THE IDOLM@STER」、誰もが知っているTVアニメ主題歌の「READY!!」「CHANGE!!!!」、上映中の劇場版の「ラムネ色 青春」。冒頭からして、普通のライブではなかなかありえない流れだ。だが実は、765プロが全員で歌った「READY!!」の後、「CHANGE!!!!」の曲間に大階段にいたメンバーがいつの間にか減っていくことに、すぐ気がついた人はどれぐらいいるだろうか。楽曲は澱みなく続いているのに、いつの間にか中村、たかはし、浅倉、仁後の4人が歌っているのは新鮮な切り替え。「もう全部詰め込んじゃうけど、単調にならないようになるべく工夫して、みんなを飽きさせずに楽しみつくすぞ!」。そんな意志を感じた。
そう考えると、765組のセットリストに込められた思いが見えてきた。久しぶりにステージに立つたかはしの、新しい一面を見せる「Mythmaker」。対極にある、あずささんそのもののかわいさに満ちた「ラ♥ブ♥リ♥」。出産という大事な仕事を済ませた平田が「プロデューサー、僕、帰ってきましたよ!」と歌うのに、「自転車」以上に彼女と真の魅力が詰まっている楽曲があるだろうか。さいたまスーパーアリーナの中央、一番高いところで天を貫きながら「好きだぁぁー!」と叫ぶ平田は、誰の目から見ても絶好調だ。
今回のライブでは8人のダンサーが奮迅の働きで素晴らしい役割を果たしているが、やはり一番インパクトがあったのは、最初のソロ、沼倉の「Rebellion」だろう。劇場版『アイドルマスター』をきっかけに、ダンサーという存在の大切さを再認識した人も多いのではないだろうか。興味を持って見てみると、当たり前だがプロのダンサーの動きはすごい。そしてこの曲では同時に、そのダンサーたちのセンターで、素人目には遜色なく見えるダンスを見せている沼倉はどれだけの努力を重ねているのだろう、と感じさせられたのだった。
初日は異なる作品が交わる、増えることによる化学変化に注目したが、変化には「引き算」もある。下田の「ビジョナリー」は本来大勢で歌う楽曲だが、双子演じる下田がソロで歌うとどうなるか。ソロで歌っている歌唱の中で、亜美や、真美や、男の子みたいな亜美? 真美?がくるくると顔を出す。さいたまスーパーアリーナで歌いながら、一人四重奏のような“遊び”を見せることが、彼女以外の誰にできるだろうか。長谷川の「edeN」は、逆に元々美希にぴったりあつらえたような楽曲だけに、ソロでも違和感なく長谷川のキレッキレの動きとボーカルが堪能できた。変わること、だけが正しいわけではない。
765プロの事務員・音無小鳥は、これまで765プロのアイドルたちを様々な場所でいつも優しく見守ってきた。そんな彼女が今まで歌ったオリジナル楽曲たちは、アイドルたちの煌めきにどこか憧憬を感じながらも、優しい目線で見詰める小鳥の物語だった。それが今回のメドレーのラストの「空」では、逆に滝田がさいたまスーパーアリーナのセンターで、青いライトとピンスポットに照らされて歌う姿を、アイドルたちが全員で見守った。そして、ライブ自体のクライマックス(ソロラストの約束の前!)に滝田が歌った「君が選ぶ道」は、一歩引いて来た音無小鳥が、初めて自身の秘めた想いを垣間見せる歌でもある。今回のライブで、音無小鳥と滝田樹里もまた、アリーナの主役の一人だったことは間違いない。
それ以外の765プロのメンバーたちの楽曲も、やはり今まで積み重ねた時間や、作り手の愛情に満ちたアニメの中でのアイドルたちの変化や、成長の跡を確かに感じる楽曲が多かった。「ALRIGHT*」でたったひとりステージに登場して、身体全体から振り絞るような「いぇーーい!!」の声をさいたまスーパーアリーナに響かせた浅倉。雪歩はこんなに勇敢な少女だっただろうか。釘宮が階段をゆっくりと上がりながら、優しく歌い上げた「my song」。伊織はこんなにも包み込むような、優しさと強さを最初から持っていただろうか。衣装に桜色の帯? をあしらって歌った原の「恋花」は、原由実自身の成長に貴音が引っ張りあげられるように、大切な人に恋することを知った大人の歌になっていた。
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