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INTERVIEW

2013.10.09

★リスアニ!WEB独占★ 『惡の華』新オリジナル楽曲「白日夢」完成記念 しのさき あさこ(宇宙人)×ASA-CHANG(ASA-CHANG&巡礼)×押見修造(原作) スペシャル・インタビュー

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2013年4月~6月に放送されたTVアニメ『惡の華』でOP曲とED曲を担当した宇宙人ASA-CHANG&巡礼があらたにタッグを組み、さらに『惡の華』の原作者・押見修造も巻き込んで新オリジナル楽曲を制作。しかも、楽曲制作会議の様子をニコ生放送にて生配信し、ユーザーからの意見も広く募集――。そんな前代未聞の制作体制によって作られた『惡の華』新オリジナル曲「白日夢」がついに完成! 去る10月6日(日)、ニコ生にて『新オリジナル楽曲制作発表会』が放送され、同時に配信限定リリースがスタートした。

 

いきなり自分の声が聴こえてきたので、どう受け止めていいものやら(笑)(押見)

 ――オリジナル楽曲の完成、おめでとうございます!

しのさき あさこ 締切に間に合ってよかったです(笑)。

――タイトなスケジュールだったんですか?

しのさき タイトでした。

――手応えはいかがですか?

しのさき 『惡の華』の漫画で描かれていることを、ちゃんと書けたと思います。いい曲ができました。

押見修造 ほんとにありがたいです。すごいうれしいです。

ASA-CHANG 押見先生には、声を録らせていただきまして……。

―― “♪ボクハ、ボクハ、ボクハ……” ですね。

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ASA-CHANG 『惡の華』がアニメになった時点で、なんていうのかな、押見先生が飛び越えた発想というか、様々なトライアルをなさっていると感じてしまったんですね。だから、音楽だから押見先生が参加しないというのはないなと思いまして。いい化学反応が生まれればと思って声をかけてしまったんです。

押見 いやー、本当にうれしかったですね。ぜひ使いたいって言ってくださって。光栄の極みでしたね。

しのさき ふふふ。

押見 で、完成版を聴いたら、いきなり自分の声が聴こえてきたので、もうどう受け止めていいものやら(笑)。でも、すごくかっこよくて。

 

――ものすごいエディットが施されていて、冒頭から一気に楽曲に引きずり込まれてしまいます。

押見 空気が一変しますよね。

――ヘッドホンで大音量で聴きながら渋谷の雑踏を歩いたりしたんですが、ゾクゾクするような、なんともいえない気分になりました(笑)。

ASA-CHANG 渋谷のスクランブル交差点で聴きたいですね~。ビジョンでガンガンに流してほしい(笑)。

しのさき 聴きたい~(笑)。

押見 それはすごくいいですね!

ASA-CHANG そう思ってしまうというのは、僕は、この曲がそんなに奇異な曲ではない気がしてるんです。

――ASA-CHANGさんは、今回のプロジェクトに参加してみていかがでしたか?

ASA-CHANG 宇宙人の曲を受け取って、それを加工したりとか、そういうことをするのが、作法の違いというか、とても面白く、苦労した部分でもありました。何度もやり直しては却下し、というのを繰り返して、最後に「ボクハ」「ワタシハ」という言葉にたどり着きました。声を切ってエディットするボーカル・チョップという手法なんですが、とても聴きやすくはなってると思います。“♪ハナガ、サイタヨ”みたいなことにはなってない(笑)。

――漫画家の方の声がこういう形でフィーチャーされるって、聞いたことないですね。

しのさき 赤塚不二夫がCD出してましたよ。

押見 でも、こういう感じじゃないでしょ。赤塚さんは普通に歌をうたってたから。

しのさき 赤塚不二夫を超えた。

押見 僕が?僕が赤塚不二夫を超えた(笑)。

しのさき 漫画家初。ウィキペディアに載っちゃうかも(笑)。

 作品をちゃんと表現しないといけないので、“感情的に歌う”というのを初めてやってみました(しのさき)

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 ――今回のプロジェクトは、しのさきさんがASA-CHANGさんに声をかけたところから始まったんですよね?

しのさき はい。大ファンだったので。CD(TVアニメ『惡の華』コンセプトE.P.「惡の花譜」)の宣伝で、一緒にラジオに出たときに「一緒に曲作ってください」って頼んだら「いいですよ」って言ってくれました。

ASA-CHANG ラジオの本番中の出来事でしたので、そこで「嫌です」って言うのはなかなかできないですよ……(笑)。

――で、やるならもちろん『惡の華』だと。歌のテーマというか、曲のコンセプトはどういうものなんですか? 

しのさき アニメが、単行本でいうと4巻の途中のところで、寸止めみたいな感じで終わったんですけど、今回の曲は、そこから“中学編”の最後まで(※漫画『惡の華』は現在“高校編”が連載中)のストーリーをテーマにしてしてます。前に作ったアニメのOP曲が、登場人物のキャラクター・ソングの組曲だったので、別モノとして作れました。歌詞は、主人公の春日くんの目線で作ってます。

ASA-CHANG しのさきさんの歌詞がすごくよくて。ストーリーを本当にこまかく紐解いて、詞になさっていて。

押見 そうですね。

――ものすごく咀嚼感を感じるというか、一回すべてを取り込んで、改めてそこから歌詞を紡いでる感じがしますよね。

しのさき はい!

ASA-CHANG コピペじゃない。

しのさき 『惡の華』に入り込んで作りました。

押見 すごくうれしい。しのさきさんからは、『惡の華』について “昼ドラ” っぽいという感想をもらったことがあるんですけど(笑)、今回の詞は、もっと作品の “根っこ” にあるものを引っ張り出してくれている。僕が『惡の華』を通じて言いたかったことを、別の言葉にして、別のやり方でやってくださったみたいな感じがしていて、それがすごくうれしいですね。

――絶賛ですね。どうですか、しのさきさん。

しのさき 正解です!(笑)

――最後のパートの歌の激しさも印象的です。

しのさき はい。この最後のサビのところは、中学編のラストの“お祭り”のシーンをベースにしていて、ここは凶暴性が現れるようにしました。

――突然、歌の感じが変わりますよね。

しのさき はい。今回は、感情的に歌うというのを初めてやってみました。作品をちゃんと表現しないといけないので、そうしました。

――誠実ですね。

しのさき はい、マジメです(笑)。今まではそういう機会がなかった。

――これが初。ウィキペディアに書かないと(笑)。

 『惡の華』には、普通の男の子と女の子に起こりえることしか描かれていない(ASA-CHANG)

 ―― “会議” をして曲を作る、というのは、実際のところどうだったんですか?

ASA-CHANG 今回は “公開” もされるわけですからね。最初の頃は、ちょっとあざといんじゃないかと思ったこともあったんです。でも、アニメの作り方もそうなんですけど、この『惡の華』という作品は、とにかく前例がないものにトライしている作品だと思うんです。だから、どう見えるかとかはどうでもいいなと思っちゃって。

しのさき うんうん。

――会議には、ニコ生のユーザーも参加している形になってますよね。

しのさき はい。曲調とか歌詞の具体的なワードとかを募集したら、「賛美歌」とか「軍歌」っていう言葉があがってきて。タイトルも、たくさん案をもらいました。

ASA-CHANG あとコメントで多かったのが「山田」(笑)。

しのさき モジャモジャ頭の同級生の男の子。

押見 『惡の華』のアニメがニコニコ動画で配信されてたんですが、なぜが山田が人気出ちゃって、みんな、山田、山田、言うようになっちゃって(笑)。

――山田は今回の曲に反映されてるんでしょうか?(笑)

ASA-CHANG 山田は独り歩きを始めてるんで、別にいいかなと(笑)。

――ASA-CHANGさんは、具体的にはどういうアプローチで作業を進めていったんですか?

ASA-CHANG 最初は、しのさきさんが書かれた歌詞の中から言葉を選んで……「どろりどろり」とか「ずぶりずぶり」だったかな……リズムに置き換えたりしてみたんですけど、なんか座りが悪いというか。気持ち的に。で、ふと思い出したのが、一回目の会議のときに、押見先生が、主人公の春日くんと仲村さんは“変態”かもしれないけれど、普通の男の子と女の子に起こりえることしか、自分は描いてないとおっしゃっていたんですね。

押見 はいはい。

ASA-CHANG で、結局「ボクハ」とか「ワタシハ」みたいな、すごくシンプルな一人称の言葉に戻ってきたりして。あと、僕は押見先生が描くイメージ・シーンがものすごく好きなんですね。惡の華が、草原いっぱいに咲いているとか。そういった部分から発想していきました。

――先ほどの、しのさきさんのお話といい、ミュージシャンのおふたりは、本当に『惡の華』という作品と真摯に向き合われて、制作に向かわれていたことがよくわかりますね。その意味で、今回の作品が、<宇宙人×ASA-CHANG&巡礼×押見修造>という3者の名前が並列にクレジットされる形で世に出るというのは、必然であるように思います。

押見 もう、言葉にならんですね。ほんとうれしいです。生きててよかった(笑)。

 『惡の華』に描かれている本質的なものは、すべてこの曲に込められていると思う(押見)

 ――描き下ろしのジャケットも素晴らしいですね! これはどういうところから発想されたものなんですか?

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押見 中学編のクライマックスまでの流れと、あとは先ほども出た、ニコ生会議で寄せられた「賛美歌」とか「軍歌」とかそうしたワードから。

しのさき 同時の宿題。

押見 しのさきさんが曲を作るのと同時進行だったんです。ただ、最後の仕上げのタイミングで、曲の最終バージョンを聴かせていただいたんですね。で、「ぼくは」「わたしは」という文字を、最後の最後で絵に入れてみました。クレパスで描いてあるので、Gペンで引っ掻くと、文字が白く浮き出る。

しのさき 仲村さんの体のところも。

押見 ここも引っ掻いてますね。

しのさき 会議のときに持って来てくれたラフがほぼ完成品かと思っていたので、それがもっと完成していたのでびっくりしました。

――このジャケットが楽曲に影響を与えている、なんてこともあるんですか?

しのさき ラフを観させていただいたときは、宇宙人の作業は終わっていたので、それはないです。

ASA-CHANG 僕は、そのあとも作業はしていたんで、意識をしていないところで、なにかが反映されていたかもしれないです。ジャケットを見ながらレコーディングが同時進行するのって、あんまりない経験だったかもしれない。

――何から何まで異例ですね、今回は。

ASA-CHANG でも、みんなこうやって作ればいいのに、とは思いましたね。共同作業ということで自分だけの作業ではなくなるので、締切というものがシビアになってくるというのはありますが、でも、このやり方はおかしくないと思いました。

――では、最後にメッセージをお願いします

ASA-CHANG 今回の「白日夢」を聴いていただいて、この曲の元になっている『惡の華』がどういう作品なんだろうと思った方は、ぜひ原作を読んでいただければと思います。“♪ボクハ、ボクハ……”とか“昇天しろよクソムシの海~”とか歌ってるこの曲が、原作への興味に繋がるといいなと。

しのさき 曲を聴く前に漫画を読んだほうが、2倍、3倍で楽しめるので、ぜひ漫画も読んでください!

押見 でも、漫画を読んでいなくても、作品に描かれている本質的なものはこの曲に全然込められていると思うので、もちろん漫画も読んでいただけたらうれしいですけど、この曲だけでも何かが伝わるというのは、僕はあるような気がします。あと、この曲をきっかけに、宇宙人やASA-CHANG&巡礼の音楽にも触れていってほしいなと思います。そして、アニメも含めて『惡の華』のこの一連の流れは、これで終わりじゃないと思っているので、これからもぜひ応援してください!


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「白日夢」
宇宙人×ASA-CHANG&巡礼×押見修造

レコチョク・iTunes他にて配信限定リリース中!

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